生殖器の一つである卵巣は、出産するための重要な役割を担う、女性にとってかかせない臓器です。しかし、卵巣があることによって女性特有の病気が存在します。
女性の身体はとってもナイーブなため、少し環境が変わったり生活リズムが変わったりするだけでも身体に不調が現れます。
そういった不調の中で特に「生理不順」や「不正出血」など、生殖器に関わる症状が多いのではないでしょうか。「これくらいの症状だったらいつも通りだし大丈夫」と軽く見ていると、あとで後悔することになりかねません。
本記事では、特に「卵巣」について焦点をあて、卵巣の役割やどのような病気があるのかなどを解説していきます。ぜひ事前に知識を身に着け、自分の身体を理解することに役立ててみてください。
卵巣の役割
女性の生殖器には卵巣や子宮、卵管、膣があります。これらの臓器によって卵子を作り精子と受精することで妊娠をします。そして、体内で赤ちゃんが育っていきます。
子宮は受精卵を育てる器官であり、卵管は卵巣と子宮をつなぐ器官であり、膣は精子を子宮に導く器官です。
そして、卵巣は2つあり子宮の両端に位置している器官で、卵子を作ったり排卵を行ったりするだけではなく、女性ホルモンを分泌するという役割を担っています。大きさは2cm~3cm程度で、重さはだいたい14グラムです。
また、卵巣の大きさはうずらの卵くらいと例えられることもあります。
卵巣は2つあると先述しましたが、同時に役割を担うのではなく、毎月どちらか一方の卵巣が排卵をします。妊娠する際のステップとしては、卵胞発育、排卵、受精、着床という順になりますが、卵巣は最初の卵胞発育と排卵に関係する臓器です。
卵巣内では卵子のもとが含まれる原始卵胞が複数あります。原始卵胞のうちの一部が発育することで成熟卵胞へと成長します。成熟卵胞とは排卵直前の細胞で、グラーフ卵胞とも呼ばれています。この時卵子は卵胞の中に存在しています。
そして、排卵時には卵胞から卵子が卵巣の外に飛び出します。
妊娠するためにかかせないのが原始卵胞ですが、この原始卵胞は増えていくものではなくむしろ減っていくものです。
人間にとってかかせないホルモンや細胞は体内で作られながら消費されていきますが、原始卵胞は生まれた時には既に200万個存在しています。しかし、月経が始まって以降は毎月1000個程度の原始卵胞が減っていくのです。
卵巣の病気
卵巣は女性特有の臓器で、卵巣特有の病気も存在しています。また、卵巣は最も腫瘍が生じやすい臓器とも言われています。
女性だからこそ知っておきたい病気になるので、どのような病気があるのか、その症状などしっかり学んでおきましょう。
卵巣がん
卵巣の病気と言えばよく耳にするのが卵巣がんです。卵巣がんは40代から患者が増加し、50代~60代の患者率が最も高いです。死亡率に関して言えば、年齢とともに死亡率も増加していきます。
卵巣がんは沈黙のがん(サイレントキャンサー)と呼ばれるほど初期症状がほとんどなく、発見が遅れる病気です。
下記のような症状が出て初めて婦人科を受診する方がほとんどです。
- 下腹部にしこりがある
- 腹部に圧迫感をおぼえる
- 頻尿になった、膀胱の圧迫感
しかし、こういった症状が出ている場合では既にがんが進行している段階にあることが多いです。卵巣がんは、がん自体が大きくなる前に転移することもあります。
また、卵巣がんでは腹水という状態になることがあります。腹水とは字のとおりお腹に水がたまっている状態で、お腹が大きく突き出てきます。
がんの転移はおなかの中が多いですが、胸にもがんが転移した場合腹水と同じく胸に水がたまる状態になることがあります。胸に水がたまることで息切れなどの症状も現れます。
腹部の違和感を肥満と勘違いする方も多いですが、お腹の大きさと生活習慣が結びつかない場合は早めに婦人科を受診することが大事になります。
卵巣がんになりやすい人
卵巣がんになりやすい人の特徴として下記が挙げられます。
- 妊娠や出産の経験が無い人
- 近親者で卵巣がんになったことがある人
- 骨盤内炎症性疾患
- 肥満体型の人
- 排卵誘発剤を使用している人
- 10年以上ホルモン補充療法を継続している人
卵巣のう腫
次にご紹介する卵巣特有の病気は、卵巣のう腫です。卵巣のう腫とは、卵巣の中に液体や脂肪がたまってしまう病気です。触ってみるとやわらかいことも特徴として挙げられます。
卵巣がんと同様に初期症状はあまりなく、進行しのう腫が大きくなることで気づくことがほとんどです。
時には大きさがにぎりこぶし以上にもなることがありますが、どうしてのう腫ができてしまうのかはまだ分かっていません。しかし、卵巣のう腫の9割は良性であるといわれています。
卵巣のう腫の種類とそれぞれの症状
卵巣のう腫の症状としては、腹部や腰の痛み、頻尿、便秘などが伴います。また、のう腫が大きくなると茎捻転という状態になることがあり、激痛を伴うこともあります。
卵巣のう腫は、のう腫の中に何が含まれるかによって下記のような種類に分けられます。症状やなりやすい人などと併せてご説明します。
種類①漿液(しょうえき)性のう腫
漿液性のう腫は思春期を過ぎた方がなる卵巣のう腫です。卵巣のう腫の中で最も多いのがこの漿液性のう腫で、漿液とは卵巣から分泌されている液体のことです。この漿液が溜まることでのう腫となります。
種類②粘液性のう腫
粘液性のう腫は閉経した後の女性に多い卵巣のう腫です。ゼラチンのような粘液が溜まることでのう腫となります。かなり大きくなることが多いです。
種類③皮様性のう腫
皮様性のう腫は20代~30代の女性に多い卵巣のう腫です。胚細胞にできる卵巣のう腫で、歯や髪の毛といった組織の成分が含まれた物質がたまった状態です。両側の卵巣にできることもあります。
種類④チョコレートのう腫
チョコレートのう腫も20代~30代の女性に多い卵巣のう腫です。通常は子宮の中にだけ存在するはずの子宮内膜が卵巣など他の臓器にもできてしまうことを子宮内膜症と言いますが、チョコレートのう腫はその子宮内膜症の一種です。
月経がくる度にチョコレートのような状態で血液が溜まり、のう腫となります。
子宮内膜症
チョコレートのう腫の部分で軽く触れましたが、次にご紹介する卵巣の病気は子宮内膜症です。
子宮内膜症は、通常子宮の中にだけ存在するはずの子宮内膜が他の臓器にもできてしまうことだと先に述べました。子宮内膜症が発生した部分では痛みが生じることがあります。
子宮内膜症では頭や腰の痛み、排便・排尿後の痛み、吐き気、便秘、お腹が張るといった症状も伴うことがあり、月経期間は特に症状が悪化します。
子宮内膜症になりやすい人
子宮内膜症になりやすい人の特徴として下記が挙げられます。
- 20代の人
- 初潮が早くきた人
- 10代から生理痛が激しい人
- 妊娠や出産の経験が無い人
- 近親者で子宮内膜症になったことがある人
卵巣腫瘍茎捻転
茎捻転についても、卵巣のう腫の部分で軽く触れましたが、もう少し詳しくご説明します。
卵巣腫瘍茎捻転とは、卵巣に腫瘍ができた際子宮との繋がり部分がねじれてしまうことで血液が停滞し痛みが生じる病気で、右側に痛みを感じることがほとんどです。
卵巣腫瘍茎捻転による痛みはとても激しく、また急に発症するものです。卵巣の痛みに伴う症状は腹部や腰の軽い痛み程度です。
卵巣腫瘍茎捻転になりやすい人
卵巣腫瘍茎捻転になりやすい人の特徴はあまりなく、20代〜30代の人に多い病気となります。
卵巣が痛い時は病気なの?
ここまで卵巣の病気についてご紹介しましたが、中には病気ではないけれど卵巣が痛むことがあります。痛み方によって原因も違うため、順番にご紹介します。
排卵痛による痛み
排卵痛という言葉を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。排卵痛とは、生理周期の中期におこる痛みで、排卵時に引き起こされるものです。
先に述べた通り、排卵は卵巣にて行われます。排卵日には卵巣を突き破って卵子が飛び出しますが、その時に破れてしまった卵巣から卵胞内の卵子を取り囲んでいた卵胞液や血液が流れます。
この卵胞液や血液によって腹膜が刺激されたり、卵巣に炎症が起こったりすることがあります。この時に生じる痛みを排卵痛といいます。
今まで排卵痛を感じなかった方でも、ストレスなどが原因で急に排卵痛を感じるようになることもあります。
しかし、痛みがずっと続いたりするようであれば排卵痛でない可能性もあります。その場合はきちんと婦人科を受診するようにしましょう。
まとめ
卵巣のさまざまな病気をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。思っている以上に女性の身体はナイーブだからこそ、女性特有の病気もたくさん存在しています。
「大した症状じゃないのに受診するのは恥ずかしい」「もし違ったらお金がもったいない」そう思って検診や受診を怠っていると後悔することになりかねません。
婦人科での定期的な検診や、違和感を覚えた際はすぐに受診をするなど、自分の身体を守るためのアクションを心がけましょう。