女性は卵子の元になる“原始卵胞”を卵巣に約200万個ある状態で生まれてきます。その後、原始卵胞は思春期頃に20~30万個、30代では2~3万個まで減少します。また、原始卵胞の全てが卵子になるのではなく、実際の排卵数は女性の一生で400~500個程度です。
本記事では、卵子の数や原始卵胞から卵子になる過程、卵子と精子の違い、採卵時の卵子の成熟について解説します。
卵子の数はどのくらい?
女性は胎児の頃から約200万個の原始卵胞(卵子の元)を抱えて生まれてきます。しかし、この原始卵胞が全て卵子になる訳ではなく、成熟して大きく育ったものだけが「卵子」として排出されます。
一生涯で排出する卵子は400~500個程度
女性が一生涯で卵子として排卵する個数は400~500個程度といわれています。
月経は排卵後に妊娠が成立しなかったとき、不要になった子宮内膜を血液と共に排出するために起こります。そのため、月経があるときは排卵があるものと仮定できます。
また、女性の平均的な初潮年齢は12~13歳前後、閉経年齢は50~51歳前後です。約38年間生理があり、毎月1回排卵があるとすれば、一生涯で38×12=456個の排卵があると予想できます。
女性は生まれたとき約200万個の原始卵胞を抱えている
卵子の元となる原始卵胞は、女性がお母さんのお腹の中にいる胎児のときから備わっています。妊娠5~6カ月の胎児の時にピークの500~700万個を迎えます。
しかし、以降は減少を続ける一方で、生まれた時には200万個、その後、思春期には20~30万個、35歳頃には1~3万個しか残っていません。
そのため、赤ちゃんから生殖年齢になるまでの間に、170~180万個近い原始卵胞が既に消失している状態です。
以下に各年代別の原始卵胞の目安を記載します。
- ・出生時:200万個
- ・10代:20~30万個
- ・20代:約10万個
- ・30代:2~3万個
なお、上記は目安であり、個人差があります。正確に残りの原始卵胞数を把握できるものではありません。
1回の月経周期に約1,000個の原始卵胞が消滅する
以上のように、減少し続ける原始卵胞ですが、1回の月経周期(約1カ月)の間に、なんと1,000個近くを消失します。
単純に考えるなら、1日30~40個、1年で1万2千個が消失する計算です。
卵子はいつできる?
卵子の元となる原始卵胞は女性が生まれた時から体内にあります。では、精子と出会い受精が成立するための卵子自体はいつ・どのようにしてできるのか、具体的に解説します。
思春期に卵巣から女性ホルモンが分泌される
女性の体内には赤ちゃんのころから原始卵胞があるものの、一定の年齢に達するまでは受精できる卵子が生成されることはありません。
女性が成長し思春期になると卵巣から「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の2つの女性ホルモンが分泌されます。これらの女性ホルモンが脳の視床下部と下垂体に作用し、卵胞で卵子の生成を促します。
なお、卵巣とは原始卵胞を貯蔵し卵子に成熟させるための役割のある器官のことで、女性の体に左右1つずつあり、2~3cm代の球体です。
卵胞とは、卵子とその他の体細胞をまとめた器官のことです。
原始卵胞から卵子ができるまで
女性ホルモンの影響により、脳の視床下部と下垂体から命令を受けた卵胞では、卵子の発育が始まります。
原始卵胞の内の1つが、一次卵胞、二次卵胞と発育を続け、排卵前のグラーフ卵胞(成熟卵胞)に成長します。
その後、成熟卵胞の中の卵子は、卵巣の壁を破り排出され、卵管という子宮につながった管を通り、子宮内に移動します。これを排卵といいます。
なお、成長した卵子は質が高いから排卵される訳ではなく、あくまでも生理周期に適したときに成長していたから排卵されているだけです。
排卵後の卵胞の変化
排卵後に卵巣の中に残った卵胞は、“黄体”に変化し、エストロゲンとプロゲステロンを分泌します。ホルモンの分泌が終わった後は“白体”に変化し、老廃物として体内に吸収されます。
以上の現象が毎月1度繰り返されます。
不妊治療で卵子は減るの?
なお、不妊治療の薬や注射で卵子が減ることはありません。不妊治療とは、卵胞に働きかけ卵子の生成や排卵を促す方法です。
もともと、毎月1,000個近い原始卵胞が消費されており、不妊治療が原因で減る訳ではありません。
ピルを飲めば卵子は減らないの?
また、排卵を抑制することから、ピルを飲めば卵子の数が保てるかといえば、そうではありません。
原始卵胞は仮に排卵が起こらなくても自然に消滅するため、卵子の数を保てる訳ではありません。
卵子と精子の違い
妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い受精卵となった後、子宮内膜に着床しなくてはいけません。どちらも妊娠に必要な卵子と精子ですが、役割や寿命などには大きな違いがあります。あらためて、卵子と精子の違いを確認します。
生成場所
先述の通り、卵子は女性の卵巣内にある原始卵胞が成長し排卵されることで作られます。原始卵胞は生まれたときに200万個と、数に限りがあり、あたらに増やすことはできません。
精子は男性の精巣で作られます。精子の元になる精祖細胞の細胞分裂により作られます。平均生成日数は74日程度で、女性の卵子のように、生成上限はありません。
老化
原始卵胞は女性が生まれた段階で既に体内にあるため、女性と同じように年を重ねます。老化するといってもよいでしょう。
精子は細胞分裂により作られるため、男性の年齢にかかわらず、生涯生産されます。しかし、精子も全く老化しない訳ではなく、男性の加齢と共に、運動能力などは低下します。
数量
女性の原始卵胞は約200万個、1カ月に1回排卵し、生涯で排卵する数にも限りがあります。
しかし、精子の場合、1日で1億個以上が生産され、一度の射精で約3億の精子が排出されます。ただし、精子の生成数量に関しては個人差も大きく、生活習慣などが乱れていると数が少ないケースもあります。
形状
卵子は球体の構造で、周りを卵丘細胞層と透明帯が取り囲んでいます。これらの膜があるため、運動性の高い精子でないと、卵子にたどり着くことはできません。
精子は「頭部」と「尾部」の2つからなり、オタマジャクシのような形をしています。男性の遺伝情報は頭部に集約されています。
運動能力
球体の卵子には運動能力がありません。そのため、排卵時も卵管にある手のような形の卵管采(采部)が卵子をキャッチして子宮まで運んでいきます。
一方、精子には尾部があるため、運動能力があり、卵子の場所まで移動できます。移動後は頭部から卵子の殻を溶かす酵素“アクロソーム”を分泌し、中に入ります。
大きさ
卵子の直径は120~160μm程度で、人の髪の毛の直径と同程度です。
精子の全長は60μm程度と、卵子の2分の1程度です。
なお、1μmは0.001mmです。
寿命
卵子の寿命は排卵からわずか24時間程度です。
一方、精子の寿命は3~5日程度、なかにはそれよりも長く生きるケースもあります。
役割
卵子の役割は精子から届けられた遺伝子と卵子の遺伝子を組み合わせて、その後組み替えることで遺伝子の多様性を作ることです。この仕組みがあることで、子と親だけでなく、兄弟同士でも同一の遺伝子とはなりません。多様な遺伝子があることで、疫病などが流行った際も適用できる子を残し、生存確率を上げることが可能となります。
一方、精子の役割は男性側の遺伝情報を卵子に伝えることです。情報が伝わると受精卵としての活動が始まります。
卵子の成熟とは?
通常、自然に排卵された卵子は精子と受精できる状態が整っています。これが成熟卵です。しかし、不妊治療などで採卵した際は、受精の準備が整っていない卵子も含まれます。卵子の成熟の過程や中身の違いを解説します。
未熟卵と成熟卵
卵巣から採取した卵子には、以下の2つのタイプがあります。
未熟卵:受精の準備が整っていない卵子。46本の完成された染色体を持っている状態。GV期とMⅠ期が該当する。
成熟卵:受精の準備が整った卵子。23本の染色体のみ持っている。MⅡ期が該当する。
以上の2つが「正常卵」といい、細胞所の問題がなく受精が可能な卵子です。なお、細胞自体に問題があり、受精ができない卵子は「変性卵」といい区別されます。
一見すると、未熟卵の方が完成された染色体を持っているため問題がないように思われます。しかし、受精するためには母親由来と父親由来、双方の染色体を合わせて46本にする必要があるため、染色体が完全な状態(46本)では受精できません。
GV期・MⅠ期・MⅡ期の違い
卵子の成熟度はGV期からMⅠ期を経てMⅡ期になり完全な状態となります。それぞれ見た目にも違いがあり、MⅡ期の卵子が成熟した卵子です。
- ・GV期:卵子の中に核が1つ見える状態
- ・MⅠ期:卵子の中に核が消失し、何も見えない状態
- ・MⅡ期:不要な染色体の入った3つの極体が卵子の外に排出された状態
以上の成熟過程にはホルモンが作用しています。
不妊治療では未熟卵に薬で働きかけて成長を促し、成熟した卵子を採卵する流れになります。その後、培養液で培養します。
なお、採卵時には成熟の程度がわからないため、複数個採取し顕微鏡で成熟度の確認も行います。
【まとめ】女性の卵子の数は生まれたときから減り続ける!
女性は卵子の元となる原始卵胞を200万個ほど卵巣に抱えた状態で生まれます。その後、原始卵胞は減少を続け、妊娠適齢期の20代では既に10万個まで減少しています。なお、実際に卵子として排卵される数はさらにすくなく、女性の一生のうちで400~500個程度です。
不妊治療などで妊娠を希望する際は年代別の卵子の数も念頭に入れ、適切な方法を選択しましょう。