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化学流産とは、尿もしくは血液中にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が検出されたものの、超音波検査で胎嚢を確認できず妊娠が成立しなかった状態のことです。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とは、受精卵が着床すると分泌がはじまり、妊娠中にのみ分泌されるホルモンで、市販されている妊娠検査薬は尿の中に含まれるhCGが一定量を超えることで陽性となります。
近年の妊娠検査薬は感度が高く、微量のhCGにも反応して陽性反応が出るため、生理予定日をすぎていない早いタイミングで妊娠を知るケースが増加しています。
生理予定日前は本来妊娠していても妊娠検査薬を使用するには早い時期ですが、高齢出産や不妊治療を受けるカップルの増加により、妊娠検査薬を早めに使用する女性も増え、それが結果的に陽性反応が出たにもかかわらず病院では妊娠を確認できなかったという事態の増加につながっています。
病院の超音波検査で胎嚢を確認できず妊娠が成立していないということは、すでに受精卵が子宮内膜から離れてしまったことを示しています。
このような場合でも、妊娠検査薬は陽性反応が出るのでしょうか。
また、陽性が出るならいつまで陽性なのでしょうか。
この記事では、化学流産が起こったときの妊娠検査薬の反応と化学流産後の体の変化についてご紹介します。
化学流産が起こったときの妊娠検査薬の反応について
化学流産が起こったとき、妊娠検査薬の反応がいつまで陽性になるのかが気になる方も多く、インターネット上で質問できるYahoo!知恵袋などのサイトには、経験者の回答を求めてたくさんの質問が寄せられています。
ここでは、化学流産が起こったときの妊娠検査薬の反応についてご紹介します。
化学流産のとき妊娠検査薬で陽性が出るのはなぜ?
冒頭でもご紹介したように、妊娠検査薬は妊娠中にのみ分泌されるhCGの量を測定し、一定値を超えると陽性反応を示します。
そもそも化学流産とは、精子と卵子が出会い受精したものの、なんらかの理由で着床できなかった、または着床が継続しなかったために起こる状態です。
以下は、化学流産が起こるまでの過程です。
- 受精卵が分裂しながら5日間程度かけて卵管から子宮に向かって移動する
- 排卵から6日目頃、子宮に到着
- 排卵から1週間〜10日後、子宮内膜に根を張り着床がはじまる
- 受精卵が着床をはじめたときから着床が終了する2日間〜3日間の間に子宮内膜から胎盤が剥がれる
- 剥がれた子宮内膜とともに出血し、受精卵も体外に排出される
hCGは、受精卵が子宮内膜に触れた瞬間から胎盤が完成するまでの間分泌され続けます。そのため、化学流産が起こった場合でも妊娠検査薬は陽性反応を示すのです。
いつまで陽性反応が出るの?
化学流産が起こると即座にhCGが分泌されなくなるわけではなく、通常は出血が止まって1週間程度は陽性反応が出るようです。
人によっては、化学流産後が起こってもしばらくの間妊娠検査薬で陽性反応が出るケースもあります。
いつまで陽性反応が出るかについては個人差が大きく、化学流産後の出血が止まってすぐに陰性を示すケースや、しばらくの間陽性が続くケースなどさまざまです。
化学流産は長年にわたり頻繁にみられる病態ですが、妊娠検査薬がなかった時代や妊娠検査薬の感度が低かった時代では、少し遅れてきた生理と思われていました。
現在でも化学流産は一般的な流産に含まれていませんし、健康で年齢が若いカップルでも30〜40%の確率で起こっていることがわかっています。
化学流産が起こったとはいえ、受精卵が着床したことは事実です。
妊娠を望んでいる女性にとっては非常に辛い体験になってしまいますが、妊娠できるという証拠でもあるので、がっかりしすぎないようにしましょう。
陽性反応が出続ける場合どんな疾患の心配があるの?
通常、妊娠検査薬で陽性反応が出たあとに、病院での超音波検査にて胎嚢が確認できない場合、多くは化学流産と診断されます。
ただ、このときも妊娠検査薬で陽性が出続けている、もしくは病院の尿や血液検査で妊娠しているという結果になった場合、子宮外妊娠の可能性が考えられます。
子宮外妊娠は、受精卵が卵管などに着床し、妊娠が成立してしまった状態のことで、全妊娠の1〜2%の確率で起こるといわれています。
妊娠検査薬や婦人科での検査では、妊娠しているかどうかまではわかりますが、受精卵が子宮内に問題なく着床したかどうかまでは判断できません。
また、子宮外妊娠については経験が豊富な産婦人科医でも判断が難しいとされています。
子宮外妊娠の初期段階は無症状であることも多く、突然症状が悪化するケースが非常に多いため、病院で化学流産と診断されたあとも妊娠検査薬で陽性反応が長い期間出続ける場合は、再度病院を受診して医師に相談してみましょう。
化学流産後の体の変化
化学流産の主な原因は、受精卵の染色体異常によるものであるため、残念ながら予防できるものではありません。
一般的な流産では、流産した際にお腹に残存物があればそれらを取り除く手術を行うケースもありますが、化学流産ではとくに異常がみつからなければ手術や治療の必要はありません。
では、化学流産したあとの女性の体はどのように変化していくのでしょうか。
ここでは、化学流産後の体の変化についてご紹介します。
基礎体温
女性の基礎体温は黄体ホルモンという女性ホルモンの分泌量によって変化していくため、分泌量の多い生理前が高温期となり、分泌量が徐々に少なくなる生理予定日付近に下がります。
妊娠すると黄体ホルモンの分泌が多い状態を継続するため、生理予定日付近になっても基礎体温は下がっていきません。
しかし、化学流産が起きるとその時点で黄体ホルモンの分泌量も減少しはじめ、着床していた分だけ遅れて基礎体温が下がりはじめます。
一般的には、化学流産が起こると生理予定日から生理予定日の1週間後くらいで下がりはじめる方が多いようです。
基礎体温は個人差が大きく計測ミスも多いため、わかりにくい方もいますが、基礎体温表のグラフがガタガタになっている場合でも、全体的にみて基礎体温が徐々に下がっていくようであれば問題ないでしょう。
ただ、高温期がずっと続くような場合は、子宮外妊娠の可能性も考えられるため、病院を受診して検査を受けた方がよいでしょう。
基礎体温の測定は、自分の体調や排卵の有無などを知るためにも大切なことです。
インターネット上には無料でダウンロードができる基礎体温表がありますし、病院で配布しているものでも構いません。習慣的に基礎体温を記録しておくことをおすすめします。
出血
化学流産は、受精卵が着床を継続できず子宮内膜と一緒に体外に排出されます。
出血量は、通常の生理とさほど変わりないか少し多い程度になるケースが多くみられます。
中には血の塊や白い塊が一緒に出てきたというケースもあり、赤ちゃんと勘違いしてしまう方もいますが、これは赤ちゃんではなく妊娠の成分(子宮内膜など)であるため心配する必要はありません。
化学流産後の生理は、1度受精卵が着床しているためホルモンバランスの乱れが起こっていることも多く、周期がいつもと違う場合もあります。
大幅に遅れたり、化学流産後2ヶ月を経過しても次の生理が来なかったりする場合は、病院を受診した方がよいでしょう。
化学流産後の妊娠の可能性は?
化学流産を体験すると、これから自分は普通に妊娠できるだろうかと不安になってしまいます。
しかし化学流産は妊娠率に影響しません。むしろ受精や着床ができたことを知らせてくれたものでもあるため、次の妊娠に希望をもって妊活をしてみるとよいでしょう。
化学流産はほとんどの場合、体への影響がありません。化学流産による出血が終わり、次の排卵がしっかりと起こればいつ妊活を再開しても構いません。
排卵が起きたかを判断するためにも、日頃から基礎体温を測っておくことは重要であるといえます。
化学流産後は基礎体温表のグラフがガタガタになりやすいので、自分で排卵日を予測しにくい方は、病院で医師に相談してみましょう。
まとめ
化学流産が起こったときの妊娠検査薬の反応と化学流産後の体の変化についてご紹介しました。
化学流産は、妊娠検査薬で陽性反応が出たにもかかわらず妊娠を確認できないため、赤ちゃんを授かりたい女性にとってはショックが大きい出来事です。
とくに年齢が35歳をすぎている方や不妊治療を受けている方は、深い悲しみに襲われてしまうことも。
しかし、あまりに落ち込んでしまうとそれがストレスとなり、次の妊娠がしにくい状況を作り出してしまう可能性もあるので、気持ちを切り替えて気にせず過ごすことをおすすめします。
ママがリラックスして楽しく過ごしていれば、妊活もきっとよい方向にいくと考え、パートナーと趣味の時間を持ったり、友達と気晴らしにおしゃべりしたりして過ごすとよいでしょう。
妊娠検査薬については、フライング検査をせずに正しい時期に使用することで化学流産が起こったかを知らずに済みます。
化学流産を繰り返した場合でも妊娠出産をした方は多くいます。妊娠検査薬の使用は必要最低限の回数におさえ、楽しく過ごすことを心がけましょう。
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