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人工授精とは、排卵の日を確実に予測したうえで、男性の精子を洗浄、濃縮して人工的に子宮内に注入する治療方法です。人工授精自体は難しい処置ではなく、5~10分程度で終わる簡単なものですが、事前の検査の数が多く、検査によって不妊の原因を調べて適応を確認します。
検査は自費で行われるものもあるので、検査を受けるかどうかは本人次第となりますが、いくつかの検査を受けることで、不妊の原因を特定することができる可能性が高くなります。
この記事では、人工授精はどのようにすすめられていくのかと気になっている方に向けて、人工授精の流れと、人工授精前に行う検査をご紹介します。
人工授精について理解を深めたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
人工授精の流れ
人工授精では、排卵の日をより正確に判断するために基礎体温を測るだけではなく、超音波検査などを行います。
まずは、人工授精の流れについてご紹介します。
排卵誘発剤の使用
排卵誘発剤は、卵巣を刺激し卵胞を発育させる、ゴナドトロピンと呼ばれるホルモンの分泌を促進したり、ゴナドトロピンと同じ働きをしたりする薬剤の総称です。
排卵誘発剤を使用する方は、以下のような方です。
- 月経不順
- 排卵障害
- 黄体機能不全症
- 原因不明不妊
このような方の場合は排卵誘発剤を使用して、排卵誘発を行います。
排卵誘発剤には飲み薬と注射薬があり、一般的には内服薬からはじめ、排卵が起こらない場合は効果の高い注射薬に切り替えることになります。
排卵誘発で使われる薬剤は以下のようなものです。
- 抗エストロゲン剤(飲み薬)…クロミッド、セロフェン、セキソビットなど
- FSH、hMG製剤(注射薬)…ゴナピュール、ゴナールエフ、フェリルモン、HMGフェリングなど
- LH製剤(注射薬)…オビドレル、HCG「F」など
排卵誘発剤を使うことにより、人によっては吐き気や嘔吐、下痢などの副作用が起こることもあるので、副作用がひどい場合は医師に相談し薬剤を変えたり、排卵誘発剤の使用をやめたりする必要があります。
排卵日の予測
これまでの月経周期や基礎体温によって大体の排卵日を想定し、その日が近づいたら病院で超音波検査をし、卵胞の大きさをチェックして排卵日を予測します。
卵胞は12mm程度になってからは、1日約2mmのペースで成長して、最終的に18~22mm程度になると排卵されるため、あと何日程度で排卵するかを超音波検査で確認します。
さらに、以下の検査で排卵日を総合的に判断します。
- 頸管粘液検査
- 尿中LHの測定
- 採血
排卵日間近になると、子宮頚管は粘液で満たされるため、頸管粘液の量や粘度を調べます。
また、尿中LH検査や採血によってさまざまな数値を確認し、それらの検査を総合して排卵日を判断します。
精液の採取、調整
人工授精当日の朝、男性の精子を採取して濃縮し、運動良好な精子を洗浄、回収します。
運動良好な精子は受精能力が高いと考えられているため、できるだけ多くの運動良好な精子を回収することが重要です。
精子の調整方法は、密度勾配遠心法とスイムアップ法があり、医療機関によって処理方法は異なります。
このように精子が調整され、朝一で持ち込まれた精子の調整が終わったら人工授精を開始します。
人工授精
人工授精は選別した精子をチューブで子宮内に注入します。時間は5~10分程度で、注入後は5分ほど安静にしてから帰宅となります。
稀に以下のような症状が出るケースもあります。
- 高熱
- 下腹部痛
- 腹膜炎など
このような症状が出た場合は、すぐに病院へ連絡をし、医師の指示を仰ぐようにしましょう。
当日は飲酒や入浴、性行為、激しい運動は避けて過ごします。
排卵後のチェック、黄体ホルモン補充
排卵日から約1週間後に、子宮内と卵巣状態のチェックを行います。
受精していればちょうど着床の時期なので、超音波によって排卵後の卵巣の状態などを確認します。
さらに、黄体ホルモン値を測定し、着床を助けるために黄体ホルモン補充を行うこともあります。
黄体ホルモン剤には以下のような種類があります。
- プロベラ、ルトラール、デュファストン(飲み薬)
- プロゲホルモン、プロゲステンデポーS、ルテスデポー(注射薬)
- ルティナス、ウトロゲスタン、ワンクリノン、ルテウム(腟座薬)
薬によって作用の持続時間などが違うので、状態によって使い分けることになります。
人工授精前に行う検査について
人工授精を実際に行う前に、人工授精に適応しているかを調べるためにさまざまな検査が行われます。
まずは基礎体温を確認し、排卵が正常に行われているかの判断がされるので、受診前から基礎体温をつけておくとスムーズです。
ここからは、人工授精前に行う検査についてご紹介します。
月経時に行う検査
月経中には以下の検査が行われます。
ホルモンの測定(保険適用)
脳下垂体から分泌される以下のホルモンを測定します。
- 卵胞刺激ホルモン(FSH)
- 黄体化ホルモン(LH)
- プロラクチン(PRL)
- エストロゲン(E2)
卵巣の機能と、甲状腺ホルモンなどの不妊に関する異常を調べるためにこれらを血液検査で測定します。
月経不順の検査(保険適用)
月経不順の方は、その原因を明らかにするための検査を行います。いくつかの注射を行い、注射の前と後に採血をし、それぞれのホルモンを測定します。
この検査によって、月経異常がどの部分の異常によって生じているのかが明らかになります。
月経から排卵日までの検査
月経終了から排卵日までの間に、子宮卵管造影検査(保険適用)を行います。卵管が詰まっていないか、子宮に異常がないかを調べる検査です。
子宮内のカテーテルによって造影剤を注入し、超音波によって確認します。
卵管が詰まっていると精子が卵巣内に入ることができず、人工授精の適応にはならないため、この検査が重要となります。
この検査は痛いという話を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、痛みの少ない方法で実施することも可能になってきているので、安心して検査を受けましょう。
もし痛みに不安がある方は、事前に痛みに弱いということを医師に相談することをおすすめします。
排卵時に行う検査
排卵時には以下の検査を実施します。
頸管粘液検査(保険適応外)
排卵の時期には子宮から頸管粘液が分泌されます。この頸管粘液は、精子が子宮内に入りやすい環境を作るため、頸管粘液が少ないと精子が子宮内に到達できないということになります。
フーナーテスト(保険適応)
フーナーテストは、頸管粘液が分泌されている時期に性行為を行い、頸管粘液の中の精子の状態を調べる検査です。
黄体期中期に行う検査
黄体期中期には、黄体ホルモン検査(一部保険適応)と超音波検査を行います。黄体ホルモンを測定し、子宮内膜が厚くなっているかを調べます。
この時期に行う超音波検査で、卵子が卵巣内にとどまって外に飛び出すことができない、黄体化未破裂卵胞症候群という異常を見つけることもできます。
時期にかかわらず行う検査
生理の時期にかかわらず、以下のような検査を人工授精前に行います。
- 精液検査(保険適応外)
- 抗精子抗体検査(保険適応外)
- 子宮内膜症の検査(ソノヒステログラフィー)(保険適応外)
- 習慣性流産検査(保険適応外)
- AMH(保険適応外)など
不妊の原因は男女ともにあるといわれているので、検査は女性だけではなく男性も行う必要があります。
精液の異常には、無精子症や精子無力症、乏精子症などがあり、男性の精子の状態がどのようになっているかを確認します。
また、精子が女性の体内に入ることで、精子に対する抗体を作ってしまうことがあり、この場合精子が体内に入った瞬間に動かなくなってしまうため妊娠が難しくなります。
抗精子抗体検査では、そのような抗体があるかないかを調べます。
さらに、子宮内膜症、習慣性流産などの検査を行うと同時に、AMH(Anti-mullerian Hormone)の検査を行います。
AMHとは、抗ミュラー管ホルモンと呼ばれる卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣予備能を知るための指標になります。
自費での検査となりますが、残存する卵胞の数を測定できる検査です。
他にも、HIVや梅毒といった性感染症のスクリーニング検査を行うこともできます。
まとめ
人工授精の流れと、人工授精前に行う検査をご紹介しましたが、参考になりましたか?
人工授精を行う前に、さまざまな検査があり、中には痛みを伴うとされる検査もあるため、治療前に疲れてしまうと考える方も多いのですが、それらは妊娠に向けた大事な検査となります。
不妊の原因を明らかにすることで、今後の治療の方針も無駄なく決定できるので、検査を受けて不妊の原因を特定しましょう。
人工授精では、5~10%の方が妊娠するといわれています。
さらに、年齢が上がると妊娠率は下がるとされているので、女性の年齢が高いケースでは早めに治療をすすめ、妊娠に至らない場合は次のステップにすすむ必要があります。
夫婦で力を合わせ、不妊治療を乗り切るためにも、人工授精の治療の流れを理解し、必要な検査などをしっかり受けて不妊治療を行いましょう。
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