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近年、不妊症に悩むカップルが増加傾向にありますが、タイミング法や人工授精、体外受精など、妊娠の機会を得るための医療体制も確立しつつあります。
しかしながら、妊娠を望んでいる場合であってもこれらの医療サポートが十分に効果を持たなくなってしまうというケースもあります。それが、「早発閉経」を発症してしまった場合です。
この記事では、「早発閉経」がどのような症状であるのか、早発閉経が生じる原因、発症時に見られる併発症状、発症しやすい体質、早発閉経に対する治療方法、早発閉経の予防方法に関してご説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。
早発閉経とは
40歳未満で閉経することを、「早発閉経(そうはつへいけい)」、「早期閉経(そうきへいけい)」と呼びます。
閉経は、医学的な定義に基づくと「12ヶ月以上に亘って月経が訪れないこと」を現しています。閉経を迎える年齢には個人差もありますが、一般的には50歳前後で生じるもので、日本人の平均閉経年齢は52.1歳とされています。
早発閉経が起こる確率は、30歳未満の方ですと1000人に1人、30~40歳未満の方ですと100人に1人ほどの割合となっており、誰しもが発症する恐れのある病気であることが分かります。
女性の正常な排卵・月経のサイクルは、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンによって支えられています。
1周のサイクルにおける前半の期間は「卵胞期(らんほうき)」と呼ばれており、エストロゲンの分泌量が多くなります。このエストロゲンの分泌増加を合図にして、卵巣内にある卵胞(卵子を作り出すもととなる細胞で、卵胞の中に卵子が存在している)が成熟を開始していきます。
成熟に伴って卵胞・卵子ともに大きくなっていき、十分に成熟した卵胞1つのみが中にある卵子を排出します。これが「排卵」と呼ばれるもので、排卵・月経のサイクルでは14日頃(月経が開始した日を1日目として)に排卵が行われます。
排卵が行われてから次の月経が訪れるまでの期間は「黄体期(おうたいき)」と呼ばれ、プロゲステロンの分泌量が優位になります。エストロゲンは卵胞の成熟に大きく関係していましたが、プロゲステロンは妊娠に向けて女性の身体に変化を及ぼす作用を持っています。具体的には体温を高く保つ効果や、子宮内膜を厚くふかふかな状態へと変化していくことが挙げられます。これらの作用が生じることによって、卵子が受精卵となった後に、より着床しやすくなります。
仮に、受精、着床が行われなかった場合にはプロゲステロンの分泌量が少しずつ減少していき、厚くなっていた子宮内膜の一部が剥がれ落ちます。剥がれ落ちた子宮内膜と、体内の血液が混じり合って体外へと排出される体内作用が「月経」と呼ばれます。
上記にて説明したように排卵・月経は卵巣から分泌されるホルモンによってコントロールされているため、早発閉経を「早発卵巣不全(そうはつらんそうふぜん)」と呼ぶこともあります。
早発閉経と無月経の違い
「月経がこない」という観点に着目すると、早発閉経と無月経(むげっけい)は同じ症状であるように感じる方もいるのではないでしょうか?
早発閉経とは、卵子の生成や排卵・月経などを担っている生殖器官の機能低下を理由として、40歳未満のうちに月経がこなくなる症状であり、自然な回復を期待することが難しい病気です。
一方の無月経とは、生殖器官の機能低下が起きているわけではなく、生殖器官の機能が休止している状態にあり、機能休止によって月経がこなくなっている症状を表しています。そのため、これから回復することが期待でき、月経がこなくなっている原因を取り除くことによって再び月経がくるようになります。
症状の回復のために医療的サポートを利用することがあるかと思いますが、その重要性は早発閉経の方がより高いものであるといえます。
早発閉経が生じる原因
早発閉経が生じる原因には生殖器官の機能低下によるエストロゲンの分泌量が早期に低下すること挙げられます。閉経は誰にでもおとずれるものであり、一般的な閉経のメカニズムには加齢・老化に伴った生殖器官全体の衰えであると考えられています。
早発閉経が生じる原因にはさまざまなものがあり、原因を特定できないということもあります。主な原因としては以下のものが考えられます。
- ・自己抗体(自己免疫性疾患)
- ・染色体異常
- ・医原性
- ・その他
それぞれに関して詳しく見ていきましょう。
自己抗体(自己免疫性疾患)
自己抗体とは、身体の免疫系が自身の組織を敵であると認識して攻撃してしまう病気です。自己免疫疾患が原因であると考えられる割合は、早発閉経を患っている女性のうちの約5%であるとされています。特に、30歳以下で早発閉経を発症している場合には、何かしらの自己抗体を持つというデータも示されています。
染色体異常
女性の性染色体の異常や、性ホルモンの機能に影響を及ぼしている他の遺伝子の異常が早発閉経の原因となることがあります。染色体異常に該当する遺伝子欠陥はさまざまなものが確認されており、最も多いのはターナー症候群です。これは性染色体(X染色体)に欠損が見られる症状を刺します。
遺伝的な側面が強い原因でもあるため、ご家族(お母さま・おばあさま)の中に生理不順を経験したことのある方がいる女性や、非常に若い時期(10代や20代)に生理不順と診断された女性、生理が始まらないという女性に多く見られます。
医原性
放射線治療や抗がん剤治療などを行うことで卵巣にダメージが加わり、機能の著しい低下を招くことがあります。また、卵巣嚢腫などの手術によって卵巣を摘出した場合にも機能低下が生じ、早発閉経の原因となることがあります。
その他
上記に挙げた原因の他にも、糖尿病などの代謝疾患、タバコ・薬物の乱用、おたふくかぜの合併症である卵巣炎の発症などが原因となって早発閉経が生じることがあります。
早発閉経時に見られる症状
早発閉経になると卵巣が担っていた女性ホルモンの分泌がなくなるため、更年期障害とも似たような症状が見られることがあります。下記のような症状が若いうちに見られる場合には、医療機関への相談を検討なさってください。
精神的な症状
- ・気分の浮き沈みが激しくなる
- ・うつっぽくなる
- ・集中が続かなくなる
- ・急に不安な気持ちに襲われる
身体的な症状
- ・ほてったり、のぼせたりする
- ・疲れやすくなる
- ・動悸がくる
- ・耳鳴りがする
- ・頭痛やめまいに襲われる
- ・寝つきが悪くなる
- ・骨がもろくなる(骨粗しょう症)
早発閉経を発症しやすい身体的な特徴
上記にて早発閉経を発症した後の症状に関してご説明しましたが、早発閉経は早期の治療が望まれる病気です。早発閉経を発症しやすい(早期閉経につながりやすい)、以下の身体的な特徴がある方は、発症時の症状が現れる前から医療機関へご相談に行かれてみてください。
- ・日常的に生理不順がある
- ・喫煙や過度なダイエットをしている
- ・過度なストレス環境下にいる
それぞれに関して見ていきましょう。
日常的に生理不順がある
生理が始まった当初から、月経周期が安定せずに、日常的な生理不順が当たり前となっている人は注意が必要です。このような方は卵巣機能にもともと何らかの異常がある可能性があり、早発閉経を引き起こす危険性があります。
加えて、(特に、50歳前後でもないのに)生理不順が続いており、これを放置することで知らぬ間に早発閉経を迎えてしまうこともあります。
喫煙や過度なダイエットをしている
正常な排卵・月経にはホルモンが非常に重要なのですが、喫煙の習慣がある、過度なダイエットをされているという方は、ホルモンバランスが乱れやすい状態にあります。
過度なストレス環境下にいる
ホルモンバランスが乱れる原因には過度なストレスも挙げられます。適度なストレスが健康維持に寄与するというデータも得られていますが、ストレスのため過ぎは身体機能の低下をもたらします。
早発閉経に対する治療方法
次に、早発閉経に対する治療方法に関して、どのような検査・診断を行い、妊娠の希望に応じてどのような治療が行われるのかを見ていきましょう。
検査・診断
上記にて示した、更年期障害に類似する症状、早発閉経につながりやすい体質である場合、病院を受診することで、始めに基礎体温の測定指導が行われます。これに加えて、血液検査によるエストロゲンや性腺刺激ホルモンなどのホルモン値の確認や、超音波検査による卵巣と子宮内の環境を確認することもあります。
更に、30歳未満での閉経であり、その他の身体的な特徴から染色体・遺伝子異常が疑われる場合には、染色体検査や遺伝子検査が行われる場合もあります。
治療
早期閉経に対する治療方法は妊娠を希望するか否かによって方法が変化します。それぞれに関して見ていきましょう。
妊娠を希望する場合
早発閉経が発症し、妊娠を希望するという方には、つらい事実をお伝えすることとなるのですが、早発閉経を発症し排卵そのものが行われなくなっている場合には、自然な妊娠は期待できなくなります。重度な早発閉経である場合には体外受精等で行われる排卵誘発の治療を行ったとしても採卵が期待できないともいわれています。
症状が軽度である場合には、ホルモン補充療法などを行い、卵胞の発育を刺激するといった治療が一般的に行われています。
妊娠を希望しない場合
女性ホルモンの分泌が極端に減少することとなるため、将来的に骨粗しょう症や動脈硬化症を発症する可能性があります。妊娠を希望しない場合であっても、そのようなリスクに備えて、ホルモン補充療法が行われます。
人工合成のエストロゲンやプロゲステロンなどの製剤の服用などが一般的ですが、子宮を摘出されている方ですとエストロゲンのみでの治療が行われます。
また、染色体異常によって男性型であるY染色体を持っていることが分かった場合には、卵巣がんの発症率が高くなるため、卵巣の摘出手術が行われます。
早発閉経を防止するために
最後に、早発閉経を防止するための取り組みに関してご説明していきます。
早発閉経の原因には生殖器官の機能低下やホルモンバランスの乱れが挙げられるため、これらのリスクを軽減するための①生活習慣の見直しや、発症の前触れが現れた際にきちんと確認できるよう②自らの生理周期を把握する、といった行動が予防策となります。
それぞれに関して見ていきましょう。
生活習慣の見直し
生殖器官の機能の向上・維持やホルモンバランスの改善には、規則正しい生活を送ることが大切となります。
健康的な身体づくりの基本ともいえることですが、「バランスのとれた食事」「適度な運動」「十分な睡眠」がポイントとなります。
加えて、ストレスも大敵となりますので、ご自身がどのような場合にストレスを感じるのか、どのようなストレス解消法がマッチするのかを考えて、ストレスをため込まないようになさってください。
生理周期の把握
早発閉経の発見が早期、症状が軽度であった場合には機能の回復という期待も持てるようになります。早期発見のためには日頃からご自身の生理周期を把握しておくことが大切となります。
生理がきているかどうか、前回の生理開始日から何日の間があったかなど把握しておくとともに、日頃から基礎体温を計っておくことも、早期発見には非常に有効です。
まとめ
ここまで、「早発閉経」がどのような症状であるのか、早発閉経が生じる原因、発症時に見られる併発症状、発症しやすい体質、早発閉経に対する治療方法、早発閉経の予防方法に関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
早発閉経は、特に、妊娠を希望している方にとっては早急に改善をすべき問題となります。発症してしまってからでは改善が困難になる可能性が大きく上がってしまうため、早期の発見を行えるように日常的なお体のチェックが大切となります。加えて、規則正しい生活を送ることも非常に効果的です。
この記事が読者様にとって、妊娠のためにはどのような取り組みが大切であるのかを理解するきっかけとなれば幸いです。
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