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男性不妊の特徴|精液の見た目や陰嚢の形状で分かること

男性不妊は精液や陰嚢の異常をともなっていることがあり、その主要な原因として「精索静脈瘤」という疾患が挙げられます。本記事では、精液の見た目や陰嚢の形状からどのようなことが分かるのか、精索静脈瘤の特徴や治療方法などについて記載していますので、男性不妊を疑われている場合や、精索静脈瘤を疑う徴候がある場合などで精液や陰嚢の状態が気になる方は参考にしてください。

男性不妊は見た目や形状で分かる?

男性不妊の判断材料として、以下の2点が用いられることがあります。

  • 精液の見た目
  • 陰嚢の形状

精液の特徴として「精液に血液が混ざっている(ピンク色をしている)」、「精液の量が非常に少ない」などの場合、男性不妊につながる可能性があります。ただし、これらの症状に当てはまるからといって、必ずしも男性不妊ではありません。他の泌尿器疾患や臓器疾患の可能性も否定できませんので、異常な状態が継続する場合は医療機関を受診することが大切です。

また、ご自身の陰嚢の形状を把握することも重要です。大きさや、位置関係に左右差が見られる場合などは、男性不妊の原因疾患が隠れている可能性があります。精液の状態や陰嚢の形状以外にも、生活習慣や過去の病歴など男性不妊の原因は様々であり、正確な原因を突き止めることは難しいのが現状です。

精液の見た目から分かること

通常、精液はある程度の量と粘度があり白く濁っていますが、以下のような状態を呈する場合もあります。

  • 精液量が少ない
  • 血液が混ざる
  • 透明な精液(白く濁っていない)

通常と比較して精液の量が著しく少ない場合、子宮内で正常な受精が行われない可能性があります。ただし、精液量が少なくても、精子の数(濃度)は十分である場合もあるため、必ずしも不妊につながるとはいえません。

また、精液に血液が混ざっている場合は「血精液症」の可能性があります。精嚢や前立腺に出血がある場合に見られ、検査を行っても多くの場合原因不明です。性交渉においてパートナーに悪影響はなく、大抵は1〜2か月程度で消失します。もし、長期間にわたる場合は医療機関を受診しましょう。

1日に何度も射精をしたわけでもないのに精液の色が薄い、または透明である場合は含まれている精子の数が少ない可能性があります。不安な場合は医療機関で検査を行うと良いでしょう。

陰嚢の形状から分かること

男性不妊の原因の多数を占めるのが、精子を作る過程においての障害です。その場合、陰嚢に以下のような症状が見られることがあります。

  • 陰嚢のサイズが左右で異なる
  • 陰嚢が腫れている
  • 陰嚢の表面が凸凹している
  • 陰嚢にミミズ腫れのようなものがある

これらの症状に当てはまる場合は精索静脈瘤の可能性があります。精索静脈瘤は血液の循環障害により、陰嚢に瘤(こぶ)ができてしまう疾患です。精索静脈瘤は男性不妊における主要な原因の一つとして知られ、陰嚢に痛みがある場合や精液所見に異常が見られる場合の多くは手術適応となります。精索静脈瘤は自然に治癒しませんので、症状に当てはまる場合は一度医療機関を受診することをおすすめします。

男性不妊の主な原因

男性不妊の原因となるもの

男性不妊の主な原因は上記に表示されている通りです。

精巣の病気として考えられるのは造精機能障害です。睾丸の機能異常により精子がつくり出せない症状で男性不妊の約80%を占めています。精子がいない・数が少ない状態や、運動性の悪い精子、奇形の精子が多く見られるのが特徴です。

次に精子の通り道に異常があるのは精路通過障害です。精子がつくられているにも関わらず、射精までの経路に何らかの異常があるせいで精子が出ない状態です。精液は前立腺液や精嚢液などが混ざったものなので、精路通過障害でも射精はできます。そのため精液検査をするまでは自覚症状がありません。

また、大人になってからおたふく風邪にかかり、精巣炎で睾丸が腫れた人も男性不妊になる可能性があります。

精索静脈瘤とは?

精索静脈瘤

精巣静脈における血液の逆流、またはうっ滞(血液の停滞)による循環障害のため、静脈瘤という「こぶ」ができてしまう疾患が精索静脈瘤です。精巣には大きな静脈が存在し、左側は腎静脈、右側は下大静脈につながります。通常、左の腎静脈は右の下大静脈に比較して長さがあり、腎静脈付近に存在する別の血管に挟まれることで血管が圧迫され、血液の流れが阻害されたり、逆流したりするようになります。このような精巣静脈の解剖学的な理由から、精索静脈瘤は左の精巣に生じることが多いとされています。

精索静脈瘤の重症度(グレード)

精索静脈瘤の診断・分類には以下のグレードが用いられます。

グレードⅠ:立位腹圧負荷(立ち上がってお腹に力を入れた状態)で触診すると確認できる

グレードⅡ:立っている状態で触診すると確認できる

グレードⅢ:見た目で明らかである

グレードが上がるほど重症度が高いと判断され、グレードⅡ以上は手術の適応とみなされています。グレードⅠでは精液検査を行い異常が認められても、原因が精索静脈瘤以外にある可能性を捨てきれません。そのため、医師とよく相談し治療方法を選択することが重要です。精索静脈瘤は自身で確認できる場合もあるため、セルフチェックにも医療機関を受診する目安の一つとしてグレードを用いると良いでしょう。

精索静脈瘤と不妊の関係性

通常、陰嚢の温度は体温より2〜3℃ほど低い状態に保たれており、約32~34℃です。しかし、精索静脈瘤を発症している場合、血液の循環障害や逆流が起こることで体温より低い温度を保つことができません。精子は熱に弱いため、精巣の温度が上昇すると精子の産生力が低下し、正常な機能を持つ精子を作ることができなくなります。陰嚢の温度が高い状態が長期間続いた場合、精子の数が少ない「乏精子症」や、精子の運動性が弱い「精子(運動)無力症」につながることも知られており、注意が必要です。

精索静脈瘤の手術費用

精索静脈瘤の手術として「顕微鏡下精索静脈瘤高位結紮術」や「顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術」などが行われています。顕微鏡下精索静脈瘤高位結紮術を3泊4日程度の入院にて行う場合は、手術費用が40〜60万円程度、保険適用による自己負担額は14〜17万円程度です。顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術は局所麻酔による日帰り手術が可能ですが、自費診療となるため22万円程度となります。手術費用の他、手術前の検査や術後のアフターケア、通院などの費用が必要になる場合もあります。費用については実際の手術方法や医療機関の治療方針によっても異なりますので、あくまで目安として考えると良いでしょう。

男性不妊を調べるための検査方法

まずは精液検査を行ないます。精路通過障害の場合、射精できているのに精液も出ていると思われがちです。しかし、先述したように前立腺液や精嚢液などが混ざっっている液体が出ているので精子が出てしまい妊娠が成立しなかったというケースもよくあります。

そのため男性の精子量、精子の数、運動率などを確認することは、不妊治療を進めていく上で重要です。

費用は2022年4月から不妊治療が保険適用になったため、以前よりも負担が軽くなっており1回あたりの相場は1,000円〜5,000円と言われています。

男性不妊の原因となるNG行為

精巣は温めると機能が低下します。体温より2~3℃引くい状態にしておくのが望ましいです。

そのため以下の行為に気をつけてください。

  • ・喫煙
  • ・長風呂
  • ・サウナ
  • ・ピッタリしたパンツ・下着

また、ストレスや体調不良、肥満なども、精液所見を悪化させます。他に注意してほしいことは育毛剤の使用です。育毛剤に含まれるプロペシアは精液所見を悪化させますので妊活中に使うのは避けてください。

男性不妊を防ぐための生活習慣

規則正しい生活と、栄養バランスの整った食事を心がけてください。健康的な体にしておくのは不妊症を改善するのにとても重要です。

また、ストレス解消も改善するのに欠かせません。適度な運動と十分な睡眠を取るようにしましょう。ただし、健康的な生活を送るだけでは治療にはなりません。医療機関に相談をして根本的な解決を目指しましょう。

まとめ

男性不妊を相談する男性と医師

パートナーとの間になかなか子どもを授かることができない場合、男性不妊を疑うきっかけになるかもしれません。通常とは異なる精液や陰嚢の見た目に気がつくと不安になることもあるでしょう。

詳細な診断や検査は専門の医師に委ねられますが、医療機関受診の目安・判断材料の一つとして、予備知識を持っておくことは大切です。不妊原因が男性側にあることも珍しくありませんし、生殖器の異常は不妊に関連しない別の疾患が隠れている可能性もあります。気になる点がある場合は医療機関を受診しましょう。

また、年齢が上がると精子のなかの異常な遺伝子の数が増えるのですが、パパの年齢上昇と関係のあるお子さんの疾患リスク(積算リスク1/600とダウン症候群とより若干多くなります)をNIPTで検査することが可能です。ご興味のあるかたは以下の関連記事をご覧ください。

ミネルバクリニックでご提供している不妊症遺伝子検査では、不妊症や性染色体異常に関連する遺伝子変異を特定することで正確な予後判定を行い、患者さんに最も適した治療法を特定することができるため、子供を持ちたいと願うすべてのカップルや個人に対して、最適な治療計画を導くことができます。是非ご検討ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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