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高齢出産と聞くともしかしたら初産の女性だけではリスクを持っていると思うかもしれません。しかし、出産経験のある経産婦でも二人目・三人目を妊娠出産するときに問題を抱えています。
厚生労働省の「平成29年(2017年)人口動態統計月報年計(概数)」によると、日本の女性が第一子を産む出産平均年齢は約31歳となり、第二子を妊娠するのがアラフォーといわれる36歳から44歳の間になるのは当たり前になっています。2人目、3人目の出産は初産よりもリスクは低いと思われがちですが、実は問題が全くないわけではありません。この記事では35歳以上の妊娠・出産のリスクや、初産婦と経産婦との違いについて紹介をしていきます。
高齢出産とは何歳から?35歳以上なら第二子・第三子でもリスクは変わらない
高齢出産とは一般的にも35歳以上の初産のことをいいます。日本では経産婦の年齢の定義はされていませんが、世界産科婦人科連合(FIGO)では40歳以上の経産婦の出産のことも高齢出産と定義付けています。このページで紹介している高齢出産とは初産、経産に関わらず35歳以上の出産だと捉えて下さい。
1991年まで高齢出産の定義は30歳以上でした。しかし、男女雇用機会均等法によって女性の社会進出が進み、2000年には初産の女性の1割が30歳以上と晩産化が進んだことから高齢出産の年齢を35歳に引き上げたのです。
高齢出産のリスク大きく分けて3つあります。1つ目は胎児の健康への影響。流産やダウン症、その他の染色体異常があげられます。2つ目は、妊娠糖尿病や子宮筋腫合併妊娠などの母体への影響。3つ目は流産率が増加し、出産に至る割合が低くなるということです。
ダウン症・染色体異常のリスクが高まる
35歳以上になるとダウン症などの胎児の染色体異常が発生するリスクが高まります。これは卵子の老化と加齢によってDNA障害が積み重なってしまうからです。35歳以上の全ての女性に起こる可能性があります。35歳未満の女性から生まれた赤ちゃんが先天異常を持っている割合は1.7%なのに対し、35~39歳だと2.8%、40歳以上だと2.9%と、35歳を境に増加します。また、特に赤ちゃんが心臓に障害を持つ割合は、母体の年齢が上がると共に上昇します。
2人目以降の妊婦さんが出生前診断を受ける割合が増える理由も「ダウン症(21トリソミー)など障害がある子どもが生まれたら、自分たちはいいとしても、上の子にも負担がかかってしまうのでは」という心配があることと、二人目以降は母体年齢が35歳、40歳になり、染色体異常のある子どもを出産する確率が上がるからなのでしょう。こうして二人目・三人目を産むお母さんたちは、同じ35歳以上の初産の妊婦さんと比べても、出生前診断を強く希望する傾向にあります。
卵子は加齢に伴って外的影響を受ける期間が長くなります。同時に、染色体も外からの要因に左右されてしまうことから胎児が染色体異常になる確率が上がってしまうのです。卵子は体が年齢を重ねていくのと同じように年を取ります。そのため劣化していくのは自然の摂理なのです。これは初産婦でも経産婦でも同じです。
妊娠率の低下
35歳を超えると卵子の老化により、妊娠率が低くなります。不妊の原因は必ずしも女性側だけにあるわけではありませんが、母体が高齢になるほど、自然妊娠の可能性は低くなります。 妊娠率が低いということは、体外受精を行っても受精卵が上手く着床しないことも示唆しています。厚生労働省では不妊治療を受けた女性が出産できる確率は39歳で10.2%、42歳で3.7%、45歳で0.6%だと発表しています。
赤ちゃんの周産期死亡やお産による死亡のリスクが高まる
死産や生後1週間未満の新生児が死亡することを周産期死亡といいます。高齢出産はこのリスクと共に、妊婦さんがお産のときの死亡率も高まります。日本は医療技術が発達しているため、死産やお産時に亡くなる妊婦さんの数は少ないのですが、それでも母体の年齢と共に確率は上昇しています。
流産のリスクが高まる
母体が35歳以上になると自然流産の可能性も高まるといわれています。これは流産を引き起こす原因が卵母細胞の低質下や子宮機能、ホルモン機能の変化によるものだからです。ある調査では、30~34歳の妊婦の流産率が15%に対して、35~39歳だと25%、40~44歳だと51%と、急激にリスクが高まり、出産に至る確率も低くなっていきます。
帝王切開のリスクが高まる
高齢出産になるほど帝王切開率が高まります。この原因のひとつに前置胎盤や低置胎盤が挙げられます。胎盤が産道をふさいでしまい赤ちゃんが出てこられなくなってしまうため、帝王切開になるのです。また、通常の手術よりも出血が多くなり、母体が危険にさらされる可能性もあります。なお、妊娠中に前置胎盤・低置胎盤を指摘されても、週数の経過と共に正常の位置になって、経膣分娩が行えることもあります。
そうかと思えば、順調に妊娠が進んでいても、母体が高齢なことにより陣痛が来ず、陣痛誘発剤を使っても子宮口がなかなか開かないことも起こり得ます。そうなると帝王切開の処置がとられます。このように、お産の直前になって経膣分娩から帝王切開へ変更になることもあるので、高齢出産の場合には心積もりしておくのがいいでしょう。
妊娠高血圧症候群のリスクが高まる
妊娠高血圧症候群は、母体の血圧が上昇するだけでなく、脳出血や肝機能障害を引き起こして命を脅かすこともある病気です。また胎内の赤ちゃんが酸素を得られず、死んでしまうこともあります。
罹患率は20人に1人とけっして低くなく、もともと血圧が高かったり、肥満や糖尿病・腎臓病の持病を持っているとさらに発症の割合が高くなります。また母体が40歳以上だとそのリスクはさらに高まります。
35歳以上の初産婦と二人目・三人目(経産婦)の違い
20代の頃は張りのあるツヤツヤのお肌が、30代になると張りがなくなってくると感じたことはありませんか?肌の下には結合組織があり、この結合組織が加齢とともにだんだんとかたくなることで、ツヤや弾力が失われてしまいます。
20代にくらべ、30代では子宮の出口に当たる組織(膣・子宮頸管・子宮口)が硬くなって開きにくくなるため、高齢出産の初産婦は若い妊婦さんに比べて難産になりやすくなります。そのため本人や産婦人科医がより安全なお産を望んで帝王切開を選ぶ割合も高くります。
35歳以上の高齢経産婦だと、初産の女性とは違って一度産道が開いたことがあります。そのため骨盤の骨がすでにお産に適した形に変化しており、高齢初産婦に比べると難産になりにくいのが大きな違いです。
何歳まで出産できるのか?
厳密に何歳までかと聞かれると答えはありません。40歳を超えて出産している方もたくさんいらっしゃいますし、50歳で出産した例もあります。
ただし、先述したように加齢による卵子の質が低下しているので妊娠しにくくなっています。体外受精でも上手くいかない場合が多いので自然妊娠となるともっと確率が低くなります。
妊娠出産は卵子の質以外に体力面などを考えてると45歳が限界だと言われています。
男性の高齢出産は何歳からか
以前は、男性に高齢出産はないといわれていましたが、現在ではその考えは覆されています。実は男性にも生殖適齢期があり、高齢になると「精子の数」や「活動力」が衰えていくことがわかっているのです。
WHO(世界保健機関)では「1ミリリットル中に精子が1,500万以上、そのうち活発な動きをする精子が40%以上いること」が自然妊娠に望ましい条件としています。しかし、高齢男性は数がこの条件に満たなくなったり、活発に動けない精子の割合も増えたりして妊娠が難しくなってきます。
自然妊娠になると男性も35歳から45歳を境に、子供を望んでから妊娠するまでに時間がかかり、妊娠率も低くなることが報告されています。また、45歳を超えると妊娠率が低く流産率も高くなるといった論文も発表されています。男性の中には、自分は運動もしているし、体力もあるから大丈夫と思っている人もいます。日常の運動習慣は大切ですが、それでもやはり年齢とともに精子は老化していくのです。
見た目の若さや体力と精子の状態は一致しませんので男性にも高齢出産で妊娠できる確率が下がっていることを知っておく必要があります。
高齢出産のメリット
妊娠が高齢になるほど母体や赤ちゃんの健康リスクが高まることがわかりました。しかし、命を授かる素晴らしさに変わりはありません。豊富な人生経験を育児に生かすこともできるでしょうし、経済的にも20歳代の妊婦さんより安定している人が多いことも事実です。子供を持てる状況にあるのでしたら、健康に気を付けて前向きに妊娠・出産に挑んでいっていただきたいです。
高齢で初産・経産婦(二人目・三人目)が妊娠中にやっておく事
加齢とともに妊娠出産のリスクを減らしたいと思うのは当然です。先天性疾患を防ぐことはできませんが、自分でできる対策や心がまえについて紹介をします。
葉酸を摂取する
生まれつき脳や脊柱に異常が起こる「神経管閉鎖障害」を予防のために妊娠前から葉酸を摂取が推奨されています。妊娠6週末で神経管の閉鎖が完成することから、妊娠成立1ヶ月以上前から葉酸を摂取するのが効果的です。高齢出産による流産などのリスクを下げられるわけではありませんが、意識して摂るようにしましょう。
葉酸については下記の記事に詳しく書いてありますのでご覧ください。
体重管理をしっかりと
初産、経産婦に限らず高齢出産は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、微弱陣痛のリスクが高まります。肥満でもリスクが高まるので生活習慣を整え、体重管理をきちんとしておきましょう。
ただし、急激なダイエットは身体への負担が大きいので肥満度を示す体格指数体格指数(BMI)が25以上でなければ無理をしないでください。
妊婦健診を受ける
35歳以上でも40歳以上でも出産まで妊婦さんのサポートをしている医療機関はたくさんあります。高齢出産によるリスクを少しでも下げるためにも妊婦健診を受診して母体と赤ちゃんの状況をチェックしておきましょう。
もし赤ちゃんがさまざまな合併症を患っていたとしても、妊婦健診が早期発見につながり、産後早急に治療が受けられます。他にも知っておきたいリスクを下記の記事に掲載していますので参照してください。
関連記事:妊娠前に知っておくべき高齢出産の3つのリスクと軽減方法
二人目・三人目がもし障害を持って生まれてきてしまったら……?
初産のときは、「たとえどんな障がいがある子供でも、必ず受け止めて育てられる」と頑張る思いが強いのですが、それはご夫婦だけしかいないからであって、上にお子さんがいる状況だとだいぶ状況も変わってきます。
自分たちが産んだ子供に障がいがあって苦労するのは全く問題ないかもしれませんが、上の子は「兄弟姉妹」としてずっと生きていかなければならず、人生に大きな影響を及ぼすこともあります。上のお子さんのハンディキャップになることはなるだけ避けたいという思いが働くので、初産婦のときにはNIPTなどの出生前診断を希望しなかったご夫婦も、二人目・三人目の出産となると、出生前診断を希望される方が増えます。
下記の記事に詳しく書いてありますのでご覧ください。
関連記事 高齢出産で後悔する7つのポイント|障害をもって生まれた我が子
35歳以上で二人目・三人目を妊娠したらNIPTを受けることをおすすめします
ここまで高年齢(35歳以上)での妊娠と出産のリスクついて詳しく紹介をしてきました。経産婦であっても35歳以上なら初産婦と同じ問題があり、またすでに上のお子さんがいるのでもし障害をもった子供が生まれてきたら……というリスクもあります。必要以上にナーバスになる必要はありませんが、社会環境やご自分のご家族の状況とあわせて検討する必要があるでしょう。
もし、二人目三人目の妊娠を決意したら不妊治療が必要になるかもしれないことも視野に入れてください。いくら出産経験があるからといって母体が年齢を重ねれば、妊娠しづらくなるのは初産婦と同じです。少しでも出産後の心配を和らげるためにも、またご家族のためにも新型出生前診断を検討してみてください。
まとめ
東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。