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近年、晩婚や高齢妊娠・高齢出産が以前と比較して随分と一般的なものとなってきました。芸能人の「40代に突入してから妊娠・出産」といった旨のニュースが流れることもありますが、実のところは無事に妊娠・出産できたケースを取り上げているに過ぎません。
事実、高齢妊娠・出産にはさまざまなリスクがあり、そのひとつとして”ダウン症の出生時の確率が高まる”ことが挙げられます。妊娠・出産期間に加えて、その後の子育て期間でも検討すべきことは非常に多くあります。
この記事では、高齢出産がどのように定義されているのかを抑え、高齢出産のリスクについて見ていきたいと思います。また、リスクの点では冒頭にて取り上げた”ダウン症”に関して更に掘り下げていきます。ダウン症の可能性が高まる原因や、防止する方法に関してもまとめていますので、ぜひ最後までご覧になってください。
高齢出産とは
まずはじめに、高齢出産がどのように定義されているのかを確認してみましょう。
日本産婦人科学会が公表する出産に関するガイドラインでは、”35歳以上の初産婦における妊娠・出産”が高齢出産であると定められています。
以前は”30歳以上の初産婦における妊娠・出産”となっていたのですが、女性の社会進出の進展、子育てに対する金銭的不安の増大(貯蓄が必要であるという認識)、子育て世帯に対する不十分な生活支援などを理由に晩婚化が進み30歳以上での妊娠・出産が一般的になりました。そのような社会情勢を考慮して”35歳以上”への改変が行われました。
以下の表は1980年と2010年における年齢別の女性の出産割合を示したものになります。出産年齢が30歳以降にも広がっていることが確認できるかと思います。
出産年齢別の割合 | ||
1980年 | 2010年 | |
~19歳 | 0.9% | 1.3% |
20~24歳 | 18.8% | 10.4% |
25~29歳 | 51.4% | 28.6% |
30~34歳 | 24.7% | 35.9% |
35~39歳 | 3.7% | 20.5% |
40~44歳 | 0.4% | 3.2% |
45歳~ | 0% | 0.1% |
高齢出産のリスク
次に、高齢出産のリスクに関して見ていきましょう。
主なリスクとしては以下のものが挙げられます。
- ・流産、早産などのリスクが高い
- ・先天性異常である出生時の確率が高い
- ・子育て期間における負担が大きくなりやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
流産、早産などのリスクが高い
高齢妊娠・高齢出産の場合には身体的・生殖的な機能が、若い頃と比較してどうしても低下してしまうため、受精して生まれた受精卵が上手く着床しない、着床したとしても流産してしまうなどの確率が高くなります。
また、身体的な機能低下によって、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病などの妊娠合併症を発症するリスクも高まってしまうため、それらの症状が見られ、母体やお腹の中にいる赤ちゃんに危険が迫っていると判断された場合には帝王切開などで早期に取り上げられる(早産となる)こともあります。
先天性異常である出生時の確率が高い
女性の加齢に伴った生殖機能の低下によって、赤ちゃんの”もと”ともいえる、受精卵や卵子の本来発揮すべき機能が欠如してしまうことがあります。往々にして見られるものでは、染色体異常そのものであったり、染色体異常による細胞分裂の停止などが挙げられます。
染色体異常にはさまざまな種類があり、ヒトの場合には2つで1対を基本とした23組の染色体(計46本)のうちの13番目、18番目、21番目の染色体が2本ではなく3本となっている(これはトリソミーと呼ばれます)ケースが多く確認されています。
13番目、18番目の染色体のトリソミーのケースでは自然流産となることが多く、一方の21番目の染色体トリソミーは一般的に”ダウン症”と呼ばれ認識されている、先天性疾患に該当します。
染色体異常では本来2つである染色体数が3つとなるトリソミーの他に、2つあるはずの染色体が1つしか存在しないモノソミーや、トリソミーやモノソミーが複数の染色体に確認されるケースもあります。これらの場合による流産の可能性は非常に高く、13番目、18番目、21番目トリソミーよりも更に自然妊娠の可能性が薄くなるといえます。
子育て期間における負担が大きくなりやすい
”体力”に医学的な定義がなされているわけではなく、個人差も非常に大きいものですが、加齢による体力の低下は誰にでも起きるものです。他の人と比べてみると、「私はあの人より体力がある」と思えるかもしれませんが、ご自身の若い頃と比べると多くの方が体の衰えを覚えるのではないでしょうか?
子育て期間は何かと手のかかることが多く、そのような中で「若い頃であればもっと無理が利くのに」と考えてしまうこともあるかもしれません。
また、高齢出産の場合には妊婦さんのご両親が高齢である状況が、ほぼ必然的なものであるため、子育てと介護が重なってしまう方もいらっしゃいます。このような、親御さんからの子育てでのサポートが望めない場合の対応も必要となります。
高齢出産とダウン症
次に、前述した”出生時の先天性異常の確率が高い”という高齢出産におけるリスクの中でも、特にダウン症の症状と、高齢出産とダウン症の関係性に関してご説明していきます。
ダウン症がどのような先天性疾患であるかはお伝えしましたが、ダウン症によって身体的・精神的な特徴が見られるようにもなります。
外見的な特徴として、顔が扁平化する、二重まぶたで目が大きくなる、目と目が離れる、首が短くなるなどが見られるようになり、身体的には健常者よりも発育が遅れるといった特徴が現れることが報告されています。寿命の観点では健常者よりも20歳ほど短いといわれており、ダウン症の方の平均寿命は60歳ほどであるといわれています。
また、精神的な特徴としては性格が頑固になりやすいといわれています。これはダウン症疾患者が持つ特有のコミュニケーション能力や健常者以上の感受性を、発育環境下で上手くコントロールすることができずにストレスを感じてしまうからとされています。
このようなダウン症に関して更に詳しく理解するために、次に女性の妊娠・出産年齢とダウン症の関係性、ダウン症が生じる原因に関して見ていきたいと思います。
母体年齢とダウン症候群の割合
日本産婦人科学会から公表されているデータによると、母体年齢とダウン症候群の頻度は以下のように示されています。
母体年齢 | ダウン症候群の頻度 |
20歳 | 1667分の1 |
25歳 | 1250分の1 |
30歳 | 952分の1 |
35歳 | 385分の1 |
37歳 | 243分の1 |
39歳 | 147分の1 |
41歳 | 86分の1 |
43歳 | 50分の1 |
45歳 | 29分の1 |
出典:日本産婦人科学会
20歳のときにも1667人に1人の確率(0.06%)でダウン症候群となることが確認できますが、この確率は年齢が上がることで高まっていることが確認できます。
特に、30歳から35歳における確率の変化は顕著であり(0.11%から0.26%)、30歳以降からのダウン症候群の確率の上昇率は非常に大きいです。そして、40歳頃を境に100人に1人はダウン症候群となってしまうことが示されており、”高齢妊娠・高齢出産によるダウン症の可能性の増大”というリスクを、いかに真剣に考えなければならないかをご理解いただけるかと思います。
ダウン症が生じる原因
ダウン症が生じる原因には女性の身体的・生殖的機能の低下や、赤ちゃんの”もと”となる卵子が老化してしまっていることが挙げられます。
特に、卵子の質と女性の加齢は深い結びつきがあります。卵子は”原始卵胞”と呼ばれる細胞から作られている(実際には原始卵胞の中に卵子が存在しています)のですが、この原始卵胞(その中の卵子)は女性が母親のお腹の中にいる時点で作られた後に新たに作られることはありません。
そして、生殖適齢期を迎えるようになると、分泌される女性ホルモンの作用によって原始卵胞・卵子が成熟を始め、排卵が行われます。逆をいえば、女性ホルモンの作用によって成熟を始めるまでの間は、原始卵胞・卵子ともに眠っている状態にあるのです。加えて、女性が歳を重ねるように、卵子も歳を重ねているのです。これが卵子の老化として説明されるものになります。
また、眠っている時間が長くなることで再び活動を始めたとしても(生殖的な機能低下も相まって)本来の機能を発揮できなくなるようになります。そして、本来であれば適切に行われるはずの細胞分裂に誤りが生じることで染色体異常などが起こるようになるのです。
染色体異常を防止する方法
最後に、染色体異常を防止する方法に関してご紹介します。前述の内容から確認できるように、染色体異常が生じる大きな要因として、身体的・生殖的な機能の低下、卵子の老化が深く関わっています。これらは加齢によって自然と生じてしまうものですが、生活習慣を改善することで機能低下や老化の勢いを抑えることは可能です。
機能低下・老化の勢いを抑える基本的な取り組みは、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠となります。健康的な体づくりと何一つ変わりません。ぜひ、ご自身の生活を振り返られてみてください。
特に、”老化”にアプローチするという観点では、抗酸化作用のある食物の摂取をおすすめします。体内の細胞を老化させてしまう活性酸素と優先的に化学反応を起こすことで、体内の細胞への影響を抑制する作用であり、ビタミンA・C・Eが抗酸化作用を持つ代表的な栄養素です。緑黄色野菜・果物に多く含まれているため、ミキサーにかけてジュースにするなど効率的に摂取なさってください。
また、ビタミンB群に該当する葉酸はダウン症のリスクを低減する効果があるといわれています。これは葉酸が染色体のコピーを複製する過程で重要となる栄養素であるためです。アメリカやイギリスを含めた海外7か国が共同で行った臨床実験の結果によると、葉酸の十分な摂取いよってダウン症発症のリスクが70%低減されることが示されています。
妊娠のために必要となる葉酸の量を体内に蓄えるまでには相応の時間が必要となるため、妊娠判明後に摂取を始めるのではなく、それ以前のタイミングから健康的な食生活の一環として葉酸の摂取を心掛けるようにしましょう。
まとめ
ここまで、高齢出産がどのように定義されているのか、高齢出産のリスク、特にダウン症に関してダウン症と出産年齢の関係性、ダウン症が生じる原因、ダウン症をはじめとしたリスクの低減方法に関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
染色体異常・先天性疾患に対する十分な理解や、事前の心構えが必要となりますが、これらの疾患を出生前診断や新型出生前診断(NIPT)を通じて確認することも可能です。
新たな命を授かるのは尊いことでもありますが、先天性の疾患があるとなると、生まれてくる赤ちゃんの人生を考え、「生んでもよいものか?」と不安になってしまうこともあるかと思います。出生前診断は先天性疾患を治すことはできませんが、生まれてこようとしている赤ちゃんの命や将来の人生と向き合うための機会を提供してくれるものとなってくれます。
この記事をきっかけに高齢出産に関するご理解を更に深めていっていただけますと幸いです。
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