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35歳を超える出産は高齢出産と呼ばれており、初産婦・経産婦関係なくダウン症の子どもが生まれる確率、流産のリスクが上がります。その他にも、産後の母体へのダメージなど気になることが多いのではないでしょうか?
今回は高齢出産のリスクや2人目の出産の際に気を付けたいことなどを解説します。
高齢出産はいつから?
高齢出産に明確な定義はありませんが、日本産科婦人科学会では、35歳以上で出産する人を高齢出産としています。
世界産科婦人科連合(FIGO)では経産婦の高齢出産についても定義しています。経産婦では40歳以上を高齢妊娠と定義しており、いずれも年齢が高くなるとハイリスク妊娠となり母体と胎児への影響が大きくなります。
高齢出産の増加
高齢出産が全出生に占める割合は1970年には4.7%だったのが2000年には11.8%、2007年には19.4%と増え続けています。2016年では28.5%です。
2016年で35歳以上が3割近くに増加しており、年々母体の出産年齢が高齢化していることがわかります。
高齢出産増加の背景
高齢出産の増加には女性の晩婚化が挙げられます。女性の高学歴化や女性の社会進出、価値観の多様化などにより、女性も独身期間を楽しんだり仕事を優先したりすることが、高齢出産につながると考えられています。
また、生殖医療の進歩も高齢出産が増えている一因です。これまで不妊治療をして一定の時期になると諦めざるを得なかった治療も、医学の進歩や法改正により40歳でも治療を続ける人が増えたことも高齢出産が増えた要因となっているようです。
高齢出産のリスク
年々増加傾向にある高齢出産ですが、高齢出産には以下のリスクがあります。
- 母体へのダメージ
- 流産
- 先天異常
- 難産
年齢が上がるにつれて母体と胎児の両方に影響が出やすくなります。それぞれを解説します。
母体へのダメージ
高齢出産では慢性高血圧合併妊娠の頻度が増加します。特に妊娠高血圧症候群の発症頻度は45歳以上で高くなるという報告があり、肥満が関係しています。妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に高血圧を発症した場合をいい、胎児の発育不全や機能不全を招く病気です。
また高齢出産では妊娠糖尿病のリスクも高くなります。妊娠糖尿病とは、母体が高血糖になることで流産や形態異常などを引き起こします。
いずれも発症してしまうと食事管理をして基準値を超えないようにコントロールしていかなくてはなりません。高齢妊娠の可能性がある場合は普段から食事内容に気を付けて、適度な運動をしてリスクを抑えましょう。
流産のリスク
高齢出産になるとこれまでの流産回数や分娩回数に関わらず、流産率が増加します。20~24歳では流産率が9.0%であるのに対し、35~39歳では20.6%、40~44歳では43.6%、45歳以上では80%を超えます。
高齢出産で流産のリスクが高くなる理由は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクが高まるほかに、卵巣や子宮の機能が低下することも原因です。こうした機能低下は、加齢によるものであるため妊娠を望む場合は、医療機関を受診し不妊治療を行う必要があります。
ダウン症候群など先天異常のリスク
高齢出産はダウン症候群などの染色体異常のリスクも高くなります。ダウン症候群は21番目の染色体が1本多く生まれてくる疾患です。妊婦の年齢が高くなると胎児がダウン症候群を持って生まれてくる確率も高くなります。25歳では1250人に1人の割合であるのに対し、35歳では385人に1人、40歳では106人に1人の割合です。
ダウン症候群などの染色体異常はリスクを抑える方法はありません。加齢により染色体異常を持って生まれてくる可能性も高まるため、NIPTなどの出生前診断を受けて、もし陽性の場合には今後のことを検討していく必要があります。
難産のリスク
高齢出産になるほど難産になりやすいこともわかっています。初産の場合は、産道や子宮口が硬くなっていることが原因です。そのほかにも肥満や子宮筋腫の偶発発症が増えることも要因となっています。
そのため、自然分娩ではなく帝王切開へ移行する例が多くなっています。
35歳以上で2人目を出産するリスク
35歳以上でこれまでに出産経験がある場合、同じ年齢の初産の人と比べ分娩時間や陣痛が比較的軽い傾向にあります。これは自然妊娠の場合、前回の分娩時に一度胎児が子宮から膣を通過しているためです。
とはいえ、年齢的な妊娠率や流産率は初産でも経産でも変わりません。
高齢出産で後悔しないために
高齢出産で後悔しないためには、情報収集をして出産に備えることが大切です。
- 1. 病院選び
- 2. 体力づくり
- 3. 出生前診断
特に病院選びや、出産に向けた体力づくり、出生前診断を受けることも後悔しないためチェックしておきたい事項です。それぞれを解説します。
病院選び
高齢出産では病院選びも大切です。高齢出産に対応してくれる病院や医師を選ぶことで難産になったり、出産後に赤ちゃんに異常が見つかったりする場合に適切なサポートを受けることができます。病院ごとの特徴は以下です。
大学病院・総合病院:複数の科で持病や合併症のサポートが受けられる
個人病院・診療所:医師やスタッフとの信頼関係を築きやすい
助産院:助産師が妊娠中から出産、産後までサポートしてくれる
また医師との相性も大切です。個人病院の場合は、産院ごとに特色があるためホームページなどで確認してみましょう。
体力づくり
高齢出産では出産時と産褥期を乗り切るための体力づくりが欠かせません。高齢出産は難産になりやすく、産褥期もなかなか体力が回復しないなどのトラブルが起こりがちです。
子どもが欲しいと思ったときから適正体重をキープし、適度な運動をして体力づくりに励みましょう。また安定期に入ると激しい運動はできません。ウォーキングやヨガ、スイミングなどリラックスしながら取り組める運動を行いましょう。また、食事を見直してバランスの良い食事を心がけることも大切です。
出生前診断
高齢出産は染色体異常などのリスクが高くなるため、妊娠中に胎児の染色体異常があるかどうかが気になってしまうでしょう。出生前診断は赤ちゃんが生まれる前に、染色体異常や胎児異常を持っているかを調べる検査です。
先天異常が気になる場合、10週以降から出生前診断を受けることができます。出生前検査で、赤ちゃんに疾患があれば、生まれてからの治療やサポートをあらかじめ準備することができます。
まとめ
高齢出産とは初産で35歳以上、経産婦では40歳以上を指します。高齢出産はさまざまなリスクが上昇することがわかっており、高齢出産で後悔しないためにも自分に合った病院選びや体力づくりなどを行いましょう。また、出生前診断で事前に染色体異常や胎児異常を知ることもできます。出産に向けて早いうちから情報収集をすることが大切です。