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自閉症ASDの赤ちゃん6か月〜1歳の特徴

赤ちゃんの最初の1年間は、めざましいスピードでいろんなことを獲得していきます。一日一日変わっていく、という感じで初めてのママ、パパはびっくりしますよね。初めての笑顔、首が据わる、初めての寝返り、かかとを使ってずり動く、腹ばいになり肘でハイハイ、四つ這いでハイハイ、おすわり、つかまり立ち、そして初めての一歩、初めての言葉。「初めてできるようになったこと」が毎日連続でやってきます。

赤ちゃんがこれらの到達目標時期にこうした動作ができるように到達していないように見える場合はどうでしょうか?子供たちは一人一人の違うスピードでそれぞれの個性に合った時期にこれらの節目を迎える、と思っていても「発達が遅れているのかしら?」と不安に思うこともあるでしょう。

実は、6ヶ月から1歳の赤ちゃんのみせるサイン(兆候)から自閉症スペクトラム障害ASDを予測することができる、という報告があります。

自閉症は、現在最も多い疾患の一つです。自閉症は疾患概念や診断基準が変更となって以来、初めて日本で行われた弘前大学の5歳児を対象とした調査では3.22%がASD自閉スペクトラム症と診断され、30人に一人で、医療や教育の現場の感覚にあう数字となっています。

生後6カ月の乳児の自閉症スペクトラム障害ASDの早期評価ツール開発

自閉症スペクトラム障害には、たとえば画像検査や血液検査でこれが異常ならそう診断できる、という診断検査(バイオマーカー)がないため、ほとんどの医師は、親御さんからの聞き取り、お子さん自身を観察、幼児用の自閉症チェックリスト(CHAT)のような標準化されたツールを使用してきましたが、これらは1歳半以上の子どもを対象に作られています。しかし、コミュニケーションエラーの問題から生じる多くのフラストレーションを解消するには、早期の発見と介入が必要であることは言うまでもありません。そこで、一刻も早くASDを発見することが重要となります。

研究の結果、医師が生後6カ月の乳児の早期評価を行うためのスケールが開発されましたが、生後12カ月(1歳)の方がはるかに正確であると考えられています。乳幼児の自閉症観察尺度(AOSI)は、親や医師が早期診断を行うためのツールです。

赤ちゃんが自閉症である可能性を示す兆候(サイン)とは?

これらの兆候のほとんどは、生後6カ月から1歳の間に現れるものです。それ以前の時期には、これらの兆候の多くはまったく現れないかもしれません。また、これらの特徴のいずれか1つだけでは診断にはならないことも知っておく必要があります。6ヵ月から1歳の間にこれらの特徴がいくつも見られた場合は、必ず医師の診断を受けてください。早期の診断と治療は、後々のスキルアップに大きな影響を与えます。繰り返しになりますが、このリストは診断とみなされるべきものではなく、医師に早めに相談し、適切な評価プロセスを開始するためのツールとしてのみ使用されます。

乳幼児の自閉症観察尺度(AOSI)には19項目ありますが、一部をご紹介します。

微笑み返しがない
一般的に赤ちゃんは、笑顔を向けると反射的に微笑み返します。早ければ生後1ヶ月から、確実に生後3ヶ月までには微笑むようになります。試しに、笑っていない顔で赤ちゃんを見てから、大きく笑って数秒間キープしてみてください。これを3、4回繰り返してみてください。正常に発達しているお子さんであれば、毎回ではなくても、ほとんどの場合、笑顔を返してくれるはずです。
アイコンタクトがとれない(目が合わない)
ほとんどの赤ちゃんは、生まれながらにして人の顔、特に両親や家族に興味を持っています。自閉症のお子さんの場合、なかには「生れてから一度も目があったことがない」とおっしゃるママもいます。
自分の名前を呼ばれても反応しない
ほとんどの赤ちゃんは、遅くとも9ヶ月までには、名前を呼ばれると反応するようになります。
社会的期待やいないないばあをしない
神経学的に提携的に発達しているお子さんは、抱き上げられることを期待して腕を抱きあげてほしい人に向けて伸ばしたり、「いないいないばあ」などのゲームを期待して笑い出したり、知らない人が抱っこしようとすると人見知りして泣き出したりします。6〜9ヶ月になっても、こうした行動がないようでしたら、一度医師に相談してみていいと思います。
視覚的追跡能力の低下
明るい色のおもちゃを持って、赤ちゃんの目の前でゆっくりと前後に動かしてみてください。お子さまはおもちゃを目で追うことができるのか、それとも、すぐに興味を失ったり、すぐに目を離したりするのでしょうか。
喃語がでてこない
一般的に赤ちゃんは、最初の言葉を得るまでの間、おしゃべりの練習が大好きです。自閉症の赤ちゃんは、言葉を発しなかったり、言葉を発するのが遅かったり、ある時点から突然言葉を発しなくなったりすることがあります。
気になるものへの執着
後にASDと診断された赤ちゃんは、床や天井の模様など、一般的にはあまり興味を示さないものに固執することがあります。
オウム返しの発声
赤ちゃんに対して話しかけると、話しかけた人が言ったことをオウム返しにしたり、喃語で返したりします。こうした往復発声が見られるかどうかもポイントです。
関心を共有してくれる
たとえば自分が好きで遊んでいるおもちゃを手渡してくれたり、気になっているものを指さして教えてくれたりという形で、他の人と関心を共有することができるようになります。

2歳までに自閉症と診断された子どものほぼ全員が、1歳までにこれらの項目で陽性を7つ以上持っていることがわかっています。

兄弟に自閉症がいるお子さんは自閉症である確率が一般の約50倍

自閉症のお子さんが1人いる家庭では、2人目の子どもが自閉症と診断される確率はおよそ5~10%で、一般人口の約50倍の再発率となっています。

自閉症は、知的障害に次いで多い発達障害であり、現在では自閉症スペクトラム障害(ASD)という医学用語にアスペルガー症候群などとともに統一されています。自閉症は、軽度から重度まで様々な症状がありますが、一般的には、社会的相互作用やコミュニケーションに障害があり、反復的で孤独な活動を行います。

生後6カ月の時点でも、後に自閉症と診断されることになるお子さんを他の兄弟と区別する特定の行動があることがわかっています。

生後6カ月の時点では、受動的な気質と活動レベルの低下が見られ、その後、生後12カ月に近づくにつれて、極度の過敏性、物に執着する傾向、社会的交流の減少、顔の表情の欠如などが見られました。また、1歳になると、ジェスチャーが少なくなり、言葉を理解することも少なくなり、表現言語と受容言語の両方のスコアが低くなるなど、言語やコミュニケーションに困難が見られるようになりました。

自閉症の初期兆候についての理解を深め、自閉症の子どもたちに見られるこれらの兆候をなるだけ早期に検出し、臨床医が早期に診断を下し、早期に介入を開始することができ、子どもたちのコミュニケーションスキルを開発する、つまりコミュニケーションスキルがあがるよう療育することで長期的な転帰を改善することができるのではと考えられています。

まとめ

自閉症スペクトラム障害ASDのお子さんたちが発達していく過程を順番に支援するために、早期の診断と療育が必要であることは明白でしょう。
6か月から1歳の赤ちゃん(乳児)の間にどういう症状があるかを親御さんや医療職、保育に携わる人たちが知っておくことは、非常に有意義なことだと考えられます。

東京の「ミネルバクリニック」は遺伝子検査を実施している医療機関です。そして遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が在籍しております。もし遺伝子検査のことでご不明な点があれば遠慮なくミネルバクリニックまでご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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