目次
- ➤ ターナー症候群の顔つきはかわいい?特徴的な外見と早期発見のポイント
- ➤ ターナー症候群の診断方法と検査について
- ➤ 年齢ごとに現れる特徴的な症状と注意点
- ➤ 成長ホルモン療法など適切な治療法と医療ケア
- ➤ 出生前診断(NIPT)でターナー症候群が分かる場合の対応
ターナー症候群は、女性だけに起こる性染色体異常の1つです。女性の通常持つXX染色体のうち、1本のX染色体の全体または一部が欠けていることで発症します。発生頻度は2,500人に1人程度と言われており、女性の染色体異常の中では比較的多いものです。
この記事では、ターナー症候群の子どもに見られる顔つきの特徴や身体的特徴について詳しく解説します。特徴的な顔立ちはしばしばかわいらしい印象を与えることもありますが、個人差も大きいです。適切な治療を受けることで健やかな成長を促し、一般の人と変わらない生活を送ることができるため、子どものサポートに必要な知識を紹介していきます。
ターナー症候群の顔つきの特徴
ターナー症候群の方すべてに共通する顔つきがあるわけではなく、特徴の有無や程度には個人差があります。特に乳幼児期には特徴が軽微で気づきにくいこともあります。
主な顔の特徴
ターナー症候群の顔の特徴は、21番染色体のトリソミーであるダウン症ほど顕著ではなく、一般の方が見ただけでは判別が難しいことがほとんどです。多くの親御さんは「かわいい顔立ち」と感じることが多く、特に幼少期は丸みを帯びた柔らかな表情が特徴的です。ただし、これらの特徴がすべての患者さんに現れるわけではなく、軽度である場合も多いです。顔の特徴だけでターナー症候群を診断することはできず、最終的には染色体検査による確定診断が必要です。
顔以外の特徴的な外見
翼状頸(よくじょうけい)
首の両側の皮膚が余っており、首から肩にかけて広がっているように見えます。このため首が太く見えることがあります。翼状頸の程度には個人差があり、ほとんど目立たない場合もあります。
外反肘(がいはんちゅう)
腕をまっすぐ伸ばした時に、肘から先の腕が外側に曲がって見える状態です。腕を下に垂らした時に肘が外側に向いているように見えます。
成長段階で見られるターナー症候群の特徴
ターナー症候群の症状は年齢によって現れ方が異なります。新生児期から見られる症状もあれば、成長に伴って発見される症状もあります。
新生児期の特徴
低身長:新生児期からほとんどが低身長という特徴を持っています。治療をしない場合、成人では平均138cm程度になります。
心臓の異常:約20%で心臓や大血管の異常がみられます。大動脈縮窄や大動脈弁の異常が多いです。
腎臓の異常:約30%で馬蹄腎(左右の腎臓がくっついている状態)などの異常がみられることがあります。
手足のむくみ:生まれた時に手や足にむくみ(リンパ浮腫)が見られることがあります。
乳幼児期から小児期の特徴
乳幼児期に手足の甲にリンパの浮腫みが現れることがあり、数週間〜数ヶ月続くこともあります。多くの場合、自然と治まるため特別な治療は必要ありません。
ターナー症候群の子どもの多くが中耳炎を発症します。放置すると難聴のリスクがあるため、早めに耳鼻科を受診しましょう。
3〜5歳頃から同年代と比べて身長の伸びに差が出てくることがあります。
思春期以降の特徴
知能と学習について
ターナー症候群の子どもたちの多くは正常な知能を持っています。ただし、空間認識能力や数学的な処理が苦手な傾向があり、算数や体育で困難を感じることがあります。一方で言語能力は通常発達し、真面目な性格の子が多いと言われています。子どもの特性を理解し、得意分野を伸ばしながら苦手分野をサポートする教育が大切です。
ターナー症候群の診断方法
ターナー症候群は、外見的特徴や症状から疑われることがありますが、確定診断には染色体検査が必要です。
出生前診断による発見
NIPTは母体の血液を採取して行う検査で、ターナー症候群などの染色体異常の可能性を調べることができます。陽性(可能性が高い)の場合は、羊水検査などで確定診断を行います。
出生前診断を検討される方は、検査前後の遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。検査の意味や結果の解釈、今後の選択肢について詳しく説明を受けることができます。
詳しくは 「新型出生前診断(NIPT)について」 をご覧ください。
出生後の診断
新生児期〜小児期
- → 特徴的な外見(翼状頸、手足のむくみなど)
- → 成長の遅れ(低身長)
- → 心臓や腎臓の先天的な異常
思春期
- → 二次性徴の遅れや欠如
- → 初経がない(無月経)
- → 乳房発達の遅れ
これらの症状が見られる場合は、小児科や内分泌科を受診し、血液検査による染色体検査を行うことで確定診断ができます。また、診断後は心臓、腎臓、聴覚、内分泌機能などを調べる検査も行われます。
ターナー症候群の治療法
ターナー症候群は染色体の異常が原因のため、根本的な治療法はありませんが、様々な症状に対する対症療法で健康的な生活を送ることができます。
成長ホルモン療法
低身長の改善には成長ホルモン注射が効果的です。診断がついた時点から開始し、骨の成長が止まるまで継続します。早期から治療を開始することで、より効果が期待できます。成長ホルモン治療を受けた場合、最終的な平均身長は約147cm程度となり、治療をしない場合(約138cm)と比べて約10cm程度の差が期待できます。
女性ホルモン補充療法
思春期に入る頃(10〜14歳)から女性ホルモン(エストロゲン)の投与を開始します。初めは低用量から始め、徐々に増量していきます。この治療により乳房発達や女性らしい体つきの促進、定期的な月経の発来などの効果が期待できます。また、骨粗しょう症の予防にも役立ちます。
合併症に対する治療とケア
平均寿命と生活の質
ターナー症候群の方は、適切な医療ケアと合併症の管理を行うことで、一般の方と同じ平均寿命を期待できます。現在の医療技術の進歩により、多くのターナー症候群の方が健康的で充実した生活を送っています。早期診断と適切な治療開始が重要ですので、気になる症状があれば専門医に相談してください。
よくある質問 (FAQ)
ターナー症候群の子どもを健やかに育てるための支援
ターナー症候群の子どもが健やかに成長するためには、医療的なケアだけでなく、家族や周囲の適切なサポートが重要です。
心理的なサポート
ターナー症候群の子どもは、身長の低さや思春期の発達の遅れなどから、自己イメージや自信に影響を受けることがあります。家族の受容と理解、適切な情報提供、同じ状況の仲間との交流などが心理的な健康をサポートします。また、必要に応じて心理カウンセリングを受けることも有効です。
社会的サポート
教育機関との連携
学校の先生や保健師と子どもの状態を共有し、必要に応じた学習支援を行うことが大切です。特に算数・数学では個別のサポートが効果的なことがあります。
患者会・サポートグループ
同じ状況の家族や当事者との交流は、情報共有や精神的なサポートにつながります。日本ターナー症候群の会などの団体を通じて、経験者の声を聞くことができます。
医療費助成制度
ターナー症候群は小児慢性特定疾病に指定されており、18歳未満の場合、医療費の助成を受けることができます。また、状態によっては障害者手帳の対象となる場合もあります。
お住まいの自治体の福祉課や保健所、主治医に相談して、利用できる制度について確認しましょう。成長ホルモン治療などの高額な医療費の負担軽減に役立ちます。
まとめ
ターナー症候群は女性のみに起こる染色体異常で、低身長や特徴的な顔つき、内臓の合併症などが見られることがあります。
顔つきの特徴は個人差が大きく、眼瞼下垂、高く狭い口蓋、低い髪の生え際、耳介低位、小さい顎などが見られることがあります。
適切な治療とサポートにより健やかな成長が可能です。成長ホルモン療法や女性ホルモン補充療法などが主な治療法となります。
ターナー症候群の子どもは正常な知能を持ち、適切な教育サポートにより一般の子どもと同様に学校生活を送ることができます。
出生前診断で分かる場合もあり、早期の診断と治療開始が子どもの成長と発達に良い影響を与えます。
ミネルバクリニックでは、NIPT(新型出生前診断)を専門的に提供しています。検査前後の遺伝カウンセリングでは、検査の内容や意味、結果の解釈について詳しくご説明します。不安やご質問があれば、専門医にご相談ください。
参考文献
- 日本小児内分泌学会「移行期医療支援ガイド ターナー症候群」
- 日本内分泌学会「ターナー症候群」
- P. Kruszka, et al. Am J Med Genet A. 2020,182(2),303-313.
- T. Morgan. Am Fam Physician. 2007,76(3),405-410.

