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これからお子さんが生まれてくる方や妊娠を望んでいる方であれば、「赤ちゃんに何かの知的障害があったらどうしよう」と心配になることがあるかもしれません。
知的障害を持ったお子さんが生まれてくる確率は高くありませんが、どのくらいの確率かについて知っておくことは重要です。
当記事では、知的障害の種類や障害を持ったお子さんが生まれてくる確率、出生前診断について解説します。
知的障害とは?
知的障害とは、知的機能の障害があったり社会への適応能力が低かったりして、日常生活に支障が生じているため特別の支援を必要とする状態です。
一般的に知的能力を表すIQが70未満の場合に知的障害を抱えていると判断されます。
知的障害は主に18歳までの発達期に現れますが、症状の現れ方は非常に多種多様であるため、大人になるまで軽度の知的障害を持っているのに気付かなかったというケースもあります。
知的障害の原因
知的障害の原因はいくつか考えられますが、出生前、出生周辺期、出生後に何らかの原因があることがほとんどです。
たとえば、出生前には遺伝子や染色体異常によって知的障害が引き起こされるケースがあります。
また、遺伝子や染色体に異常がなくても、母体がウイルスに感染したり薬物による影響受けたりする外的要因によって、胎児が知的障害を抱える場合があり得るのです。
出産のトラブルによっても知的障害が残るケースがあります。
出産時に低酸素状態に陥ってしまったり、循環障害が起きてしまったりすると、知的障害を抱えてしまうかもしれません。
ただし、出産時のトラブルは医療の技術の進歩によって非常に少なくなっています。
加えて、出生後に頭部に外傷を負ったり、虐待を受けたりして知的障害を抱えてしまうお子さんもいます。
知的障害の分類
知的障害は、症状によっていくつかに分類されます。よく用いられるのは、知能指数IQです。
知能検査によってIQが算出され、IQが低くなればなるほど知的障害の重症度が高くなります。
IQの平均は99から109とされていますが、IQが50から70程度であれば軽度の知的障害、36から49で中程度、20から35で重度、19以下では最重度と考えられるでしょう。
さらに、IQの他にも社会への適応能力の点で支援が必要な状態であれば、知的障害を抱えている可能性が高いと考えられます。アメリカ精神医学会の指針によれば、適応能力には3つの分野があります。
記憶や言語、数量、時間などの概念を理解する「概念的領域」、対人コミュニケーションを行うための「社会的領域」、日常生活を送るための「実用的領域」です。
この3つの領域のどれか1つでも支援が必要であれば、適応能力が低いと判断されます。
知的障害の特徴
知的障害を持っているお子さんに見られる症状は非常に多様です。よく見られる特徴として挙げられるのは、相手の言っていることを理解できない場合です。
相手が早口で話す、話が複雑だった、などの場合、理解できなかったりパニックに陥ったりしてしまいます。
こうした知的障害を持っているお子さんに対しては、ゆっくり話したりやメモを残したりしてあげてください。
さらに、知的障害を抱えているお子さんは自分が思っていることを他者へ上手に伝えられない場合があります。適切な単語が出てこなかったり、文章がうまく作れなかったりするのです。
こうしたケースでは、急かさずに辛抱強く待つのが重要といえます。
できる限り選択肢を提示して、本人が選べるような話し方をするとスムーズに会話を進められるかもしれません。
加えて、日常と違うことが起こるとパニックになってしまうことも、知的障害を抱えているお子さんによく見られる特徴です。あらかじめ起こりえる出来事をしっかり伝え、やるべきことをメモしておくなどの対策が必要となります。
知的障害児が生まれる確率
出産を控えている方であれば、知的障害児が生まれてくる確率がどのくらいなのか気になるでしょう。
先天的に何らかの知的障害児が生まれる確率は、妊婦さんの年齢に関わらず約3%程度とされています。
しかし、染色体異常が発症する確率は、妊婦さんの年齢によって変化していくのが知られています。
染色体異常の代表的な疾患であるダウン症候群の場合、妊婦さんの出産時の年齢が29歳以下の場合には1000人に1人以下、35歳の場合には385人に1人、39歳の場合には83人に1人、42歳の場合には64人に1人と高くなりますので覚えておいてください。[注1]
※[注1]厚生労働省:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等の
あり方に関する検討会」 報告書 参考資料 p.16
www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000015864.pdf
知的障害児が生まれる確率を下げる方法
知的障害児が生まれる確率は平均して約3%ですが、少しでも確率を下げる方法があります。妊娠中に意識して対策を講じることで、少しでも確率を下げるようにしましょう。
たとえば、妊娠中には飲酒や喫煙を控えることが重要です。妊娠中の飲酒や喫煙は、胎児に悪影響を与えてしまうのはよく知られています。
具体的には、喫煙によって胎児が先天異常を抱える可能性が高くなります。また、妊婦さんが飲酒すると、胎児性アルコール症候群、低体重、注意欠陥多動性障害などの原因になりえるのです。
さらに、葉酸を多く摂取することも重要です。
葉酸には、細胞の生産や再生を助ける働きがあり、胎児の発育を大いに助けます。加えて、葉酸は胎児の脳や脊髄の発達異常である「神経管閉鎖障害」の予防に役立つため、積極的に摂取するようにしましょう。
とくに、ホウレン草やアスパラガス、レバーなどには葉酸が多く含まれているので、妊娠中は意識してこうした物を食べることが必要です。
知的障害の有無は妊娠中にわかる?
知的障害を持つお子さんが生まれるかもしれない場合、それを早く知っておきたいと考える親御さんは少なくありません。
知的障害について早く知れば、それだけ早く準備を整え、お世話する環境について考えられるからです。そのために有効なのが出生前診断です。
では知的障害の有無が妊娠中にわかるかどうか見ていきましょう。
知的障害は出生前診断でわかる
結論からいえば、知的障害は妊娠中に行う出生前診断でわかります。
もちろん、軽度な障害も含めてすべての知的障害がわかるわけではありませんが、とくにダウン症候群のような染色体異常による知的障害の場合には出生前診断が効果的です。
出生前診断では、染色体異常を診断ができ、知的障害があるかどうか確定的に判断できるのです。
たとえば、21番染色体のコピーが多い21トリソミーや、18番染色体のコピーが多い18トリソミーなどを診断可能です。
出生前診断には非確定的検査と確定的検査の2種類があり、非確定的検査で陽性になった場合に確定的検査を行うのが一般的です。
出生前診断で診断できない疾患
出生前診断で知的障害は診断できますが、自閉症や注意欠陥多動性障害などの発達障害は診断できません。
発達障害は、成長の過程で症状が現れるものなので、妊娠中に判断するのは困難なのです。
知的障害と、発達障害が同じではないこと、妊娠中に判断できるかどうかも異なるのを覚えておきましょう。
【まとめ】
知的障害児や染色体異常が心配なときは医師に相談を
知的障害児が生まれる確率は、平均して3%ですが、染色体異常に限れば妊婦さんの年齢に左右されます。
胎児が知的障害を持っているかどうか心配な方は、出生前診断について医師と相談しましょう。早めに動き始め、ゆっくり準備を整えておくのが大切です。