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自閉症と遺伝 – 兄弟間の発達障害の確率を理解する

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

上の子が自閉スペクトラム症(ASD、自閉症)のとき、下の子(きょうだい)もASDと診断される確率は、上の子にASDがある赤ちゃん1,605人を追跡した国際共同研究で20.2%(約5人に1人)でした[1]。男の子では25.3%、女の子では13.1%と、性別でも違いがあります。この記事では、兄弟で自閉症・発達障害が多い理由、いとこ(兄弟同士の子ども)の確率、上の子に原因の遺伝子や染色体の変化が見つかった場合と見つからない場合で考え方が違うことを、英語の論文にもとづいて臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧩 Q. 兄弟で自閉症になる確率は?

上の子にASDがある赤ちゃんを追跡した研究では20.2%(約5人に1人)がASDと診断されました。男の子は25.3%、女の子は13.1%、上の子が2人以上ASDのときは36.9%でした[1]。国全体の登録データでも、兄や姉にASDがあると、ないときの約7〜10倍のなりやすさです[2][3][4]。

🧬 Q. なぜ兄弟で自閉症・発達障害が多いの?

きょうだいは遺伝子の約半分を共有しているためです。スウェーデンの約205万人の研究では、ASDのなりやすさのうち約50%が遺伝で説明できると推定されました[2]。育て方が原因ではありません。

🔍 Q. 次の子のためにできることは?

まず上の子の原因を調べると、次の子の確率を具体的に考えられることがあります。次の妊娠では、NIPTで一部の自閉症・発達障害の原因(微小欠失や一部の単一遺伝子の変化)を調べられます。ただし陰性でも自閉症でないとは言えません。

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自閉症遺伝子検査の内容 | 一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかる

自閉スペクトラム症(ASD)とは何か?疑問を持つ親子に向けたやさしい解説

自閉スペクトラム症(ASD)は、脳の発達のしかたに関わる特性のまとまりです。「スペクトラム(連続体)」という言葉のとおり、特性の現れ方や強さは人によって大きく違います。共通する特徴として、次の3つがよく挙げられます。

🧩 ASDでよくみられる特徴

特徴 具体的な例
人とのやりとり・コミュニケーション 言葉のやりとり、表情や身ぶりの読み取り、気持ちの共有が苦手なことがある
こだわり・くり返し 同じ動作をくり返す、特定のものに強い関心を持つ、決まった手順を好む
感覚の過敏さ・鈍さ 光や音、触られることにとても敏感、または逆に鈍いことがある

ASDは発達障害の一つで、多くは幼いころに気づかれます。米国の調査(2022年、8歳児、16地域)では、31人に1人(1,000人あたり32.2人)がASDと診断されており、男の子は女の子の3.4倍でした[5]。この調査は米国全体を代表するものではないと著者が断っており、数字は国や調べ方で変わります。特徴や接し方は自閉症スペクトラム(ASD)の特徴と原因・接し方で詳しく解説しています。

お子さんの発達が気になるときは、小児科などで相談し、評価を受けることが大切です。早くから支援につながることで、お子さんに合った関わり方を見つけやすくなります。

自閉症の遺伝子と遺伝の関係性に関する最新の研究とその意味

ASDには遺伝が大きく関わっています。スウェーデンで1982〜2006年に生まれた約205万人の家族を調べた研究では、ASDのなりやすさのうち遺伝で説明できる割合(遺伝率)は約50%と推定されました[2]。同じ研究では、ASDの子どもの一卵性双生児のきょうだいは、二卵性双生児や普通のきょうだいよりも、ASDと診断される割合がはるかに高くなっていました[2]。

ただし「遺伝が関わる」といっても、1つの遺伝子で決まるわけではありません。ASDに関わる遺伝の要因は、大きく次の2つに分けて考えると理解しやすくなります。

🧬 ASDに関わる遺伝の要因(2つのタイプ)

タイプ 内容 検査で見つかるか
影響の大きい1つの変化 1つの遺伝子の変化や、染色体の一部が欠けたり増えたりする変化(微小欠失・重複)。親にはなく子で新しく起きるde novo(デノボ)変異のことも多い 遺伝子検査や染色体の検査で見つかることがある
影響の小さい多くの違いの積み重ね 一つひとつは小さな遺伝子の個人差が、たくさん積み重なってなりやすさを高める 今の検査では、一人ひとりの原因として特定するのは難しい

染色体の一部が欠けたり増えたりする変化はCNV(コピー数バリアント)とも呼ばれます。

この違いは、兄弟の確率を考えるうえでとても大切です。上の子の原因が「影響の大きい1つの変化」として見つかれば、次の子の確率をその変化に合わせて考えられます。見つからなければ、下の章で紹介する研究の平均的な数字(約5人に1人など)を目安にすることになります。詳しくは「ASDの確率 ― 兄弟がいる家族でのリスク評価」で説明します。

自閉症の原因 ― 遺伝と環境要因の絡み合い

ASDの原因には、遺伝の要因と遺伝以外の要因の両方が関わっています。上の研究で遺伝率が約50%と推定されたということは、残りは遺伝以外の要因で説明される、ということでもあります[2]。遺伝以外の要因として妊娠中の環境などが研究されていますが、親の育て方や愛情不足が原因ではありません。

兄弟で自閉症・発達障害が多いのはなぜ?

きょうだいは、両親から受け継いだ遺伝子の約半分を共有しています。ASDのなりやすさに関わる遺伝子の違いをきょうだいで共有していることが多いため、一般の子どもよりASDが重なりやすくなります。実際、スウェーデンの研究では、同じ両親から生まれたきょうだいは、片方の親だけが同じきょうだい(異父・異母きょうだい)よりも、ASDが重なる割合が高くなっていました[2]。

兄弟で診断名が違う(片方はASD、片方はADHDなど)こともあります。ADHD(注意欠如・多動症)の遺伝についてはADHDは遺伝する?遺伝率70〜80%の本当の意味で解説しています。

💡 用語解説:遺伝率とは

遺伝率は、「集団の中で、ある特性のばらつきのうち、どれくらいが遺伝の違いで説明できるか」を表す数字です。「遺伝率50%=子どもに50%の確率で遺伝する」という意味ではありません。一人のお子さんが自閉症になる確率は、下の章のような家族の研究の数字で考えます。

兄弟間での自閉症のリスク ― 下の子が自閉症になる確率は約5人に1人

上の子にASDがあるとき、下の子がASDと診断される確率は、調べ方によって2種類の数字があります。1つは、上の子にASDがある赤ちゃんを研究として追跡した数字、もう1つは、国全体の登録データから計算した「なりやすさの倍率」です。

📊 兄弟で自閉症が重なる確率(主な研究)

研究 対象 結果
赤ちゃんのきょうだい研究(2024年) 上の子にASDがある赤ちゃん1,605人(18施設) 20.2%(約5人に1人)がASDと診断[1]
同じ研究グループの前回の報告(2011年) 上の子にASDがある赤ちゃん664人 18.7%がASDと診断[6]
スウェーデンの登録データ(2014年) 1982〜2006年生まれの約205万人 同じ両親のきょうだいにASDがあると、なりやすさは10.3倍[2]
6つの国・地域の登録データ(2019年) 1998〜2007年生まれの約255万人 兄や姉にASDがあると、なりやすさは8.4倍[3]
デンマークの登録データ(2013年) 1980〜2004年生まれの約150万人 兄や姉にASDがあると、なりやすさは6.9倍[4]

「倍」は、きょうだいにASDがない子どもと比べたなりやすさです。赤ちゃんのきょうだい研究は、研究に参加したご家族を専門家が丁寧に評価した数字で、国全体の登録データとは調べ方が違います。

2つの数字は、研究として専門家が赤ちゃんを評価した数字と、医療機関での診断の記録から計算した数字という、調べ方の違いがあるため単純には比べられません。どちらの研究でも共通しているのは、きょうだいにASDがあると、一般の子どもよりかなり高い確率でASDが重なるということです。一方で、裏を返せば、上の子にASDがあっても下の子の多く(約5人に4人)はASDと診断されていない、ということでもあります[1]。

男の子と女の子で確率は違う?

違います。2024年の赤ちゃんのきょうだい研究では、下の子が男の子なら25.3%、女の子なら13.1%がASDと診断され、男の子は女の子の約1.9倍でした[1]。これは、もともとASDが男の子に多いこと(米国の調査では3.4倍[5])とも一致します。

上の子が女の子のとき・ASDの上の子が2人以上いるとき

同じ研究では、ASDの上の子が2人以上いる家族では36.9%(1人のときは21.2%)、ASDの上の子が女の子の家族では34.7%(男の子のときは22.5%)と、さらに高くなりました[1]。また、両親の年齢や生まれた順番は、きょうだいの確率とはっきりした関係がみられませんでした[1]。

👪 下の子がASDと診断された割合(Ozonoffら, 2024)

家族の状況 ASDと診断された割合
全体 20.2%
下の子が男の子 25.3%
下の子が女の子 13.1%
ASDの上の子が1人 21.2%
ASDの上の子が2人以上 36.9%
ASDの上の子が男の子 22.5%
ASDの上の子が女の子 34.7%

出典:Ozonoffら(Pediatrics, 2024)[1]。研究に参加した家族(上の子にASDがある赤ちゃん1,605人)での数字です。

いとこ(兄弟同士の子ども)が自閉症のときは?

ご自身の兄弟姉妹の子ども、つまりお子さんのいとこにASDがある場合も、なりやすさは少し高くなりますが、きょうだいほどではありません。スウェーデンの研究では、いとこにASDがあると、なりやすさは2.0倍でした[2]。6つの国・地域の研究でも、いとこでは約2倍でした[3]。血のつながりが遠くなるほど、共有する遺伝子が少なくなるためです。

なお、両親が血のつながった者同士(いとこ婚など)の場合は、これとは別に、両親がともに同じ遺伝子の変化を持っているときに起こる潜性(劣性)遺伝の病気を考える必要があります(ご両親の保因者検査は下の章で紹介します)。いとこのリスクについては自閉症・発達障害はいとこに遺伝する?甥・姪にいる場合のリスクで詳しく解説しています。

兄弟が自閉症のとき、自分の子どもの確率は?

ご自身の兄弟姉妹にASDがあり、「自分の子どもはどうなのか」と心配される方も多くいます。ご自身の子どもから見ると、ASDがあるのはおじ・おばにあたり、きょうだいよりは血のつながりが遠くなります。この場合は、兄弟姉妹の原因がわかっているかどうかで考え方が大きく変わります。詳しくは自閉症と遺伝:兄弟と結婚における理解へのガイドと、知的障害の場合はきょうだいに知的障害|私が産む子どもの遺伝リスクは?で解説しています。

ASDの確率 ― 兄弟がいる家族でのリスク評価

ここまでの数字は、たくさんの家族の平均です。一つひとつの家族の確率は、上の子のASDの原因がわかっているかどうかで大きく変わります。臨床遺伝専門医がまず確かめるのは、この点です。

上の子に原因の遺伝子・染色体の変化が見つかった場合

上の子の検査で、ASDの原因と考えられる遺伝子の変化や染色体の微小欠失・重複が見つかったときは、次にご両親が同じ変化を持っているかを調べます。その結果で、次の子の確率の考え方が変わります。

🔬 原因が見つかったときの考え方

わかったこと 次の子の確率の考え方
ご両親にはなく、上の子で新しく起きた変化(de novo) 次の子に同じ変化が起きる確率は低いと考えられますが、ゼロではありません(下の「性腺モザイク」を参照)
親の片方から受け継いだ変化(顕性遺伝) 理論上、子どもが受け継ぐ確率は毎回50%。ただし同じ変化でも、特性の出方には個人差があります
両親がともに持つ変化(潜性遺伝) 理論上、毎回25%
お母さんが持つX染色体上の変化(X連鎖) 理論上、男の子では毎回50%が受け継ぐ。女の子は受け継いでも症状が軽いか、出ないことがある

遺伝のしかた(遺伝形式)については遺伝形式とは?顕性(優性)・潜性(劣性)からX連鎖までで解説しています。

「ご両親にはない新しい変化」でも、確率がゼロにならないのは、性腺モザイク(親の卵子や精子のもとになる細胞の一部だけに同じ変化がある状態)があり得るためです。この確率は一般に約1%と見積もられてきましたが、てんかん性脳症のお子さん120家族を詳しく調べた研究では、10家族(8.3%)で、親の血液や唾液の一部の細胞に同じ変化が見つかりました[7]。ASDだけを対象にした研究ではありませんが、「新しく起きた変化」の再発の確率は家族ごとに確かめる必要があることを示しています。

また、潜性遺伝やX連鎖の変化がわかった場合や、家族に遺伝の病気がある場合は、ご両親が同じ変化を持っているか(保因者かどうか)が大切になります。NIPTと同時に行うカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラスでは、女性787遺伝子・男性714遺伝子を調べられ、NIPTと同じ日に採血できます(単独では受けられません)。

原因が見つからない場合

遺伝子や染色体の検査をしても、はっきりした原因が見つからないことは少なくありません。これは「遺伝が関係ない」という意味ではなく、多くは影響の小さい遺伝子の違いの積み重ねによるもので、今の検査では一人ひとりの原因として特定できない、ということです。この場合は、上の表のような研究の平均的な数字(約5人に1人、男の子なら約4人に1人など)を目安に考えます[1]。

上の子の原因を調べる検査には、ASDに関わる遺伝子をまとめて調べる自閉症遺伝子検査、知的障害や発達の遅れを伴うときの発達障害・学習障害・知的障害遺伝子検査、染色体の微小欠失・重複を調べるマイクロアレイ染色体検査、遺伝子全体を広く調べる原因不明の症状の診断のための遺伝子検査(WES/WGS)があります。どれが合うかは、お子さんの特性や合併症、家族歴によって違います。

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次の妊娠で調べられること(NIPT)

次の妊娠を考えている方からは、「妊娠中にわかる方法はあるのか」という疑問がよく寄せられます。ASDそのものを妊娠中に診断する方法はありません。ASDは生まれたあとの行動や発達をみて診断するもので、多くの原因は影響の小さい遺伝子の違いの積み重ねだからです。

ただし、ASDの特徴を伴うことがある病気の一部は、妊娠中の採血で調べられます。当院のNIPT(新型出生前診断)で調べられる範囲は、プランによって次のように違います。22q11.2欠失症候群などは微小欠失症候群、レット症候群などは1つの遺伝子の変化で起こる単一遺伝子疾患です。

🧬 自閉症の特徴を伴うことがある病気と、調べられるプラン

病気 調べられるプラン
22q11.2欠失症候群・スミス・マゲニス症候群(17p11.2欠失) スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアル
16p11.2欠失・重複 双子マックス・インペリアル
フェラン・マクダーミッド症候群 インペリアル
レット症候群(MECP2)・結節性硬化症(TSC1・TSC2)・CDKL5の病気 ダイヤモンド・インペリアル

各プランの内容は、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルの各ページでご確認ください。

どの病気が対象かは一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるで一覧にしています。

微小欠失症候群の中には、知的発達への影響が軽めでも、行動や心の面の特性を伴いやすいものがあります。たとえば22q11.2欠失症候群では、国際共同研究で6〜12歳の子どもの37%にADHDがみられました[8]。

⚠️ 注意:NIPTで調べられるのは「一部」です

NIPTで調べられるのは、ASDの原因のごく一部です。NIPTが陰性でも、赤ちゃんがASDでないとは言えません。また、NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは羊水検査や絨毛検査などの確定検査で確かめます。

当院のNIPTは通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日でお知らせします(インペリアルプランの単一遺伝子の結果のみ3〜4週間)。陽性のときは、羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。上の子がいる方がNIPTを受ける意味は35歳で二人目を妊娠。上の子がいるからこそNIPTを受けるべき理由とは?でも解説しています。

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支援と早めの介入 ― 家族が知るべきこと

早期発見と適切な支援プログラムの紹介

上の子にASDがあるご家庭では、下の子の発達を早めに見守ることに意味があります。日本では、各都道府県・指定都市の発達障害者支援センターが、発達障害のある人とご家族の相談支援・発達支援・就労支援・情報提供を行っています。また、ご家族を支える事業(ピアサポートやペアレントトレーニングなど)も、国の施策として整えられています[9]。

分からないこと、疑問点に対する専門家への相談方法

発達の心配は、小児科・児童精神科、地域の発達障害者支援センターや保健センターなどで相談できます。相談のときは、気になる行動を具体的に書き出したメモや、母子健康手帳、これまでの検査や診断の記録を持っていくと、話が進みやすくなります。遺伝や次の子の確率についての疑問は、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで扱います。

自閉症を持つ子どもの発達と子育てのチャレンジ

ASDのお子さんの子育てでは、コミュニケーションや感覚の特性に合わせた関わり方が求められます。療育や個別の教育的支援を活用しながら、お子さんの得意なことを伸ばしていくことが大切です。ご両親が疲れをため込まないよう、支援機関や親の会など、頼れる先を持っておくことも大切です。

兄弟間の関係と家族の対応

ASDのお子さんのきょうだいは、我慢をしたり、気持ちをうまく言えなかったりすることがあります。ASDのない側のきょうだいにも、一対一で関わる時間をつくり、気持ちを話せる場をつくることが助けになります。きょうだいそれぞれの特性に合わせて関わることで、家族全体が過ごしやすくなります。

母親と父親、両親の役割と支援

子育ての負担が片方の親に偏らないよう、ご両親で役割を話し合い、分け合うことが大切です。悩みを共有し、必要に応じて専門家の助言を受けながら、無理のない形を見つけていきましょう。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「約5人に1人」は、あなたの家族の数字とは限らない】

兄弟の確率の数字は、たくさんの家族の平均です。上の子に原因の遺伝子の変化が見つかり、それがご両親にない新しい変化だとわかれば、次の子の確率はこの平均よりずっと低く考えられることがあります。反対に、親から受け継いだ変化であれば、平均より高くなることもあります。臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、平均の数字だけで次の子のことを決めず、まず上の子の原因を知ることです。

また、ASDは女の子では少ない分、女の子のきょうだいにASDがある家族で次の子の確率が高く出たという結果は、家族に共通する要因が大きい可能性を示していると考えています。数字に振り回されるのではなく、ご家族の状況に合わせて数字を読み解くこと、それが次の妊娠を考えるときの支えになると考えています。

まとめ

上の子がASDのとき、下の子がASDと診断される確率は、赤ちゃんのきょうだい研究で20.2%(約5人に1人)、国の登録データでは一般の約7〜10倍でした。男の子、ASDの上の子が2人以上、ASDの上の子が女の子の場合は、さらに高くなります。いとこにASDがある場合は約2倍で、きょうだいより低くなります[1][2][3][4]。

兄弟で多いのは、ASDに遺伝が大きく関わり、きょうだいが遺伝子の約半分を共有しているためで、育て方が原因ではありません。次の子の確率は、上の子の原因が見つかったかどうかで考え方が変わります。次の妊娠では、NIPTで一部の原因を調べられますが、陰性でもASDでないとは言えないことを知ったうえで選ぶことが大切です。

🏥 上の子の原因を知ること、次の妊娠で調べられることから考える

自閉症遺伝子検査では、自閉症との関連が報告されている122遺伝子をまとめて調べ、血液・唾液・頬の粘膜のいずれかで検査できます。次の妊娠では、NIPTで一部の自閉症・発達障害の原因(微小欠失や単一遺伝子の変化)まで調べられ、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。

まだ決めていない方は:一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかる | 出生前診断(NIPT)を受けるべきか迷う方へ

よくある質問(FAQ)

Q1. 兄弟で自閉症になる確率はどのくらいですか?

上の子に自閉スペクトラム症(ASD)がある赤ちゃん1,605人を追跡した研究では、20.2%(約5人に1人)がASDと診断されました。国全体の登録データでは、兄や姉にASDがあると、ないときの約7〜10倍のなりやすさでした。一方で、下の子の多く(約5人に4人)はASDと診断されていません。

Q2. 兄弟で自閉症・発達障害が多いのはなぜですか?

ASDには遺伝が大きく関わっており、きょうだいは遺伝子の約半分を共有しているためです。スウェーデンの約205万人の研究では、ASDのなりやすさのうち約50%が遺伝で説明できると推定されました。親の育て方が原因ではありません。

Q3. 男の子と女の子で、きょうだいの確率は違いますか?

違います。上の子にASDがある赤ちゃんの研究では、下の子が男の子なら25.3%、女の子なら13.1%がASDと診断されました。また、ASDの上の子が2人以上いる家族では36.9%、ASDの上の子が女の子の家族では34.7%と、さらに高くなりました。

Q4. いとこ(兄弟同士の子ども)が自閉症だと、うちの子の確率は上がりますか?

少し上がりますが、きょうだいほどではありません。スウェーデンの研究では、いとこにASDがあると、なりやすさは2.0倍でした。6つの国・地域の研究でも約2倍でした。血のつながりが遠くなるほど、共有する遺伝子が少なくなるためです。

Q5. 上の子に原因の遺伝子の変化が見つかったら、次の子の確率はわかりますか?

より具体的に考えられるようになります。ご両親にない新しい変化(de novo変異)なら、次の子の確率は低いと考えられますが、親の卵子や精子のもとになる細胞の一部に同じ変化がある性腺モザイクのため、ゼロではありません。親から受け継いだ変化なら、遺伝のしかたに応じて理論上25〜50%になります。原因が見つからないときは、研究の平均的な数字を目安にします。

Q6. 次の妊娠でNIPTを受ければ、赤ちゃんが自閉症かどうかわかりますか?

自閉症そのものはわかりません。NIPTで調べられるのは、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、MECP2・TSC1・TSC2・CDKL5などの一部の単一遺伝子の変化といった、自閉症の特徴を伴うことがある病気の一部です。NIPTが陰性でも、赤ちゃんが自閉症でないとは言えません。当院のNIPTは通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

Q7. ダウン症候群のほかにも、調べておいたほうがよい病気はありますか?

行動の特性や自閉症の特徴を伴いやすいのは、ダウン症候群のような染色体の数の変化よりも、微小欠失症候群や単一遺伝子の病気です。たとえば22q11.2欠失症候群では、国際共同研究で6〜12歳の子どもの37%にADHDがみられました。NIPTのプランによって、こうした病気をどこまで調べられるかが違います。

Q8. 自分の兄弟が自閉症の場合、自分の子どもも自閉症になりますか?

必ずなるわけではありません。ご自身の子どもから見ると、ASDがあるのはおじ・おばにあたり、きょうだいよりは血のつながりが遠くなります。兄弟姉妹の原因の遺伝子の変化がわかっていれば、ご自身がその変化を持っているかを調べることで、より具体的に考えられます。

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参考文献

  • [1] Ozonoff S, Young GS, Bradshaw J, et al. Familial Recurrence of Autism: Updates From the Baby Siblings Research Consortium. Pediatrics. 2024;154(2):e2023065297. [DOI 10.1542/peds.2023-065297] [PubMed 39011552]
  • [2] Sandin S, Lichtenstein P, Kuja-Halkola R, et al. The familial risk of autism. JAMA. 2014;311(17):1770-1777. [DOI 10.1001/jama.2014.4144] [PubMed 24794370]
  • [3] Hansen SN, Schendel DE, Francis RW, et al. Recurrence Risk of Autism in Siblings and Cousins: A Multinational, Population-Based Study. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2019;58(9):866-875. [DOI 10.1016/j.jaac.2018.11.017] [PubMed 30851399]
  • [4] Grønborg TK, Schendel DE, Parner ET. Recurrence of autism spectrum disorders in full- and half-siblings and trends over time. JAMA Pediatr. 2013;167(10):947-953. [DOI 10.1001/jamapediatrics.2013.2259] [PubMed 23959427]
  • [5] Shaw KA, Williams S, Patrick ME, et al. Prevalence and Early Identification of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 4 and 8 Years — Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network, 16 Sites, United States, 2022. MMWR Surveill Summ. 2025;74(2):1-22. [DOI 10.15585/mmwr.ss7402a1]
  • [6] Ozonoff S, Young GS, Carter A, et al. Recurrence risk for autism spectrum disorders: a Baby Siblings Research Consortium study. Pediatrics. 2011;128(3):e488-e495. [DOI 10.1542/peds.2010-2825] [PubMed 21844053]
  • [7] Myers CT, Hollingsworth G, Muir AM, et al. Parental Mosaicism in “De Novo” Epileptic Encephalopathies. N Engl J Med. 2018;378(17):1646-1648. [DOI 10.1056/NEJMc1714579] [PubMed 29694806]
  • [8] Schneider M, Debbané M, Bassett AS, et al. Psychiatric disorders from childhood to adulthood in 22q11.2 deletion syndrome: results from the International Consortium on Brain and Behavior in 22q11.2 Deletion Syndrome. Am J Psychiatry. 2014;171(6):627-639. [DOI 10.1176/appi.ajp.2013.13070864]
  • [9] 厚生労働省. 発達障害者支援施策の概要. [厚生労働省]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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