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大人の自閉症とは?特徴や具体的な困りごと|当てはまった方がすべき行動まで徹底解説

社会人になり人間関係が上手くいかなくなった方の中には、ご自身が自閉症ではないかと疑う人もいます。

実際、学生時代は自閉症の症状があったとしても個性やキャラクターとして周りの人に受け入れられており、障害に気づかず生活していたという可能性もあります。

そこでこの記事では、自閉症を疑っている方向けに、以下の内容について解説します。

  • ・自閉症の基礎知識や社会人になり困る具体的なこと
  • ・自閉症の方に向いている仕事

社会人になり人間関係や仕事が上手くいかず悩んでいる方は、この記事を最後まで読むことで解決する方法を見つけられるかもしれません。

自閉症とは?自閉症スペクトラム(ASD)と意味は同じ?

自閉症とは生まれつきの脳機能の障害のことです。アスペルガー症候群や広汎性発達障害と合わせて「自閉症スペクトラム」と呼ばれます。

では、自閉症の基礎知識について詳しく解説します。

自閉症とは?

自閉症とは、以下の特徴を持った生まれつきの脳機能の偏りによって引き起こされる障害のことです。

  • ・対人関係の構築が難しい
  • ・言葉や知能の発達が遅い
  • ・興味・関心の範囲が狭く、特定のことに強いこだわりを示す

また、2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)によると「自閉症」という呼び方は廃止されて、以下の3つの障害を統合して「自閉症スペクトラム(ASD)」と呼ばれるようになったことが分かります。

  • ・自閉症
  • ・広汎性発達障害
  • ・アスペルガー(Asperger)症候群

発症は3歳ぐらいからと言われていますが、幼少〜学童期にかけては個性やキャラクターとして周りに受け入れられるため、障害に気がつかないケースも稀ではありません。

一方で社会人になると「協調性や強力性がないこと」「意思疎通が難しい」など症状が表面化し、自身がASDであることに気づくことがあります。社会人として働くようになり「周りとの関係や仕事が上手くいかない」と悩んでいるなら、ASDを疑っても良いでしょう。

※参考資料
文部科学省/自閉症・情緒障害とは
厚生労働省 e-ヘルスネット/ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について

ASDの併存症について

ASDは様々な障害を併存している可能性のある障害です。

厚生労働省のデータによると、以下の障害は併存している可能性があると分かります。

  • ・知的能力障害(知的障害)
  • ・ADHD(注意欠如・多動症)
  • ・発達性協調運動症(DCD)
  • ・不安症
  • ・抑うつ障害
  • ・学習障害(限局性学習症、LD)
  • ・てんかん
  • ・睡眠障害,,,etc

そして1つの精神疾患を併存している確率は「70%」、2つ以上では「40%」というデータもあります。このことから、ASDと診断された時点でそのほかの併存症が伴う確率が非常に高いのです。

※参考資料:厚生労働省 e-ヘルスネット/ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について

大人のASD(自閉症スペクトラム)が社会生活で困ること5選|具体例を用いて解説

果物と野菜がいっぱい入ったバスケットを持つ庭で働く自閉症の男性

「自閉症かも」と疑っている方は、以下の5つの困りごとがないか確認してみてください。

  • 困ること①:対人コミュニケーションが苦手
  • 困ること②:同じミスを何度も繰り返す
  • 困ること③:指示やルールを理解できない
  • 困ること④:急なスケジュール変更に対応できない
  • 困ること⑤:仕事に集中できない

当てはまる方はASDの可能性もあるため、受診を検討できます。

困ること①:対人コミュニケーションが苦手

相手の気持ちが理解できず、意思疎通ができないなど、対人コミュニケーションで困ることがあります。ASDの方は、相手の立場に立って物事を考えるのが苦手という特徴があるからです。

具体的には、以下の状況が挙げられます。

  • ・相手の言葉のニュアンスを汲み取れない
  • ・相手の意図したことをイメージできない
  • ・一方向のコミュニケーションになる
  • ・思ったことをそのまま口に出してしまう

相手を不快な気持ちにさせている自覚はないため、相手が怒っても「なぜ今怒っているのか分からない」と感じます。また、自分の言いたいことを一方的に話すだけの言葉のキャッチボールができないことも多々あります。

このような状況が続くと周りから徐々に避けられ、ASDの方自身も対人関係に悩みます。

困ること②:同じミスを何度も繰り返す

ASDの人は仕事のルールやマニュアルを厳守することはできますが、その都度起きた事象に対して臨機応変に対応することはできません。また、一度身についたルールやマニュアルを変えることが難しい傾向にあります。

そのため、初めて覚えた方法が間違っていると、その後はずっと同じミスを繰り返してしまいます。結果として上司や同僚の信頼を失い、会社で必要とされなくなるのです。

対策として、繰り返すミスとその対応を一覧にしておき、いつでも確認できるようにしておきましょう。臨機応変な対応ができなければ、その都度確認で切るようにしておきます。

繰り返しミスを予防が習慣化すると大きなミスは確実に減ります。ASDの方によっては時間がかかるかもしれませんが、確実に改善できる方法なのでご安心ください。

困ること③:指示やルールを理解できない

ASDの方は、指示を理解するのに時間がかかる特徴があります。

なぜなら、文字や文章だけだと内容や相手の意図したことをイメージできないからです。特に以下のような指示の理解は苦手です。

  • ・口頭指示
  • ・一度に大量の情報を伝えられる
  • ・抽象的な指示

指示内容をしっかりと理解できないため、いつまでも足踏みをして前に進めなくなります。つまり、思考停止状態になってしまうということです。

対策として、視覚情報を含めて指示を受け取れるように工夫すると良いでしょう。視覚情報が加わると指示の具体的なイメージを持つことができ、仕事のミスを格段に減らせます。

また、抽象的な指示をそのままにせず、具体的なイメージが持てるまで確認しておくことも効果的です。

困ること④:急なスケジュール変更に対応できない

急なスケジュール変更があると柔軟に対応できないASDの方もいます。

ASDの方は予定に対しては忠実に従うことができます。一方で急なスケジュール変更に対しては、臨機応変に対応できず、最悪の場合、パニックを引き起こすこともあります。

そこで、常に予定変更をイメージしながら行動すると良いでしょう。想定内のことであれば安心して行動したり、ある程度の対応ができたりするからです。また、仕事中であれば上司へ小まめに進捗状況の報告をして、大幅な軌道修正を予防することも大切です。

上記のような対策をしつつ、急なスケジュール変更があった時も落ち着いて対応できるようにしておきましょう。

困ること⑤:仕事に集中できない

ASDの方は外的な刺激に過敏という特性もあり、仕事に集中できないと悩むケースも少なくありません。

例えば、都市部にオフィスを構える会社に就職すると、人や車通りの音・工事の騒音などが気になり、仕事が手につかないという人もいます。反対に田舎の職場など静かな環境だとわずかな物音が気になり、かえって仕事に集中できないと悩むASDの方もいます。

つまり、外的な刺激の感じ方はASDの方それぞれで異なるため、実際に働いてみないと分からない部分があるのです。

そこで外的な刺激を予防するために、以下の対策を行うと良いでしょう。

  • 光:カーテンやブラインドの使用、日光の少ない席に変更してもらう
  • 音:イヤホンや耳栓の使用、人が少ない時間帯に勤務させてもらう、リモートワークの申請
  • ニオイ:マスクの着用、自分のデスクにアロマを置かせてもらう

ただし、他の社員との協調性も大切であるため、理由を説明した上で実行することをおすすめします。職場によっては容認されにくいことも考えるため、周りとの関係性を考慮した行動ができるようにしましょう。

ASD(自閉症スペクトラム)の原因と特徴

デジタルメディアに取り組む自閉症と診断された成人男性

この章では、ASDの原因と特徴について解説します。

今悩んでいることがASDの特徴によるものなのかを確認するのに、ご活用ください。

ASDの原因

ASDの明確な原因は、現在のところ特定されていません。

しかし近年、生まれつき脳機能の発達の偏りが原因で発症することがわかってきました。そして、ASDの兄弟や双生児を対象とした研究では、複数の遺伝子が発症に関係していると考えられています。

つまり、ご両親の育児や愛情不足でASDが発症するという考え方は、間違っていると証明されたのです。「育った環境や親との関係性が原因でASDになったのでは?」と悩んでいる方は、ご安心ください。

ASDの特徴

ASDの発症(症状が表面化)する時期は人それぞれですが、多くの場合、およそ3歳ごろに発症すると言われています。

しかし、学童期まではASDの症状も個性やキャラクターとして周りに受け入れられることが多く、障害に気づいていないケースも少なくありません。

一方で社会に出るとASDの症状が徐々に現れ始めます。というのも、ASDの方は対人コミュニケーションが苦手であるにも関わらず、会社では他者との協調性や協力性を求められるからです。

会社ごとのルールやマニュアルもあり、人間関係の構築も一から始まります。新たな環境に身を置くことで、これまで気づかなかった自分の特徴が分かり、ASDの可能性を疑うのです。

例えば、以下のような症状があればASDが疑われます。

  • ・会社の人間関係の構築やコミュニケーションが上手くできない
  • ・上司にいつも同じミスを指摘される
  • ・環境変化についていけず、憂うつな毎日を送っている
  • ・社内の音やニオイなどが気になり仕事に集中できない

上記のような自覚症状があれば、ASDを疑い病院を受診することも視野に入れましょう。

ASD(自閉症スペクトラム)の診断

医療 顔なし

ASDの確定診断には、専門病院の受診が必須です。

そして、病院では検査が行われます。

  • ・問診
  • ・スクリーニング検査
  • ・血液検査
  • ・MRI、脳波検査(必要に応じて)

これらの検査データと国際的な診断基準(DSM-5)を総合して、ASDの確定診断を行います。

ただし、ASDなどの発達障害の診断は、心臓や消化器疾患のように検査データによる100%の裏付けができません。そのため、診断する医師の経験や知識に左右される弱点もあるのです。

一度検査をしただけでは診断が難しいケースもあり、何度か受診して確定診断を出すこともあります。また、日常生活に支障が出ていない程度の症状であれば、診断に至らないことも十分に考えられると知っておきましょう。

ASD(自閉症スペクトラム)の方におすすめの仕事3選

ASDの方であっても普通通り社会生活を送ることはできます。ただし、ご自身の特徴や症状の程度を正しく知り、最適な仕事を選ぶことがカギになります。

そこでこの記事では、ASDの方におすすめの仕事を紹介します。

ご自身に合った仕事に転職したいとお考えであれば参考になる内容なので、ぜひご覧ください。

仕事①:IT業

1人で黙々と作業をすることが多いIT業は、ASDの方におすすめの職種です。

他人にペースをみ出されることなく、対人コミュニケーションも最小限に抑えられるからです。また、リモートワークを導入している会社が近年増えているため、慣れ親しんだ自宅環境で仕事ができ、新しい環境へ適応するストレスも軽減できるでしょう。

具体的な職種は、以下の通りです。

  • ・WEBライター
  • ・WEBデザイナー
  • ・プログラマー
  • ・イラストレーター
  • ・人事・経理・総務
  • ・転職サイトなどのオペレーター
  • ・テレアポ

ASDの方は集団行動や対人関係の構築が苦手です。一方で特定のことに強いこだわりや興味を持てる特徴があります。つまり、上記で紹介した専門性が高く、1人でも行える仕事は非常に適していると考えられるのです。

仕事②:運送・配送業

人と関わるのが苦手と感じるなら運送・配送業もおすすめです。

期限・時間内に荷物を届けなければいけないという制約がある一方、比較的単純な作業が多く、1人の時間を多く持てるからです。対人コミュニケーションが苦手で、 単純作業をこなすことに苦痛がないASDの方に向いているでしょう。

具体的な職種は、以下の通りです。

  • ・トラック運転手
  • ・宅急便
  • ・郵便配達員

そして、配送先の方ともその場限りのやりとりで済むため、毎日同じメンバーに顔を合わせる会社員よりも人的ストレスも減らせます。

仕事③:芸術業

ASDの方は特定のことに強いこだわりを持つ傾向にあります。

つまり、一度興味を持ったことはとことん追求する芸術肌ということであり、この特性はASDの方の強みそのものです。そのため、専門性を極め芸術・美的センスを伸ばすのに向いていると考えられます。

具体的な職種は、以下の通りです。

  • ・イラストレーター
  • ・ゲームクリエーター
  • ・デザイナー(WEB・アパレ・工学系など)
  • ・アニメーター
  • ・カメラマン

絵やデザイン、写真など得意・興味があることを活かした仕事を選ぶのも選択肢の一つです。実際、重度ASDの診断を受けた私の友人も、看護師からイラストレーター に転職して、今では独立して事務所を構えるまでになりました。

また、これらの職種はすべて視覚情報がメインで行われるものという共通点があります。文字や言葉だけだと理解やイメージが難しいと感じるASDの方にとって、視覚情報の多い仕事は進めやすいのでしょう。

大人のASDが受けられる社会的なサポートと相談先

リハビリテーション センターの机に座っている障害を持つ陽気な成人男性

ASDに関する悩みを解決するのに重要なことは、絶対に1人で悩まないことです。

1人で悩んでも解決することはないからです。

そこでこの章では、ASDの方が受けられる社会的なサポートや相談先についてお伝えします。

公共編:社会的なサポート

大人のASDの方が受けられる社会的なサポートは、以下の通りです。

  • ・自立支援医療(精神通院医療)
  • ・精神障害者保健福祉手帳
  • ・障害者雇用枠での就職

自立支援医療(精神通院医療)は、ASDの治療に伴う通院費を減らせるサポート制度です。通常の受診だと「3割負担」のところ、ASDの診断が出ている場合は「1割負担」まで抑えられます。

特に社会人になりASDであることが分かった方は、新入社員で給料も低く、通院に裂けるお金もありません。少しでも経済的な負担を減らすためにも申請して損はないでしょう。市区町村の障害福祉課が窓口なので、ASDの診断後に相談しましょう。

精神障害者保健福祉手帳とは、一定以上の精神障害がある方に厚生労働省から交付される手帳のことです。「所得・住民税の控除」や「公共料金の割引」などのサポートを受けられます。市区町村の担当窓口にて申請ができるので、一度相談してみましょう。

また、ASDと診断されれば、障害者雇用枠での就職もできます。今の会社が辛く、もっと自分にあった仕事がしたいなら、転職が有利になるチャンスです。まずは転職先が「障害者雇用枠」を設けているか確認してみましょう。

※参考資料:厚生労働省/精神障害者保健福祉手帳

会社編:社会的なサポート

社会人になりASDと診断された場合、会社で良好な人間関係を築き、最小限のストレスで働きたいと考えるのは当然の流れです。

そして、会社によっては「診断した医師」と「産業保健スタッフ」が連携し、あなたが過ごしやすい職場環境を整えてくれることもあります。社内での全てのトラブルの原因をASDの症状にせず、その他の原因や課題を探るきっかけにもなるでしょう。

また、産業保健スタッフにより健康チェックや心的ケアなどを受けながら、仕事を長く続けられるようなサポートもしてもらえます。

ASDであると1人で悩んでも解決することはありません。周りに相談や協力してもらいながら、上手く付き合っていく方法を探ることも大切なのです。

ASDについての相談先

自分の症状や現状について誰かに相談したいと思っても、具体的に「誰に」「どのような」相談をして良いか分かりませんよね?

大人のASDについて相談するなら、以下の施設を活用すると良いでしょう。

  • ・専門病院
  • ・発達障害者支援センター
  • ・自助会

ASDは完治しません。障害をコントロールしながら上手く付き合っていくことが求められます。そのため、専門家や実際にASDで悩んでいる方に相談するのが、1番の解決策になります。

それぞれの施設の特徴と相談するメリットについては「発達障害の種類|子どもの成長具合が心配な親が今すべき全ての行動を解説」の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ: 大人ASDでも社会生活を送ることは可能

彼女の 10 代の息子を持つアジアの母親の肖像画

以上、大人のASD(自閉症スペクトラム)について解説しました。

社会人になり、初めてASDに気づくという方も少なくありません。例えば、以下の特徴があればASDの可能性があります。

  • ・対人コミュニケーションが苦手
  • ・特定のことに強いこだわりがある
  • ・外的な刺激に敏感

ASDであったなら1人で悩んでも解決することはありません。そのため、病院や発達支援センターなどで相談して適切に対処することが必要でしょう。

また、ご自身の特性を知った上で仕事を選べば、今よりもストレスを減らして働き続けることも十分可能なのでご安心ください。

わかりやすく動画で紹介

【実は結構多い!】大人の発達障害 現役医師がこっそり教えます

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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