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卵巣嚢腫とはどんな病気?診断方法や治療法・手術費用など詳しく解説

卵巣の病気と聞くと中年や高齢の女性が罹るというイメージがあると思いますが、卵巣嚢腫は若い女性にも少なくない病気です。

卵巣は、子宮の左右にひとつずつあり、通常の健康な状態では2~4cm程度です。

その卵巣が腫瘍になり、それが大きくなっても自覚症状がないことが多く「太ったかしら?」程度にしか思わないこともしばしばです。

卵巣の病気に縁がないと思われている若い方にこそ多いといわれる卵巣嚢腫が、どんな病気で、どうやって診断されるのか。

卵巣脳腫の治療法なども交えて詳しく解説し、是非早期発見のきっかけにして頂ければと思います。

卵巣嚢腫とは

卵巣のイメージ画像

卵巣は、その細胞がいろんなものに分化する能力があり、細胞分裂が盛んなため多種多様な腫瘍ができやすい臓器です。

受精していないのに、人の体を作るための分裂をしてしまう所為で、様々な性質の卵巣腫瘍が発生します。

卵巣嚢腫とは、そんな卵巣腫瘍の中のひとつで、卵巣にさまざまな内容物が溜まり、腫れる病気です。

このように、卵巣嚢腫が発生するメカニズムは分かっていても、発生する原因についてはまだ解明されていないので、予防法も発見されていません。

そして卵巣は「沈黙の臓器」と言われており、腫瘍になっても自覚症状がない場合が多く、悪化の状況が分かりにくいため、腫瘍を発見した際は定期的に超音波検査を受けて、積極的に経過を見ることが必要です。

よく似た名称で「膿腫」がありますが、別名「膿瘍」とも呼ばれ、腫瘍が大きくなるまで症状がない子宮筋腫に対して、膿腫は膿を排出するまで痛みと熱が持続する細菌感染なので、別物です。

4種類の卵巣嚢腫がある

卵巣嚢腫は、その溜まっている内容物の違いによって4種類あります。

漿液(しょうえき)性嚢胞腺腫

漿液性嚢胞腺腫は一般的には両側性で、10~30代の女性が多く発症します。

卵巣から分泌される漿液と呼ばれる無色や淡黄色の、水のようなサラサラした液体が溜まることでできる、円形や楕円形の腫瘍です。

粘液(ねんえき)性嚢胞腺腫

粘液性嚢胞腺腫を発症するのは閉経後の女性が多く、こちらも円形や楕円形をしています。

片側性が多く、ドロドロとネバついた液体が溜まってできる腫瘍で、非常に大きくなることがあります。

皮膚嚢腫・成熟嚢胞性奇形種

20~30代の女性に多く発症する皮膚腫瘍・成熟嚢胞性奇形種は、両側性が多く、閉経後にがん化することが稀にあります。

毛髪や歯・骨、爪や脂肪を含むドロドロした塊りが溜まってできる腫瘍です。

卵巣子宮内膜性嚢胞(チョコレート嚢胞)

本来は子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、卵巣にできてしまう子宮内膜症という病気があります。

その子宮内膜症が原因で起こる卵巣子宮内膜症嚢胞は、10代後半~40代前半と広範囲の女性に発生します。

通常であれば妊娠に向けて準備された内膜は、妊娠がないと剥がれ落ち、出血して生理となりますが、それが本来の場所ではない卵巣で起きてしまうので、排出できない古い血液が卵巣内に溜まってチョコレート状になり、嚢胞になります。

自覚症状

卵巣嚢胞だけではなく、卵巣腫瘍自体、小さいうちは全くと言っていいほど自覚症状がありません

腫瘍が握りこぶし大くらいになると、周辺の臓器を圧迫し、お腹が張る感じになったり、腰が痛くなったりしてきます。

さらに進むと、便秘や頻尿を引き起こします。

大きくなると30cm以上にもなり、大きさによっては下腹部痛が起きたり、腹部に腫瘤感(こぶのような塊)が出てきたりします。

いくら良性といえども、大きくなった卵巣嚢腫をいつまでも放置していると、内容物が溜まり過ぎて破裂したり、卵巣の付け根が捻れる茎捻転になったりと、急な腹部の激痛を引き起こし、最悪の場合、悪性化することも稀にあります。

茎捻転は、場合によっては捻れが自然に解けて痛みが収まることもありますが、完全に捻れてしまうと元に戻らず、痛みの他に嘔吐やショック状態などを引き起こすうえ、卵巣への血液が止まってしまい、壊死を招くことになりますので、卵巣を摘出する緊急手術になる場合があります。

診断方法

卵巣嚢腫の診断は、卵巣腫瘍と同様の診断で行われます。

内容物が脂肪・毛髪などの場合、超音波検査の段階で卵巣嚢腫と判断できますが、漿液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺腫の場合は、早々には判断しにくい症例となりますので、それ以上の検査が必要になります。

以下に示す、通常の診察なども含まれる項目で、割と容易に診断が可能です。

  • 外診
  • 内診
  • 超音波検査
  • 細胞診

ここまでの検査で卵巣嚢腫と疑われた場合、必要となればさらに以下の検査を行い詳しく調べます。

  • CT・MRI
  • 尿検査
  • 血液検査
  • 腫瘍マーカー

これらの検査の結果、更に疑わしい場合、最終的には手術によって組織を切り取り病理検査をして、悪性度を診断します。

良性と悪性の診断について

卵巣にできる腫瘍は、嚢胞性腫瘍充実性腫瘍の、大きく二つに分けられます。

嚢胞性腫瘍は内容物が主に液体のため、触るとぶよぶよしていますが、それに対して充実性腫瘍は硬さがあるしこりです。

充実性腫瘍は卵巣腫瘍の中でも約1割ですが、悪性(卵巣がん)の可能性が高くなります。

一方、嚢胞性腫瘍は主に卵巣嚢腫のことを指し、卵巣腫瘍の80~90%は卵巣嚢腫と考えられ、そのほとんどが良性と言われていますが、卵巣腫瘍自体の良性と悪性の判別が難しいので、きちんとした検査が必要です。

卵巣嚢腫の治療法

卵巣の手術を受けた女性

卵巣嚢腫は良性の腫瘍ですが、その大きさにより経過観察になるか治療をするかが分かれます

一番の問題とされるのは茎捻転で、卵巣嚢腫の大きさが5cmを超えると茎捻転が起こりやすいと考えられているので、何かしらの治療が必要です。

また、大きさが10cmを超えると逆に茎捻転は起こりにくくなりますが、今度は悪性化する可能性が出てくるので、やはり放置はできません。

卵巣嚢腫の治療は、一般的には嚢腫のみの切除手術になりますが、あまりの大きさや状態や条件によっては卵巣ごとの摘出となり、大がかりな手術になります。

卵巣嚢腫摘出術と付属器摘出術

卵巣嚢腫の摘出術には、以下の2種類のうちのどちらかを適応します。

卵巣嚢腫摘出術は、妊娠の希望がある場合や、切除する腫瘍が悪性ではない場合に行われ、卵巣の正常な部分を残して嚢腫のみを取り除きます

付属器摘出術は、卵巣、または卵巣と卵管の両方という、臓器ごと摘出する手術で、茎捻転時の応急処置としての手術の場合や、悪性化の可能性がある40歳以上の年齢の場合、成長が早く急激に大きくなっている場合などに選択されます。

患部を実際に見たうえで、病状によっては施術中に卵巣嚢腫摘出術から付属器摘出術に急きょ変更する場合もあります。

腹腔鏡手術

悪性の可能性が無い場合は、腹部に数ヶ所、1cmや5mmの小さな穴程度に切開し、腹部内に炭酸ガスを入れて膨らませ、スペースを確保して行う腹腔鏡手術が可能です。

穴には筒状のポートと言われる管を入れ、そこから内視鏡(手術用のカメラ)や、鉗子(挟む・けん引する・圧迫するなどが行える手術器具)、鋏などを入れることができ、開腹することなく体内で手術をすることができます

開腹手術は痛みも身体に受けるダメージが大きいので、通常の切除手術の場合は、開腹手術よりも体に優しい腹腔鏡手術が主流になっています。

入院日数は一般的には1週間から10日程度で、費用はおよそ40~80万円となりますが、そのうち3割の自己負担になるうえ、高額療養費制度も適用可能なので、限度額までの負担で済みます

開腹手術

悪性の疑いがある場合や、手術歴があり腹腔内の癒着がある、近辺臓器の状態の確認が必要な場合など、腹腔鏡手術を選べない場合もあります。

その際は開腹手術となり、5~10cm程切開して、患部を摘出します。

入院期間は10日~2週間、費用は腹腔鏡手術に比べ若干安くなりますが、健康保険と高額療養費制度を適用すると、腹腔鏡手術とさほど変わらない費用で済みます。

ホルモン療法

チョコレート嚢胞については、術前の場合はホルモン療法での嚢胞の縮小を図るなど、術後の場合は再発予防のためにホルモン療法を行うこともあります。

チョコレート嚢胞の原因となる子宮内膜症も、術後に再発する可能性があるので、予防としてホルモン剤を投与する場合があります。

チョコレート嚢胞以外の卵巣嚢腫については、発生の予防法は今のところないので、経過を見守る必要があります。

ルテイン嚢胞

妊娠初期や絨毛性疾患の場合、分泌されるホルモンの関係で卵巣が大きくなることがあり、その場合の症例をルテイン嚢胞と呼びます。

妊娠初期の場合は、原因であるホルモンがおよそ妊娠10週辺りをピークに分泌が減っていくので、14週辺りまで様子を見ます

5cmよりも縮小するようであればルテイン嚢胞と診断され、特に治療は必要ありませんが、卵巣嚢腫の場合は週数を待っても小さくはならないので、大きさに合った治療に切り替えます。

目安として、5cmを超えるようであれば茎捻転に繋がる危険性があるので、手術を検討することになります。

妊娠中であれば、子宮がまだあまり大きくなっていない14~16週辺りで手術となり、一般的には開腹手術が選択されますが、最近では腹腔鏡手術で対応した症例も多数報告されています。

まとめ

卵巣嚢腫について、自覚症状や診断方法、治療法や手術の相場など、詳しく解説させて頂きました。

妊娠中のお腹の痛みや、年齢による不安など、女性の婦人病に対する悩みはつきませんが、それでも早期に発見して、しっかりと見守ることで、防げる事態も大いにあります。

この記事が、気になる症状についての早めの受診に繋がれば幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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