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化学流産とは、妊娠検査薬で陽性と判定が出たにもかかわらず、すぐに生理がきてしまったり、病院で妊娠が確定されなかったりする状態です。
近年、妊娠検査薬の感度が非常に向上しているため、本来なら知り得ないはずの化学流産が発覚するケースも増えており、妊活を行っている方たちの間で徐々にその名前が知られるようになってきました。
化学流産は医学的に「生化学的妊娠」と呼ばれ、一般的な流産とは区別されています。
これは、日本で妊娠回数として数える定義が、胎嚢を確認できて妊娠が確定した臨床妊娠を指し、胎嚢が確認できない化学流産は妊娠としてカウントされないためです。
化学流産は健康な若いカップルでも30〜40%とかなり高い確率で起こるため、化学流産を流産としてカウントしてしまうと、3回以上流産を繰り返す習慣流産患者ばかりになってしまいます。
それほど化学流産はよく起こる状態で、繰り返しやすいものなのです。
ただ、化学流産の事実を知ってしまった女性にとっては、一般的な流産と同じくらい悲しい体験ですし、できれば繰り返したくないことでしょう。
そこで、この記事では化学流産を繰り返す理由と3つの対処法についてご紹介します。
化学流産を繰り返すのはなぜ?
化学流産を繰り返しても、妊娠や出産ができなくなるというわけではありません。むしろ不妊治療をしているカップルにとっては、化学流産が起こったということは、妊娠が可能であるという証明でもあります。
ただ、何回も繰り返し化学流産が起こる場合は、産婦人科などを受診してみた方がよいでしょう。
ここでは、化学流産を繰り返す理由と不育症についてご紹介します。
化学流産を繰り返す理由
化学流産を繰り返す原因として最初に考えられるのは、着床になんらかの問題があるケースです。
化学流産は一般的な流産と比較すると着床してすぐの時期に起こるため、受精卵より着床の過程に問題がある割合も大きいと考えられます。
ただ、妊娠の成立には卵子の質も非常に大切です。そのことから、化学流産を繰り返す場合、まだ卵子の老化がそこまで進んでいない30代前半の女性であれば着床、30代後半ならば卵子が原因である可能性も視野に入れなければいけません。
卵子の老化が妊娠、出産に与える影響については、近年不妊治療を受ける方の増加に伴いよく知られるようになってきました。
個人差はあるものの、一般的に35歳をすぎるころになると卵子は表面のツヤや弾力性が失われ形もいびつになります。さらに染色体異常の可能性も増加するため、受精しにくくなるとともに受精しても着床しにくくなってしまいます。
以下は、化学流産を繰り返すときに考えられる理由です。
- 着床の窓のズレ
- 子宮筋腫、ポリープ
- 子宮内癒着
- 慢性の子宮内膜の炎症
- 免疫システムが受精卵を異物と認識してしまう
- 子宮形態異常
化学流産は流産には含めませんし、基本的には気にする必要はありません。
しかし子宮内膜に問題がある場合やホルモン、抗体に異常がある場合、着床障害などによって起こりやすくなっている可能性もあるので、妊娠を希望するカップルは1度病院で検査を受けておいてもよいでしょう。
化学流産を繰り返すと不育症なのか?
インターネットで化学流産について検索すると、不育症という言葉もよく一緒に調べられていることがわかります。
不育症とは妊娠するものの2回以上の流産や死産、もしくは生後1週間以内の新生児死亡を繰り返し、子どもをもつことが叶わない疾患をいいます。
この中には流産を2回繰り返す反復流産や、3回以上繰り返す習慣流産も含まれますが、一般的な流産と区別されている化学流産は含まれないため、何度化学流産を繰り返しても不育症だとは診断されません。
以下は、不育症の主な原因です。
- 子宮形態異常
- 甲状腺の異常
- 卵子または精子の染色体異常
- 抗リン脂質抗体症候群
- 第X II因子欠乏
- プロテインS欠乏
- プロテインC欠乏
不育症は原因不明のケースが約5割存在しており、偶発的に流産や死産などが起こっていることも多いといわれています。
化学流産を繰り返す場合には、不育症に含まれるのではないかという意見もありますが、現在のところ化学流産の回数は不育症の診断をくだす材料にはなりません。
しかし、不育症の原因をみつけるヒントになる可能性もあるので、病院を受診する際は、念の為医師に化学流産を繰り返していると伝えておきましょう。
化学流産を繰り返すときの3つの対処法
現在、化学流産を繰り返す明確な原因は解明されておらず、治療法も確立されていません。
流産手術などの必要もないため、産婦人科では経過を観察するだけのケースがほとんどです。
では、化学流産を繰り返す場合一体どのような対策をすればよいのでしょうか。
ここでは、化学流産を繰り返すときの3つの対処法をご紹介します。
病院で精神的なケアを受ける
化学流産も含む流産を繰り返すうちに35歳を超え、妊娠しにくい年齢になってしまい、妊娠を諦めなければいけないケースもあります。
また、そのようなケースでは同じ思いを何度もしたくないなどの理由から次の妊娠に対して不安を抱いたり、仕事で気を紛らわせたりする方も多くいます。
化学流産を繰り返すことによる精神的ストレスは非常に深刻なため、不育症の患者さんと同じように精神的なケアが重視された治療を受けるのもひとつの手段です。
化学流産や不育症の患者さんの精神的なケアとしては、グリーフケアという治療があります。
グリーフケアとは、さまざまな喪失を体験したことで深い悲しみを抱えた方が立ち直り、希望を持てるように支援することです。
具体的には、カウンセリングなどを通じて以下のようなことを行います。
- 気持ちの整理
- 悲嘆への対処
- 精神症状へのアセスメント
- 夫婦、家族関係の調整
- 次の妊娠への希望と恐怖感への対処
- 精神科などとの連携
グリーフケアは心療内科や精神科だけでなく、病院によってはグリーフケア外来を設けているところもあります。
病院以外では、グリーフケアアドバイザーの有資格者が開いているワークショップなどでも受けられるので、興味のある方は日本グリーフケア協会に問い合わせてみるとよいでしょう。
フライング検査をしない
フライング検査とは、本来妊娠検査薬を使用すべき予定より早い時期に検査をしてしまうことです。
通常、妊娠検査薬を使用するタイミングは生理予定日の1週間後からとされています。それより前に検査すると知らなくてもよい化学流産を知ってしまうことがあり、気持ちが揺らぎやすくなり精神的に不安定になる原因となります。
とくに不妊治療を受けている方は、妊娠検査薬を早く使用しがちですが、いったん落ち着いて適切な時期まで待ってから検査するようにしましょう。
ストレスが溜まらない生活をする
残念ながら、化学流産は多くの場合受精卵の段階で妊娠にいたるかどうかが決まっており、防ぐことはできません。
妊娠を望んでいる女性にとって、妊娠検査薬で陽性が出たのに妊娠にはいたらなかったという体験を繰り返すことは非常に辛いものです。
しかし、ストレスを溜めてしまうと妊娠しにくい体になってしまう可能性があるので、化学流産を繰り返すときはストレスが溜まらないような生活を送るように心がけましょう。
以下は、妊活中におすすめのストレス解消法です。
- 軽い運動
- 趣味に没頭する時間を作る
- アロマテラピー
- 自分を褒めてあげる
- 友達に愚痴を聞いてもらう
ウォーキングやストレッチ、サイクリング、ヨガなどの軽い運動で体に空気を取り込むと、ストレスを緩和できるといわれています。運動の内容は、自分の体力に合わせて選ぶようにしましょう。
化学流産を繰り返した女性は、精神的に追い込まれがちでパートナーとの関係性が悪くなってしまうケースもあるため、2人でゆっくりと出かけたり、話をする機会を設けるのもおすすめです。
赤ちゃんがなかなか授からずに辛いのは自分だけではないことを忘れずに、お互いが支え合える関係性を築けるようにしましょう。
まとめ
化学流産を繰り返す理由と3つの対処法についてご紹介しました。
化学流産を繰り返している方は、もしかして不育症なのではないかと不安に感じていることでしょう。
たしかに化学流産を繰り返す場合も不育症ではないかという意見が出ています。しかし、化学流産と不育症が同じメカニズムで起こっているのかが解明されていないため、結論が出ていない状態です。
化学流産は卵子と精子が受精し着床できることを示しているので、過度に不安にならずゆったりとした気持ちで赤ちゃんを待ってもよいでしょう。
ただし化学流産の有無に関係なく、妊活を1年以上続けているのに妊娠にいたらない場合は不妊症と診断される可能性がありますので、パートナーと一緒に病院を受診してみましょう。
化学流産を繰り返している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
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