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高齢出産の割合
女性の社会進出とともに初婚年齢は上昇し、厚生労働省の統計によると、2019年の第1子出生時の母の平均年齢、つまり平均の初産年齢は上昇傾向にあったのですが、平成 27 年から 30.7 歳で横這い、母の年齢が
40 歳以上の出生では、出生数は5万 840 人であり、うち第1子は1万 8378 人で、40 歳以上の出生に占める第1子の割合は 36.1%となっています。
妊娠する能力は年齢とともに変化する
受胎可能性(妊娠可能性:医学的には妊孕性といいます)は年齢とともに変化します。男性も女性も思春期に続いて10代で受胎可能になります。女の子の場合、生殖能力を獲得したことは、排卵と月経の開始によって判ります。閉経後の女性はもはや妊娠できないと一般的には理解されています。
しかし、初潮から閉経までのこの間、女性の妊娠する能力は同じではなく、一般的に、女性の生殖能力は年齢を重ねるにつれて低下し、閉経の5~10年前には受胎する可能性が低いと考えられています。
現代日本社会ならではの不妊症の増加の原因は加齢
最近では我が国で生まれる赤ちゃんの7人に一人が体外受精により生を受けています。不妊大国といっても過言ではないでしょう。現代日本社会では、様々な理由で30代まで家庭を持つのを待つ女性が多いため、女性の加齢による不妊症が増えています。
様々な理由とはいえ、やはり、女性の高学歴化と社会進出が進んだ先進国で共通してみられる現象が結婚・出産年齢の高齢化ですので、子どもが欲しいカップルはご夫婦となる前にご自分たちの仕事のうえでのキャリア形成(社会参画の在り方)と加齢による妊孕性の低下(夫と妻としてのライフスタイルの在り方)についてよくはなしあうことをおすすめします。
また、現代女性は健康で健康管理が行き届いているとはいえ、30代を超えてからのの健康状態が良くなったからといって、加齢による妊娠する能力の低下を補うことはできないのです。女性が年齢を重ねると、卵巣に残っている卵子の数が通常の年齢に比べて減少するため、受胎率が低下することを理解しておくことが重要です。この減少は、ほとんどの女性が予想しているよりもずっと早く起こる可能性すらあります。
高齢妊活ブログなどもアメブロなんかにはたくさんあるので、42歳の壁、なんて医師に言われて落ち込んじゃう女性たちもたくさんいると思います。
排卵と月経周期
生殖期の間、女性は基本的には毎月、28日周期で定期的に排卵するため、毎月定期的に月経があります。卵は “卵胞”と呼ばれる液体で満たされた球体の中で成熟します。女性が生理を迎える各月経周期の初めに、脳内にある脳下垂体から分泌されるホルモンが、両卵巣にある卵胞群を刺激して、卵胞がより急速に成長するようにします。
この卵巣を刺激する脳下垂体ホルモンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)と呼ばれています。通常、卵胞のうち1つだけが成熟して卵子を放出し(排卵)、残りの卵胞は徐々に成長を止めて退化していきます。卵子が受精し、子宮内膜(子宮内膜)に着床すると妊娠します。妊娠に至らなかった場合は、月経の流れに合わせて子宮内膜が剥がれ落ち、再び周期が始まります。10代前半では、女の子は排卵が不規則で月経周期が不規則になることがよくありますが、16歳までには規則的な排卵が確立され、規則的な月経周期が得られるようになるはずです。
女性の周期は、30代後半から40代前半までは、26日から35日の規則的な周期を保ちます。時間が経つにつれて、排卵をスキップし始め、生理が来なくなります。最終的には、生理が完全に止まるまで、生理がますます少なくなっていきます。1年間生理がない状態が続くと、閉経と言われています。
女性と閉経
女性は年齢を重ねるごとに、卵巣に起こる正常な年齢の変化により、受胎能力が低下していきます。生涯にわたって精子を作り続ける男性とは異なり、女性は卵巣にある卵子を含む卵胞をすべて持って生まれてきます。
出生時には約100万個の卵胞がありますが、思春期にはすでに、その数は約30万に減少し、思春期に残っている卵胞のうち、約300個だけが生殖可能年齢の期間に排卵されます。卵胞の大部分は、排卵されることなくアトレシア(濾胞閉鎖)と呼ばれる課程を経てなくなっていきます。
閉経は、妊娠したことがあるかどうか、月経周期が正常かどうか、避妊手術をしているかどうか、不妊治療を受けているかどうかに関係なく起こります。喫煙者は非喫煙者よりも約1年早く閉経を迎えるようです。
高齢化した女性の妊孕性(にんようせい:妊娠する能力)
女性の生殖能力が最も高まるのは20代です。30代、特に35歳を過ぎると、妊娠力は徐々に低下していきます。健康で受胎可能な30歳の女性は、毎月妊娠を試みるたびに、20%の確率で妊娠することができます。
40歳では、女性の妊娠確率は1周期あたり5%以下になるといわれています。
つまり、30歳の女性の妊娠率が20%であるのに対して40歳では妊娠率は5%以下ということになります。
女性は閉経するまで受胎可能な状態を維持できるかというとそうではありません。閉経の平均年齢は51歳ですが、ほとんどの女性は40代半ばになると妊娠できなくなります。この割合は、自然妊娠だけでなく、体外受精(IVF)などの不妊治療による妊娠にも当てはまります。
ニュースやブログなどをみていると、妊孕性が低下しても体外受精などの不妊治療で妊娠できると思われるかもしれませんが、女性の年齢は加齢による女性の妊孕性の低下を引き起こすため、卵子の質も量もともに低下していくため、年齢は不妊治療の成功率に影響を与えます。
ミネルバクリニックの患者さんの自然妊娠最高齢
当院では47歳です。この方は、不妊治療するかどうか迷っていて、しようかなと思い立ったころに生理がなくなり、閉経と思ったら妊娠だったということで、驚愕しておられました。出生前診断を受けて安心して無事にご出産なさいました。
また、当院の患者さんで体外受精による妊娠の最高齢は48歳です。(当院では不妊治療自体は行っておりません。出生前診断を行っています。)
男性には加齢による不妊症はないのか?
実は男性にも加齢による妊孕性の低下はあるのです。しかし、女性の妊孕性の低下とは異なり、男性の精子の性質が低下するのは女性の妊孕性が低下し始める時期よりもかなり後になります。
精子の質の低下は、男性が年齢を重ねるにつれて多少低下しますが、一般的には60代になるまでは問題にはなりません。女性のように急激な変化や顕著な変化はありませんが、男性の場合は年齢を重ねるごとに生殖能力や性機能に変化が現れます。このような変化にもかかわらず、60代や70代の男性が若いパートナーと妊娠成功している事実は枚挙にいとまがないことからもわかるように、男性が子供を持つことができない年齢の上限はありません。男性は年齢を重ねるにつれて精巣が小さく柔らかくなり、精子の形態(形)や運動性(動き)が低下する傾向はあります。また、精子の遺伝子異常のリスクも年齢とともに高くなります。
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高齢の男性は、たとえば糖尿病によるインポテンツのように性機能や生殖機能に悪影響を及ぼす医学的な病気を発症することがあります。すべての男性が加齢に伴って生殖機能や性機能に大きな変化を経験するわけではありませんが、特に長年にわたって健康を維持している男性の場合は、そのような変化はありません。男性の性欲や勃起の問題がある場合は、主治医や泌尿器科医に相談してみるとよいでしょう。性欲の低下は、テストステロンの低レベルに関連する可能性があります。
卵子の質とは?
女性は年齢とともに卵子の数が減ることはすでにお伝えしました。残っている卵子の数が減ると卵子の質が低下するため、妊娠しにくくなり、さらに流産しやすくなります。これらの変化は、30代半ばから後半になると最も顕著になります。したがって、女性の年齢は卵の質と逆相関関係にあります。
卵子の質が悪くなるという重要な変化は、異数性(卵子の中の染色体が多すぎたり少なすぎたりする)と呼ばれる遺伝的異常の頻度が高くなる現象を引き起こします。受精時には、正常な卵子は23本の染色体を持っているはずなので、23本の染色体を持つ精子が受精すると、胚は正常な46本の染色体を持つことになります。女性が年齢を重ねるにつれて、染色体の数が少なすぎたり、多すぎたりする卵子が増えてきます。
つまり、受精した場合、受精卵にも染色体が多すぎたり少なすぎたりするということです。多くの人はダウン症候群(21トリソミー)について知っていますが、これは、受精胚が21番染色体を余分に持っている場合に生じる疾患です。染色体が多すぎたり少なすぎたりすると、ほとんどの胚は妊娠に至らなかったり、流産したりします。このため、高齢の女性では妊娠の可能性が低く、流産の可能性が高くなるのです。
卵子の量とは?
卵巣内の卵子を含む卵胞の量が減少することを卵巣予備能の喪失といいます。女性は、不妊になる前や定期的な生理が止まる前に卵巣予備能を失い始めます。女性は生まれながらにして持っている卵胞をすべて持って生まれてくるので、待機している卵胞のプールは徐々に使い切られていきます。
卵巣予備能が低下すると、卵胞はFSHの刺激を受けにくくなり、卵子が成熟して排卵するためには、より多くの刺激が必要になります。最初のうちは、21~25日間隔の短い周期で生理が来ることがあります。最終的には、卵胞は一貫して排卵するために十分な反応をすることができなくなり、長く不規則な周期になってしまいます。
卵巣予備能の低下は通常、年齢に関連しており、卵子が自然に失われ、残った卵子の平均的な質が低下するために起こります。しかし、若い女性では、喫煙、早発閉経の家族歴、卵巣手術の経験などが原因で卵巣予備能が低下している場合があります。若い女性は危険因子が知られていなくても、卵巣予備能が低下している可能性があります。
卵巣の実年齢って検査でわかるの?
卵巣予備能の医学的検査はありますが、妊娠の可能性を確実に予測できると証明されたものはありません。これらの検査では、女性が妊娠できるかどうかを判断することはできませんが、卵巣の加齢による変化が始まっていることを判断することはできます。
卵巣予備能が低い女性は、同じ年齢層で卵巣予備能が正常な女性よりも妊娠する確率が低くなります。単一の検査や、どのような検査を組み合わせても100%正確なものはありません。3日目のFSH(卵胞刺激ホルモン)、抗ミューラー管ホルモン、エストロゲンの検査を行う場合は、月経周期の2日目、3日目、4日目に採血を行います。FSHまたはエストロゲンのレベルが高ければ、卵巣予備能が低いことを示します。しかし、卵巣予備能が低下している女性の多くは、月経3日目のFSHが正常値であるため、月経3日目のFSHが正常値であっても、卵巣予備能が正常であることを確認することはできません。
卵巣予備能の他の検査としては、クエン酸クロミフェン負荷試験(CCCT)や超音波による卵胞数の評価(antral follicle countと呼ばれる)が用いられることがあります。クエン酸クロミフェン負荷試験(CCCT)は、クロミフェンを投与しながら黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモンFSH値の濃度変化を測定することで視床下部-下垂体-卵巣系の機能を評価します。
不妊症の評価と母体の加齢
不妊症は通常、1年間避妊をせずに性交を続けても妊娠しなかった場合に診断されますが、35歳以上の女性の場合は、6ヶ月間妊娠に失敗した後に評価を開始する必要があります。
生理不順(無月経)、性機能障害、骨盤疾患の既往歴、手術歴があるなど、明らかに医学的に妊娠能力に影響を及ぼす既往歴や合併症がある場合は、6か月待たずとも不妊かどうかの診断をすべきです。不妊検査では、排卵の検出や卵管、子宮頸管、子宮の評価などが行われることがあります。また、女性だけでは片手落ちですので、男性パートナー(夫)には精液分析を行います。ほとんどの検査は6ヶ月以内に終了し、評価が終わればすぐに適切な治療を開始します。
高血圧や糖尿病などの内科的疾患をお持ちの女性は、妊娠を試みる前に担当医に相談してください。健康上の問題が妊娠前にコントロールされていることが大変重要です。
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高齢妊娠出産で増加するリスク
高齢の女性ではリスクが高まるため、妊娠前に医師が薬の変更や一般的な健康管理を提案することがあります。高血圧や糖尿病などの疾患は、35歳以降に妊娠する女性に多く見られるようになり、妊娠中は、特別なモニタリングや検査が推奨されることがあります。35歳以上の女性の妊娠にはそれより若い女性とは違う問題が多々あるため、こうした点について妊娠前にしっかりとカウンセリングしておくことも有益でしょう。
また、35歳以上の女性から生まれる子供は、染色体異常のリスクが高くなります。女性は、妊娠を試みる前に、これらのリスクについて遺伝カウンセリングを受けるのが良いでしょう。出生前検査は、妊娠後に特定の先天異常症の有無を調べるために実施されることがあります。羊水穿刺と絨毛膜絨毛採取は、確定診断ができる侵襲的な出生前検査の2つの方法です。侵襲がない方法としてNIPT(新型出生前診断)もありますので、最近ではNIPTで異常があれば羊水検査などの侵襲的検査を行う、が主流となりつつあります。
その他、クワトロテストをなどの血液検査や超音波検査も、特定の先天異常症のスクリーニング検査として用いられることがあります。多くの親御さんは、十分な情報に基づいた決定ができるように、妊娠についてできるだけ多くのことを知りたいと考えています。
まとめ
42歳の壁という表現はよく聞くのですが、実は正しくありません。壁の訪れる年齢は一人一人異なるからです。
女性の高学歴化、社会進出の促進で結婚・出産年齢の高齢化が進んでいる現状ですが、やはりお子さんを持てる期間というのは残念ながら女性の場合は限られているので、なるはやで取り組みをされたほうがよろしいでしょう。
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