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高齢出産に臨む初産婦さんが考えるべきこと|リスクや乗り越え方を紹介

近年、女性の社会進出の進展や子育てに対する金銭的不安の増大、子育て世帯に対する国家的サポートの不足などを理由に晩婚化が進んでいます。また、晩婚化に伴って、妊娠・出産を初めて経験する初産婦さんの年齢も高まってきており、高齢出産を選択するケースが多く見られるようになってきました。

確かに”高齢出産を選択する”ということに難しさはありません。しかしながら、加齢に伴う身体的機能の低下などを理由に高齢出産にはリスクも多く存在します。「赤ちゃんを授かりたい」と思った時こそ、妊娠期間におけるさまざまな不安を乗り越えるという精神的な面での適切なタイミングだといえますが、事前にリスクや対処法を知っておかなければ気持ちが揺らぐことも多くなってしまいます。

この記事では、高齢出産の基礎知識と、高齢出産における各種のリスク、リスクへの備え方に関してご紹介しています。ぜひ最後までご覧になってください。

高齢出産の基本知識

高齢出産
まずはじめに、そもそも高齢出産がいくつからの妊娠・出産を指しているのかを確認していきましょう。

日本産婦人科学会が公表している出産に関するガイドラインでは、高齢出産は”35歳以上の初産婦における妊娠・出産”と定められています。このように定められている理由としては、冒頭にて取り上げた妊娠期間・出産における妊婦さん・胎児へのリスクが、30歳未満の妊婦さんと比較して増大することが挙げられます。

加齢によって血圧が高くなるため、血管系をはじめとした各種の病気へのリスクが増えるとともに、子宮筋腫などの生殖器官の病気も現れやすくなります。そして、これらが妊娠期間に生じることで、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病、浮腫などにつながってしまうのです。また、ホルモンの分泌量や、子宮・卵巣の状態が若い頃よりも低下してしまい、結果として流産しやすくなったり、妊娠に伴うさまざまな合併症のリスクが高まったりします。

高齢出産における初産婦の割合

厚生労働省が定期的に調査している人口動態統計を見てみると、高齢出産の割合が増大しているのは一目瞭然です。

以下の表は1985年と2019年における、妊婦さんの年齢別の出生数を表したものになります。

お母さんの年齢 1985年 2019年
出産件数の総数 1,431,577 865,239
~14歳 23 40
15~19歳 17,584 7,742
20~24歳 247,341 72,092
25~29歳 682,885 220,933
30~34歳 381,466 312,582
35~39歳 93,501 201,010
40~44歳 8,224 49,191
45~49歳 244 1,593
50歳~ 1 56

出典:厚生労働省「2019年度人口動態統計」より

1985年では25歳~29歳での割合が最も高く、全出生数に対して50%近く占めています。また、20歳~34歳の間で80%ほどを占めていることも確認できます。

一方の2019年では30歳~34歳での割合が最も高くなっていることが確認できます。また、全体の大多数を占める年齢が、25歳~39歳へと推移しており、妊娠・出産の高齢化が確認できます。

また、2019年での妊婦さんの年齢と生まれてくる赤ちゃんの出生順位を調べたものが以下の表になります。

お母さんの年齢 総数 第1子 第2子 第3子以上
出生件数の総数 865,239 400,952 315,713 148,574
~14歳 40 40
15~19歳 7,742 6,855 832 55
20~24歳 72,092 48,516 19,217 4,359
25~29歳 220,933 131,383 67,014 22,536
30~34歳 312,582 129,567 126,436 56,579
35~39歳 201,010 66,213 82,489 52,308
40~44歳 49,191 17,652 19,214 12,325
45~49歳 1,593 692 497 404
50歳~ 56 34 14 8

出典:厚生労働省「2019年度人口動態統計」より

全出生数865,239件のうち、84,591件が高齢出産(初産婦さんのみ)に該当し、その割合は約10%です。

このように、高齢出産を選択する女性が増えた理由には、冒頭にて紹介した晩婚化(婚期の遅れ)があります。人口動態統計によると、確かに女性の初婚年齢の上昇も確認することができ、1995年時点では26.3歳であったのが、2019年には29.6歳にまで上昇しているそうです。

晩婚化の背景には、女性の社会進出による高学歴化、子育てに対する金銭的不安の増大、子育て世帯に対するサポートへの不安などが考えられています。女性の将来的なキャリアを形成しやすくなったという意味では喜ばしい一方で、子育てに対する不安から事前に十分な資金を蓄えておく必要性が高まっており、結婚、妊娠・出産に踏み切ることが難しくなっているといえます。

高齢出産のリスク

リスク
高齢妊娠が若い頃の妊娠と比較してリスクが高まってしまうのは先述した通りですが、妊娠期間だけでなく、出産の際にもさまざまなリスクがあるとされています。

主なリスクには以下のものが挙げられます。

  • ・流産の危険性の増大
  • ・胎児、出生児の先天性異常の可能性の増大
  • ・難産の危険性の増大

それぞれに関して詳しく見ていきましょう。

流産の危険性の増大

流産となる原因には、お母さんの加齢に伴った卵子の老化が大きく関わっています。卵子が本来持っていた機能が老化によって十分に発揮されないことで、染色体異常が起こりやすくなり、受精卵となり着床できたとしても流産してしまうことが多くなります。

また、初産婦さんの高齢出産の場合には、不妊治療などを通じて妊娠しているケースも多く、特に、体外受精・顕微授精を選択された場合には、お母さん、お父さんから採取した卵子と精子を受精させ、お母さんの子宮へと移植することとなります。

移植方法では初期胚移植や胚盤胞移植がありますが、初期胚移植の場合には子宮外妊娠となることもあり、35歳以上の子宮外妊娠のリスクは若い女性と比較すると4~8倍ほど高いといわれています。子宮外妊娠は妊娠初期における母体の死亡や病気に関わる大きな要因となるため、子宮外任妊娠が確認された場合には適切な治療(子宮への移植手術など)が行われます。このような危険な症状であることもあり、子宮外妊娠が流産の原因となることもあります。

胎児・出生児の先天性異常の可能性の増大

胎児や出生児に先天性の異常が見られる多くの原因には、染色体異常が深く関わっています。

赤ちゃんの”もと”となる受精卵、卵子に染色体異常がある場合には、着床したとしても流産してしまうことも多くあります。つまりは、お母さんのお腹の中で成長している赤ちゃんは、そのような流産リスクを乗り越えたということになります。しかしながら、生まれてきてくれる赤ちゃんには染色体異常による先天性異常が確認されるようになります。

2つで1対となっている全23組の染色体のうちの、21番目の染色体が2本ではなく3本ある(この現象をトリソミーと呼びます)ことで症状が現れる”ダウン症”が、染色体異常による先天性疾患として広く認識されています。

上記のように、染色体数が本来の2本ではなくなってしまうのには、卵子の分裂異常が原因となっていることがほとんどです。卵子は原始卵胞という細胞をもとに、減数分裂という細胞分裂を通じて作られていますが、加齢による女性の身体的・生殖的機能の低下によって卵子の生成で分裂異常が生じることで、染色体異常が現れるようになります。

卵子の分裂異常の確率は35歳では378分の1、38歳では175分の1、40歳では106分の1にまで高まるとされています。

難産の危険性の増大

初めての出産の際には子宮口が硬い状態にあるため、赤ちゃんが出てくる産道が広がりにくいです。初産というだけでも子宮口の硬さが確認できるのですが、高齢出産の場合には加齢も相まって、子宮口は更に硬い状態にあり難産となるケースが多く確認されています。

また、陣痛が弱いために出産がなかなか進まないというケースも多くあります。これらの事情から、結果的に帝王切開で出産する妊婦さんは非常に多いです。

リスクへの備え方

リスクに備える
最後に、高齢妊娠・高齢出産で生じる可能性の高いリスクに対する備え方を確認していきましょう。

主な対処法としては以下の方法が挙げられます。

  • ・健康的な体づくりを行っておく
  • ・体力的、金銭的な面から将来のライフプランを検討しておく
  • ・妊娠を確認できた後に出生前診断やNIPTを行うようにする

それぞれに関して詳しく見ていきましょう。

健康的な体づくりを行っておく

基本的な取り組みとしては、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠となります。

特に、”老化”に対して行動習慣の改善を図るのであれば、抗酸化作用のある食物を摂取すること、自身の身体にとって過度にならない運動を行うことが効果的です。

抗酸化作用とは、身体の生命機能を維持するためにエネルギーを生成する過程で酸素が変異して生まれる活性酸素(体内の細胞と結びつきやすい性質を持ち、細胞本来の機能を失わせる作用がある)が、体内の他の細胞よりも優先的に結びつくことで身体の老化(細胞の機能損失)を防止する作用のことを指します。ビタミンA・C・Eが抗酸化作用を持つ代表的な栄養素になります。

また、過度な運動は多くのエネルギー産生、酸素消費を必要とするため、その分活性酸素を生みだしやすくもなります。このような点から、負荷が大きすぎない運動が”老化”に対しては効果的であると考えられています。

体力的、金銭的な面から将来のライフプランを検討しておく

体力は個人差が非常に大きいものであり、歳を重ねていたとしても非常にパワフルな女性もたくさんいらっしゃいます。しかしながら、出産後の子育て期間では想像以上の体力の消耗があります。「若い頃ならもっと無理が利いたのかな?」と思うこともあるため、子育て以外のライフイベントとどのようにバランスを取るかを考える必要があります。

また、妊娠する前までに蓄えた貯金があったとしても、お子さんの成長に伴い必要となる資金は多くなっていくため、収支のバランスが不安定となってしまう可能性も十分に考えられます。そのような時期に、ご自身の収入が安定している立場にいるか、収入を安定させられるだけの健康状態を維持できているかなども検討する必要があります。

妊娠を確認できた後に出生前診断やNIPTを行うようにする

出生前診断やNIPTを行うことで、胎児に先天性異常があるか否かを確認することが可能です。

しかしながら、出生前診断やNIPTを安易に受けることは決しておすすめしません。なぜなら、それらの検査によって確認された先天性異常を治すことはできないからです。先天性異常が確認された後には、そのまま赤ちゃんを生み育てていくのか、それとも中絶を選択するのかを迫られることとなります。

各種の検査を受ける前に、検査そのものや先天性疾患に関する理解を十分に深めるようにしておきましょう。以下のコラムでは、出生前診断やNIPT、先天性疾患に関する詳細がまとめられていますので、お時間の許す際にはぜひそちらもご覧になってみてください。

『出生前診断の種類|検査の目的・受ける割合・先天性疾患についても解説【ミネルバクリニック公式】』

『染色体が46本23対の理由と突然変異で起こる3つの疾患を紹介【ミネルバクリニック公式】』

まとめ

初心者でも笑顔で高齢出産
ここまで、高齢出産の基礎知識と、高齢出産における各種のリスク、リスクへの備え方に関してご紹介してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?

高齢出産には特有のリスクも数多くありますが、事前に理解すること、対処法を知ることで、リスクを低減することは十分に可能です。女性自身のキャリアが多様になっていることは喜ばしいことでありますが、それらのキャリアに対して妊娠・出産が足かせになってしまうのは悲しいですよね。

この記事を通じて、高齢出産に対する理解を十分に深めることが、キャリアプランとのちょうどいいバランスのとり方を見つけることに繋がる、ということをご実感いただければ幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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