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発達障害・学習障害・知的障害遺伝子パネル検査を受けた患者さん1

ミネルバクリニックで提供している発達障害・学習障害・知的障害遺伝子パネル検査を受けた患者さん受けた患者さんについて、どういうお悩みを持ち、何を解決しようとして検査を受けたのか、結果、どうしたのかと言うことをお伝えしたいと思います。

検査の内容については、詳細はこちらのリンク先をご覧ください。

患者さんのお悩み

重度な知的障害がある同胞(兄弟姉妹)のいらっしゃるAさん。知的障害のあるBさんのことは、家族でもあまり聞いてはいけないという雰囲気で、どういう病気で何を原因として同胞に知的障害があるのかも聞けずにいました。

月日は流れ、異性との交際がスタートし、順調な日々ののちに、お相手と同居することになりました。ここで、お相手のご家族から懸念点として、知的障害のある同胞のことに指摘がなされました。

専門医としての葛藤

実は以前、わたしはこんな悩みを打ち明けられるとこんな風に思ってしまっていました。

愛している、だからこそ人生を共にしようと考えている相手に対して、そんなことをいうなんて失礼じゃないか?そんなこと言う人たちじゃなくて、別の人にしたほうがいいんじゃないですか?

実際に患者さんに向かってそう言ってしまったこともあります。(今ではとても反省しています)

だから。遺伝子検査するのではなく、「遺伝子検査の必要がないですよ」という診断書を書いたりしていました。一人の臨床遺伝専門医のただの意見に過ぎない書類が通用したかどうかは謎です。

だけど。「この人じゃないとだめだ」、「どうしてもこの人と生涯を共にしたい」、「こんなに好きになれる相手はもういない」そう思っている人にわたしの意見は冷たく響くでしょう。患者さんは何かに深く悩み、それを解決したくて遺伝診療のクリニックを訪れているのだから。説教されたくて来ているわけではありません。ましてや好きな人を医者に言われてあきらめるなんて無理ですよね。

それに、大体、「愛しているからこそその人とご両親の懸念を払しょくしてもらい、スムースにこれからの人生を船出したい」という考えもありうるわけです。専門家の考えを患者さんに押し付けるパターナリズムを嫌ってきた私が、パターナリズムに陥っているのではないか。そう考えはじめ。

月日と共にわたしの考えも変わっていきました。

だったら、そのハードルを一緒に超える手助けをするのが医者(専門医)ってものじゃないの?

こうしてわたしは、診断目的ではない、「遺伝子的な瑕疵がないことを証明する」という目的の検査を受け入れることにしました。ここの心境に到達するまでの間には、わたし自身が希少常染色体劣性遺伝性疾患(犠牲偽性副甲状腺機能低下症)患者という”当事者”であるため、実はとても悩みました。

でも。その扉を一緒に開けないとすすめない人たちがいるのであれば、今のわたしは一緒に開けようと思います。それは「正しい」とか「間違っている」とかいう尺度ではかるべきではなく、患者さんが次のステップに踏み出すのに「必要か」「必要じゃないのか」という問題だからです。

遺伝なんかに負けずに自分の人生をつかみ取って生きてほしい、という思いも希少疾患患者のわたしにはあります。多様性が大事にされ、「個性」として受け入れられる、誰もが大事にされて尊重される社会を実現してほしいと、被差別対象である遺伝性疾患患者の一人としては、切実に願っています。

患者さんの検査結果

500を超える遺伝子の検査の結果、実は知的障害の原因になる病的バリアントは検出されませんでした。

ところが、ある薬の代謝に問題があり、その薬を使うと有害事象が強くなることが想定される、という結果が出ました。これは、将来、そういう薬を使うことになった際には非常に重要となる情報です。

「何もない」という結果が一番望ましかったのでしょうが。そこから先の一歩は、患者さんがご自身で進まないといけないので。その結果は、知的障害の原因となるものではないので、ご自分で説明するようにお伝えしました。どうなったかなと気になるところですが。

きっとまた、何かわたしの助けが必要になる場面が来れば、便りがあることでしょう。助けも求められていないのにあれやこれやとすることもできないし。どうなったかなと気になりつつこの文章を書いています。

どうぞお幸せにお過ごしなさいますようにと願いながら。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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