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Q. NIPTでは何を測っているの?
A. 答えはセルフリーDNAです。
セルフリーDNA;Cell free DNA (CfDNA)とは?
細胞がアポトーシスという形で壊れるときに、DNAもまた全部断片化して血液の中に溶けこんで運ばれて、再利用されますが、このDNA断片をセルフリーDNA(cfDNA)といい、NIPT(新型出生前診断)では母体血の胎児cfDNAを測定します。
セルフリーDNA(cfDNA)の多くは、細胞が入れ替わる新陳代謝のとき壊れるためにできますので、皆さん全員に存在します。
これとは別に、がん細胞が死んだり、血中に漏れ出した循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell)が血中で破壊されたりすると、がん細胞のセルフリーDNAが血中に漏出します。
このDNAはcfDNAと区別するために、特別にctDNA (circulating tumor DNA)と呼ばれています。
cell free DNAのなかでも胎児由来のものを cell free fetal DNA (cffDNA)と表記します。
cffDNAは胎盤の絨毛細胞に由来しています。
胎児のDNAは、胎盤の微粒子が母体の血液循環に流される際に断片化されます。
母体の血液中のセルフリーDNAの約2~20%はあかちゃんに由来していて、その量は妊婦さんによって大きく異なります。
妊娠経過と胎児セルフリーDNAの量
cffDNAは妊娠5~7週目から母体の血液の中に存在します。
cffDNAの量は、妊娠が進行するにつれて増加し、母体血中のcffDNAの量は、出産後は急速に減少し、出産2時間後には、母体の血液中にcffDNAが検出されなくなります。
お母さんのDNAと赤ちゃんのDNAをどうやって区別するの?
特定の遺伝子を標的として異なるサイズの断片を増幅させて定量する PCR 法を用いて、非妊娠女性 34 名および妊娠女性 31名の血漿 DNA のサイズ分布と、Y染色体にだけあるSRY遺伝子を標的とした母体血漿中の胎児DNAのサイズ分布を決定した研究からは、
- 1. サイズ > 201 の塩基対(bp)の血漿中のDNAの中央値の割合は、妊娠中および非妊娠女性でそれぞれ 57% および 14% であった( P < 0.001、Mann-Whitney検定)
- 2. サイズが > 193bp および > 313bp の胎児由来DNAの中央値の割合は、母体血漿中でそれぞれ 20% および 0% であった
ことが報告されています。
このことから、妊婦の血漿中のDNA断片は非妊婦の血漿中のDNA断片よりも有意に長く、母体由来のDNA分子は胎児由来のDNA分子よりも長いことが結論付けられます。
cffDNA断片の長さは、母親由来のDNA断片小さいというサイズの違いにより、cffDNAは母方のDNA断片と区別することができます。リファレンス
体外受精とNIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)
体外受精妊娠では自然妊娠した場合に比べてcffDNA検査の不合格率が高く、胎児分画(母体血液サンプル中の胎児対母体DNAの割合)が低く、18トリソミー、13、性染色体の陽性的中率が低下することが示されています(リファレンス)。
※関連記事:胎児分画
セルフリーDNAを使ったNIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)以外の検査
がんの診断など
がん患者さんからのcfDNAやctDNAを調べることで、腫瘍由来のDNAを分析して、画像検査では見えないようながんや、がんの再発や転移がないかといった検査に応用されつつあります。
いわゆる リキッドバイオプシー と言われるものです。
この分野も日進月歩、どんどん変わっていっています。