目次
まれな常染色体トリソミー(RAT:rare autosomal trisomy)とは、13番・18番・21番以外の常染色体(1〜22番の染色体)が1本多い状態のことです。体のすべての細胞がトリソミーである完全型RATの多くは妊娠初期に流産となり、出生に至ることはきわめてまれです。妊娠が続いている中でRATが見つかるとき、その多くは「モザイク」、とくに胎盤だけに異常な細胞がある「胎盤限局性モザイク(CPM)」という形をとっています。このページでは、RATがなぜモザイクとしてしか見つからないのか、羊水検査や絨毛検査でモザイクと言われたときに何を意味するのか、そしてNIPTが胎盤のどの細胞を見ている検査なのかを、臨床遺伝専門医の視点で整理します。NIPT教科書シリーズ第7章の1節目です。
Q. 胎盤限局性モザイク(CPM)とは何ですか?
A. 胎盤には染色体の異常な細胞があるのに、赤ちゃん本人の染色体は正常な状態です。絨毛検査の1〜2%でモザイクがみられ、その大部分が胎盤限局性モザイクです。NIPTは胎盤由来のDNAを調べるため、CPMはNIPTの偽陽性の大きな原因になります。
- ➤RAT → 13・18・21番以外の常染色体のトリソミー。すべての細胞がトリソミーだと、生まれてくることは基本的にありません
- ➤モザイク → 1人の中に正常な細胞とトリソミーの細胞が混ざっている状態。どこに、どれだけあるかで意味が変わります
- ➤CPMの3つの型 → 胎盤の外側の層だけ(I型)、内側の芯だけ(II型)、両方(III型)。III型は胎児発育不全などと関係します
- ➤片親性ダイソミー → トリソミーの受精卵が1本を失って正常な数に戻るとき、約3分の1の確率で2本とも片方の親由来になります
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. まれな常染色体トリソミー(RAT)とは?
13・18・21番以外の常染色体が1本多い状態です。完全型では多くが妊娠初期に流産となるため、継続妊娠で見つかるRATではモザイクや胎盤限局性モザイクが重要です。
🩺 Q. 羊水検査でモザイクと言われたら?
どの染色体か、超音波で異常があるかで見通しが大きく変わります。染色体ごとのリスクと超音波所見を合わせて判断します。
🔬 Q. NIPTでRATが出たら赤ちゃんもトリソミー?
NIPTは胎盤の外側の細胞のDNAを見ているので、胎盤だけの異常(CPM)であることが多いです。確定には羊水検査が必要です。

1. まれな常染色体トリソミー(RAT)とは
ヒトの常染色体は1番から22番まであり、どの染色体にも理論上はトリソミー(1本多い状態)が起こりえます。そのうち、生まれてくる赤ちゃんにみられるのは21番(ダウン症候群)、18番、13番の3つにほぼ限られ、それ以外の常染色体のトリソミーをまとめて「まれな常染色体トリソミー(RAT)」と呼びます。トリソミー全体の種類や命名の考え方はトリソミーとはで解説しています。
なぜ13・18・21トリソミーだけが生まれてくるのか
結論から言うと、13・18・21番以外の完全型常染色体トリソミーの多くは、重い遺伝子量不均衡のため胎児が発育できず、妊娠初期に流産となるためです。13・18・21番は、含まれる遺伝子の数が比較的少ない染色体で、1本多くても出生まで育つことがあると考えられています。ただしこの3つも、流産や死産になることが多いトリソミーです(染色体の数的異常)[1]。
流産の原因としてのRAT
RATは、生まれてくる赤ちゃんでは非常にまれですが、妊娠の初期にはむしろ珍しくありません。臨床的に確認される流産の多くに染色体の異常がみられ、その大部分は常染色体のトリソミーです[1]。なかでも16トリソミーは初期の流産でよくみられるトリソミーとして知られています(16番染色体異常)。トリソミーの多くは、卵子ができるときの減数分裂で染色体が正しく分かれない染色体不分離によって生じます。
全部の細胞が異常だと妊娠は続かない
欧州の先天異常の登録データは、RATの性質をよく表しています。欧州16か所の先天異常登録では、13・18・21トリソミー以外のまれな染色体異常は1万出生あたり7.4件で、染色体異常全体の17%を占めていました[2]。このうちRATについてPertileがまとめたところでは、約230万出生の中でモザイクではないRATは58例(1万出生あたり0.25)で、生存して生まれた例はありませんでした。一方、モザイクのRATは141例(1万出生あたり0.6)で、78%が出生前に診断され、その転帰は生産41%、死産7%、胎児の異常による妊娠の中断49%でした。最も多かったのは8番と9番のトリソミーモザイクです[1]。
つまり、出生に至るRATでは「一部の細胞だけがトリソミー」のモザイクが重要な割合を占めます。8番や9番のモザイクについては8番染色体異常、9番染色体異常で詳しく扱っています。
2. モザイクとは:1人の中に2種類の細胞がある状態
モザイクとは、1つの受精卵から育った1人の体(または胎盤)の中に、染色体の構成が異なる2種類以上の細胞が混ざっている状態です。NIPTの結果との関係を含む総論はモザイクとは(NIPTの偽陽性・偽陰性)で扱っています。RATを理解するうえで大切なのは、モザイクが生じる道筋が2通りあることです。
モザイクは2通りの道筋で生じる
1つめは、正常な受精卵が分裂していく途中で、ある細胞だけが染色体を1本多く持ってしまう道筋です(受精後の体細胞分裂の誤り)。この場合、トリソミーの細胞は一部の系列に限られ、割合も低いことが多くなります。
2つめは、減数分裂の誤りでもともとトリソミーだった受精卵が、分裂の途中で余分な1本を失い、一部の細胞が正常な数に戻る道筋です。これをトリソミーレスキューといいます。この場合、トリソミーの細胞は胎盤の広い範囲に高い割合で残りやすく、後で述べる片親性ダイソミーの原因にもなります[3]。
胎盤限局性モザイクと真の胎児モザイク
モザイクの異常な細胞が胎盤だけにあるものを胎盤限局性モザイク(CPM)、胎児本人にもあるものを真の胎児モザイクといいます。CPMは1983年、胎盤と胎児の組織を別々に調べた研究で、異常が胎盤の細胞だけにあり胎児由来の細胞にはない例として初めて示されました[4]。定義や一般的な性質は限局性胎盤モザイク(CPM)とはにまとめています。
胎盤性モザイク(CPM)になる確率の目安は、絨毛検査の1〜2%です。イタリアの大規模な経験をまとめた総説では、染色体のモザイクは絨毛検査の1〜2%、羊水検査の0.1〜0.3%にみられ、絨毛検査で見つかったモザイクの87.2%(773例)は胎盤に限局していました[5]。絨毛検査でモザイクが出る頻度が羊水検査より一桁高いのは、胎盤がもともと胎児よりも染色体のばらつきを許容しやすい組織だからです。
💡 用語解説:真の胎児モザイク(TFM)
胎児本人の体の細胞にも、染色体の異なる細胞系列が存在する状態です。羊水検査で同じ異常が複数の培養から確認された場合などに疑われます。胎盤だけの異常(CPM)と違い、赤ちゃんの発達や体の形に影響することがあり、どの染色体か、どの臓器にどれだけ異常な細胞があるかで影響が大きく変わります。
3. 羊水検査でRATのモザイクが見つかったとき
羊水検査でRATのモザイクと言われたときの見通しは、どの染色体か、超音波で赤ちゃんに異常がみられるかによって大きく変わります。羊水検査の細胞は、主に胎児の皮膚や気道、尿路からはがれ落ちた細胞で、胎児本人の染色体をよく反映します。ただし、羊膜など胎児本体以外に由来する細胞も含まれます[1]。
「真のモザイク」と判断される条件
羊水の細胞を培養して調べる従来の方法では、検体を複数の独立した培養に分けて育てます。1つの培養の1細胞だけに異常があれば、培養中に生じた変化(偽モザイク)の可能性が高く、2つ以上の独立した培養で同じ異常がみられた場合に「真のモザイク」(レベルIII)と判断されます[1]。羊水検査全体では、モザイクは0.1〜0.3%にみられます[5]。真のモザイクと判断されても、赤ちゃんの体の細胞で同じ異常が確認できない場合もあり、羊水の結果がそのまま胎児の全身を表すとは限りません。確定検査の限界は羊水検査・絨毛検査の精度でも解説しています。
染色体ごとに異なる見通し
羊水検査で見つかった常染色体トリソミーのモザイクについて、文献の報告を集めて染色体ごとに異常な転帰のリスクをまとめた研究があります。2015年のWallersteinらの報告では、異常な転帰のリスクは次のように分類されています[6]。
🧬 羊水検査で見つかったトリソミーモザイクの染色体別リスク
| リスク分類 | 異常な転帰の割合 | 染色体 |
|---|---|---|
| 非常に高い | 60%超 | 2・9・16・20・22番 |
| 高い | 40〜59% | 5・14・15番 |
| 中程度に高い | 20〜39% | 7・12・17番 |
| 中程度 | 19%以下 | 6・8番 |
※Wallersteinら(2015)[6]による。文献に報告された症例を集めたもので、重い例が報告されやすい偏りがあります。20番の分類については、異常な転帰はより少ないとする指摘もあります[1]。
16番と22番は、NIPTでもよく見つかるRATです。それぞれの染色体の全体像は16番染色体異常、22番染色体異常で解説しています。この表は「その染色体のモザイクがあれば必ず異常が出る」という意味ではなく、集団としての傾向です。
超音波所見とマイクロアレイの時代の課題
羊水検査でRATのモザイクが見つかったとき、見通しを最も大きく左右するのは超音波所見です。超音波で胎児に異常がみられる場合は、発達や体の障害のリスクが非常に高いとされています。一方、超音波で異常がない場合の見通しを示すのは今も難しく、異常の評価の多くは出生後や妊娠中断後の診察に基づいていて、出生後の発達を長く追った報告は少ないのが実情です[1]。
さらに近年は、羊水の細胞を培養せずにそのままDNAを取り出し、染色体マイクロアレイで調べる方法が広がっています。マイクロアレイには検出できるモザイクの割合に下限があり、Pertileの施設のSNPアレイでは、トリソミーモザイクの検出下限は7〜12%でした[1]。培養しない検体でのモザイクの解釈についてのデータは、従来の培養法に比べてまだ少ないのが現状です。
4. 絨毛検査で見えるCPMの3つの型
絨毛の2つの層:細胞性栄養膜と間葉
CPMを理解する鍵は、絨毛が2つの層からできていることです。胎盤の絨毛は、外側を覆う細胞性栄養膜(サイトトロホブラスト)と、内側の芯にあたる間葉からなります。絨毛検査では、直接法(短期培養)で外側の細胞性栄養膜を、長期培養で内側の間葉を調べます[1]。
発生の上では、細胞性栄養膜は受精卵のごく早い時期に胎児本体とは別の系列(栄養外胚葉)に分かれた細胞です。一方、間葉は、胎児本体を生み出す内細胞塊の側から生じた細胞です。そのため、間葉のほうが胎児本人の染色体をよく反映し、細胞性栄養膜だけを見ると偽陽性や偽陰性が増えます。13・18・21トリソミーの絨毛検査での偽陰性も、主に直接法で起こるとされ、細胞遺伝学の学会は直接法だけの解析を勧めていません[1]。
CPM I・II・IIIと起こり方
CPMは、異常な細胞が絨毛のどの層にあるかで3つの型に分けられます。細胞性栄養膜だけにあるのがI型、間葉だけにあるのがII型、両方にあるのがIII型です[3][5]。胎児にも異常がある真の胎児モザイクも同じ考え方で、細胞性栄養膜と胎児にあるものをIV型、間葉と胎児にあるものをV型、すべてにあるものをVI型と呼びます[5]。
起こり方にも型ごとの傾向があります。I型とII型は、正常な受精卵の受精後の分裂の誤りで生じたものが多く、とくに異常な細胞の割合が低ければ経過は良好なことが多いとされています。III型は、もともとトリソミーだった受精卵からのトリソミーレスキューで生じたものが多いと考えられています[1]。
🧫 胎盤と胎児のモザイクの型
| 型 | 細胞性栄養膜 | 間葉 | 胎児 |
|---|---|---|---|
| CPM I型 | 異常 | 正常 | 正常 |
| CPM II型 | 正常 | 異常 | 正常 |
| CPM III型 | 異常 | 異常 | 正常 |
| 真の胎児モザイク IV型 | 異常 | 正常 | 異常 |
| 真の胎児モザイク V型 | 正常 | 異常 | 異常 |
| 真の胎児モザイク VI型 | 異常 | 異常 | 異常 |
CPMが胎児発育不全や片親性ダイソミーにつながる理由
同じCPMでも、型によって妊娠への影響は大きく異なります。フランスで13,809件の絨毛検査から見つかったCPM 57例(II型37例、III型20例)を調べた研究では、II型の早産、低出生体重、妊娠の不良な転帰は対照群と有意差がみられませんでしたが、III型ではいずれも多く、この研究ではIII型が早産・低出生体重・不良な転帰と関連していました[7]。胎盤の広い範囲に異常な細胞があると胎盤の働きが落ち、胎児発育不全につながると考えられています。一般向けの解説は限局性胎盤モザイク(CPM)と胎児発育不良(FGR)の関係にあります。
もう1つの理由が片親性ダイソミー(UPD)です。トリソミーの受精卵では、3本の染色体のうち2本が一方の親から、1本がもう一方の親から来ています。トリソミーレスキューで3本のうちどれか1本が偶然失われるとき、もう一方の親から来た1本が失われる確率は3分の1で、その場合は残る2本がどちらも同じ親由来になります。つまり、トリソミーレスキューの後は、理論上約3分の1の確率で胎児が片親性ダイソミーになります。実際、III型CPMではUPDが13例中4例(30.8%)にみられ、理論値とよく一致しました[1]。CPMの報告例を集めた総説でも、UPDを調べた118例中35例(29.7%)にUPDがみられ、その60%は16トリソミーのCPMでした[3]。
片親性ダイソミーが問題になるのは、親由来によって働き方が変わる遺伝子(ゲノムインプリンティング)を含む6・7・11・14・15・20番の染色体です[8]。たとえば15番の2本がどちらも母由来になると、プラダー・ウィリー症候群になります。インプリンティングに関わらない染色体でも、同じ1本が2本そろう(アイソダイソミー)と、親が保因している潜性の病気が現れることがあります。
5. NIPTは胎盤のどこを見ているか:CPMの型とNIPTの結果
cfDNAの出どころは細胞性栄養膜
NIPTで調べる、いわゆる「胎児由来」のセルフリーDNA(cfDNA)の大部分は、実際には胎盤の栄養膜、とくに合胞体栄養膜に由来して母体血中へ放出されたDNAです。したがってNIPTは胎児そのものではなく胎盤由来DNAを主に評価する検査であり、絨毛検査の直接法で評価する栄養膜系の染色体構成との関連が強い検査と考えられます[1]。この性質のため、胎盤と胎児の染色体が食い違うモザイクは、NIPTの偽陽性と偽陰性の両方の原因になります[9]。
型ごとに予想されるNIPTの結果
NIPTが細胞性栄養膜を見ていることから、モザイクの型ごとにNIPTの結果を予想できます。栄養膜系に異常があるCPM I型とIII型では、胎児が正常でもNIPTが陽性(偽陽性)となり得ます。間葉だけに異常があるII型では、栄養膜系が正常であればNIPTは陰性となり、胎児も正常であれば結果として正しい陰性になります。逆に、栄養膜系が正常で胎児に異常があるV型では、NIPTが陰性となる可能性があります(偽陰性)[5][9]。
🧪 モザイクの型とNIPTの結果の関係
| 型 | NIPT(細胞性栄養膜) | 胎児 | NIPTの結果の意味 |
|---|---|---|---|
| CPM I型 | 陽性 | 正常 | 偽陽性 |
| CPM II型 | 陰性 | 正常 | 正しい陰性 |
| CPM III型 | 陽性 | 正常 | 偽陽性(胎盤機能の低下や片親性ダイソミーに注意) |
| 真の胎児モザイク IV型・VI型 | 陽性 | 異常 | 正しい陽性 |
| 真の胎児モザイク V型 | 陰性 | 異常 | 偽陰性 |
※Grati(2014)[5][9]の考え方をもとに作成。実際の結果は、異常な細胞の割合や胎児分画によっても変わります。
この表から、NIPTでRATが陽性になったときにまず考えるべきなのは、多くの場合「胎盤だけの異常(CPM I型かIII型)」であり、確認には胎児本人の細胞を見る羊水検査が必要だということがわかります。偽陽性の原因としてのRATは、第5章のNIPTの偽陽性の原因:珍しい常染色体のトリソミーでも扱っています。
全ゲノムNIPTが加えた視点
絨毛検査が胎盤のごく一部を採って調べるのに対し、NIPTは胎盤全体から血液に出てきたDNAを見ています。そのため、全染色体を解析する全ゲノムNIPTでは、胎盤全体としてトリソミーの細胞がどれくらいの割合で含まれているかを推定できます。胎盤のトリソミーの割合が非常に高い妊娠は、多くがもともとトリソミーの受精卵から始まったもので、長年の絨毛検査のデータでは、胎児発育不全、早産、胎児に残るモザイク、片親性ダイソミーのリスクが最も高いグループです[1]。
全ゲノムNIPTでは、RATは13・18・21トリソミーのおよそ半分の頻度で見つかります[8]。母体血漿のDNA解析で見つかるRATが周産期の合併症と関係することも、大規模な研究で示されています[10]。NIPTでRATが見つかったあとの妊娠の経過と結果の読み方は、次の7-2で詳しく見ていきます。
🩺 院長コラム【モザイクは「どこに・どれだけ」で意味が変わる】
「モザイク」という同じ言葉でも、胎盤の外側の層だけにあるのか、胎盤の芯にもあるのか、赤ちゃん本人にもあるのかで、意味はまったく違います。同じ染色体の異常でも、異常な細胞の割合や、どの染色体かによって、問題にならないこともあれば、胎盤の働きや赤ちゃんの発達に影響することもあります。
NIPTでRATが見つかったときに大切なのは、「陽性=赤ちゃんがトリソミー」と短絡しないこと、そして同時に「胎盤だけだから何も心配ない」とも決めつけないことだと考えています。確定検査で胎児本人の染色体を確認し、必要に応じて片親性ダイソミーの検査や超音波での発育の確認を組み合わせる、という順序で考えることが医学的に妥当だと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. まれな常染色体トリソミー(RAT)とは何ですか?
13番・18番・21番以外の常染色体(1〜22番)が1本多い状態をまとめた呼び方です。完全型RATの多くは妊娠初期に流産となるため、出生に至るRATでは一部の細胞だけがトリソミーのモザイクが重要な割合を占めます。
Q2. 羊水検査でモザイクと言われたらどうなりますか?
2つ以上の独立した培養で同じ異常がみられると「真のモザイク」と判断されます。見通しはどの染色体かで大きく異なり、2・9・16・20・22番は異常な転帰のリスクが高い群、6・8番は比較的低い群に分類されています。超音波で異常がみられる場合はリスクが非常に高く、異常がない場合の見通しは個別に判断する必要があります。
Q3. 胎盤限局性モザイク(CPM)になる確率はどのくらいですか?
絨毛検査では1〜2%にモザイクがみられ、その大部分(約87%)は胎盤だけに異常がある胎盤限局性モザイクです。羊水検査でモザイクがみられるのは0.1〜0.3%で、絨毛検査より一桁少なくなります。
Q4. 胎盤限局性モザイクなら赤ちゃんは大丈夫ですか?
赤ちゃん本人の染色体は正常ですが、型によって注意点が異なります。胎盤の芯(間葉)だけに異常があるII型では、報告研究で対照群との明確な差がみられなかった一方、外側と芯の両方に異常があるIII型は早産や低出生体重との関連が報告されています。また、もともとトリソミーだった受精卵から生じた場合は、約3分の1の確率で片親性ダイソミーになる可能性があります。
Q5. なぜ13・18・21トリソミーだけが生まれてくるのですか?
13・18・21番以外の完全型常染色体トリソミーの多くは、重い遺伝子量不均衡のため胎児が発育できず、妊娠初期に流産となるためです。13・18・21番は含まれる遺伝子が比較的少ない染色体で、1本多くても出生まで育つことがあると考えられていますが、この3つも流産や死産が多いトリソミーです。
まとめ:RATはモザイクの理解から始まる
まれな常染色体トリソミー(RAT)は、全身の細胞がトリソミーだと妊娠が続かないため、妊娠が続いている中で見つかるときは、ほとんどがモザイク、とくに胎盤だけに異常がある胎盤限局性モザイクです[1]。絨毛検査の1〜2%にモザイクがみられ、その大部分は胎盤に限局しています[5]。羊水検査で見つかった真のモザイクでは、どの染色体かと超音波所見で見通しが大きく変わります[6]。
CPMは、異常な細胞が胎盤の外側の層(I型)、芯(II型)、両方(III型)のどこにあるかで意味が異なり、III型は早産や低出生体重との関連が報告され、トリソミーレスキューを伴う場合には片親性ダイソミーにも注意が必要です[7][3]。NIPTで解析される胎児由来cfDNAの大部分は胎盤の栄養膜に由来するため、I型やIII型のCPMは偽陽性の原因となり得ます[9]。次の7-2では、NIPTでRATが見つかったときの結果の読み方と、その後の妊娠の経過を見ていきます(NIPTで見つかるまれなトリソミー)。
🧬 NIPT・出生前診断をご検討の方へ
ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐しており、NIPTの検査前の説明から、結果に応じた確定検査の案内までを行っています。13・18・21番以外の染色体を含む結果の意味についても、モザイクや片親性ダイソミーの可能性を踏まえて医学的に説明します。
参考文献
- [1] Pertile MD. Genome-Wide Cell-Free DNA-Based Prenatal Testing for Rare Autosomal Trisomies and Subchromosomal Abnormalities. In: Page-Christiaens L, Klein HG, eds. Noninvasive Prenatal Testing (NIPT): Applied Genomics in Prenatal Screening and Diagnosis. Academic Press (Elsevier); 2018:97-123. [DOI]
- [2] Wellesley D, et al. Rare chromosome abnormalities, prevalence and prenatal diagnosis rates from population-based congenital anomaly registers in Europe. Eur J Hum Genet. 2012;20(5):521-526. [PubMed 22234154]
- [3] Eggenhuizen GM, et al. Confined placental mosaicism and the association with pregnancy outcome and fetal growth: a review of the literature. Hum Reprod Update. 2021;27(5):885-903. [DOI]
- [4] Kalousek DK, Dill FJ. Chromosomal mosaicism confined to the placenta in human conceptions. Science. 1983;221(4611):665-667. [DOI]
- [5] Grati FR. Chromosomal Mosaicism in Human Feto-Placental Development: Implications for Prenatal Diagnosis. J Clin Med. 2014;3(3):809-837. [PubMed 26237479]
- [6] Wallerstein R, et al. Current knowledge of prenatal diagnosis of mosaic autosomal trisomy in amniocytes: karyotype/phenotype correlations. Prenat Diagn. 2015;35(9):841-847. [PubMed 25976239]
- [7] Toutain J, et al. Confined placental mosaicism and pregnancy outcome: a distinction needs to be made between types 2 and 3. Prenat Diagn. 2010;30(12-13):1155-1164. [PubMed 20936639]
- [8] Lannoo L, et al. Rare autosomal trisomies detected by non-invasive prenatal testing: an overview of current knowledge. Eur J Hum Genet. 2022;30:1323-1330. [DOI]
- [9] Grati FR, et al. Fetoplacental mosaicism: potential implications for false-positive and false-negative noninvasive prenatal screening results. Genet Med. 2014;16(8):620-624. [PubMed 24525917]
- [10] Pertile MD, et al. Rare autosomal trisomies, revealed by maternal plasma DNA sequencing, suggest increased risk of feto-placental disease. Sci Transl Med. 2017;9(405):eaan1240. [DOI]
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