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Rhマイナスの出産は怖くない!二人目のリスクや「抗D人免疫グロブリン注射」の重要性を専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

Rhマイナスの出産は怖くない!二人目のリスクや抗D人免疫グロブリン注射の重要性を専門医が解説

Rhマイナスの出産で注意が必要なのは、お母さんがRhD陰性で、お腹の赤ちゃんがRhD陽性のときです。赤ちゃんの血液がお母さんに入ると、お母さんの体が抗体を作り、二人目以降の赤ちゃんの赤血球を壊すことがあります。けれども、妊娠28週前後と産後72時間以内の予防注射(抗D人免疫グロブリン)で、抗体ができる割合は大きく下げられます[1]。この記事では、リスクのしくみと予防の時期に加えて、「両親がRhプラスなのに、なぜRhマイナスの子が生まれるのか」という遺伝のしくみを臨床遺伝専門医が解説します。妊娠中に受けられる検査の全体像はNIPT(新型出生前診断)のページにまとめています。

⏱️ 30秒でわかる要約

🩸 Q. Rhマイナスの出産のリスクは?二人目は大丈夫?

赤ちゃんがRhD陽性だと、お母さんに抗D抗体ができ、二人目以降の赤ちゃんに貧血や黄疸が起こることがあります。予防しないと約13〜16%で抗体ができますが、妊娠28週前後と産後72時間以内の注射で約0.14〜0.2%まで下がると報告されています[1]。

🧬 Q. Rhマイナスは遺伝する?両親がRhプラスでも生まれる?

RhD陰性は潜性(劣性)遺伝のかたちで受け継がれます。両親がRhD陽性でも、二人ともRhD陰性の遺伝子を1つずつ持っていれば、子どもは4分の1の確率でRhD陰性になります。

🏥 Q. 日本ではどう管理されている?

日本の47施設の研究では、RhD陰性の妊婦さんの96.5%が妊娠28週前後に予防注射を受け、28週から産後までに新しく抗体ができた人は確認できた347人中0人でした[3]。

🔬 Q. 赤ちゃんのRh型は妊娠中にわかる?

お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAを調べて、赤ちゃんのRhD型を判定する方法があります。当院では、NIPTで赤ちゃんのRhD型を調べる検査も行っています。予防注射をどうするかは、結果をもとにかかりつけの産婦人科と相談して決めます。

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1. そもそも「Rhマイナス」とは?基本知識

💡 用語解説:Rhマイナス(RhD陰性)とは

血液型には「ABO式」と「Rh式」などの分類があります。ふだん「Rhプラス・Rhマイナス」と呼んでいるのは、赤血球の表面にD抗原というタンパク質があるかどうかの違いです。D抗原がある人を「Rhプラス(RhD陽性)」、ない人を「Rhマイナス(RhD陰性)」と呼びます。

日本人ではRhD陰性の人は約0.5%(およそ200人に1人)です[6]。一方、ヨーロッパ・北米系の人では15〜17%がRhD陰性で、地域や人種によって頻度が大きく違います[1]。日本で2018〜2023年に22週以降で出産した15万2,526人を調べた研究では、RhD陰性の妊婦さんは1,088人(0.71%)でした[3]。

RhD陰性であること自体は病気ではなく、ふだんの生活には影響しません。特別な配慮が必要になるのは、妊娠・出産と輸血の場面です。

Rhマイナスは遺伝する?両親がRhプラスでも生まれる理由

はい、RhD陰性は遺伝します。D抗原を作るのはRHD遺伝子で、人は父親と母親から1つずつ、合わせて2つの対立遺伝子(アレル)を受け継ぎます。2つのうち1つでも働くRHD遺伝子があればRhD陽性、2つとも働かないときだけRhD陰性になります。このような受け継がれ方を、潜性(劣性)遺伝といいます。

そのため、RhD陽性の両親からRhD陰性の子どもが生まれることがあります。両親がともに「陽性の遺伝子1つ+陰性の遺伝子1つ」を持つヘテロ接合の場合、子どもがRhD陰性になる確率は4分の1です。

🧬 両親の組み合わせと、子どもがRhD陰性になる確率

父親 母親 子どもがRhD陰性になる確率
陽性(陰性の遺伝子を1つ持つ) 陽性(陰性の遺伝子を1つ持つ) 4分の1
陽性(陰性の遺伝子を1つ持つ) 陰性 2分の1
陽性(陽性の遺伝子を2つ持つ) 陰性 0(子どもはRhD陽性)
陰性 陰性 原則としてRhD陰性

RhD陽性の人が陰性の遺伝子を持っているかどうかは、ふつうの血液型検査では分かりません。

日本の研究では、RhD陰性のお母さんから生まれた赤ちゃん1,091人のうち、RhD陰性だったのは95人(8.7%)でした。RhD陰性のお母さんの赤ちゃんの9割ほどはRhD陽性ということになり、これが妊娠中の予防が大切な理由です[3]。また、欧米のRhD陰性の人ではRHD遺伝子がまるごと欠けていることが多いのに対し、日本人を含む東アジアのRhD陰性の人では、遺伝子がまるごと欠けているのではなく、より複雑な遺伝子の変化であることが多いと報告されています[3]。メンデルの法則と血液型の関係はメンデル遺伝で詳しく解説しています。

2. なぜ「Rhマイナス」の出産は注意が必要なのか?

ご自身がRhD陰性だと知ったとき、「赤ちゃんに障害が出るのでは」「普通に出産できないのでは」と不安になる方は少なくありません。先に結論をお伝えすると、決められた時期に予防の注射を受け、抗体の検査を続ければ、二人目以降の妊娠への影響は大きく減らせます[1]。

問題になるのは、お母さんがRhD陰性で、赤ちゃんがRhD陽性の場合(Rh不適合妊娠)です。このとき、お母さんの免疫が赤ちゃんの赤血球のD抗原を「異物」と認識して抗体を作ることがあります。これを感作(かんさ、RhD同種免疫)といいます。

1️⃣ 感作が起こる

ふだんは胎盤があるため、お母さんと赤ちゃんの血液は混ざりません。けれども出産のときや、流産・妊娠中の出血・検査や処置のときなどに、赤ちゃんの血液がわずかにお母さんの体に入ることがあります。するとお母さんの体が、D抗原に対する抗体(抗D抗体)を作り始めます[1]。

2️⃣ 次の妊娠で影響が出る

一度できた抗D抗体(IgG)は、次の妊娠で胎盤を通って赤ちゃんに届きます。二人目もRhD陽性だと、この抗体が赤ちゃんの赤血球を壊し(溶血)、貧血や黄疸、重い場合は胎児水腫を起こすことがあります。これが「二人目が危ない」と言われる理由です。

3️⃣ 予防の注射で防ぐ

抗D人免疫グロブリンを決められた時期に注射すると、お母さんが抗体を作ること(感作)を抑えられます。予防をしない場合に約13〜16%だった感作の割合は、産後の注射で約0.5〜1.8%、妊娠中の注射も加えると約0.14〜0.2%まで下がったと報告されています[1]。

3. データで見るRhマイナス出産のリスクと予防効果

予防の注射をしなかった場合と、した場合で、感作(抗体ができること)の割合がどれくらい違うかを、米国産科婦人科学会(ACOG)の診療指針の数字で見てみます[1]。

📊 予防の方法と感作の割合(RhD陽性の赤ちゃんを妊娠したRhD陰性の女性)

予防の方法 感作の割合
予防の注射なし 約13〜16%
産後だけ注射 約0.5〜1.8%
妊娠28週前後+産後に注射(今の標準) 約0.14〜0.2%

出典:ACOG Practice Bulletin No. 181[1]。海外の複数の研究をまとめた数字です。

日本の47施設の研究(2018〜2023年)では、妊娠初期の検査の時点ですでに抗体があった妊婦さんが1.8%(946人中17人)、妊娠初期から28週までに新しく抗体ができた人が0.6%(850人中5人)でした。一方、28週から産後までに新しく抗体ができた人は、確認できた347人中0人でした[3]。妊娠中の予防が始まる前の時期にも、わずかながら感作は起こりうることが分かります。

4. 必須!「抗D人免疫グロブリン注射」のスケジュール

抗D人免疫グロブリンは、赤ちゃんの血液がお母さんの体に入っても、お母さんが自分で抗体を作る前にD抗原への反応を抑える製剤です。日本の産婦人科診療ガイドラインでも、抗体ができていないRhD陰性の妊婦さんには、妊娠28週前後と分娩後72時間以内の投与が示されています[4]。

✅ 忘れてはいけない2つのタイミング

① 妊娠28週前後

28週前後の抗体の検査(間接クームス試験)が陰性なら、抗D人免疫グロブリンを投与します[4]。日本では1瓶(約250µg)を筋肉注射するのが一般的です[5]。

② 分娩後72時間以内

生まれた赤ちゃんがRhD陽性なら、分娩後72時間以内に投与します。赤ちゃんの血液型や抗体の検査の結果が72時間以内に出ない場合も、投与します[4]。生まれた赤ちゃんがRhD陰性と分かれば、分娩後の注射は不要です。

これ以外にも注射が必要なケース

出産のとき以外にも、赤ちゃんの血液がお母さんに入る可能性があるときは、72時間以内の投与が必要です。国内の承認内容と海外の指針では、次のような場合が挙げられています[1][5]。

とくに流産・中絶のあとは見落とされがちです。自然流産のあとに感作が起こる危険は1.5〜2%と見積もられています[1]。次の妊娠のために、処置を受ける医療機関には必ずRhD陰性であることを伝えてください。

5. 病院選びの基準と「自己血貯血」

「RhD陰性だと、大きな病院でないと産めないの?」という疑問はよく聞かれます。抗体がまだできていない方なら、確認したいのは妊娠28週前後と分娩後に抗D人免疫グロブリンを投与できるか、抗体の検査を予定どおり行えるかです。

すでに抗体ができている方(感作されている方)は事情が違います。赤ちゃんの貧血を超音波で調べたり、必要なら胎児輸血をしたりする必要が出てくるため、それに対応できる高次の医療機関での管理がすすめられます[2][3]。

💡 用語解説:自己血貯血(じこけつちょけつ)

出産の前に、ご自身の血液を採って保存しておき、出血が多かったときに使う方法です。RhD陰性の人は日本人の約0.5%と少ないため、輸血の準備について出産する施設と事前に話し合っておくことが大切です。自己血貯血が必要かどうかは、妊娠の経過や施設の方針によって判断されます。

里帰り出産や、個人のクリニックでの出産を考えている方は、妊娠初期のうちに「RhD陰性ですが、予防の注射と抗体の検査に対応していますか」と確認しておくと安心です。

6. 費用と保険適用について

抗D人免疫グロブリンの注射や抗体の検査の費用、健康保険の扱いは、投与の時期(妊娠中か分娩後か)や医療機関によって異なります。金額は施設ごとに違うため、受診している産婦人科で事前に確認してください。

ミネルバクリニックは自費診療のクリニックで、分娩は行っていません。予防の注射や出産の管理は、かかりつけの産婦人科で受けてください。

7. NIPTで胎児のRh型はわかる?

お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNA(cfDNA)を調べて、赤ちゃんのRhD型を判定する技術はあります。妊娠初期の判定で感度99%を超えると報告されていますが、米国産科婦人科学会は、費用の面から現時点では日常的に行うことはすすめていません[1]。

日本では事情がさらに違います。東アジアのRhD陰性の人ではRHD遺伝子の変化が複雑なため、欧米で使われている方法をそのまま使うことが難しく、日本の研究グループは臨床で使える体制づくりを進める必要があると述べています[3]。日本ではまだ一般的な検査ではありませんが、当院では、NIPTで赤ちゃんのRhD型を調べる検査も行っています。ご希望の方は、NIPTの遺伝カウンセリングのときにご相談ください。

日本の研究では、RhD陰性の妊婦さんのおよそ11人に1人が、結果的に必要のなかった抗D人免疫グロブリンの投与を受けていたと見積もられ、妊娠中に赤ちゃんのRhD型が分かれば不要な投与を減らせる可能性があると述べられています[3]。妊娠中の予防注射をどうするかは、結果をもとに、かかりつけの産婦人科と相談して決めてください。

妊娠初期に受けられる検査:血液型の検査とNIPT

RhD型や抗体の有無は、妊娠初期の血液検査で調べます。同じ時期に考えておきたいのが、赤ちゃんの染色体を調べる検査です。NIPTは、お母さんの採血だけで、赤ちゃんの染色体の数の変化や、一部の微小欠失などを調べるスクリーニング検査です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。受ける時期の考え方はNIPTは何週がベスト?で解説しています。

NIPTで陽性になったときの確定検査(羊水検査・絨毛検査)は、RhD陰性の方では、検査のあと72時間以内に抗D人免疫グロブリンの投与が必要になる処置です[1][5]。検査を受ける前に、RhD陰性であることと、注射をどこで受けるかを確認しておきましょう。2つの検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違いをご覧ください。

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妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
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8. もし赤ちゃんに影響が出たら?(黄疸と治療)

予防をしていてもまれに抗体ができることがあり、以前の妊娠で予防を受けていなかった方もいます。お母さんの抗体が赤ちゃんの赤血球を壊すと、次のような影響が出ることがあります。

  • 新生児の黄疸(おうだん):赤血球が壊れるとビリルビンという黄色い物質が増え、肌が黄色くなります。光を当ててビリルビンを分解する光線療法などで治療します。
  • 貧血:赤血球が減るため貧血になります。重い場合は、お腹の中にいる間に輸血をする胎児輸血や、生まれたあとに血液を入れ替える交換輸血を行います。

抗体ができている妊娠では、赤ちゃんの貧血の兆候を、超音波で脳の血管(中大脳動脈)の血流の速さを測って調べる方法が使われます[2]。日本の研究では、抗体ができていた妊婦さん22人のうち、赤ちゃんに貧血がみられたのは6人(27.3%)、胎児輸血を受けたのは3人(13.6%)で、新生児の死亡はありませんでした[3]。RhD陰性の妊婦さんにとって、妊婦健診での抗体の検査を飛ばさずに受けることには大切な意味があります。

なお、Rhの抗体による胎児水腫は「免疫性」で、抗体がないのに胎児水腫がみられる場合(非免疫性)は、遺伝子の検査で原因を調べることがあります。その検査の一つとして非免疫性胎児水腫(NIHF)包括的遺伝子パネル検査があります。

9. 臨床現場からのメッセージ

仲田洋美院長

👩‍⚕️ 院長からのメッセージ

私も臨床遺伝専門医として、Rhマイナスの妊婦さんからご相談を受けることがあります。

最も多いご相談は「二人目を産んでも大丈夫ですか?」というものです。インターネットで調べると怖いことばかり書いてあって、不安になってしまうお気持ちはよくわかります。

しかし、私が臨床の現場で実感しているのは、「きちんと管理さえすれば、Rhマイナスであることを過度に恐れる必要はない」ということです。抗D人免疫グロブリン注射が普及した現在、重症化するケースは本当に稀になりました。

むしろ心配なのは、「Rhマイナスだから子どもは一人でいい」と諦めてしまう方や、過去に流産した際に注射を打っていなかったことに後から気づく方です。正しい知識を持ち、適切なタイミングで医療介入を受ければ、何人でもお子さんを持つことができます。

一人で悩まずに、どうぞ専門家にご相談ください。私たちは、あなたの不安に寄り添い、最善の選択ができるようサポートいたします。

ミネルバクリニック院長 仲田 洋美

まとめ

RhD陰性の出産で注意が必要なのは、赤ちゃんがRhD陽性で、お母さんに抗体ができる場合です。妊娠28週前後と分娩後72時間以内の抗D人免疫グロブリン、そして流産・中絶・検査などのあとの投与で、感作の多くは防げます。

大切なのは、自分がRhD陰性であることを医療機関と共有することと、決められた時期に注射と抗体の検査を受けることの2つです。RhD陰性は潜性遺伝で受け継がれるため、両親がRhD陽性でもRhD陰性の子どもが生まれることがあります。遺伝のしくみについて詳しく知りたい方は、遺伝カウンセリングもご利用いただけます。

🏥 妊娠初期に、赤ちゃんの染色体も調べておきたい方へ

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。

まだ決めていない方は:NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | NIPTで陽性だったら

Rhマイナスの妊婦さんからよくある質問(FAQ)

Q1. Rhマイナスの出産で、二人目は危険ですか?

二人目以降で問題になるのは、1人目の妊娠・出産で抗D抗体ができ、二人目もRhD陽性の場合です。予防をしないと抗体ができる割合は約13〜16%と報告されていますが、妊娠28週前後と分娩後72時間以内に抗D人免疫グロブリンを投与すると約0.14〜0.2%まで下がります。予防が行われていれば、二人目以降を過度に心配する必要はありません。

Q2. Rhマイナスは遺伝しますか?両親がRhプラスでも生まれますか?

はい、遺伝します。RhD陰性は、RHD遺伝子が2つとも働いていないときに現れる、潜性(劣性)遺伝のかたちで受け継がれます。両親がRhD陽性でも、二人ともRhD陰性の遺伝子を1つずつ持っていれば、子どもは4分の1の確率でRhD陰性になります。

Q3. 夫もRhマイナスなら、予防の注射はいりませんか?

生物学的な父親が確実で、その父親がRhD陰性と分かっていれば、妊娠中の予防投与は不要とされています。父親が確実でない場合や、父親の血液型がはっきりしない場合は、予防の注射を受けてください。

Q4. 1人目のときに注射を打った記憶がありません。2人目は大丈夫ですか?

1人目のお子さんがRhD陰性だった場合は、分娩後の注射は不要なので、打っていない可能性があります。1人目がRhD陽性で注射を受けていなかった場合は、すでに抗体ができている可能性があります。まずは産婦人科で、抗体があるかを調べる血液検査(間接クームス試験)を受けてください。

Q5. Rhマイナスだと妊娠しにくい、病気になりやすいのですか?

RhD陰性は、赤血球の表面にD抗原がないという血液型の違いで、それ自体は病気ではありません。RhD陰性であることが妊娠のしやすさを下げるという根拠は、この記事で確かめた資料の中にはありませんでした。注意が必要になるのは、妊娠したあとに赤ちゃんがRhD陽性で抗体ができる場合と、輸血が必要になった場合です。

Q6. 抗D人免疫グロブリンの注射に副作用はありますか?

国内外の報告では、妊娠中の投与による重い副作用は報告されていません。国内の販売後の報告では、発熱が少数報告されています。人の血漿から作る製剤のため、理論上はウイルス感染の可能性がありますが、その危険は極めて低いとされています。

Q7. 帝王切開でも注射は必要ですか?

はい。分娩の方法にかかわらず、生まれた赤ちゃんがRhD陽性なら、分娩後72時間以内に抗D人免疫グロブリンを投与します。赤ちゃんの血液型などの結果が72時間以内に出ない場合も投与します。

Q8. 流産したときもグロブリン注射は必要ですか?

はい。抗体がまだできていないRhD陰性の方は、流産・人工妊娠中絶・子宮外妊娠(異所性妊娠)のあとも、72時間以内に抗D人免疫グロブリンを投与します。自然流産のあとに抗体ができる危険は1.5〜2%と見積もられています。

Q9. すでに抗体ができている場合、もう妊娠できませんか?

妊娠はできます。抗体の量や、超音波で赤ちゃんの貧血の兆候を調べながら管理し、必要なら胎児輸血ができる施設で診てもらいます。日本の研究では、抗体ができていた妊婦さん22人のうち、赤ちゃんに貧血がみられたのは6人、胎児輸血を受けたのは3人で、新生児の死亡はありませんでした。

Q10. NIPTで赤ちゃんのRh型はわかりますか?

お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAを調べて、赤ちゃんのRhD型を判定する方法があります。日本ではまだ一般的な検査ではありませんが、当院ではNIPTで赤ちゃんのRhD型を調べる検査も行っています。ご希望の方は、NIPTの遺伝カウンセリングのときにご相談ください。妊娠中の予防注射をどうするかは、結果をもとにかかりつけの産婦人科と相談して決めてください。

関連記事

参考文献

  • [1] Committee on Practice Bulletins—Obstetrics. Practice Bulletin No. 181: Prevention of Rh D Alloimmunization. Obstet Gynecol. 2017;130(2):e57-e70. [DOI 10.1097/AOG.0000000000002232]
  • [2] Committee on Practice Bulletins—Obstetrics. ACOG Practice Bulletin No. 192: Management of Alloimmunization During Pregnancy. Obstet Gynecol. 2018;131(3):e82-e90. [DOI 10.1097/AOG.0000000000002528]
  • [3] Takahashi K, Yoshida S, Aoki S, et al. Perinatal outcomes in RhD-negative pregnant women in Japan. Sci Rep. 2025;15:9921. [DOI 10.1038/s41598-025-94487-z]
  • [4] 日本産婦人科医会. RhD陰性妊婦の分娩後72時間以内に血液型や間接クームス試験の結果が未着の場合の対応は?(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』CQ008-1を引用). [日本産婦人科医会]
  • [5] 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議. 公知申請への該当性に係る報告書:乾燥抗D(Rho)人免疫グロブリン(要望番号363). [厚生労働省]
  • [6] 岩手県赤十字血液センター. Blood Information(献血月刊情報)2016年5月号. [日本赤十字社]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療を示すものではありません。妊娠中の管理については、かかりつけの産婦人科にご相談ください。

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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