目次

胎児水腫とは、おなかの赤ちゃんの体の2か所以上に、水分(体液)が異常にたまった状態です。血液型不適合によらない「非免疫性胎児水腫」がほとんどで、原因は染色体・遺伝子・心臓・血液・感染などさまざまです。染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかった胎児水腫に全エクソーム解析(WES)を行い、約3割で原因が見つかったという研究があります[1]。原因がわかると、次の妊娠でくり返す可能性や、次の妊娠でどう備えられるかを具体的に考えられるようになります。このページでは、胎児水腫の原因と、457遺伝子をまとめて調べる非免疫性胎児水腫の遺伝子パネル検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
胎児水腫の原因になる遺伝子の変化を、457遺伝子まとめて調べます。ヌーナン症候群の仲間、リンパ管の病気、先天代謝異常(ライソゾーム病など)、血液・心臓・骨・筋肉の病気などが対象です。染色体の数の変化や感染症は、この検査では調べません。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
妊娠中の超音波で胎児水腫と言われ、染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかった方、前の妊娠で胎児水腫があり次の妊娠を考えている方、ご家族に胎児水腫の方がいる方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは3〜5週間です。検体は血液・唾液・口腔粘膜です。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込。出生前診断として行う場合は30分33,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、次の妊娠でくり返す可能性と、出生前診断で調べられるかがわかります。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。
\ 原因を知って、次の妊娠の計画に /
検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。
1. 胎児水腫(非免疫性胎児水腫)とは
胎児水腫とは、超音波検査で、赤ちゃんのおなか(腹水)・胸(胸水)・心臓のまわり(心嚢液)・皮膚(皮下のむくみ)のうち2か所以上に、水分が異常にたまっている状態です。米国母体胎児医学会(SMFM)の診療ガイドラインは、血液型不適合(赤血球同種免疫)がないのに2か所以上に体液がたまった状態を「非免疫性胎児水腫」と定義しています[6]。英語では nonimmune hydrops fetalis、略してNIHFと呼ばれます。
胎児水腫は1つの病気の名前ではなく、さまざまな原因の「結果として現れる状態」です。そのため、同じ「胎児水腫」と言われても、原因によって見通しも、次の妊娠への影響も大きく違います。原因をたどることが、このページの検査のいちばんの目的です。
どれくらいの頻度で起こるのか
非免疫性胎児水腫は、妊娠1,700〜3,000件に1件ほどにみられると報告されています[1]。決して多くはありませんが、妊婦健診の超音波検査で指摘されて、初めてこの言葉を知る方がほとんどです。
免疫性と非免疫性の違い
胎児水腫には、お母さんと赤ちゃんの血液型の違い(Rh不適合など)で起こる「免疫性」と、それ以外の「非免疫性」があります。遺伝子の変化による原因の系統的レビューでは、今は胎児水腫のほぼ90%が非免疫性とされています[2]。このページの検査は、非免疫性胎児水腫の原因となる遺伝子を調べるものです。
生存率・予後は原因によって大きく変わる
「胎児水腫で無事に出産できるか」「生存率は」という問いへの答えは、原因によって大きく違います。系統的レビューでは、非免疫性胎児水腫の死亡率は報告によって55〜90%と幅があるとされています[2]。米国の研究で、染色体検査で原因がわからなかった127例を調べたところ、出産まで経過を追えた妊娠のうち生まれた赤ちゃんは31%でした[1]。
ただし、これらは多くのご家族をまとめた数字で、目の前の一人の赤ちゃんの見通しを決めるものではありません。原因によっては、生まれる前後の治療や管理の方針が変わることもあります。だからこそ、原因を確かめることが、今の妊娠と次の妊娠の両方の判断の出発点になります。胎児水腫の一般的な解説(症状・治療)は胎児水腫の原因や予防方法のコラムでもお伝えしています。
2. 胎児水腫の原因:染色体・遺伝子・それ以外
非免疫性胎児水腫の原因は、染色体の変化、1つの遺伝子の変化(単一遺伝子疾患)、感染症、そのほか(胎盤や双胎の問題など)に分かれます。どの原因かによって、調べる検査が違います。
🧬 胎児水腫の原因と、それを調べる検査
| 原因 | 例 | 調べる検査 |
|---|---|---|
| 染色体の数・構造の変化 | ターナー症候群、21トリソミー、18トリソミーなど | 染色体検査(Gバンド法)・マイクロアレイ染色体検査 |
| 1つの遺伝子の変化 | ヌーナン症候群の仲間、リンパ管の病気、ライソゾーム病、血液・心臓・骨・筋肉の病気など | このページの遺伝子パネル検査、出生前全エクソーム検査(WES) |
| 感染症 | お母さんから赤ちゃんへの感染など | 産科での血液検査など(遺伝子パネル検査では調べない) |
| 血液型不適合 | Rh不適合など(免疫性胎児水腫) | お母さんの血液型・抗体の検査(遺伝子パネル検査では調べない) |
※この遺伝子パネル検査では、赤血球の同種免疫・感染症・染色体の変化による原因は検出されません(当院の検査内容による)。
染色体の変化(ターナー症候群・トリソミーなど)
胎児水腫と言われたとき、最初に考えるのが染色体の変化です。米国の研究によると、染色体検査やマイクロアレイで原因がわかるのは非免疫性胎児水腫の約25%で、これらの検査では1つの遺伝子の変化による病気は見つけられません[1]。妊娠初期に首の後ろのむくみ(NT)や嚢胞性ヒグローマを指摘されたあとに、全身のむくみへ進むこともあります。
遺伝子の変化(ヌーナン症候群の仲間・代謝・リンパ管など)
染色体に異常がなかった胎児水腫で、遺伝子の原因としていちばん多かったのは、ヌーナン症候群の仲間(RASopathy)でした。米国の研究では、原因が見つかった37例のうち11例(30%)がRASopathyで、11例すべてが、親から受け継いだのではなく赤ちゃんで新しく起きた変化でした[1]。
RASopathyとは、細胞の増え方を調節するRAS/MAPK経路の遺伝子の変化で起こる病気のグループで、ヌーナン症候群、コステロ症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC症候群)などが含まれます。このほか、先天代謝異常(ライソゾーム病など)、筋肉の病気、骨の病気なども原因として見つかっています[1]。
遺伝子の原因を整理した系統的レビューでは、非免疫性胎児水腫と強く関係する遺伝子が131個挙げられ、関係する遺伝子(強い・中等度の根拠のもの)を病気の種類で分けると、先天代謝異常27.6%、複数の臓器にまたがる症候群15.3%、神経・筋肉14.1%、血液13.6%、骨9.0%、心臓・血管7.3%、リンパ管の病気5.1%でした[2]。原因の遺伝子が、ひとつの診療科にまとまらないことがよくわかります。
感染症・そのほかの原因
感染症や、胎盤・双胎に関わる問題など、遺伝子以外の原因もあります。こうした原因は遺伝子検査では見つからないので、産科での検査とあわせて考えます。逆に言えば、遺伝子以外の原因と染色体の変化が否定されたあとに残る胎児水腫こそ、遺伝子パネル検査が役に立つ場面です。
3. 遺伝子検査で原因が見つかる割合
染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかった非免疫性胎児水腫127例に全エクソーム解析を行った米国の研究では、37例(29%)で原因となる遺伝子の変化が見つかりました[1]。さらに12例(9%)では、病気の原因の可能性がある変化が見つかっています。
📊 原因が見つかった37例の遺伝のしかた(米国の研究)
| 遺伝のしかた | 割合 | 親から受け継いだか |
|---|---|---|
| 常染色体顕性(優性) | 25例(68%) | 88%が赤ちゃんで新しく起きた変化、12%が親から受け継いだ変化 |
| 常染色体潜性(劣性) | 10例(27%) | 95%が両親から受け継いだ変化 |
| X連鎖・そのほか | 2例 | X連鎖潜性(FOXP3)1例、遺伝のしかたが定まらないもの(NEXN)1例 |
※Sparks TN, et al. N Engl J Med. 2020[1]による。対象は、染色体検査またはマイクロアレイで原因がわからなかった米国の非免疫性胎児水腫127例。
この研究から見えてくるのは、2つのことです。ひとつは、「染色体は正常」と言われても、遺伝子を調べると原因が見つかることが少なくないこと。もうひとつは、見つかった原因の中に、両親から受け継いだ潜性遺伝の病気が含まれていて、その場合は次の妊娠でもくり返す可能性があることです。
染色体検査・マイクロアレイで原因がわからないとき
ふつうは、まず染色体検査やマイクロアレイで染色体の変化を確かめ、そこで原因がわからなければ遺伝子の検査に進みます[1]。原因がわからないまま病院を回り続けるより、1回の検査で遺伝子の原因をまとめて確かめられる可能性があります。ただし、遺伝子検査を受けても、全員に原因が見つかるわけではありません。上の研究でも、約7割では原因の遺伝子は確定しませんでした[1]。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
妊娠中に胎児水腫と言われて原因を知りたい方と、前の妊娠で胎児水腫があり次の妊娠を考えている方に向く検査です。おなかの赤ちゃんの検体(羊水・絨毛)や、生まれたお子さん、ご両親の検体のどれを調べるのがよいかは状況で変わるので、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。
妊娠中に胎児水腫と言われ、原因を知りたい方
超音波で腹水・胸水・心嚢液・皮下のむくみを指摘され、染色体検査やマイクロアレイでは原因がわからなかった方です。原因がわかると、病名・見通し・生まれたあとに備えておくことが具体的になります。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。
前の妊娠で胎児水腫があり、次の妊娠を考えている方
次のお子さんで同じことが起こる確率は、原因と遺伝のしかたで大きく変わります。原因がわからないままでは、次の妊娠で何を調べればよいかという「的」が決められません。前の妊娠の赤ちゃんの検体が残っているか、ご両親の検査から始めるかも含めて、遺伝カウンセリングでご相談ください。
ご家族に胎児水腫の方がいる方
きょうだいやご親族の妊娠で胎児水腫があった方は、ご自身が潜性遺伝の病気の保因者かどうかを知りたいと考えることがあります。ご家族の原因がわかっていれば、同じ変化だけをピンポイントで調べられます。わかっていない場合は、下の保因者検査も選択肢になります。
この検査より別の検査が向いている場合
比べる相手は検査の種類です。状況によっては、このパネル検査より次の検査が向いています。
🔍 状況に合わせた検査の選び方
| こんなとき | 向いている検査 |
|---|---|
| まだ染色体を調べていない | まずマイクロアレイ染色体検査や染色体検査 |
| 染色体は正常で、胎児水腫の原因を探したい | このページの遺伝子パネル検査(457遺伝子) |
| 胎児水腫のほかにも多くの異常があり、病気をしぼれない | 出生前全エクソーム検査(WES)・出生前全ゲノム検査(WGS) |
| 超音波でヌーナン症候群らしい所見がある | Noonan症候群・RASopathies遺伝子パネル検査(このページの検査にもRASopathyの主な遺伝子は含まれます) |
| αサラセミアが疑われる | αサラセミア遺伝子検査 |
| 妊娠前に、ご夫婦が潜性遺伝の病気の保因者か知りたい | 拡大版保因者スクリーニング |
※どの検査が合うかは、超音波所見・これまでの検査結果・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
\ 原因がわかれば、次の妊娠で何を調べるかが決まります /
原因の遺伝子がわかれば、次の妊娠で羊水検査・絨毛検査による出生前診断を院内で計画できます。
海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。
5. この検査で調べる457遺伝子と、関係する病気
この検査では、非免疫性胎児水腫で報告のある遺伝子と、似た症状を起こしうる遺伝子、あわせて457遺伝子を一度に調べます。遺伝子の配列を読む検査(シーケンス)と、遺伝子のまとまった欠失・重複を調べる解析の両方を行います。
この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
💡 検査の中身を最新の版に合わせました
この検査は、検査を行う会社が対象の遺伝子を見直しており、以前の428遺伝子から457遺伝子になっています。新しく加わった29遺伝子には、リンパ管の病気に関わるPIEZO1・EPHB4・ADAMTS3や、ヌーナン症候群の仲間に関わるRRAS2・MRAS・PPP1CBなどが含まれます(2026年10月時点で確認)。
🧬 457遺伝子の主なグループと、代表的な遺伝子・病気
※遺伝子のグループ分けは主な病気による目安です。1つの遺伝子が複数の病気に関わることがあります。非免疫性胎児水腫と関係する遺伝子全体では、常染色体潜性(劣性)61.8%、常染色体顕性(優性)26.0%、X連鎖5.3%などとされています[2]。遺伝子ごとの遺伝のしかたは、結果が出たときに遺伝カウンセリングでご説明します。
▼ 457遺伝子の一覧を見る(遺伝子名のリンクから各遺伝子の解説へ)
AARS2, ABCC6, ACAD9, ACE, ACTA1, ACTB, ACTC1, ACTG1, ACTN2, ADAMTS3, ADAR, AGGF1, AGT, AGTR1, AHCY, AIFM1, AKAP9, ALAS2, ALG1, ALG11, ALG12, ALG13, ALG2, ALG3, ALG6, ALG8, ALG9, ALPK3, ANK2, AP3B1, ARSB, ASAH1, ASCC1, ATP11C, ATP1A2, ATP5F1A, ATP6AP2, ATP6V0A2, AUH, B4GALT1, B9D1, B9D2, BICD2, BRAF, BSND, C12orf65, C15orf41, CACNA1C, CALCRL, CALM1, CALM2, CALM3, CANT1, CARS2, CASP10, CAV3, CBL, CC2D2A, CCBE1, CDAN1, CDC42, CEP290, CFL2, CHD2, CHD7, CHRM3, CHRNA1, CHRNB1, CHRND, CHRNG, CLCNKA, CLCNKB, CLN8, CNBP, CNTN1, COG1, COG2, COG4, COG5, COG6, COG7, COG8, COL10A1, COL11A1, COL1A1, COL1A2, COL2A1, CSRP3, CTSA, CYBB, CYP11A1, CYP21A2, DDOST, DHCR24, DHCR7, DHDDS, DMPK, DNAH9, DNAJC19, DOK7, DOLK, DPAGT1, DPM1, DPM2, DPM3, DTNA, DYNC1H1, DYNC2H1, EARS2, EBP, ELAC2, ENPP1, EPB41, EPHB4, ERBB3, ERCC1, ERCC2, ERCC5, ERCC6, ESCO2, EVC, EVC2, FARS2, FAS, FASLG, FASTKD2, FAT4, FGD1, FGFR3, FH, FHL1, FIG4, FKTN, FLNA, FLNB, FLNC, FLT4, FLVCR2, FOXC2, FOXP3, FRAS1, FREM2, FZD6, G6PD, GAA, GALC, GALNS, GALNT14, GATA1, GATA2, GATA4, GATA5, GBA(現在の名前:GBA1), GBE1, GFM1, GFM2, GJC2, GLA, GLB1, GLDN, GLE1, GLMN, GLUL, GNE, GNPTAB, GPC3, GPC4, GPI, GRIN2B, GRIP1, GTPBP3, GUSB, GYPC, HADH, HADHA, HADHB, HBA1, HBA2, HBB, HBD, HDAC8, HGSNAT, HK1, HNF1B, HRAS, HSD17B4, HSPD1, HTRA2, HYAL1, IDS, IDUA, IFIH1, IFNG, IFT122, IFT140, IFT172, IFT43, IFT80, IKZF1, INPPL1, INVS, ITGA9, ITPR1, JPH2, KAT6B, KBTBD13, KCNE1, KCNE2, KCNH2, KCNJ1, KCNJ2, KCNJ5, KCNQ1, KCTD1, KDM6A, KIAA0586, KIAA1109, KIF23, KLF1, KLHL40, KLHL41, KMT2D, KRAS, KRIT1, LAMB2, LAMP2, LARS2, LBR, LDB3, LIPA, LMOD3, LYST, LZTR1, MACROD2, MAGT1, MAP2K1, MAP2K2, MAP3K8, MARS2, MED12, MED13L, MGAT2, MIB1, MID1, MKKS, MKS1, MMACHC, MOGS, MPDU1, MPI, MRAS, MRPL3, MRPL44, MRPS16, MRPS22, MTFMT, MTO1, MUSK, MVK, MYBPC3, MYH3, MYH6, MYH7, MYL2, MYL3, MYLK2, MYOM1, MYOZ2, MYPN, MYSM1, NAGLU, NARS2, NDUFB10, NEB, NEK1, NEK9, NEU1, NEXN, NF1, NF2, NIPBL, NKX2-1, NPC1, NPC2, NPHP3, NPHS1, NPL, NRAS, NSUN2, OFD1, OPA3, P4HB, PDGFB, PEX1, PEX10, PEX11B, PEX12, PEX13, PEX14, PEX16, PEX19, PEX2, PEX26, PEX3, PEX5, PEX6, PEX7, PGM1, PHGDH, PIEZO1, PIGA, PIGN, PIK3CA, PKD1L1, PKHD1, PKLR, PKP2, PLD1, PLN, PMM2, PNPT1, PPP1CB, PPP3CA, PRDM16, PRF1, PRKAG2, PRKCD, PSAT1, PTCH1, PTH1R, PTPN11, RAB27A, RAD21, RAF1, RAPSN, RARS2, RASA1, RASA2, RASGRP1, REN, RFT1, RGMA, RIPK4, RIT1, RMND1, RNASEH2A, RNASEH2B, RNASEH2C, RPGRIP1L, RPL11, RPL15, RPL26, RPL27, RPL35A, RPL5, RPS10, RPS17, RPS19, RPS24, RPS26, RPS29, RPS7, RRAS, RRAS2, RYR1, SAMHD1, SCN4B, SCN5A, SEC23B, SERAC1, SERPINA11, SF3B4, SGPL1, SGSH, SH2D1A, SHOC2, SLC12A1, SLC17A5, SLC22A5, SLC25A26, SLC26A2, SLC35A1, SLC35A2, SLC35C1, SLC35D1, SLC4A1, SLC6A9, SMAD6, SMARCB1, SMC1A, SMC3, SMN1, SMPD1, SNTA1, SOS1, SOS2, SOX18, SPRED1, SPTA1, SPTB, SRD5A3, SSR4, STAMBP, STAT3, STRA6, STT3A, STT3B, STX11, STXBP2, SUMF1, SYNE1, SYNGAP1, TAB2, TALDO1, TAPT1, TARS2, TAZ, TCAP, TCTN2, THSD1, TIMM50, TMEM165, TMEM216, TMEM231, TMEM67, TNNC1, TNNI3, TNNT1, TNNT2, TP63, TPM1, TPM2, TPM3, TREX1, TRIP11, TRNT1, TSC1, TSC2, TSFM, TTC21B, TTN, TUFM, TXN2, UNC13D, UROS, VARS2, VCL, WDR19, WDR34, WDR35, WDR60, WDR81, WNT7A, WT1, XIAP, XYLT1, ZEB2
NIPTとの関係:一部の遺伝子は妊娠9週からのNIPTでも調べられます
このパネルの遺伝子のうち、胎児水腫の原因として多いヌーナン症候群の仲間の遺伝子(PTPN11・SOS1・SOS2・RAF1・RIT1・KRAS・NRAS・HRAS・BRAF・MAP2K1・MAP2K2・SHOC2・CBL)は、赤ちゃんで新しく起きた変化を調べる当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)でも調べられます。LZTR1はインペリアルプランだけで調べられます。そのほか、FGFR3・COL1A1・COL1A2・COL2A1・TSC1・TSC2なども両プランの対象です。
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。ただし、NIPTは胎児水腫の原因を診断する検査ではありません。すでに胎児水腫と言われている場合は、羊水・絨毛の検体を使った染色体検査や遺伝子検査で原因を確かめます。プランの詳細はNIPTのトップページをご覧ください。
保因者検査との関係
潜性遺伝の原因となる遺伝子のうち、GBA・GAA・HBB・HBA1・HBA2・NPHS1・PEX1・PEX6・SMN1・GLB1・NEU1・DHCR7・GALNS・IDUA・NPC1・CHRNG・RAPSN・DOK7などは、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)の対象に含まれています(PKLR・MUSK・LAMB2などは含まれません。2026年10月時点で当院の遺伝子一覧で確認)。男性版は714遺伝子で、より広い女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子もあります。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子、単独では受けられません)もあります。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、457遺伝子の小さな変化(1文字の置き換わり・小さな挿入や欠失)と、遺伝子のまとまった欠失・重複です。一方で、次のような限界があります。
- ●調べない原因:染色体の数・構造の変化、感染症、血液型不適合による胎児水腫は、この検査では検出されません。
- ●見つけにくい変化:転座・逆位、繰り返し配列が長くなる変化(リピート伸長。たとえば筋強直性ジストロフィー1型の原因となるDMPK遺伝子のCTGリピート伸長)、遺伝子のスイッチの部分(プロモーター)や、遺伝子の中でもたんぱく質の設計図から離れた場所(深いイントロン)の変化は検出できません。エクソン1つだけの欠失・重複も、いつも見つかるわけではありません。
- ●よく似た配列がある遺伝子:ALG1遺伝子の一部(エクソン6〜13)は、よく似た配列があるため、変化を見つける力が下がります。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化は、この検査で調べるようには作られていません。とくにPIK3CAの変化の多くはモザイクのため、見つからなくても、PIK3CAに関わる過成長の病気を否定することはできません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この検査で検出できない変化や、まだ胎児水腫との関係がわかっていない遺伝子の変化が残る可能性があります。
見つかった変化は、別の原理の方法でもう一度確かめてから報告します(欠失・重複はqPCR法やMLPA法、読み取りの質が低い変化はサンガー法)。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたでも解説しています。
結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。
原因が見つかったとき
病名がはっきりし、遺伝のしかたが決まります。今の妊娠では、生まれたあとに備えておくことや、専門の医療機関での管理を考える手がかりになります。原因の遺伝子の変化が、ご両親から受け継いだものか、赤ちゃんで新しく起きたものかは、ご両親の検査で確かめます。
次の妊娠でくり返す確率は、遺伝のしかたで変わる
次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、原因と遺伝のしかたで大きく変わります。常染色体顕性(優性)の変化を親が持っていた場合は、お子さん1人ごとに2分の1です。常染色体潜性(劣性)でご両親とも保因者だった場合は、お子さん1人ごとに4分の1です[1]。
赤ちゃんで新しく起きた変化(de novo)の場合、次のお子さんの確率は低くなりますが、ゼロではありません。親御さんの卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」があるためです。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。
⚠️ 「新しく起きた変化だから、次は大丈夫」とは言えません
ご両親の血液で変化が見つからなくても、卵子や精子のもとになる細胞に変化がある可能性は残ります。血液で測った結果は、生殖細胞の状態の目安になりません。次の妊娠では、原因の変化を出生前診断で確かめる計画を立てておくことをおすすめします。
原因が見つからなかったとき
原因が見つからなかった場合も、遺伝子の原因が完全に否定されたわけではありません(第6章)。状況に応じて、出生前全エクソーム検査や全エクソーム検査(WES)など、より広く調べる検査を考えます。研究が進めば、同じデータを解析し直して新しくわかることもあります。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。ご両親の検査で受け継ぎ方を確かめると、意味が見えてくることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます
「次の妊娠では、海外でPGT-Mを受けたい」というお問い合わせを多くいただいています。PGT-Mとは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。
欧州ヒト生殖胎芽学会(ESHRE)の指針によると、PGT-Mの準備には、①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、②どの遺伝子のどの変化かが書かれた元の報告書、③ご家族の検体が必要です[3]。受精卵から取れるDNAはごくわずかで、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあるため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。どちらの染色体に変化が乗っているかを決めるには、ご夫婦に加えて、病気の有無がわかっている血縁者のDNAが必要です。指針の目安は、顕性遺伝なら患者さん少なくとも1人(できれば2人)および/または発症していない方1人、潜性遺伝なら患者さん・保因者・保因者でない方、X連鎖なら患者さんおよび/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)です[3]。
ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。胎児水腫の原因で多いヌーナン症候群の仲間のように、赤ちゃんで新しく起きた変化(de novo)が原因で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとされています[3]。血縁者がいない場合、指針は、治療周期の受精卵や1個の精子を調べて変化の乗った染色体を決める方法を挙げていますが、できるかどうかは施設や家系の状況で大きく変わり、受けられないこともあります[3]。海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。
臨床遺伝専門医としての判断として、意義がまだわからない変化(VUS)は病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。
⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です
PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[4]。PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えます。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。
日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます。この指針の「重篤」とは、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いものとされています。学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。
英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。一覧にない病気は、施設を通じて申請し、HFEAが審査します。米国では、PGTを直接規制する連邦や州の法律はなく、主に医師・施設の判断で行われています[5]。どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います。同じ病気でも、ある国では対象になり、別の国では個別の審査が必要になることがあります。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。くわしくは海外でPGT-Mを考えている方へのコラムで解説しています。
8. 病的変異が見つかったら、次にできること
原因の遺伝子がわかることは、ゴールではなく次の計画のスタートです。読む方の立場ごとに、具体的にできることを整理します。
今の妊娠・生まれたお子さんについて
病名が決まると、見通し、生まれたあとに確かめる合併症(心臓・血液・代謝など)、使える支援が具体的になります。原因が見つかることで、生まれる前後の管理の方針を考えるうえでの手がかりになると報告されています[1]。治療や管理は、専門の医療機関で行われます。
症状のないご両親について
ご両親の検査で、変化を受け継いでいたのか、赤ちゃんで新しく起きたのかを確かめます。潜性遺伝なら、ご両親それぞれが保因者かどうかを確かめます。顕性遺伝の病気でご自身が変化をもっていた場合は、ご自身の健康で気をつけることがあるかもご説明します。
次のお子さんを考えるときの選択肢
- ●自然に妊娠して出生前診断を受ける:ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
- ●NIPTで調べられる遺伝子なら:原因がヌーナン症候群の仲間など、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランの対象遺伝子であれば、妊娠9週から(6〜8週は臨床研究)のNIPTで調べられることがあります(第5章)。
- ●PGT-M:日本産科婦人科学会の審査を経て国内で、または海外で受ける選択肢があります(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。
- ●特別な検査をせずに妊娠・出産する:これも、そのまま選べる選択肢です。どの選択も尊重します。
ご家族(きょうだい・ご親族)について
潜性遺伝の病気でご両親が保因者だった場合、そのきょうだいも保因者の可能性があります。ご家族の原因がわかっていれば、症状のない方でも、ご本人の同意のもとで同じ変化だけをピンポイントで調べられます。将来、結婚や妊娠を考えるときの手がかりになります。
当院でのその後
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。妊娠したときの羊水検査・絨毛検査まで、院内で続けて受けていただけます。
9. 日本の制度(2026年10月時点)
胎児水腫は、さまざまな原因で起こる「状態」の名前です。指定難病や小児慢性特定疾病などの制度の対象になるかどうかは、生まれたあとに診断された原因の病気ごとに決まります。原因の病気が確定していることは、制度を調べるときの出発点になります。くわしくは難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円で、結果までは3〜5週間です。唾液・口腔粘膜の検体ならオンライン診療でも受けられます。
💴 費用・日数・検体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査内容 | 非免疫性胎児水腫に関係する457遺伝子(シーケンス+欠失・重複解析) |
| 検査費用 | 税込330,000円 |
| 遺伝カウンセリング料 | 30分22,000円(税込)。出生前診断として行う場合は30分33,000円(税込)。※検査費用とは別 |
| 結果までの期間 | 3〜5週間 |
| 検体 | 血液・唾液・口腔粘膜 |
| オンライン診療 | 可能(唾液・口腔粘膜はキットをご自宅へ、血液は全国の提携医療機関で採血) |
※検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングとはもご覧ください。
\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /
臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【「原因不明」のままにしないことが、次の妊娠を守る】
胎児水腫と言われたご夫婦にとって、いちばんつらいのは「なぜこうなったのか」がわからないまま、次の妊娠を考えなければならないことだと思います。原因がわからなければ、次の妊娠で何を調べればよいかも決められません。私は、原因をたどることこそが、次の妊娠への最初の備えだと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
胎児水腫の原因として多いヌーナン症候群の仲間は、多くが赤ちゃんで新しく起きた変化です。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。ご自身を責める必要はまったくありません。一方で、両親から受け継いだ潜性遺伝の病気が原因のこともあり、その場合は次の妊娠でも4分の1の確率でくり返します。どちらなのかを知ることで、次の妊娠の計画は大きく変わります。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という思いはよくわかります。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。知ったうえで次の妊娠を考えたい方には、出生前診断まで当院で続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 胎児水腫とは何ですか?
超音波検査で、赤ちゃんのおなか(腹水)・胸(胸水)・心臓のまわり(心嚢液)・皮膚(皮下のむくみ)のうち2か所以上に、水分が異常にたまっている状態です。血液型不適合によらないものを非免疫性胎児水腫といい、今は胎児水腫のほぼ90%が非免疫性とされています。1つの病気の名前ではなく、さまざまな原因で起こる状態です。
Q2. 胎児水腫の原因は何ですか?
染色体の変化(ターナー症候群やトリソミーなど)、1つの遺伝子の変化(ヌーナン症候群の仲間、リンパ管の病気、ライソゾーム病、血液・心臓・骨・筋肉の病気など)、感染症、血液型不適合などがあります。染色体に異常がなかった胎児水腫を調べた米国の研究では、遺伝子の原因でいちばん多かったのはヌーナン症候群の仲間(RASopathy)でした。
Q3. 胎児水腫の生存率は?無事に出産できますか?
原因によって大きく違います。系統的レビューでは、非免疫性胎児水腫の死亡率は報告によって55〜90%と幅があるとされています。これは多くのご家族をまとめた数字で、一人ひとりの赤ちゃんの見通しを決めるものではありません。原因を確かめることが、見通しを考える出発点になります。
Q4. 染色体検査で異常がなかったのに、遺伝子検査を受ける意味はありますか?
あります。染色体検査やマイクロアレイで原因がわかるのは非免疫性胎児水腫の約25%で、これらの検査では1つの遺伝子の変化による病気は見つけられません。染色体検査やマイクロアレイで原因がわからなかった127例に全エクソーム解析(WES)を行った米国の研究では、29%で原因の遺伝子の変化が見つかりました。ただし、全員に原因が見つかるわけではありません。
Q5. 胎児水腫は次の妊娠でもくり返しますか?
原因と遺伝のしかたで変わります。常染色体潜性(劣性)でご両親とも保因者なら、お子さん1人ごとに4分の1、常染色体顕性(優性)の変化を親が持っていれば2分の1です。赤ちゃんで新しく起きた変化なら確率は低くなりますが、親御さんの生殖細胞にだけ変化がある可能性があるため、お子さん1人あたり最大で2分の1と考えます。原因がわかれば、次の妊娠で出生前診断を計画できます。
Q6. NIPTで胎児水腫の原因はわかりますか?
NIPTは胎児水腫の原因を診断する検査ではありません。ただし、胎児水腫の原因として多いヌーナン症候群の仲間の遺伝子の一部は、当院のNIPT(ダイヤモンドプラン・インペリアルプラン)で、赤ちゃんで新しく起きた変化を調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。
Q7. 海外でPGT-Mを受けたいのですが、英語の検査結果はもらえますか?
はい。英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。ただし、ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。ご家族の検体が必要になることが多く、赤ちゃんで新しく起きた変化が原因の場合は、一般的な方法が使えないこともあります。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。
Q8. 結果はどのくらいでわかりますか?
結果までは3〜5週間です。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。
🧬 胎児水腫の原因を知って、次の妊娠の計画を
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。胎児水腫の原因の遺伝子がわかれば、今の妊娠の見通しだけでなく、次の妊娠でくり返す可能性や、出生前診断で何を調べればよいかがわかります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Sparks TN, Lianoglou BR, Adami RR, et al. Exome Sequencing for Prenatal Diagnosis in Nonimmune Hydrops Fetalis. N Engl J Med. 2020;383(18):1746-1756. [DOI: 10.1056/NEJMoa2023643](PMID: 33027564)
- [2] Quinn AM, Valcarcel BN, Makhamreh MM, Al-Kouatly HB, Berger SI. A systematic review of monogenic etiologies of nonimmune hydrops fetalis. Genet Med. 2021;23(1):3-12. [DOI: 10.1038/s41436-020-00967-0](PMID: 33082562)
- [3] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
- [4] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
- [5] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
- [6] Society for Maternal-Fetal Medicine (SMFM); Norton ME, Chauhan SP, Dashe JS. Society for Maternal-Fetal Medicine (SMFM) clinical guideline #7: nonimmune hydrops fetalis. Am J Obstet Gynecol. 2015;212(2):127-139. [DOI: 10.1016/j.ajog.2014.12.018](PMID: 25557883)



