遺伝子に関連する病気や悩みについて専門家に相談できるのが遺伝カウンセリングです。
まだまだなかなか一般的でない遺伝カウンセリング。
そこで今回は知的障害の兄弟がいる人の結婚前遺伝カウンセリングについて、ケースレポートしたいと思います。
遺伝カウンセリングとは?
遺伝カウンセリングとは、専門家から遺伝子疾患などについて科学的根拠に基づき医学的情報を提供してもらうことです。患者は遺伝子疾患の悩みや疑問などを相談することができます。
また、提供された情報を用いて自ら問題を解決できるように社会的・心理的サポートをしてもらいます。
遺伝カウンセリングの対象は、遺伝子疾患を抱えた人や妊婦さんで胎児の遺伝子疾患が見つかった人のみでなく、その家族や健康な人も含まれます。
遺伝カウンセリングを受ける際に最も大切なのは、置かれている状況を十分に理解し、それを受け止めた上で意思決定することです。専門家がそのプロセスを支援します。
遺伝カウンセリングの重要性とどういうことを行うのかについては、リンク先のページをご覧ください。
関連記事:遺伝カウンセリングの重要性について
今回の症例の問題点
Aさんは、知的障害のある弟さんと二人兄弟です。
障害のある兄弟がいると、子ども時代にいじめにあったり、Aさんもおかしいんじゃないかと言われたりして、辛い思いをしたこともあります。
そういうことの全般を乗り越えてきて、Aさんは社会人として生活しています。
好きな女性ができ、結婚や、子どもをもつことを考えた時、知的障害のあるお子さんができるのではないかと不安になりました。
彼女のご両親には彼女から、「知的障害のある子どもが産まれるかもしれない」と言って、了承はもらっていました。
だけど。Aさんは、彼女の不安をなるだけ減らしてあげたいと思うようになりました。
あと。自分の遺伝子に問題があるかどうかを単純に知りたかったんです。
Aさんの頭の中では、弟さんがいることで嬉しかったこと、弟さんの障害のせいで同級生から心無いことを言われたりして悲しかったこと、いろんな思い出が交錯していました。
可能ならば、自分と同じ思いを自分の子どもにさせたくない。
今回の症例の選択
Aさんは、彼女と一緒に来ました。
子どものころからAさんが抱えていた悩みを聞いて、彼女も涙していました。
この日は一旦、話を聞いて、Aさんカップルはお帰りになりました。
後日、検査すると決めたようで、お越しになりました。
迷いもなく、すっきりとした表情でした。
遺伝子検査するのって、怖いんですよね。良くも悪くもはっきりするからです。
だけど、はっきりした結果が欲しい時が人生にはあります。右に行くか、左に行くかの分かれ道。選択する材料として、そういうはっきりしたものが欲しい時があります。
わたしと一緒にその景色をみましょう。どんな結果が出ても、わたしはあなたを支えます。
Aさんは、発達障害・学習障害・知的障害遺伝子検査を受けました。
関連記事:発達障害・学習障害・知的障害遺伝子検査
今回の症例の検査結果
1か月後、検査結果が出ました。
遺伝子検査の結果説明は、必ず遺伝カウンセリングを先にしています。
結果の解釈をしないといけないからです。(NIPTの場合は解釈の余地がないので、先に結果をお送りしてからカウンセリングをしています)
結果は、Aさんにはいくつかの遺伝子変異が見つかったのですが、すべて「病的意義はない」もの、つまり、これで病気になる可能性はないものでした。
今回の症例の検査結果が判明したその後
Aさんカップルはとても安心しておられました。
「問題ない」という結果ではない可能性もあったのですが、どちらにせよ、はっきりとした結果をもとに、予測をしたい、避けられるリスクは避けたい、という思いで検査を受けましたので。
どちらにせよ、結婚されるおつもりでしたが、まったく曇りのない状態で踏み出せるのとそうでないのと、新しい二人の人生のスタートとしては全く違いますよね。
お幸せに!
まとめ
遺伝カウンセリングは、遺伝子疾患について専門家から科学的根拠に基づいた医学的情報を提供してもらい、遺伝子疾患に関する悩みを相談するために設けられる機会です。
遺伝の悩みというのは、一番はお子さんを作るときに表面化しますので、すごく深刻な悩みになることは間違いないでしょう。
そういう悩みを抱えた患者さんたちに、真摯に寄り添える。そういう遺伝専門医でありたいと私は考えています。
ご相談・検査は全国からオンライン診療で行えますので、お悩みの方は是非、ミネルバクリニックにご連絡を下さい。