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軟骨無発生症II型・低軟骨形成症とは?COL2A1遺伝子による骨系統疾患の原因・症状・遺伝・出生前診断

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

軟骨無発生症II型(なんこつむはっせいしょうにがた)と低軟骨形成症(ていなんこつけいせいしょう)は、軟骨をつくる材料であるII型コラーゲンが正しく作れなくなることで起こる、骨の発育の病気(骨系統疾患)です。原因はCOL2A1(コルツーエーワン)という1つの遺伝子の変化で、手足が極端に短く、胸郭(きょうかく=ろっ骨のかご)が狭いために肺が育ちにくく、多くの赤ちゃんは出生前後に亡くなる、たいへん重い病気です。この2つは「別々の病気」ではなく、同じ遺伝子の異常で起こるひと続きの病気(スペクトラム)の中で最も重い側に位置づけられています。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 COL2A1遺伝子・骨系統疾患・出生前診断
臨床遺伝専門医監修

Q. 軟骨無発生症II型・低軟骨形成症とは、まず結論だけ知りたいです

A. COL2A1遺伝子の変化により、軟骨の主成分であるII型コラーゲンが正しく作れなくなって起こる、極めて重い骨系統疾患です。手足が極端に短く、胸郭が狭いために肺が十分に育たず、多くは死産または出生直後に亡くなります。同じCOL2A1の異常で起こる「II型コラーゲン異常症」というひと続きの病気の中で、最も重い側に位置します。

  • 疾患の定義 → OMIM #200610、Orphanet ORPHA:93296/93297、有病率は出生4〜6万人に1人
  • 分子メカニズム → II型コラーゲンの三重らせんが組めず、異常なタンパク質が軟骨細胞の中にたまる(ドミナント・ネガティブ効果)
  • 主な症状 → 極端な四肢短縮、椎体(背骨の本体)と骨盤の骨化欠如、狭い胸郭による肺低形成、胎児水腫
  • 鑑別診断 → 軟骨無発生症IA型・IB型、致死性骨異形成症、Jeune症候群などとの見分け方
  • 遺伝・再発 → 多くは新生突然変異だが、ご両親のモザイクにより再発することがある(再発率の評価が重要)

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1. 軟骨無発生症II型・低軟骨形成症とは:定義と歴史的背景

軟骨無発生症II型(Achondrogenesis type II:ACG2)と低軟骨形成症(Hypochondrogenesis:HCG)は、手足の極端な短さ、体幹(胴体)の短さ、大きな頭、そして胎児水腫(むくみ)を特徴とする、生まれる前後の時期に命にかかわる重い骨系統疾患です。どちらも、軟骨の土台となるII型コラーゲンがうまく作れないことで起こる「II型コラーゲン異常症」という病気のグループに属し、その中でも最も重い症状を示すタイプとして位置づけられています[3]

💡 用語解説:骨系統疾患(こつけいとうしっかん)

骨や軟骨が作られ、成長していく過程に生まれつき異常があり、全身の骨格の形や大きさに影響が出る病気の総称です。原因の多くは遺伝子の変化で、現在400種類以上が知られています。軟骨無発生症II型・低軟骨形成症は、その中でも生命にかかわるタイプにあたります。

かつてこの2つは、レントゲン所見や重症度のわずかな違いから「別々の病気」と考えられていました。1983年にWhitleyとGorlinは、太ももの骨の長さと太さの比率をもとにいくつかのサブタイプに分ける分類を提案しました。しかしその後、1986年のBorochowitzらの研究によって、重い低軟骨形成症と軽い軟骨無発生症II型をはっきり区別するのは難しく、両者は連続したひと続きの病気(スペクトラム)であることが示されました。さらに1985年、Sprangerは軟骨無発生症II型・低軟骨形成症・先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)を、同じII型コラーゲンの異常から重症度が少しずつ軽くなっていく「ひとつの病気の家族」としてまとめる、画期的な考え方を示しました。

現在の分子遺伝学はこの考え方を完全に裏づけています。軟骨無発生症II型と低軟骨形成症はどちらも、第12番染色体にあるCOL2A1遺伝子の変化を共有する、同じスペクトラムの中での「表現型の違い」として理解されています。国際的なデータベースでは、軟骨無発生症II型は OMIM #200610 に登録されており[3]、低軟骨形成症はこの #200610 の中に「同じスペクトラムの幅(臨床的多様性)」として含めて扱われています。希少疾患データベースのOrphanetでは、軟骨無発生症II型が ORPHA:93296、低軟骨形成症が ORPHA:93297 として登録されています[1][2]。病名コードとしては、ICD-10では両者ともQ77.0、最新のICD-11ではLD24.50(軟骨無発生症II型)とLD24.51(低軟骨形成症)に分けられています。

📝 補足:発生頻度は両者を合わせて出生4〜6万人に1人と推定される、たいへん稀な病気です。日本では「2型コラーゲン異常症関連疾患」全体の患者数は約1,500人(うち成人が約1,000人)とされ、軟骨無発生症II型・低軟骨形成症のように命にかかわる胎児例は、その中のごく一部です[9]

2. 原因遺伝子COL2A1と分子病態メカニズム

この病気の根本的な原因は、第12番染色体(12q13.11)にあるCOL2A1遺伝子の片方に生じた変化(ヘテロ接合性の病的バリアント)です。COL2A1は、軟骨・眼の硝子体(しょうしたい)・内耳に多く含まれるII型コラーゲンの「α1(II)鎖」という材料の設計図です。

💡 用語解説:軟骨内骨化(なんこつないこっか)

赤ちゃんの骨の多くは、はじめに「軟骨でできた型(鋳型)」として作られ、それがだんだん硬い骨に置きかわっていきます。この置きかえの仕組みを軟骨内骨化といいます。II型コラーゲンはこの軟骨の型をつくる主役なので、その材料に異常があると、骨の発育全体が大きく乱れてしまいます。なお、頭の骨のように軟骨を経ずに作られる骨化(膜内骨化)は比較的保たれます。

なぜ1か所の変化で病気が起こるのか:ドミナント・ネガティブ効果

完成したII型コラーゲンは、3本のα1(II)鎖がより合わさった「三重らせん構造」をつくって働きます。このため、片方の遺伝子だけに変化があっても病気が起こります。正常な遺伝子から作られた正しい鎖と、変化した遺伝子から作られた異常な鎖が、細胞の中でランダムに組み合わさってしまい、結果として機能しない不良品のコラーゲンが大量に作られてしまうのです。これを「ドミナント・ネガティブ効果」と呼びます。

💡 用語解説:ドミナント・ネガティブ効果

変化した遺伝子から作られた異常なタンパク質が、正常なタンパク質の働きまで「邪魔してしまう」現象です。複数のパーツが組み合わさって機能するタンパク質では、1個の不良パーツが混ざるだけで全体が使えなくなることがあります。「量が半分に減るだけ」のハプロ不全(下記参照)よりも影響が大きく、これが重い症状につながります。

この不良コラーゲンは、正しい形に折りたためないため細胞の中(小胞体)にたまり、軟骨細胞に強いストレス(小胞体ストレス)を与えます。罹患した軟骨を顕微鏡で観察すると、すべての軟骨細胞で小胞体が大きく膨らみ、その内部にII型コラーゲンが強く蓄積している様子が確認されています。つまりこの病気は、単に「材料が足りない」だけでなく、細胞の中で不良品が詰まって細胞そのものが壊れていくことが、骨の発育不全を引き起こす大きな原動力になっているのです。

変化の「場所」と「種類」が重症度を決める

COL2A1遺伝子には600以上の病的バリアントが報告されています[7]。重要なのは、変化の種類と場所によって、起こる病気の重さがまったく変わるという点です。軟骨無発生症II型・低軟骨形成症を引き起こす変化の多くは、三重らせんの中で繰り返される最も小さなアミノ酸「グリシン」が、別の大きなアミノ酸に置きかわるミスセンス変異です。グリシンはらせんの中心にすき間なく収まる必要があるため、ここが大きなアミノ酸に変わると、らせん構造が致命的に不安定になります。

💡 用語解説:ミスセンス変異とは

DNAの文字が1つ変わることで、できあがるタンパク質のアミノ酸が「別の種類」に置きかわる変異です。タンパク質の形がゆがみ、機能に影響します。軟骨無発生症II型では、このミスセンス変異によってコラーゲンの形そのものが壊れます。ミスセンス変異の詳しい解説はこちら

反対に、タンパク質が途中で切れてしまうナンセンス変異フレームシフト変異では、異常なタンパク質が作られるのではなく、正常なタンパク質の量が半分になる「ハプロ不全」が起こります。同じCOL2A1の変化でも、ハプロ不全の場合は、軟骨無発生症II型よりもずっと軽いスティックラー症候群(I型)の原因になることが知られています。

💡 用語解説:ハプロ不全(はぷろふぜん)

2本ある遺伝子のうち片方が働かなくなり、作られるタンパク質の量が「正常の約半分」に減ってしまう状態です。量は減りますが残り半分は正常に働くため、ドミナント・ネガティブ効果に比べて症状は軽くなる傾向があります。同じCOL2A1でも、メカニズムの違いが重症度を分けます。

II型コラーゲン異常症の重症度スペクトラム

COL2A1の変化で起こる「II型コラーゲン異常症」の重症度の幅

◀ 最重症(周産期に致死的)軽症 ▶
軟骨無発生症II型
低軟骨形成症
トランス型扁平椎異形成症
クニースト異形成症
先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)
スティックラー症候群

左端の周産期に致死的な最重症型から、右端の比較的軽い疾患まで、COL2A1の変化によって連続的につながっています。

3. 主な症状と表現型

胎児・新生児には、特徴的でさまざまな体の異常がみられます。前述のとおり同じスペクトラムに属するため症状は連続的で、一般に低軟骨形成症は軟骨無発生症II型より四肢の短さや骨化の遅れがいくぶん軽いとされますが、いずれも本質的には極めて重い状態です。

🫁 胸郭・呼吸(最重要)

  • 樽(たる)状の極端に狭い胸郭
  • 短く水平に走る肋骨
  • 狭い胸→肺低形成→呼吸不全(生命予後を決める最大の因子)

🦴 四肢・体幹

  • 極端に短い手足(四肢短縮型小人症)
  • 短い体幹(胴体)
  • 代償的にふくらんだ腹部

👶 頭・顔

  • 体に対して大きな頭・短頭
  • 短い頸(くび)、平坦で卵型の顔
  • 前額部の突出・両眼隔離・小顎症
  • 口蓋裂(こうがいれつ)を伴うことも

💧 骨格以外の合併症

  • 羊水過多・胎児水腫(むくみ)
  • 心臓の中隔(しきり)の形成異常
  • 頸部の嚢胞性ヒグローマ
  • 足の軸後性多指症(まれ)

💡 用語解説:肺低形成(はいていけいせい)

肺が十分に発育・拡張できず、小さく未熟なまま生まれてくる状態です。この病気では、胸郭が物理的にとても狭いため、胎児期に肺がふくらむスペースがなく、肺がうまく育ちません。その結果、生まれた赤ちゃんの多くは自分で呼吸を確立できず、出生時または直後に重い呼吸不全に陥ります。これがこの病気で命にかかわる最大の理由です。

💡 用語解説:胎児水腫(たいじすいしゅ)

胎児の体の2か所以上に、異常な水分(むくみ)がたまった状態です。この病気では、極端に狭い胸郭によって胎児の飲み込みや血液の戻りが妨げられることなどが重なって起こると考えられています。重い胎児水腫に進むと胎内で心不全を起こし、死産の原因になることがあります。

心臓や体液の異常も伴うことがある

Potockiら(1995年)は、低軟骨形成症の赤ちゃんに心房中隔欠損や完全型房室中隔欠損などの心臓の中隔形成異常を報告し、心臓の発生にもII型コラーゲンが何らかの役割を果たしている可能性を指摘しました[3]。また胎生期には羊水過多や胎児水腫を高い頻度で合併し、頸部に嚢胞性ヒグローマ(液体のたまった袋)が形成されることもあります。これらは、出生前の超音波検査で重い骨系統疾患の存在を疑うきっかけにもなります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「短い手足」の奥にある、本当に大切なこと】

超音波で手足の極端な短さを指摘されると、多くのご家族はまず「身長が低い病気なのかな」と受け止められます。けれども、軟骨無発生症II型・低軟骨形成症で本当に命を左右するのは、手足の長さそのものではなく、胸郭が狭いために肺が育たないことです。ここを正しくお伝えすることが、私たち専門医の大切な役割だと考えています。

数字や所見の説明だけが先行すると、ご家族は置いてけぼりになってしまいます。「今わかっていること」と「まだわからないこと」を、ひとつずつ、ご家族のペースに合わせてお話しすること。それが診断という出来事を、ご家族がご自身の言葉で受け止めていくための土台になると、私はいつも感じています。

4. 鑑別診断:他の重い骨系統疾患との見分け方

「軟骨無発生症(Achondrogenesis)」という名前のつく病気には、歴史的な経緯から、まったく異なる原因をもつ3つのタイプ(IA型・IB型・II型)が混在しています。いずれも極端な四肢短縮と周産期致死という共通点はありますが、遺伝形式と再発リスクが根本的に異なるため、正確に見分けることが遺伝カウンセリング上きわめて重要です。

特徴 IA型(Houston-Harris) IB型(Fraccaro) II型/低軟骨形成症
原因遺伝子 TRIP11 SLC26A2 COL2A1
遺伝形式 常染色体潜性(劣性) 常染色体潜性(劣性) 常染色体顕性(優性)
頭蓋骨の骨化 著しく低下・薄い 低下していることが多い おおむね正常に保たれる
肋骨のレントゲン 短く多発骨折(数珠状) 短く薄い(骨折なし) 短く水平・扇状(骨折なし
特有の所見 特異な顔貌 内反足・ヘルニア 小顎症・口蓋裂・胎児水腫

IA型・IB型はともに常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、次のお子さんの再発リスクが一律25%になります。一方、軟骨無発生症II型・低軟骨形成症は常染色体顕性(優性)遺伝で、再発の考え方がまったく異なります。この区別が、ご家族へのカウンセリングで決定的に重要になります。

致死性骨異形成症

FGFR3遺伝子が原因。狭い胸郭は似ますが、レントゲンで「電話の受話器のように曲がった大腿骨」やクローバー葉状の頭蓋が特徴で、椎体の骨化は本疾患ほど完全には失われません。

Jeune症候群(窒息性胸郭異形成症)

細く長い胸が特徴で、軸後性多指症をよく伴いますが、頭蓋骨や脊椎の広い骨化異常は伴わない点で区別されます。

重症型低ホスファターゼ症

TNSALP遺伝子の代謝性骨疾患。全身の骨化低下や骨の曲がり・骨折を伴いますが、軟骨の組織学的な異常パターンが本疾患とは本質的に異なります。

見分けの最大の鍵は、「肋骨に骨折がないこと」(軟骨無発生症IA型では数珠状の多発肋骨骨折がみられます)と、「椎体の骨化がほぼ完全に失われていること」です。これらの所見の組み合わせが、他の骨系統疾患との区別に役立ちます。なお、クニースト異形成症やトランス型扁平椎異形成症は同じCOL2A1の異常ですが、本疾患より重症度がやや低いタイプです。

5. 診断と遺伝子検査の進め方

診断は「出生前」と「出生後」で方法が異なります。「診断=出生前にしかできない」「出生前で必ずわかる」というのは誤解です。それぞれの段階でできることを正しく知っておくことが大切です。

① 出生前の評価(超音波・MRI と確定診断)

妊娠中期(おおよそ14〜22週)の超音波スクリーニングで、極端な四肢短縮、大きな頭、短い頸、著しく狭い胸などが立体的に描き出されます。診断を裏づける重要な所見が「椎体(背骨の本体)の骨化が見えないこと」です。正常な胎児では脊椎の骨化により強い影が引かれますが、本疾患ではこれが確認できません。羊水過多や全身の胎児水腫の存在も、重い骨系統疾患の存在を強く示唆する手がかりとなります。胎児MRIは肺の容積評価などに役立つことがあります。

超音波はあくまで「疑う」ための検査です。出生前に確定診断を行う場合は、絨毛検査または羊水検査で胎児の細胞を採取し、COL2A1遺伝子を解析します。家系内で原因となる変化がすでにわかっている場合には、より確実な診断が可能です。

💡 用語解説:絨毛検査・羊水検査

どちらも胎児の細胞を直接調べる「確定的な」出生前検査です。絨毛検査は妊娠11週ごろから胎盤の組織を、羊水検査は妊娠15〜16週ごろから羊水中の細胞を採取します。これらの細胞からCOL2A1遺伝子を解析することで、確定診断につなげられます。少量ながら流産などのリスクがあるため、検査の意義とリスクは事前に十分な説明が必要です。

② 出生後の評価(レントゲンと遺伝子解析)

出生後(または死産児)のレントゲンは、軟骨内骨化の重い障害をそのまま映し出します。以下が代表的な診断の手がかりです。

💡 レントゲンで本疾患を強く示唆する所見

  • 頭蓋骨(膜内骨化)は正常に骨化しているのに、椎体の骨化がほぼ完全に欠如している
  • 仙骨・坐骨・恥骨の骨化欠如、三日月状にくぼんだ「パラグライダー様」の腸骨
  • 極端に短く幅広い長管骨、扇状・杯状に広がった骨幹端
  • 短く水平に走る肋骨で、骨折を伴わない(軟骨無発生症IA型との最大の区別点)

確定診断は、COL2A1遺伝子の解析(シーケンス)によって病的バリアントを同定することで得られます。なお、この病気は1つの遺伝子の変化(単一遺伝子疾患)であり、染色体の数や大きな構造をみる検査(Gバンド法など)では見つかりません。骨系統疾患のように複数の候補遺伝子が考えられる場合は、関連遺伝子をまとめて調べるパネル検査や全エクソーム解析が有用です。

🤰 出生前に関わる検査

超音波で疑い、絨毛検査・羊水検査でCOL2A1を確定的に解析します。スクリーニングとして、COL2A1を含む拡大型NIPTのプランもあります(NIPTは確定診断ではなく可能性を調べる検査です)。

羊水検査・絨毛検査についてインペリアルプランダイヤモンドプラン

🧬 出生後に関わる検査

レントゲン所見をもとに、COL2A1を含む遺伝子パネル検査で確定診断につなげます。COL2A1は当院の以下のパネルに含まれています。

結合組織疾患NGSパネル検査低身長遺伝子パネル検査

6. 治療と長期管理、社会的支援

軟骨無発生症II型・低軟骨形成症は、現在のところ根本的な治療法がない、命にかかわる病気です。そのため、胎児期に強く疑われた場合や確定診断がついた場合の医療は、妊娠の継続に関する意思決定の支援と、緩和ケア(つらさをやわらげるケア)が中心になります。

出生前に高度な肺低形成と極端な四肢短縮が確認された場合は、産科医・新生児科医・臨床遺伝専門医・遺伝カウンセラーなど多職種のチームによる、ていねいな情報提供が行われます。羊水過多は前期破水や早産、母体の呼吸苦などのリスクを高めるため、妊娠を継続する場合には、羊水を抜く処置など母体を守るための対症療法が検討されることがあります。

出産に至った場合、新生児は自分で呼吸を確立することが極めて難しく、重い呼吸不全に直面します。この段階で、積極的な蘇生や人工呼吸をどこまで行うかについては、その医学的な意味と生命倫理の観点から、あらかじめご家族と十分に話し合っておくこと(アドバンス・ケア・プランニング)が大切です。お別れに対するグリーフケア(悲嘆へのケア)も、医療として重要な役割を担います。

まれに長く生存する例と、日本の社会的支援

大半は周産期に亡くなりますが、まれに低軟骨形成症で新生児期を生き延びる例も報告されています。その場合は、出生後しばらく持続的な呼吸器サポートが必要になることが多く、乳児期以降まで生存すると、臨床像が時間とともに変化し、最終的にはより軽症の先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)として診断名が再分類されるのが通例です。これは、軟骨無発生症II型・低軟骨形成症・SEDCが別々の病気ではなく、同じ原因に基づくひと続きの病気であることを物語っています。

日本では、II型コラーゲン異常症に関連する一連の疾患群が、厚生労働省の「小児慢性特定疾病(告示番号15_02_010)」に認定されています。生存したお子さんは、お住まいの市区町村を通じた申請により医療費助成の対象となり、家計の負担を軽くする支援につながります[9]。成人期に達する軽症例では、整形外科などによる長期的な移行期医療や、障害年金などの継続的な支援体制も整えられています[10]

7. 遺伝カウンセリングと再発リスクの考え方

この病気の遺伝学的な管理で最も大切なのが、再発リスク(次のお子さんで再び起こる可能性)の評価です。軟骨無発生症II型・低軟骨形成症は常染色体顕性(優性)遺伝の形をとりますが、患者さんのほぼ全員が胎児期または新生児期に亡くなるため、患者さん自身が次世代に遺伝子を受け継ぐことは現実には起こりません。そのため、見つかったCOL2A1の変化は、歴史的には新生突然変異(デノボ:両親にはなく、お子さんで初めて生じた変化)と考えられてきました。この理解では、健康なご両親からの次のお子さんの再発リスクはごく低い(通常1%未満)とされ、事実上の孤発例として説明されてきました。

しかし近年、健康で血縁関係のないご両親から、軟骨無発生症II型のお子さんが繰り返し生まれる(再発する)例が複数報告されました。Faivreら(2004年)は連続した2回の妊娠で再発した例を、Forzanoら(2007年)は3回の妊娠で再発した家系を報告し、外見上まったく健康な親の体細胞と生殖細胞の両方に低い頻度で変化が混在している状態(モザイク)を証明しました。Comstockら(2010年)も同様の結論を支持しています[3]

💡 用語解説:生殖細胞系列モザイク

「モザイク」とは、もとは1個の受精卵に由来しながら、遺伝情報の異なる細胞が体の中に混在している状態です。とくに精子や卵子のもとになる細胞(生殖細胞)の一部にだけ変化が混じっているものを「生殖細胞系列モザイク」といいます。親本人は健康でも、生殖細胞の一部に変化があると、次のお子さんに繰り返し受け継がれることがあります。モザイクについての詳しい解説はこちら

これらの発見は、実際のカウンセリングに大きな影響を与えます。お子さんにCOL2A1の変化が見つかった場合、ご両親の血液などを用いた高感度な遺伝子検査(次世代シーケンシングなど)が勧められます。親の血液から低い割合の変化(おおむね5〜25%程度)が検出されれば、それは親が体細胞モザイクであることを意味し、生殖細胞にも変化が及んでいる可能性が高いと考えられます。この場合、次のお子さんの再発リスクは、古典的な「1%未満」から最大で50%近くまで上がる可能性があります。一方、最新の検査でも親から変化がまったく検出されない場合でも、純粋な生殖細胞系列モザイクの可能性を完全に否定はできないため、ていねいなカウンセリングが必要です[8]

この再発リスクの見積もりは、次の妊娠での選択肢を大きく左右します。再発リスクが一定以上と推定される場合には、着床前遺伝学的検査(PGT-M)の対象となりうるほか、次の妊娠が成立した際には絨毛検査・羊水検査などの出生前診断が選択肢になります。どの選択をとるかは、ご家族の価値観や状況によって異なります。医師はあくまで中立的な立場で情報をお伝えする役割であり、決定はご家族に委ねられます。詳しくは遺伝カウンセリングとはもあわせてご覧ください。

8. よくある誤解

誤解①「健康な両親なら再発しない」

多くは新生突然変異ですが、ご両親の体細胞・生殖細胞モザイクにより再発することがあります。「親が健康だから次も大丈夫」とは言い切れません。親のモザイク率の評価が大切です。

誤解②「軟骨無発生症はすべて同じ」

同じ名前でも、IA型・IB型は劣性遺伝、II型は顕性(優性)遺伝と、原因も遺伝形式も再発リスクも違います。正確な型の特定が必要です。

誤解③「II型コラーゲンの病気はすべて致死的」

COL2A1の変化はひと続きのスペクトラムを作ります。スティックラー症候群のように、成人まで生活できる軽いタイプもあります。変化の場所と種類が重さを決めます。

誤解④「診断は生まれてからしかできない」

出生前でも、超音波の「椎体の骨化が見えない」所見などから強く疑え、絨毛・羊水検査でCOL2A1を解析すれば確定診断が可能です。

9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「もう一度同じことが起きるのか」という問いに、誠実に向き合う】

この病気でご相談にいらっしゃるご家族から、最も多くいただくのが「次の妊娠でも同じことが起きるのでしょうか」という問いです。かつては「新生突然変異だから、ほぼ繰り返さない」と説明されてきました。けれども、ご両親のモザイクによって再発する例があることが明らかになった今、私たちはこの問いに、より誠実に、より精密に向き合う必要があると考えています。

大切なのは、不安をあおることでも、安易に「大丈夫」と保証することでもありません。ご両親の遺伝子を高感度に調べ、再発リスクをできるかぎり正確にお伝えし、そのうえで選択はご家族にお委ねする——この中立的な姿勢こそが、専門医に求められるものだと思っています。正しい情報が、ご家族がこれからを選んでいくための、確かな足場になることを願っています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 軟骨無発生症II型と低軟骨形成症は別の病気ですか?

別々の病気ではなく、同じCOL2A1遺伝子の変化で起こる「ひと続きの病気(スペクトラム)」です。一般に低軟骨形成症のほうがいくぶん軽いとされますが、いずれも生まれる前後の時期に命にかかわる重いタイプです。長く生存した例では、後により軽いSEDCに診断名が変わることもあります。

Q2. なぜ起こるのですか?

第12番染色体にあるCOL2A1遺伝子の変化により、軟骨の主成分であるII型コラーゲンが正しく作れなくなることが原因です。とくに三重らせんの中の小さなアミノ酸「グリシン」が別のアミノ酸に置きかわるミスセンス変異が多く、できあがった不良コラーゲンが正常なものの働きまで邪魔してしまう(ドミナント・ネガティブ効果)ため、重い症状が出ます。

Q3. この病気は遺伝しますか?次の子も同じ病気になりますか?

常染色体顕性(優性)遺伝の病気ですが、報告例の多くは新生突然変異(デノボ)で、ご両親には同じ変化がありません。ただし、ご両親の体細胞・生殖細胞モザイクによって再発する例も知られており、その場合の再発リスクは「1%未満」から最大50%近くまで上がる可能性があります。次の妊娠を考える際は、ご両親の遺伝子を高感度に調べたうえでのカウンセリングをお勧めします。

Q4. 出生前に診断できますか?

妊娠中期の超音波で、極端な四肢短縮や「椎体の骨化が見えない」所見、狭い胸郭、胎児水腫などから強く疑われます。確定診断には絨毛検査・羊水検査によるCOL2A1の解析が必要です。家系内で原因の変化が判明している場合は、より確実に診断できます。

Q5. 治る病気ですか?生まれた赤ちゃんはどうなりますか?

現在のところ根本的な治療法はありません。胸郭が狭く肺が育たないため、多くは死産または出生直後に呼吸不全で亡くなります。医療は、つらさをやわらげる緩和ケアと、ご家族の意思決定を支える支援が中心になります。まれに長く生存する例もあり、その場合は呼吸器サポートが必要になることが多いです。

Q6. 似た病気との見分け方は?

最大の手がかりは、肋骨に骨折がないこと(軟骨無発生症IA型では数珠状の多発骨折がみられます)と、頭蓋骨の骨化は保たれているのに椎体の骨化がほぼ消えていることです。致死性骨異形成症(受話器様の大腿骨)やJeune症候群(細長い胸・多指症)とも所見の違いで区別します。最終的にはCOL2A1の遺伝子解析で確定します。

Q7. 親が健康なのに、なぜ再発することがあるのですか?

ご両親のどちらかが「生殖細胞系列モザイク」、つまり精子や卵子のもとになる細胞の一部にだけ変化を持っている場合があるためです。親本人は健康でも、変化を持つ生殖細胞が複数のお子さんに受け継がれることで再発が起こります。だからこそ、親の遺伝子を高感度に調べて再発リスクを評価することが大切です。

Q8. 日本で利用できる公的な支援はありますか?

II型コラーゲン異常症に関連する疾患群は「小児慢性特定疾病(告示番号15_02_010)」に認定されています。生存したお子さんは、お住まいの市区町村を通じた申請で医療費助成の対象になります。成人期に達する軽症例では、専門医による長期的な移行期医療や障害年金などの支援も受けられます。詳しくはお住まいの自治体や主治医にご相談ください。

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関連記事

参考文献

  • [1] Orphanet. Achondrogenesis type 2. ORPHA:93296. [Orphanet]
  • [2] Orphanet. Hypochondrogenesis. ORPHA:93297. [Orphanet]
  • [3] OMIM #200610. Achondrogenesis, Type II; ACG2. Johns Hopkins University. [OMIM]
  • [4] MedlinePlus Genetics. Hypochondrogenesis. [MedlinePlus]
  • [5] MedlinePlus Genetics. Achondrogenesis. [MedlinePlus]
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  • [7] Barat-Houari M, et al. Mutation Update for COL2A1 Gene Variants Associated with Type II Collagenopathies. Hum Mutat. 2016;37(1):7-15. [PubMed]
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  • [10] 日本小児科学会. 2型コラーゲン異常症関連疾患(移行期医療に関する診療ガイド). [日本小児科学会]

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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