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エリス・ファンクレフェルト症候群の遺伝子検査|原因遺伝子EVC・EVC2と遺伝する確率・次の妊娠への備え

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

エリス・ファンクレフェルト症候群の遺伝子検査

エリス・ファンクレフェルト症候群(軟骨外胚葉異形成症)は、短い手足と低身長、短い肋骨による狭い胸、多指症、爪や歯の異常、先天性心疾患を特徴とする、生まれつきの骨の病気です。原因はEVC・EVC2という2つの遺伝子の変化で、常染色体潜性(劣性)遺伝のため、ご両親がともに保因者なら、次のお子さんで同じ病気が起こる確率は4分の1です。お子さんで原因の遺伝子の変化がわかれば、次のお子さんでどれくらいの確率で起こるのか、次の妊娠でどう備えられるのかを、具体的に考えられるようになります。このページでは、病気の特徴・遺伝のしかたと、EVC・EVC2の2つを調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

エリス・ファンクレフェルト症候群の原因遺伝子EVC・EVC2の2つを一度に調べ、病気の原因となる変化があるかを確かめます。この病気の方65人を調べた研究では、約7割の方でどちらかの遺伝子に原因が見つかっています。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

多指症・短い手足・狭い胸・心臓の病気を指摘されたお子さんとご家族、妊娠中の超音波検査で手足の短さなどを指摘された方、上のお子さんが診断されていて次の妊娠を考えているご夫婦です。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査費用は税込330,000円で、遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、オンライン診療でも受けられます。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。ご両親がともに保因者なら次のお子さんで4分の1の確率で起こるため、次の妊娠では絨毛検査・羊水検査を院内でご相談いただけます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、次のお子さんの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. エリス・ファンクレフェルト症候群とは(軟骨外胚葉異形成症)

エリス・ファンクレフェルト症候群は、軟骨の育ち方の異常(軟骨異形成)による短い手足・短い肋骨と、多指症、爪や歯の形成の異常、先天性心疾患をあわせもつ、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です[1]。「エリスファンクレフェルト症候群」「エリス・ヴァン・クレフェルト症候群」「Ellis-van Creveld症候群(EvC)」とも書かれ、骨・軟骨(中胚葉)と、爪・歯(外胚葉)の両方に症状が出ることから、「軟骨外胚葉異形成症」とも呼ばれます[1]。

とてもまれな病気で、2007年の総説の時点で、世界での報告は約150例でした。正確な有病率はわかっていませんが、米国ペンシルベニア州ランカスター郡のアーミッシュの人たちのあいだでは多く見られることが知られています[1]。原因の遺伝子は細胞の「一次繊毛」で働くため、この病気は繊毛病(シリオパチー)のなかまと考えられています[5]。

主な6つの特徴

2007年の総説は、生まれたあとの主な特徴として、低身長、短い肋骨、多指症、爪と歯の形成の異常を挙げ、先天性心疾患も高い割合で合併するとしています[1]。

  • ●短い手足と低身長:手足の長い骨が短く、体に比べて手足が短い低身長になります。
  • ●短い肋骨と狭い胸:肋骨が短いために胸が狭くなり、生まれてすぐの時期に呼吸が苦しくなることがあります。
  • ●多指症:手の指が多い(6本以上ある)状態です。
  • ●爪の形成の異常:爪が小さい・うすいなど、うまく作られないことがあります。
  • ●歯の異常:生まれたときに歯が生えている「先天性歯」など、歯の形成の異常がみられます。先天性歯は、授乳の妨げになる場合は抜くことが勧められています。
  • ●先天性心疾患:心臓の壁(心房中隔)の異常を中心に、約6割にみられます。

このほか、成長とともに膝が内側に寄る「外反膝(X脚)」がみられ、すねの骨の上の外側の形の異常や、膝のお皿の骨(膝蓋骨)の脱臼を伴うことがあります[1]。

心臓の病気と、生まれてすぐの時期の見通し

先天性心疾患は約6割にみられ、とくに心房中隔(左右の心房を分ける壁)の異常が多いとされています[1]。総説では、左右の心房の壁がほとんどない「単心房」、僧帽弁・三尖弁の異常、動脈管開存、心室中隔欠損、心房中隔欠損などが挙げられています[1]。

見通しは、生後数か月の呼吸の問題と関係するとされています[1]。胸が狭いと肺が十分に広がりにくいためです。一方で、この病気の方の長い期間の経過をまとめた報告はなく[1]、「何歳まで」と一律にいうことはできません。心臓の病気の有無と重さ、呼吸の状態によって、一人ひとりの見通しは大きく違います。

知能・発達

エリス・ファンクレフェルト症候群では、知能や運動の発達はふつう保たれるとされています[1]。総説の著者は、この点をとくに強調しています。体の特徴が目立つ病気ですが、発達の見通しとは分けて考えることが大切です。

似た病気との違い:ジューン症候群とワイヤーズ顔面指趾異骨症

エリス・ファンクレフェルト症候群は、肋骨が短く胸が狭くなる「短肋骨多指症候群」のグループに入る病気です[1]。同じように胸が狭くなるジューン症候群(窒息性胸郭異形成症)とは似た点が多く、違いについても議論されてきました。総説では、先天性心疾患・多指症・爪や歯の異常がそろうことは、ジューン症候群よりもエリス・ファンクレフェルト症候群を考える手がかりになるとしています[1]。

また、同じEVC遺伝子・EVC2遺伝子の変化が2本のうち1本だけにある(ヘテロ接合の)状態で起こる、常染色体顕性(優性)遺伝の病気として、ワイヤーズ顔面指趾異骨症(Weyers acrodental dysostosis)が知られています[1][2][6]。症状だけでは区別が難しいことがあるので、遺伝子検査で原因を確かめる意味があります。

病気のしくみや研究の状況をさらに詳しく知りたい方は、エリス・ファンクレフェルト症候群の詳しい解説もご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。

2. 原因遺伝子EVC・EVC2と遺伝する確率

エリス・ファンクレフェルト症候群の主な原因は、EVC遺伝子とEVC2遺伝子の変化です[2][4]。常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親がともに保因者のとき、お子さんで同じ病気が起こる確率は、妊娠のたびに4分の1です[1]。

常染色体潜性(劣性)遺伝:ご両親とも保因者なら4分の1

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気は、対になった2本の遺伝子の両方に変化があるときに起こります。1本だけに変化がある方は「保因者」で、ふつう症状はありません。ご両親がともに保因者の場合、お子さん1人ごとの確率は次のとおりです。

病気になる4分の1(25%)
保因者4分の1(25%)
保因者4分の1(25%)
変化を受け継がない4分の1(25%)

※ご両親がともに保因者の場合の、お子さん1人ごとの確率(保因者になる確率は合わせて2分の1)。妊娠のたびに同じ確率です。

この確率は妊娠のたびに同じで、上のお子さんが病気だったかどうかで変わることはありません。また、お子さんがもつ2つの変化は、同じ変化とは限りません。お父さんとお母さんから別々の変化を1つずつ受け継いでいる状態を、複合ヘテロ接合といいます。

一次繊毛とヘッジホッグシグナル:骨の伸びに関わるしくみ

EVC遺伝子は2000年に、EVC2遺伝子は2003年に、この病気の原因として報告されました。2つの遺伝子は、染色体の上で隣り合い、頭どうしを向き合わせる形で並んでいます[2][4]。

マウスを使った研究で、EVCタンパク質は軟骨の細胞の一次繊毛の根もとにあることがわかりました。EVCがないマウスでは、骨の伸びを調節するヘッジホッグシグナル(インディアン・ヘッジホッグの信号)を受け取ったあとの遺伝子の働きが大きく下がっていました。EVCは、この信号を細胞の中で伝えるのに必要な部品の1つと考えられています[5]。

同じ遺伝子でも顕性で起こるワイヤーズ顔面指趾異骨症

EVC・EVC2遺伝子の変化は、2本とも変化があるとエリス・ファンクレフェルト症候群になりますが、特定の変化では1本だけで起こる病気もあります。それがワイヤーズ顔面指趾異骨症で、常染色体顕性(優性)遺伝の病気です[1][2][6]。同じ遺伝子でも、変化の種類と数によって病気と遺伝のしかたが変わるため、検査結果は臨床遺伝専門医が一つずつ読み解きます。

3. どんな人がこの検査を受けるとよいか

エリス・ファンクレフェルト症候群には、ジューン症候群など症状のよく似た病気があり、見た目やレントゲンだけでは見分けにくいことがあります[1]。原因の遺伝子の変化を確かめることで、病名がはっきりし、次のお子さんの確率や、ご家族の検査について考えられるようになります。

赤ちゃんに多指症・短い手足・狭い胸・心臓の病気を指摘された

多指症、短い手足、短い肋骨による狭い胸、爪や歯の異常、先天性心疾患が組み合わさっている場合は、この病気を考えるきっかけになります[1]。とくに、心臓の病気・多指症・爪や歯の異常がそろうことは、似た病気と見分ける手がかりになります[1]。

妊娠中の超音波検査で、手足が短い・指が多いと言われた

エリス・ファンクレフェルト症候群は、妊娠中の超音波検査で見つかることがあります。総説では、胸が狭いこと、手足の長い骨が短く曲がっていること、心臓の病気などが、妊娠中にみられる所見として挙げられています[1]。超音波検査では胎児の大腿骨長(FL)などで手足の骨の長さを確かめます。

妊娠中に赤ちゃんの骨の病気が疑われたときは、どの病気かをしぼり込めないことも多いため、出生前全エクソーム(WES)検査のように、たくさんの遺伝子を一度に調べる検査が向くことがあります。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っているので、検体を採るところから続けてご相談いただけます。

上のお子さんが診断されていて、次の妊娠を考えている

上のお子さんがエリス・ファンクレフェルト症候群と診断されている場合、まずお子さんで原因の遺伝子の変化を確かめることが、次の妊娠への備えの出発点になります。ご家族で変化がわかっていれば、次の妊娠で、絨毛から採ったDNAを調べることができるとされています[1]。原因がわからないままでは、出生前に何を調べればよいかを決められません。

妊娠前に、保因者かどうかを知りたい

当院の拡大版保因者スクリーニングには、EVCとEVC2が含まれています(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子とも)。ご夫婦で受けていただくと、おふたりがともにこの病気の保因者かどうかがわかります。ご家族にこの病気の方がいて、原因の遺伝子が気になる方は、このページの検査でEVC・EVC2を調べることもできます。

妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」(女性787遺伝子・男性714遺伝子)もあります。保因者検査について詳しくは、拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子)・男性版714遺伝子のページをご覧ください。

この検査より別の検査が向いている場合

この検査はEVC・EVC2の2つだけを調べるため、エリス・ファンクレフェルト症候群らしい症状がそろっている方に向く検査です。症状が広く病気をしぼれない場合や、2遺伝子で原因が見つからなかった場合は、たくさんの遺伝子をまとめて調べる検査が向いています(第5章の表)。また、心臓の病気だけがあり、骨や指の特徴がない場合は、先天性心疾患(CHD)遺伝子検査パネルが向くこともあります。この先天性心疾患パネルにはEVC・EVC2は含まれていないので、骨や指の特徴もある場合は、この検査か骨の病気のパネル検査を選びます。

\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ご夫婦とも保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

妊娠前の保因者検査について | どの検査がよいか迷う方へ

4. 調べる遺伝子と、それぞれでわかる病気

この検査では、EVCとEVC2の2つの遺伝子をまとめて調べます。どちらの遺伝子の変化でも、2本とも変化があるとエリス・ファンクレフェルト症候群になります。

🧬 対象遺伝子と関係する病気(2遺伝子)

遺伝子 関係する病気 遺伝のしかた
EVC エリス・ファンクレフェルト症候群
ワイヤーズ顔面指趾異骨症
常染色体潜性(劣性)
常染色体顕性(優性)
EVC2 エリス・ファンクレフェルト症候群
ワイヤーズ顔面指趾異骨症(特定の変化の場合)
常染色体潜性(劣性)
常染色体顕性(優性)

※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは文献[1][2][4][6]による。

5. どの検査を選ぶか:2遺伝子の検査と、まとめて調べるパネル検査

EVC・EVC2は、当院のほかのいくつかの遺伝子パネル検査にも含まれています。症状がエリス・ファンクレフェルト症候群にどれくらい合っているか、似た病気もあわせて調べたいかで、選ぶ検査が変わります。

🔍 EVC・EVC2を調べられる当院の検査

検査 調べる遺伝子の数 結果までの日数 向いている場合
このページの検査 2遺伝子(EVC・EVC2) 2〜3週間 エリス・ファンクレフェルト症候群らしい症状がそろっている
繊毛病NGS遺伝子検査パネル 102遺伝子 2〜3週間 ジューン症候群など、ほかの繊毛病も考えたい
骨系統疾患NGS遺伝子パネル検査 521遺伝子 2〜3週間 骨の病気を広く一度に調べたい
骨格異形成症遺伝子パネル検査 179遺伝子 3〜5週間 骨格異形成症をまとめて調べたい
低身長遺伝子パネル検査 153遺伝子 2〜3週間 低身長の原因を広く調べたい
全エクソーム検査(WES) 約2万の遺伝子 検査ページでご確認ください 骨以外の症状も多く、病気をしぼれない

※各検査の遺伝子の数・日数は、それぞれの検査ページの記載による(2026年10月時点)。どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わるため、遺伝カウンセリングでご説明します。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、EVC・EVC2の配列の小さな変化(1文字の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、一定の大きさ以上の欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。

  • ●調べる範囲:次世代シーケンサーで、遺伝子のタンパク質をつくる部分(エクソン)と、そのつなぎ目(スプライス部位)を読みます。調べる範囲の99%以上を、20回以上くり返し読み取ります。読み取りの質が低かった部分は、別の方法(サンガー法)で確かめます。
  • ●欠失・重複:遺伝子1つまるごとの欠失・重複(血液・頬の粘膜)と、連続する2つ以上のエクソンにまたがる欠失・重複(血液のみ)を見つけられます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。エクソン1つだけの欠失・重複は、見つかることはありますが、ふだんの検査では検出の対象にしていません。
  • ●見つけられない変化:染色体の一部が入れ替わる・向きが逆になる変化(転座・逆位)、同じ配列のくり返しが長くなる変化、遺伝子の働きを調節する部分の多くや、エクソンから離れたイントロンの奥(20塩基より先)の変化は見つけられません。体の一部の細胞だけに変化がある状態(モザイク)を見つけることを目的とした検査でもありません。
  • ●調べていない遺伝子:この検査はEVC・EVC2の2つだけです。この病気の65人を調べた研究では、EVCに原因が見つかったのが31%、EVC2が38%で、31%の方ではどちらにも原因が見つかりませんでした[3]。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、この病気ではないとは言い切れません。症状やレントゲンの所見とあわせて判断します。

7. 結果が出たあと

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。

陽性だったとき:診断の確定と、ご両親の確認検査

EVCまたはEVC2の2本ともに病気の原因となる変化が見つかれば、エリス・ファンクレフェルト症候群の診断がはっきりします。病名がわかると、心臓・呼吸・骨や膝・歯など、どこに気をつけて経過を見ていけばよいかが決まります[1]。

2つの変化が見つかったときは、ご両親を調べることをおすすめします。2つの変化がお父さん由来とお母さん由来に分かれていること(おふたりがそれぞれ保因者であること)が確かめられると、結果の読み方が確かになり、次の妊娠での確率もはっきりします(2つの変化が別々の場合は複合ヘテロ接合)。

次のお子さんの確率と、次の妊娠への備え

ご両親がともに保因者であれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、妊娠のたびに4分の1です。ご家族で原因の変化がわかっていれば、次の妊娠で、赤ちゃんに同じ変化があるかを、絨毛から採ったDNAで調べる方法があるとされています[1]。

絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに、赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて一つずつ判断するため、妊娠を考えている段階からご相談ください。詳しい流れは単一遺伝子疾患の出生前診断のページで解説しています。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(2026年10月時点。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは、海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで解説しています。

きょうだいが将来、保因者かどうかを知る手がかりに

ご両親がともに保因者の場合、病気のないきょうだいも、それぞれ3分の2の確率で保因者です(病気のないお子さんのうち、保因者は3人に2人)。お子さんで原因の変化がわかっていると、きょうだいが大人になって結婚や妊娠を考えるときに、同じ変化をもっているかを調べる手がかりになります。あなたのご家族の1回の検査が、きょうだいの将来の計画にも役立ちます。

陰性だったとき・VUSが見つかったとき

EVC・EVC2に原因が見つからなかった場合でも、この病気を否定することはできません。この病気の約3割の方では、2つの遺伝子に原因が見つからないことが報告されています[3]。症状に合わせて、繊毛病のパネル検査や骨系統疾患のパネル検査、全エクソーム検査などの次の検査を考えます。

VUSは、それだけで診断や、ご家族の発症リスクの判断、出生前診断の根拠にはしません。ただし、その変化の意味を明らかにするために、ご両親などの家族検査を行うことがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的と別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は、遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

8. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査費用は税込330,000円で、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜のいずれかで、オンライン診療でも受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体を採るお支払い後にキット
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
対象遺伝子 EVC・EVC2(2遺伝子)
検査費用 税込330,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査費用とは別
結果までの期間 2〜3週間
オプション 至急(結果までの期間が約7日短くなります):55,000円
VUS除外(意義がまだわからない変化を報告に含めない):無料
塩基配列・欠失・挿入の解析は検査費用に含まれます
検体 血液(EDTA採血管4mL×2本・紫色のキャップ)、抽出したDNA(EBバッファー中3μg)、頬の内側の粘膜(スワブ)、唾液(ご希望により採取キットをお送りします)
オンライン診療 唾液・頬の粘膜・血液のいずれも、オンライン診療で受けられます。血液の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします

※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。

オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただく流れです。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体を採るキットは、検査費用をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや品質の問題を防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採らないでください。

遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

臨床遺伝専門医が常駐し、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明してからマイページにアップします。

お問い合わせはこちら | 繊毛病のパネル検査も考えたい方へ

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【原因がわかってはじめて、次の妊娠の計画が立てられる】

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、保因者のご両親にはふつう症状がありません。ご自身が保因者だと知らないまま、お子さんの病気をきっかけに初めてわかる、ということが起こります。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。お子さんの病気について、ご自分を責める必要はないと私は考えています。

そのうえで大切なのは、原因をはっきりさせることです。お子さんで原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次のお子さんでの確率がはっきりし、次の妊娠で出生前診断を計画することもできます。原因がわからないままでは、何を調べればよいのかも決められません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。当院では、遺伝カウンセリングから、ご夫婦の保因者検査、妊娠したときの絨毛検査・羊水検査まで、院内で続けて支えられる体制を整えています。次の妊娠をどうするか、出生前診断を受けるかどうか、どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. エリス・ファンクレフェルト症候群は遺伝しますか?遺伝する確率は?

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気です。ご両親がともにEVCまたはEVC2の保因者の場合、お子さん1人ごとに、同じ病気になる確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1、どちらの変化も受け継がない確率は4分の1です。保因者のご両親には、ふつう症状はありません。

Q2. 上の子がエリス・ファンクレフェルト症候群です。次の子も同じ病気になりますか?

ご両親がともに保因者であれば、次のお子さんで同じ病気が起こる確率は、妊娠のたびに4分の1です。上のお子さんが病気だったかどうかで、次のお子さんの確率は変わりません。お子さんで原因の遺伝子の変化がわかっていれば、ご両親がそれぞれその変化をもっているかを調べて、この確率をはっきりさせられます。

Q3. 両親も検査を受けたほうがいいですか?

お子さんで2つの変化が見つかった場合、ご両親を調べると、2つの変化がお父さん由来とお母さん由来に分かれているか(おふたりがそれぞれ保因者か)を確かめられます。結果の読み方が確かになり、次の妊娠で出生前診断を計画するときの土台になります。

Q4. 妊娠前に保因者かどうか調べられますか?

調べられます。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子)には、EVCとEVC2が含まれています。ご家族にこの病気の方がいる場合は、このページの検査でEVC・EVC2を調べることもできます。どちらが合うかは、遺伝カウンセリングでご説明します。

Q5. 次の妊娠で出生前診断はできますか?

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠で、絨毛から採ったDNAを調べる方法があるとされています。妊娠中の超音波検査で、手足の短さ・狭い胸・多指症・心臓の病気などが見つかることもあります。当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っていますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。

Q6. 知能や寿命(予後)はどうですか?

知能や運動の発達はふつう保たれるとされています。見通しには、生後数か月の呼吸の問題が関わるとされ、心臓の病気があればその治療も大切になります。長い期間の経過をまとめた報告は少なく、一人ひとりの見通しは症状の重さによって違います。

Q7. ジューン症候群とはどう違いますか?

どちらも肋骨が短く胸が狭くなる病気のなかまで、似た点があります。先天性心疾患、多指症、爪や歯の異常がそろうことは、エリス・ファンクレフェルト症候群を考える手がかりになるとされています。見た目だけで分けにくいときは、遺伝子検査で確かめます。

Q8. 検査で原因が見つからなかったら、どうなりますか?

この病気の65人を調べた研究では、EVCまたはEVC2に原因が見つかったのは約7割で、約3割の方では見つかりませんでした。原因が見つからなくても、この病気を否定することはできません。症状に合わせて、繊毛病や骨系統疾患のパネル検査、全エクソーム検査などの次の検査を考えます。

🧬 一度の検査で、次のお子さんとご家族のこれからを考える

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。エリス・ファンクレフェルト症候群の原因がわかれば、お子さんの病名と経過を見るポイントがはっきりするだけでなく、次のお子さんの確率や、きょうだいの将来の保因者の確認を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Baujat G, Le Merrer M. Ellis-van Creveld syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:27. [DOI: 10.1186/1750-1172-2-27](PMID: 17547743)
  • [2] Ruiz-Perez VL, Ide SE, Strom TM, et al. Mutations in a new gene in Ellis-van Creveld syndrome and Weyers acrodental dysostosis. Nat Genet. 2000;24(3):283-286. [DOI: 10.1038/73508](PMID: 10700184)
  • [3] Tompson SW, Ruiz-Perez VL, Blair HJ, et al. Sequencing EVC and EVC2 identifies mutations in two-thirds of Ellis-van Creveld syndrome patients. Hum Genet. 2007;120(5):663-670. [DOI: 10.1007/s00439-006-0237-7](PMID: 17024374)
  • [4] Ruiz-Perez VL, Tompson SW, Blair HJ, et al. Mutations in two nonhomologous genes in a head-to-head configuration cause Ellis-van Creveld syndrome. Am J Hum Genet. 2003;72(3):728-732. [DOI: 10.1086/368063](PMID: 12571802)
  • [5] Ruiz-Perez VL, Blair HJ, Rodriguez-Andres ME, et al. Evc is a positive mediator of Ihh-regulated bone growth that localises at the base of chondrocyte cilia. Development. 2007;134(16):2903-2912. [DOI: 10.1242/dev.007542](PMID: 17660199)
  • [6] Ye X, Song G, Fan M, et al. A novel heterozygous deletion in the EVC2 gene causes Weyers acrofacial dysostosis. Hum Genet. 2006;119(1-2):199-205. [DOI: 10.1007/s00439-005-0129-2](PMID: 16404586)

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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