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NEDSGA(GRIA4関連神経発達症)とは?発作・歩行異常を伴う神経発達症の症状・遺伝・治療を遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

お子さんの発達がゆっくりで、原因を探して検査を重ねるなかで、聞き慣れない「NEDSGA(ネドスガ)」という病名にたどりついた方もいらっしゃると思います。NEDSGAは、GRIA4(ジーアールアイエー・フォー)という遺伝子の変化によって起こる、とてもまれな神経発達症です。正式には「発作および歩行異常を伴う、または伴わない神経発達症」といい、発達の遅れやてんかん、歩き方の問題などが見られます。この記事では、NEDSGAとはどんな病気か、なぜこうした症状が起こるのか、そして診断や治療の考え方までを、遺伝専門医の視点から整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 GRIA4・AMPA受容体・神経発達症・てんかん
臨床遺伝専門医監修

Q. NEDSGA(GRIA4関連神経発達症)とは、まず結論だけ知りたいです

A. NEDSGAは、脳の神経のあいだで情報を伝える「AMPA受容体」という部品の一部(GluA4)をつくるGRIA4遺伝子に変化が起こることで発症する、まれな神経発達症です。赤ちゃんのころからの発達の遅れを中心に、知的障害、てんかん発作、体の柔らかさ(筋緊張低下)からこわばり(痙縮)への変化、歩き方の問題などが、人によってさまざまな程度で現れます。多くは新しく生じた変化(新生突然変異)が原因で、親から受け継いだものではないことがほとんどです。世界でも報告例が限られる超希少疾患で、遺伝子の変化がどう働くか(機能の増強か低下か)を見きわめることが、これからの治療の鍵と考えられています。

  • 原因 → GRIA4遺伝子の変化。脳の興奮性の情報伝達を担うAMPA受容体のGluA4サブユニットに異常が起こる
  • 主な症状 → 発達の遅れ・知的障害・てんかん・筋緊張の異常(低下から亢進へ)・歩行の問題
  • 遺伝形式 → 常染色体顕性(優性)。多くは新生突然変異(de novo)で、親は保因していないことが多い
  • 診断 → 症状だけでは特定が難しく、トリオ(ご両親を含む)での全エクソーム/ゲノム解析が有用
  • 治療の展望 → 対症療法が中心。変化の性質しだいで、AMPA受容体を標的にする薬が選択肢になりうる

🧬 NEDSGA(GRIA4関連神経発達症)の基本情報

項目 内容
正式名称 発作および歩行異常を伴う、または伴わない神経発達症(Neurodevelopmental disorder with or without seizures and gait abnormalities)
略称・読み方 NEDSGA(ネドスガ)
原因遺伝子 GRIA4(ジーアールアイエー・フォー)/染色体11q22.3[3]
OMIM番号 617864[2]
遺伝形式 常染色体顕性(優性)。多くは新生突然変異(de novo)[1]
主な症状 全般的な発達遅滞・知的障害・てんかん・筋緊張の異常・歩行異常・行動面の特徴
頻度 世界的にも報告例が限られる超希少疾患(症例報告レベル)

※本記事はNEDSGA(GRIA4関連神経発達症)に関する疾患解説です。特定の検査を勧めるものではありません。

1. NEDSGA(GRIA4関連神経発達症)とは

NEDSGA(ネドスガ)は、GRIA4遺伝子の片方のコピーに変化(ヘテロ接合性の変異)が起こることで発症する、まれな神経発達症です[1]。正式な病名は「発作および歩行異常を伴う、または伴わない神経発達症」といい、病名のとおり、てんかん発作を伴う人もいれば伴わない人もいて、症状の出方には大きな幅があります。遺伝性疾患のデータベースであるOMIMには、疾患番号617864として登録されています[2]

この病気が独立した疾患として報告されたのは、比較的最近のことです。2017年、5人の互いに血縁関係のない患者さんについて、GRIA4遺伝子に生じた新しい変化(新生突然変異)が発達の遅れや知的障害の原因になっていることが、トリオ全エクソーム解析という手法で明らかにされました[1]。その後、2022年には心臓や眼の異常を合併した重症の乳児例も報告され[4]、少しずつこの病気の全体像が見えてきています。とはいえ、世界的にも報告されている患者さんの数はごく限られており、いわゆる超希少疾患に位置づけられます。

💡 用語解説:新生突然変異(de novo)

「新生突然変異(デノボ変異)」とは、ご両親の遺伝子には無かった変化が、卵子や精子がつくられるとき、あるいは受精のごく初期に、お子さんに新しく生じた変化のことです。つまり、ご両親のどちらかが病気を持っていて受け継いだ、というものではありません。NEDSGAの多くは、この新生突然変異によって起こると考えられています[1]。くわしくは新生突然変異(de novo変異)とはもご覧ください。

原因不明の重い発達の遅れやてんかんの背景に、こうした一つの遺伝子の変化が隠れていることが、次世代シーケンサーという解析技術の普及によって次々と分かるようになってきました。NEDSGAもそのひとつです。診断名がつくまでに時間がかかることは、遺伝性の病気全般に共通する経過ですが、原因が特定できると、症状の見通しを立てたり、ご家族の心配ごとを整理したりする手がかりになります。

2. 原因遺伝子GRIA4とAMPA受容体のはたらき

NEDSGAを理解するには、まず原因遺伝子であるGRIA4が何をしているのかを知ることが近道です。GRIA4は、脳の神経細胞どうしが情報をやりとりする「シナプス」で働く、AMPA受容体という部品の一部をつくる設計図です。もう少しくわしくいうと、AMPA受容体を構成するGluA4(グルア・フォー)というサブユニットをコードしています[1]

脳の中で情報を伝える主役のひとつが、グルタミン酸という物質です。グルタミン酸は、神経細胞を「興奮させる(活動させる)」方向に働く代表的な神経伝達物質で、AMPA受容体はそのグルタミン酸を受け取る玄関口(受容体)にあたります。グルタミン酸がAMPA受容体にくっつくと、受容体の中の通り道(イオンチャネル)が開き、ナトリウムなどの陽イオンが神経細胞に流れ込みます。この一連の流れによって、化学的な信号が電気的な信号へと変換され、情報が次の神経細胞へ素早く伝わっていきます。

💡 用語解説:受容体・サブユニット・イオンチャネル

受容体とは、特定の物質を受け取るためのタンパク質のことです。AMPA受容体は、4つの部品(サブユニット)が組み合わさってできています。その部品のひとつがGluA4です。また「イオンチャネル」とは、細胞の膜にある、イオン(電気を帯びた粒子)を通すための小さな通り道のことです。AMPA受容体は、グルタミン酸を受け取ると、このイオンチャネルを開く性質を持っています。

GluA4サブユニットには、ほかの部品にはない特徴があります。それは、グルタミン酸に反応してからチャネルが閉じるまでの動きがとても速いことです。この速さのおかげで、脳は高い頻度で入ってくる信号にも細かく対応できます。GRIA4がつくるGluA4は、こうした「速い情報処理」を支えている、いわば脳のなかの俊敏な部品なのです。学習や記憶といった、脳のもっとも高度な働きの土台にもなっています[1]。だからこそ、その設計図であるGRIA4に変化が起こると、脳の情報伝達のバランスが崩れ、発達やてんかんに関わる問題が生じると考えられています。

3. なぜ発作や神経症状が起こるのか ─ 視床という「関所」

GRIA4の変化がどうしててんかん発作につながるのか。その手がかりは、GluA4が脳のどこで特にたくさん使われているかにあります。カギを握るのは、脳の奥にある視床網様核(ししょうもうようかく)という場所です。ここは、大脳と視床のあいだを行き来する情報の「関所」のような役割を果たしており、GluA4がとても豊富に存在しています[6]

この関所は、ブレーキ役の神経細胞(抑制性ニューロン)でできています。大脳から送られてくる信号を受け取ると素早く反応し、視床の中継地点に抑制のブレーキをかけます。この仕組みは、視床皮質回路のリズムを調節するうえで重要です。Gria4欠損マウスでは、皮質から視床網様核へ入る興奮性シナプス伝達の強度が選択的に低下し、回路の伝達様式が変化することが示されています[7]。一方、別の研究では、残存するAMPA受容体応答の時間経過が延長し、シナプス応答の持続が増すことも報告されています[6]。こうした回路レベルの変化が、異常な同期活動と発作の起こりやすさにつながると考えられています。

大脳からの信号GluA4で伝わる
視床網様核ブレーキ役の関所
視床を抑制リズムを整える

実際に、GluA4を働かなくしたマウス(Gria4欠損マウス)では、脳波に棘徐波(きょくじょは)という、てんかんに特徴的なパターンが頻繁に現れることが確かめられています[6]。さらにくわしい研究では、GluA4がなくなると、大脳から関所への信号が特に弱まり、脳のネットワーク全体が過剰に同期して揺れやすくなる(=発作が起きやすくなる)ことが示されました[7]。つまり、GluA4は脳のブレーキ系を支える重要な部品であり、それが損なわれると、興奮と抑制のバランスが崩れて発作につながる、というわけです。

💡 用語解説:棘徐波(スパイク・アンド・ウェーブ)

脳波検査で見られる波形のひとつで、とがった波(棘波)とゆるやかな波(徐波)がセットで現れるものです。てんかん、とくに全般発作や欠神発作でよく見られます。この波形は、脳の広い範囲が過剰に「そろって」活動していることを反映しています。

4. 「機能の増強」と「機能の低下」という2つの顔

NEDSGAを考えるうえでとても大切なのが、GRIA4の変化が受容体に与える影響は一様ではない、という点です。同じGRIA4の変化でも、その働きによって大きく2つのタイプに分けられます。ひとつは受容体が働きすぎる機能獲得型(きのうかくとくがた/Gain-of-Function、GoF)、もうひとつは受容体の働きが弱まる機能喪失型(きのうそうしつがた/Loss-of-Function、LoF)です。この違いは、後で述べる治療の方向性を左右するため、非常に重要です。

💡 用語解説:ミスセンス変異

NEDSGAで見つかっているGRIA4の変化の多くは「ミスセンス変異」と呼ばれるタイプです。これは、タンパク質の設計図にあたるアミノ酸が1つだけ別のものに置き換わる変化のことです。たった1文字の置き換えでも、それが受容体の重要な場所で起これば、部品の形や働きが大きく変わってしまうことがあります。

変化が集まる「SYTANLAAFモチーフ」

NEDSGAで報告されているGRIA4の変化は、でたらめな場所に散らばっているわけではありません。多くは、受容体の中でも特に重要な、SYTANLAAF(シタンラーフ)モチーフと呼ばれる領域に集中しています[1]。これは、イオンが通る道(チャネル)の開け閉めを物理的にコントロールする、まさに「扉の蝶番(ちょうつがい)」にあたる部分です。ここに変化が起こると、扉の開き方が乱れ、イオンの通り方が変わってしまいます。2017年の最初の報告でも、5つの変化のうち4つがこのSYTANLAAFモチーフの中にありました[1]

GRIA4病的バリアントによりGluA4を含むAMPA受容体のM3ヘリックスとSYTANLAAFモチーフ周辺のゲート機能が変化し、機能亢進(GoF)または機能低下(LoF)を生じる仕組みを正常と比較した模式図

正常なGluA4含有AMPA受容体では、グルタミン酸の結合によってM3ヘリックスのゲートが開き、Na⁺などの陽イオンが細胞内へ流入します。GRIA4の病的バリアントでは、チャネルのゲート形成に重要なSYTANLAAFモチーフ周辺などの機能が変化し、バリアントによって機能亢進(GoF)または機能低下(LoF)を示すことがあります。

機能獲得型(GoF)受容体が働きすぎる
機能喪失型(LoF)受容体の働きが弱まる

機能獲得型(GoF)では、チャネルがなかなか閉じなくなったり、グルタミン酸に反応しやすくなりすぎたりして、神経細胞に過剰な電気信号が流れ込みます。その結果、神経が興奮しすぎて、難治性のてんかんや筋緊張の亢進につながると考えられています。一方の機能喪失型(LoF)では、受容体が膜まで運ばれにくくなったり、イオンを通しにくくなったりして、信号の伝わりが弱まります。先ほど述べた視床網様核のブレーキが効かなくなるタイプの発作は、主にこのLoFで起こると考えられています[7]。GRIA1〜4を横断して多数の変異の働きを電気生理学的に調べた研究でも、変異ごとにグルタミン酸への反応や脱感作、受容体の表面への出方などが多彩に変化することが示されており[5]、この「増強か低下か」という視点が治療を考えるうえで欠かせません。

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5. NEDSGAの症状 ─ 体の柔らかさからこわばりへ

NEDSGAの症状は、人によって幅がありますが、いくつか特徴的なパターンがあります。ここでは、報告されている主な症状を整理して説明します。ただし、すべての方に同じ症状が同じ程度で現れるわけではないことを、はじめにお伝えしておきます。

発達の遅れと知的障害

ほぼすべての患者さんに、赤ちゃんのころからの全般的な発達の遅れが見られます[2]。知的障害の程度は幅広く、ことばがほとんど出ず身ぶりでのやりとりが中心になる重い方から、いくつかの単語や二語文を話せる比較的軽い方まで、さまざまです[1]。行動面では、落ち着きのなさ(多動)、注意が続きにくい、いらいらしやすい、といった特徴が報告されることがあり、自閉スペクトラム症に似た対人関係の特徴が見られることもあります。

筋緊張の変化 ─ フロッピーからこわばりへ

NEDSGAでとくに特徴的なのが、筋肉の緊張(張り具合)の変化です。生まれたころは体がぐにゃりと柔らかい筋緊張低下(フロッピーインファント)で始まることが多いのですが、成長するにつれて、今度は手足がこわばる筋緊張の亢進(こわばり・痙縮)へと変わっていくことがあります[1]。この「柔らかさ」から「こわばり」への移り変わりは、この病気を疑ううえで手がかりのひとつになります。こわばりが進むと、関節が固くなったり、重い場合は自力で歩くことが難しくなったりすることもあります[2]

歩行の問題(歩行異常)

病名にも含まれているとおり、歩き方の問題(歩行異常)もよく見られます。独りで歩けるようになる時期が大きく遅れたり、歩けるようになっても、まっすぐ歩きにくい、ぎこちない、ふらつく、といった様子が見られたりします[1]。ただし、これも程度に幅があり、歩行が可能な方もいれば、難しい方もいます。

てんかん発作

「発作を伴う、または伴わない」と病名にあるとおり、てんかん発作は多くの方に見られますが、必ず起こるわけではありません[1]。発作が出る場合、始まる時期は生後まもなくから幼児期までさまざまで、発作の型も、全般発作、熱性けいれん、ミオクロニー発作などいろいろな形をとります。脳波は、全般的な徐波化や睡眠中の棘徐波が見られることが多い一方で、難しい発作があるのに脳波にはっきりした異常が出にくいこともあり[2]、これが早い段階での診断を難しくする一因になっています。近年は、脳波上でESES(睡眠時にてんかん性の異常が強まる状態)を示した例も報告され、症状の幅がさらに広がってきています[12]

そのほかの体の症状

神経や運動の症状以外にも、顔立ちの特徴(大きな耳、中顔面のへこみなど)、眼の症状(眼振・斜視)、哺乳の困難、胃食道逆流などが報告されることがあります[2]。2022年に報告された乳児例では、重い発達の遅れや全般発作に加えて、網膜低形成や脈絡網膜の色素過剰といった眼の異常、さらに三尖弁の逆流や卵円孔開存といった心臓の所見も合併しており、この病気が全身に影響しうることが示されました[4]。脳のMRIでは、初期には目立った異常が見られないことも多いのですが、進行例では前頭葉を中心とした大脳の萎縮などが見られることがあります[2]

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【同じ遺伝子でも、変異の性質で対応が変わる】

「GRIA4に変化が見つかりました」と言われても、それだけでは、これからどうなるのか、どんな薬が向いているのかまでは、すぐには決まりません。同じ遺伝子の変化でも、受容体を「働かせすぎる」タイプと「働かなくする」タイプがあり、対応の方向がまったく違ってくるからです。

同じ遺伝子の変化でも、その一つひとつが受容体の機能にどう作用するかを評価することが、治療方針を考える出発点になります。遺伝子名だけで判断せず、変化が実際に受容体機能を増強するのか低下させるのかまで確認することは、NEDSGAのようなイオンチャネル関連疾患で重要な考え方です。

6. 遺伝形式 ─ 親から受け継いだものではないことが多い

NEDSGAは、常染色体顕性(優性)という形式で遺伝します[2]。これは、2つあるGRIA4遺伝子のうち片方に変化があるだけで症状が現れうる、という意味です。ただし、ここで大切なのは、これまで報告されている患者さんの多くで、その変化が新生突然変異(de novo)、つまりお子さんに新しく生じた変化だという点です[1]

新生突然変異である場合、ご両親のGRIA4遺伝子には同じ変化はありません。したがって、「親から受け継いだ」「親の育て方が原因」といったものではまったくないことを、まずお伝えしたいと思います。ご両親が次のお子さんを考えるときの再発の可能性も、一般には低いと考えられます。ただし、まれに親の生殖細胞の一部にだけ変化が存在する(生殖細胞モザイク)可能性もゼロではないため、正確な見通しについては遺伝カウンセリングで個別に確認することが大切です。

💡 用語解説:常染色体顕性(優性)遺伝

人は同じ遺伝子を父方・母方から1つずつ、合わせて2つ持っています。「常染色体顕性(優性)」とは、そのうち片方に変化があるだけで症状が現れうる遺伝の仕方です。かつては「優性遺伝」と呼ばれていましたが、「優れている・劣っている」という誤解を避けるため、現在は「顕性遺伝」という用語が使われています。

また、同じGRIA4の変化を持っていても、症状の重さや現れ方が人によって異なることがあります。これを表現型の多様性(可変的表現度)といいます。遺伝子の変化と実際の症状の関係(遺伝子型と表現型の関係)は単純な一対一ではないため、同じ診断名でも見通しには個人差がある、という点は知っておいていただきたいところです。

7. 診断と検査 ─ 遺伝子を調べて確定する

NEDSGAは、症状だけで診断するのが難しい病気です。発達の遅れ、てんかん、筋緊張の異常といった症状は、ほかの多くの神経発達症でも見られるため、最終的にはGRIA4遺伝子の変化を実際に確認することが診断の決め手になります。

そのために有用なのが、全エクソーム解析(WES)や全ゲノム解析です。これは、たくさんの遺伝子をまとめて調べ、原因となる変化を探す方法です。とくにNEDSGAのように新生突然変異が疑われる場合には、お子さんとご両親の3人を同時に解析するトリオ解析(トリオWES)が力を発揮します。ご両親には無くお子さんにだけ新しく生じた変化を、効率よく見つけられるからです[1]。実際、2017年・2022年の報告でも、このトリオ全エクソーム解析によって原因が特定されています[1][4]

💡 見つかった変化の「意味」を見きわめる

遺伝子検査で変化が見つかっても、それが本当に病気の原因かどうかは、慎重に判断する必要があります。意味がはっきりしない変化はVUS(意義不明変異)と呼ばれ、すぐに「病気の原因」と決めつけないことが大切です。コンピュータによる予測(in silico解析)や、ClinVarなどのデータベース、家族の解析結果などを総合して、慎重に評価していきます。VUSの扱いについてはVUS(意義不明変異)の臨床的取り扱いもご参照ください。

当院では、原因がはっきりしない神経発達症やてんかんについて、原因不明の症状の診断のための遺伝子検査(WES/WGS)全エクソーム検査(WES)をご案内しています。てんかんに関しては、目的や発症年齢に応じて、てんかん包括的遺伝子検査(NGSパネル)小児てんかんNGS遺伝子パネル思春期・成人発症てんかん遺伝子検査アクショナブルてんかんNGSパネルといった選択肢があります。どの検査が適しているかは、症状やご希望をうかがったうえで一緒に考えていきます。

8. 治療と精密医療 ─ 変化の性質に合わせるという発想

現在のところ、NEDSGAそのものを根本的に治す治療法は確立されていません。治療の中心は、てんかん発作を抗てんかん薬でコントロールすること、そして理学療法などで運動機能や生活の質を支える対症療法です[2]。ただし、AMPA受容体という「壊れている部品」に直接アプローチする、精密医療(プレシジョン・メディシン)の考え方が、近年少しずつ現実味を帯びてきています。

AMPA受容体を標的にする薬 ─ ペランパネル

その代表が、ペランパネルという抗てんかん薬です。ペランパネルは、AMPA受容体の働きをアロステリックに(少し離れた場所から)抑える薬で、日本でも承認されています。受容体が過剰に働いているとき、その「効きすぎ」を抑える方向に作用します。

この薬が特に理にかなうのは、先ほど述べた機能獲得型(GoF)の変化を持つ患者さんです。実際、GRIA4と同じAMPA受容体をつくる仲間の遺伝子であるGRIA1やGRIA2で、機能獲得型の変化を持つ患者さんにペランパネルを使ったところ、それまで抑えられなかった発作が大きく減り、発達の面でも改善が見られた、という報告が複数あります[8][9]。とくにGRIA2の症例では、患者さん由来ではなく培養細胞を使った電気生理学的な解析で「機能獲得型」であることを確かめたうえでペランパネルを導入し、効果を得ています[8]。こうした遺伝子の背景に応じた治療は、まれな遺伝性てんかんにおける精密医療の一例として注目されています[10]

⚠️ 「機能の低下型」には慎重に ─ だからこそ機能解析が重要

ここで強調したいのは、ペランパネルがすべてのNEDSGA患者さんに向くわけではないということです。受容体の働きが弱まっている機能喪失型(LoF)の患者さんでは、AMPA受容体をさらに抑制することで残存機能まで低下させる可能性があるため、機能解析なしに適応を一般化することはできません。つまり、同じGRIA4の変化でも、それが「働きすぎ」なのか「働かなさすぎ」なのかを見きわめることが、治療方針を決めるうえでの大前提になります。GRIA4(NEDSGA)そのものでペランパネルが効いたという直接の症例報告はまだ確立していないため、現時点では、あくまで機能解析でGoFが確認された場合に検討される選択肢、という位置づけです。

これからの治療 ─ 遺伝子そのものを標的に

さらに先を見据えた治療として、RNAを標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)という核酸医薬の研究が進んでいます。GRIA4とよく似た遺伝子であるGRIA1の機能獲得型変異を持つモデルマウスで、変化のある側の遺伝子だけを狙って静かにさせる(サイレンシングする)ASOを新生児期に1回投与したところ、脳の病理学的な変化が防がれ、行動の異常も大きく改善した、という研究が報告されています[11]。GRIA4はGRIA1と構造がよく似ているため、この手法が将来NEDSGAの治療につながる可能性が期待されます。ただし、この研究は現時点では査読前の段階(プレプリント)であり、ヒトへの応用にはさらなる検証が必要です[11]

なお、薬の効果や安全性、使える範囲は国や時期によって異なり、今後も更新されていきます。治療に関する判断は、必ず主治医とご相談ください。ここでは「遺伝子の変化の性質に合わせて治療を考える」という発想の一例として紹介しています。

9. 関連する遺伝子・疾患 ─ AMPA/NMDA受容体のファミリー

GRIA4は、AMPA受容体をつくる4つの遺伝子(GRIA1・GRIA2・GRIA3・GRIA4)のひとつです。これらは兄弟のような関係にあり、それぞれの変化が、少しずつ異なる神経発達症を引き起こすことが知られています。同じAMPA受容体の仲間として、また似たグルタミン酸受容体であるNMDA受容体の仲間として、あわせて理解しておくと、NEDSGAの位置づけがより分かりやすくなります。それぞれの遺伝子・疾患ページもご用意しています。

まとめ ─ 変化の「性質」を読み解くことが重要

NEDSGA(GRIA4関連神経発達症)は、脳の速い情報伝達を担うAMPA受容体のGluA4という部品に変化が生じることで起こる、まれな神経発達症です。発達の遅れ、知的障害、てんかん、筋緊張の変化、歩行の問題などが、人によってさまざまな程度で現れます。多くは新生突然変異によるもので、親から受け継いだものではないことがほとんどです。

診断には、トリオでの全エクソーム/ゲノム解析が力を発揮します。そして治療を考えるうえでは、見つかった変化が受容体を「働かせすぎる」のか「働かなくする」のかを見きわめることが、これからの精密医療の鍵になります。機能獲得型であればペランパネルのようなAMPA受容体を抑える薬が、機能喪失型であれば別のアプローチが、それぞれ検討されます。まだ確立した治療のない超希少疾患ですが、遺伝子の変化の性質を丁寧に読み解く研究が進められています。原因が分からず検査を重ねる時間は、ご本人にもご家族にも負担の大きいものです。遺伝子検査の結果の意味や、これからの見通しについて整理したいときは、遺伝の専門家にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. NEDSGA(GRIA4関連神経発達症)とはどんな病気ですか?

NEDSGA(ネドスガ)は、GRIA4という遺伝子の変化によって起こる、まれな神経発達症です。正式名称は「発作および歩行異常を伴う、または伴わない神経発達症」です。GRIA4は脳の情報伝達を担うAMPA受容体の部品(GluA4)をつくる遺伝子で、その変化により、発達の遅れ、知的障害、てんかん、筋緊張の異常、歩行の問題などが、人によってさまざまな程度で現れます。

Q2. NEDSGAは遺伝しますか?親のせいですか?

これまで報告されている患者さんの多くでは、GRIA4の変化はお子さんに新しく生じた「新生突然変異(de novo)」です。つまり、ご両親から受け継いだものではなく、ご両親の育て方などが原因でもありません。遺伝形式は常染色体顕性(優性)ですが、新生突然変異の場合、ご両親が次のお子さんに同じ変化を伝える可能性は一般に低いと考えられます。ただし正確な見通しは、遺伝カウンセリングで個別に確認することをおすすめします。

Q3. NEDSGAはどうやって診断しますか?

症状だけでは診断が難しいため、GRIA4遺伝子の変化を実際に調べることが決め手になります。とくに、お子さんとご両親の3人を同時に調べる「トリオ全エクソーム解析」が有用です。ご両親には無くお子さんにだけ新しく生じた変化を、効率よく見つけられるためです。てんかんがある場合は、てんかん関連の遺伝子パネル検査が使われることもあります。

Q4. NEDSGAに治療法はありますか?

現時点で根本的に治す方法は確立されていません。治療の中心は、てんかん発作を薬でコントロールすることと、理学療法などで発達や生活の質を支える対症療法です。ただし、変化の性質しだいでは、AMPA受容体を標的にするペランパネルという薬が選択肢になる場合があります。効くかどうかは、変化が「機能獲得型」か「機能喪失型」かによって変わるため、機能を見きわめることが重要です。

Q5. ペランパネルはNEDSGAの誰にでも効きますか?

いいえ、必ずしもそうではありません。ペランパネルは、受容体が「働きすぎる」機能獲得型(GoF)の変化に対しては理にかなった薬ですが、受容体の「働きが弱まる」機能喪失型(LoF)の変化では、AMPA受容体の残存機能をさらに抑制する可能性があるため、機能解析なしに適応を一般化することはできません。GRIA4そのものでの効果を示す直接の症例報告はまだ確立していないため、変化の性質を機能解析で確かめたうえで、主治医と相談して検討することが大切です。

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参考文献

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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