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コフィン・シリス症候群7型(CSS7)とは|DPF2遺伝子変異による疾患を遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

コフィン・シリス症候群7型(CSS7)は、2026年時点でも文献での報告例が限られているとても稀な神経発達の病気です。原因はDPF2という1つの遺伝子の変化にあります。まれな病気ですが、DPF2が属する「BAF複合体」という仕組みは、発達に関わる数多くの病気に共通する要(かなめ)です。ですからCSS7を理解することは、遺伝子が発達に果たす役割そのものを理解することにもつながります。この記事では、発達の遅れや第5指(小指)の特徴といった症状から、遺伝子検査・エピシグネチャー診断、成長ホルモン療法の考え方、そしてご家族がいちばん気にされる「次の子にも起こるのか」という点まで、遺伝専門医の視点でわかりやすく整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 DPF2・BAF複合体・発達遅滞・診断
臨床遺伝専門医監修

Q. コフィン・シリス症候群7型(CSS7)とは、どんな病気ですか?まず結論だけ知りたいです

A. CSS7は、DPF2という遺伝子の変化によって起こる、発達の遅れや特徴的な顔つき・小指の特徴などをともなう稀な神経発達の病気です。DPF2は、細胞が遺伝子の「読み書き」を調節するBAF複合体という装置の部品です。この部品の設計図が変わると、脳や体の発達に必要な多くの遺伝子のはたらきが同時に乱れます。ほとんどの患者さんでは、変化はご両親から受け継いだものではなく、赤ちゃんに新しく生じた変化(新生突然変異)です。

  • 原因 → BAF複合体の部品をつくるDPF2遺伝子の片方のコピーに生じた変化(ヘテロ接合性変異)
  • 主な症状 → 発達の遅れ・知的障害、ことばの遅れ、特徴的な顔つき、第5指(小指)の爪や骨の低形成、哺乳や体重増加の問題
  • 診断 → 次世代シーケンシングによる遺伝子検査が中心。CSSを疑う臨床像で判断に迷う変化があるときは、エピシグネチャー解析が分子診断を補助することがある
  • 遺伝形式 → 常染色体顕性(優性)。多くは新生突然変異で、次の子への再発率は一般に低い
  • 治療 → 根本治療はなく、多職種による対症療法と発達支援が中心。低身長への成長ホルモン療法は一部で報告があるが確立した標準治療ではない

🧬 コフィン・シリス症候群7型(CSS7)の基本情報

項目 内容
疾患名 コフィン・シリス症候群7型(和名)/Coffin-Siris syndrome 7(英名)/略称 CSS7
原因遺伝子 DPF2(11番染色体長腕 11q13.1)。BAF(SWI/SNF)複合体の非触媒サブユニットをつくる
遺伝形式 常染色体顕性(優性)遺伝。報告例の多くは新生突然変異(de novo)
OMIM表現型番号 618027
頻度・報告例数 きわめて稀。2018年に初めて8例が報告されて以来、報告例は少しずつ増えているが限られている
主な症状 発達遅滞・知的障害、ことばの遅れ、粗野な顔つき、第5指/趾の爪・末節骨の低形成、哺乳障害・成長障害、筋緊張低下
診断の決め手 次世代シーケンシング(全エクソーム解析等)によるDPF2変異の同定。判定困難例ではCSSに対するDNAメチル化エピシグネチャー解析が分子診断を補助することがある
鑑別すべき疾患 他のコフィン・シリス症候群(CSS1〜)、ニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)など他のBAFオパチー
再発リスク・家族内遺伝 報告の大半はde novo。通常の血液検査で両親に同じ変化がなければ次子の再発リスクは一般に低い(親の生殖細胞・低レベルモザイクは完全には除外できずゼロではない)

各項目の根拠と詳しい解説は、本文の該当セクションをご覧ください。

1. コフィン・シリス症候群7型(CSS7)とは ─ 「BAFオパチー」という病気の一員

CSS7は、発達の遅れと体の特徴をあわせもつコフィン・シリス症候群のうち、DPF2という遺伝子の変化を原因とするタイプです。まれな病気ですが、その仕組みは発達に関わる多くの病気に共通しており、理解しておく価値があります。

コフィン・シリス症候群(CSS)は、1970年に小児科医のコフィンと放射線科医のシリスによって初めて報告された病気で、重い発達の遅れ、成長の障害、そして第5指(小指)の爪や骨の欠損・低形成を特徴とします。長いあいだ、粗野な顔つき・多毛・まばらな頭髪・小指の低形成といった「見た目の特徴」でまとめられてきた症候群でした。その原因が分子レベルで分かったのは、最初の報告から40年以上たった2012年のことです。全エクソームシーケンス(WES)という新しい検査技術によって、細胞のなかで遺伝子の読み書きを調節するクロマチンを組み替える「BAF複合体」の部品をつくる複数の遺伝子(ARID1A、ARID1B、SMARCA4、SMARCB1、SMARCE1など)の変化が、CSSの原因だと突き止められました。

この発見によって、CSSは1つの病気ではなく、「BAF複合体という共通の装置が壊れることで起こる一群の病気」として捉え直されました。この一群をBAFオパチー(BAFopathies)、あるいはクロマチンの調節異常という意味でクロマチノパチーと呼びます。原因となる遺伝子ごとにCSS1、CSS2……と型番号がつけられており、本記事のCSS7は、そのなかでDPF2遺伝子を原因とするタイプです。2018年にヴァシレイオウ(Vasileiou)らによって、DPF2がCSSの新しい原因遺伝子であることが初めて報告されました[1]。CSS全体についての基礎はコフィン・シリス症候群 総論のページでも解説しています。

💡 用語解説:BAF複合体(SWI/SNF複合体)とは

私たちのDNAは、ヒストンというタンパク質に巻きついてぎっしり折りたたまれています。折りたたまれたままでは、遺伝子を「読む」ことができません。BAF複合体は、このDNAの巻きつきをゆるめたりずらしたりして、必要な遺伝子を読める状態にする「巻き取り機」のような装置です。いくつもの部品(サブユニット)が集まってできており、DPF2はその部品の1つです。装置全体で働くため、1つの部品の設計図が変わるだけでも、多くの遺伝子の読み書きに影響が及びます。

CSS7がBAFオパチーの一員だと分かったことには、患者さんやご家族にとって実際的な意味があります。第一に、症状が似た他のCSSの型や近縁の病気と「同じ装置の別の部品の問題」として整理でき、診断や見通しの相談がしやすくなります。第二に、この共通性を利用したDNAメチル化エピシグネチャーという検査(後述)が、診断を後押しする道具になります。「まれで情報が少ない病気」ではあっても、大きな枠組みのなかに位置づけられている、という点は安心材料の1つになります。

2. 原因遺伝子DPF2 ─ ヒストンの「目印」を読むタンパク質

CSS7の原因を知るには、DPF2というタンパク質が「BAF複合体を、読むべき場所に案内する道案内役」であることを押さえるのが近道です。道案内が狂うと、装置全体が正しい場所で働けなくなります。

DPF2遺伝子は11番染色体の長腕(11q13.1)にあり、全身の細胞で広く働いていますが、とくに神経の発生や血液をつくる細胞の分化で重要な役割を果たします[1]。このタンパク質のいちばんの特徴は、C末端側にある2つのPHDフィンガー(PHD1・PHD2)という構造です。PHDフィンガーは、亜鉛イオンを抱え込んで安定した小さな「読み取りヘッド」で、ヒストンについた化学的な目印を読み分けます。DPF2では2つのPHDが背中合わせに密着し、1つの統合された読み取り装置として働きます。

DPF2が「読む」しくみ(4ステップ)

DPF2の
PHDフィンガー
ヒストンの目印
「H3K14ac」を認識
BAF複合体の
クロマチン結合・
標的認識を助ける
必要な遺伝子が
読める状態に

DPF2はヒストンの「活動中」の目印を認識し、BAF複合体が適切なクロマチン領域で機能するための足場・標的認識に関わると考えられています。読み取りが狂うと、この認識が成り立ちにくくなります。

では、DPF2は何を目印にしているのでしょうか。DPF2と近い仲間であるDPF3bというタンパク質を使った構造解析では、この2つのPHDフィンガーが、ヒストンH3の14番目のリジンにアセチル基がついた目印(H3K14ac)を強く認識して結合することが分かりました[2]。アセチル基は、その場所で「今まさに遺伝子が活発に読まれている」ことを示す旗印のようなものです。DPF2のPHDフィンガーはこうしたヒストン修飾を認識し、BAF複合体が適切なクロマチン領域で機能するための足場・標的認識に関与すると考えられています。さらに興味深いことに、同じ場所に別の目印(H3K4のメチル化=H3K4me3)がついていると、この結合はかえって強く妨げられます[2]。目印の組み合わせによって認識のオン・オフが切り替わる、繊細なしくみが備わっているのです。

💡 用語解説:エピジェネティクスと「目印」

DNAの文字(塩基配列)そのものを変えずに、遺伝子のはたらきのオン・オフを調節するしくみをエピジェネティクスと呼びます。その代表が、ヒストンにつくアセチル化やメチル化といった「目印(化学修飾)」です。DPF2のようなタンパク質は、この目印を読み取る「リーダー(読み手)」として働きます。目印を書く役・消す役・読む役がそろって初めて、細胞は状況に応じて遺伝子を使い分けられます。DPF2は、そのなかの「読む役」にあたります。

ここが患者さん・ご家族にとって大切な意味を持ちます。CSS7を起こすDPF2の変化の多くは、この「読み取りヘッド」であるPHDフィンガーの内部に集中しています[1]。この分布から、CSS7の病態には、DPF2が単に「作られない・足りない」だけでなく、「作られても目印を正しく認識できなくなる」しくみが関わると考えられています。こうしたヒストン修飾の認識の乱れが、発達に必要な多くの遺伝子の調節に影響することが、症状の背景にあると推定されています。次の章では、なぜ1つの部品の変化が広い影響を及ぼしうるのかを見ていきます。

3. なぜCSS7が起こるのか ─ 一部の変異で提唱される「優性阻害」

CSS7の病態を考えるうえで重要なのが、単純なハプロ不全だけでは説明できない点です。少なくとも初期に報告された一部のDPF2病的バリアントでは、変異タンパク質が正常なDPF2やBAF複合体の機能を妨げる「優性阻害」の機序が提唱されています。この機序を知ると、なぜ稀な変化が広い影響を及ぼしうるのかが理解しやすくなります。

多くの遺伝性疾患では、片方の遺伝子コピーが壊れてタンパク質の量が半分になると病気になります。これをハプロ不全と呼びます。実際、最も頻度の高いCSS1(ARID1B遺伝子)は、多くがこのハプロ不全で起こります。ところがCSS7のDPF2変異は、それとは違うふるまいを見せます。ヴァシレイオウらが最初に報告した8つの変化は、いずれもご両親にはない新生突然変異(de novo)で、そのうち5つは進化的に強く保存されたPHD1・PHD2の内部のミスセンス変異でした[1]。そして、途中でタンパク質が短くなるタイプの変化であっても、異常なmRNAを壊すしくみ(ナンセンス依存性mRNA分解、NMD)をすり抜けて、短い異常タンパク質として細胞のなかに残ることが確かめられました[1]

💡 用語解説:ミスセンス変異と「優性阻害」

ミスセンス変異とは、遺伝子の1文字が変わることで、タンパク質の1か所のアミノ酸が別のものに置き換わる変化です。タンパク質は作られますが、形やはたらきが変わります。

優性阻害(ドミナントネガティブ)とは、変異したタンパク質が、正常なタンパク質のはたらきまで積極的にじゃまをする性質のことです。「働かない部品が増える」だけなら残った正常な部品でなんとかなりますが、「正常な部品の足を引っぱる不良品」がまじると、装置全体が動かなくなります。CSS7では、少なくとも一部の病的バリアントで、この優性阻害機序が提唱されています。

実験では、異常なDPF2タンパク質は細胞の核のなかで異常なかたまり(核内凝集体)をつくり、そこに正常なDPF2やBAF複合体の中心部品(BRG1)まで引き込んでしまうことが示されました[1]。つまり不良品が正常品を巻き込んで、装置ごと使えなくしてしまうのです。これが優性阻害(ドミナントネガティブ)と呼ばれるしくみで、ヴァシレイオウらは、de novo変異がCSSを引き起こし、その病態として優性阻害の機序を提唱しています[1]。ただしこれはすべてのDPF2変異について確定した唯一の機序というわけではなく、変異の種類によってはたらき方が異なる可能性も残されています。

この違いは、ご家族の理解にとって意味があります。少なくとも初期に報告された一部のDPF2病的バリアントでは、単純なハプロ不全ではなく、変異タンパク質が正常なDPF2やBAF複合体の機能を妨げる優性阻害の関与が提唱されています。病的バリアントの多くはPHDフィンガー周辺に集中しており、こうしたクロマチン調節の乱れが、体の広い範囲の発達に影響しうると考えられています。またこのようなクロマチン調節の変化は、ゲノム全体のDNAメチル化のパターンにも反映されることがあり、これが後で述べるエピシグネチャー解析の手がかりになります。

4. CSS7の主な症状 ─ 発達・顔つき・手指・成長

CSS7の症状は、発達の遅れを中心に、顔つき・皮膚や毛・手指・内臓と多くの部分に及びます。ただし現れ方には個人差が大きく、重い方から比較的軽い方まで幅があります。以下の頻度はCSS全体のデータをもとにした目安であり、CSS7だけの統計ではない点にご注意ください。

BAF複合体は全身で働いていますが、とくに神経系は細胞が正しく分化するために厳密な遺伝子調節を必要とするため、エピジェネティックな乱れの影響を受けやすい部分です。次の表とグラフは、コフィン・シリス症候群でみられる主な症状とその出現頻度を、患者レジストリや臨床レビューをもとにまとめたものです。数値はCSS全体の推定値であり、CSS7(DPF2)単独の頻度ではありません。

コフィン・シリス症候群の主な症状と出現頻度(CSS全体の推定値)

知的障害・発達遅滞約98%
多毛症(体毛が濃い)最大95%
哺乳障害・成長障害最大90%
筋緊張低下約75%
関節弛緩約66%
頭髪がまばら約60%
てんかん(発作)約38〜50%
脊柱側弯症約30〜40%
先天性心疾患約35%

※頻度はCSS全体のレジストリ等に基づく推定値で、CSS7(DPF2変異)単独の統計ではありません。哺乳障害では小児期の患者の約25〜50%が一時的または長期的に経管栄養を必要とすると報告されています[3]

神経・発達の特徴

CSS7の報告例でも、発達遅滞・知的障害が主要な特徴として繰り返し報告されており、境界域から重度まで幅があります。運動面では歩き始めの遅れ、ことばの面では発語の遅れが目立ちます。乳幼児期の筋緊張低下は、哺乳のしにくさや繰り返す呼吸器感染の一因にもなります[3]。てんかんもみられますが、CSS7単独での正確な頻度は確立していません(CSS全体では発作は比較的よくみられます[3])。自閉スペクトラム症・注意欠如多動症・多動や常同行動などの行動面の課題を合併することもあります。ご家族にとっては、これらが「別々の問題」ではなく、BAF複合体という共通の仕組みの乱れから生じている、と理解しておくと、支援の全体像が描きやすくなります。

顔つき・皮膚と毛・手指の特徴

顔つきは、広い鼻梁と鼻尖、厚い上下の唇、長い人中などが特徴で、年齢とともにやや粗野さが目立つ傾向があります[3]。皮膚・毛の特徴として、背中や肩などの多毛(体毛が濃い)と、逆に頭髪はまばらという組み合わせがしばしばみられます。そしてCSSを象徴する所見が、第5指(小指)や第5趾の爪・末節骨(指先の骨)の低形成・欠損です。これはCSS7でも重要な手がかりになります。この「小指の特徴」は、後で述べる似た病気との見分けでも鍵になります。

哺乳・成長・内臓の特徴

吸う・飲み込むといった動作の障害や嘔吐などによる哺乳障害・体重増加不良は、CSSで最も頻度の高い症状の1つです。誤嚥の危険が高い場合や体重増加不良が長く続く場合には、一時的または長期的に経管栄養(鼻からの管や胃瘻)が必要になることがあり、CSS全体では小児期の約25〜50%がこうした栄養サポートを要すると報告されています[3]。このほか、先天性心疾患(心室中隔欠損など)や泌尿生殖器の異常がみられることもあり、CSS7では水腎症などの合併も報告されています。関節弛緩に伴う脊柱側弯症も注意すべき所見です。これらは1人の患者さんにすべてそろうわけではなく、どの症状がどの程度出るかには大きな個人差があります。ご家族にとって大切なのは、「起こりうる症状のリスト」を、実際に出ている症状と混同しないことです。リストは備えのためのものであって、すべてが必ず起こるという意味ではありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「頻度の表」は不安のためでなく、備えのためにあります】

症状の頻度表をお見せすると、「これも起こるのか」と一つずつ不安を積み上げてしまう方がいらっしゃいます。けれど頻度表は、脅すための道具ではありません。どの時期にどんな評価をしておくと安心か、という「見守りの地図」として使うものだと考えています。

とくにCSS7のように報告例が少ない病気では、表の数字はCSS全体からの推定で、お子さん一人ひとりに当てはまるとは限りません。数字にとらわれず、いま目の前で起きていることに合わせて、必要な専門科と連携していく。それが、まれな病気と長く付き合っていくうえで現実的で、いちばん力になる向き合い方だと思っています。

5. これまでに報告されている症例 ─ 幅の広さを知る

CSS7は報告例が少ないぶん、1例1例の報告が病気の輪郭を形づくっています。重い成長障害を示した例から比較的軽い例まで、その幅を知ることは見通しを持つうえで役立ちます。

2018年の最初の報告以降、DPF2に関する症例が少しずつ蓄積されてきました。DPF2変異によるCSS7は、一般に中等度から軽度の発達遅滞を示し、古典的な小指の異常や粗野な顔つきを持つ例が多いとされますが、報告例が少ないため、これらは少数例に基づく暫定的な知見である点に注意が必要です。ここでは代表的な2つの報告を紹介します。

1つ目は、リー(Li)らが2024年に報告した5歳7か月の女児例です[4]。重い低身長を主訴に受診し、身長99.0cm(−3.55SD)、体重13.5kg(−3.10SD)と著しい成長障害を呈していました。全エクソームシーケンスでは、母親から受け継いだDPF2のミスセンス変異(c.283T>G, p.Phe95Val)と、本人に新たに生じたASH1L遺伝子の病的フレームシフト変異(c.8683dupA)が同定されました[4]。小頭症、内斜視、小耳症、低い鼻梁、第2・第5指の短指症といった特徴に加え、両側の小眼球症や皮膚の色素沈着といった所見もみられました。ただしこのDPF2変異は論文中では意義不明(VUS)とされており、ASH1L変異(MRD52の原因遺伝子)も表現型に影響した可能性があります。したがって、この1症例からDPF2変異単独の表現型や遺伝性を結論づけることはできません。

2つ目は、ミローネ(Milone)らが2020年に報告した男児例です[5]。運動やことばの遅れ、CSS様の顔つきを持っていましたが、頭蓋縫合早期癒合症や斜指症といった重い骨格の異常はともなわず、比較的軽い表現型でした。この報告は、DPF2に新しいミスセンス変異を加えるとともに、CSS7のあらわれ方が従来考えられていたよりも幅広いことを示しました[5]。報告されているDPF2変異の大半はde novo(新生突然変異)ですが、その後には、病的と考えられるDPF2変異が家系内で2世代にわたって受け継がれた例も報告されており[6]、CSS7の臨床像は「典型例」だけでは語りきれないことが分かってきています。

こうした症例報告は、ご家族にとって「同じ診断でも経過は一人ひとり違う」という当たり前の、しかし大切な事実を裏づけます。重い例だけを見て将来を決めつける必要はありませんし、逆に軽い例だけを見て油断する必要もありません。お子さんの実際の経過に沿って、必要な支援を組み立てていくことが、限られた情報のなかでの現実的な向き合い方になります。

6. 診断の進め方 ─ 遺伝子検査とエピシグネチャー

CSS7の診断は、次世代シーケンシングでDPF2の変化を見つけることが基本です。CSSを疑う臨床像で判断に迷う変化があるときは、DNAメチル化エピシグネチャー解析が分子診断を補助することがあります。血液1本から始められる検査が診断の入り口になります。

見た目の特徴だけでCSSを疑うことはできますが、どの型(どの遺伝子)かを確定し、CSS7だと診断するには分子遺伝学的検査が欠かせません。近年は、複数の原因遺伝子をまとめて調べるコフィン・シリス症候群NGSパネル検査や全エクソームシーケンス(WES)が用いられます。血液からDNAを取り出して調べるため、採血1回から始められるのが、ご家族にとっての現実的な入り口です。

ただ、遺伝子検査では、病気の原因かどうか判断がつかない変化が見つかることがあります。これを意義不明変異(VUS)と呼びます。DPF2に新しいミスセンス変異が見つかったとき、それが本当に病的な変化なのか、それとも無害な個人差なのかを見分ける必要があります。ここで補助になるのが、CSSを含むBAFオパチーで報告されているDNAメチル化の「足跡」です。

💡 用語解説:エピシグネチャーとは

BAF複合体のような調節装置がうまく働かないと、ゲノムの特定の場所のDNAメチル化のパターンに、その病気に関連した特徴が生じることがあります。この「病気に関連したメチル化の特徴」をエピシグネチャー(epigenetic signature)と呼びます。血液のメチル化パターンを解析し、既知のパターンに一致するかを調べる検査です。CSSとニコライデス・バライツァー症候群を含むBAFオパチーで、末梢血に共通するメチル化サインが報告され[7]、その後CSSに関するメチル化解析の知見も蓄積しています[8]。ただし、これらの研究で主に解析されたCSSの原因遺伝子はARID1B・SMARCB1・SMARCA4など(およびNCBRSのSMARCA2)であり、DPF2変異によるCSS7に特異的なエピシグネチャーが十分に確立しているわけではありません。DPF2のVUS単独を、陽性・陰性だけで病的/良性と確定できる検査ではない点に注意が必要です。

エピシグネチャー解析が役立つ場面は、大きく2つあります。第一に、VUSの解釈を補助することです。CSSを疑う臨床像があり、遺伝子検査でVUSが見つかった場合に、分子診断を後押しすることがあります。ただし結果は単独で判断するのではなく、臨床所見・遺伝形式・バリアント評価などと合わせて解釈する必要があります[7]。第二に、症状が軽く典型的な基準を満たさない例で、診断の手がかりの1つになります。ご家族にとって、これは「原因がはっきりしないまま宙づりになる時間」を短くしてくれる可能性がある、という意味を持ちます。診断が定まることは、見通しを立て、必要な支援や次の妊娠の相談へ進むための出発点になります。

7. 似た病気との見分け ─ 手指の特徴が重要な手がかりになる

CSS7を確定するには、症状の似た他のBAFオパチーと丁寧に見分けることが欠かせません。とくに手指の特徴が、近縁の病気を区別する重要な手がかりになります。見分けが大切なのは、型によって注意すべき合併症が異なるからです。

下の表は、CSS7と鑑別が問題になる主な病気をまとめたものです。とくに覚えておきたいのが、ニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)との違いです。CSS7が小指の「低形成(骨や爪が小さい)」を特徴とするのに対し、NCBRSでは皮下脂肪の減少により指の関節が「目立って突出する」という、いわば逆向きの特徴を示します[9]。手指所見は鑑別の重要な手がかりになりますが、表現型は重なり合うため、確定には臨床像全体と分子遺伝学的検査を合わせて判断します。

病気(原因遺伝子) CSS7との見分けのポイント
NCBRS(SMARCA2) CSSに極めて似るが、手指の特徴が対照的。CSS7は末節骨・爪の「低形成」、NCBRSは皮下脂肪減少による指節間関節の「突出・肥大」が特徴[9]
CSS1(ARID1B) CSSで最も頻度が高い型。表現型は古典的CSSから非特異的な知的障害まで幅広く、脳梁の形成不全を伴うことが多い。
CSS2(ARID1A) 知的障害や身体的特徴は類似するが、肝芽腫の発生リスク(約3.6%)が報告されており、腹部超音波などのがんスクリーニングが検討される点で異なる[10]
CSS4(SMARCA4) / CSS5(SMARCE1) SMARCA4変異では顔つきの粗野さは比較的軽度な一方、哺乳障害や行動面の課題が顕著に現れる傾向がある。SMARCE1変異例も古典的CSS症状を呈する。
マブリー症候群(PIGV, PIGO 等) 重度の知的障害・顔面形態異常・末節骨の低形成でCSSと重複するが、血清アルカリホスファターゼ(ALP)の著明な上昇が鑑別の決め手になる。

見分けが大切なのは、単なる名前の問題ではありません。型によって注意すべき合併症が違うからです。たとえばCSS2(ARID1A)では肝芽腫の監視が検討されますが、これはCSS7には当てはまりません。逆に言えば、CSS7だと正確に診断されることは、不要な心配や検査を避けつつ、必要な備えに集中できることを意味します。似た病気を1つずつ丁寧に除いていく作業は、ご家族の見通しを整理するうえで欠かせないプロセスです。ここでも、前章で述べたエピシグネチャー解析が、判断に迷う例で分子診断を補助することがあります[7]

8. 治療とケア ─ 多職種の支えと、成長ホルモン療法の位置づけ

CSS7に根本的な治療(遺伝子を治す治療)はまだありません。医療の基本は、多くの専門科が連携して症状に対応し、発達を生涯にわたって支えることです。早い時期からの支援が、生活の質を大きく左右します。

具体的には、小児科・神経内科・遺伝科・整形外科・リハビリテーション科などが連携します。重い哺乳障害には、経口摂取の安全性を評価したうえで、必要に応じて経鼻胃管や胃瘻による栄養サポートを検討します[3]。ことばの表出が苦手なことが多いため、言語聴覚療法と並行して、サインや絵カード・タブレットを用いた代替・拡大コミュニケーション(AAC)を早くから取り入れることが有効です。てんかんには標準的な抗てんかん薬が用いられ、関節弛緩に伴う脊柱側弯症や膝の亜脱臼については整形外科で定期的に評価し、進行が速い場合には装具や手術が検討されます[3]。これらは「治す」というより、お子さんができることを最大限に引き出し、暮らしやすさを高めるための支援です。

低身長への成長ホルモン療法をどう考えるか

重い低身長への薬物治療をどう考えるかは、しばしば話題になります。CSS7と臨床診断された患者さんにrhGHを投与し、身長の改善が報告された単一症例があります[4]。この患者さんでは、5歳7か月から1日2IUのrhGHを開始したところ、治療1年目の成長速度が9.8cm/年、2年目6.5cm/年、3年目4.7cm/年と推移し、3年3か月の治療全体で身長の標準偏差スコア(HtSDS)は+1.53SD、体重の標準偏差スコア(WtSDS)は+1.74SD上昇しました。この間、rhGHに関連する副作用は観察されていません[4]。ただし前章で述べたとおり、この患者さんではDPF2変異が意義不明(VUS)であり、別のASH1L病的バリアントも併存していたため、DPF2関連CSS7に対するrhGHの有効性を示した証拠とはまだ言えません。「CSS7ならrhGHが効く」と一般化できる段階にはありません。

💡 ここは誤解されやすい:成長ホルモン療法の位置づけ

この報告は1例の経過報告であり、CSS7に対する確立した標準治療ではありません。「CSS7なら成長ホルモンで背が伸びる」と一般化できる段階にはありません。適応は慎重に判断する必要があります。

DPF2関連CSS7でrhGHにより腫瘍リスクが上がることを示すデータはありません。一方で、CSSでは原因遺伝子によって腫瘍リスクが異なり、ARID1A変異のCSS2のように肝芽腫のリスクが上がる型もあります。そのためrhGHの適応は、一般的な成長ホルモン治療としての評価に加えて、原因遺伝子・基礎疾患・既往歴などを踏まえて個別に判断する必要があります。事前に原因遺伝子を確定し、期待される効果と限界について十分に説明を受けたうえで検討することが大切です。

なお、CSS全体としても、肝芽腫のスクリーニングを除けば、日常的ながん監視は一律には推奨されていません[3]。CSS7についても、現時点で特別ながん監視が必要という確立した根拠はありません。ご家族にとって大切なのは、成長ホルモン療法を「使うか・使わないか」を数字だけで決めるのではなく、原因遺伝子・全身の状態・ご本人とご家族の希望をあわせて、担当医とよく相談して決めていくことです。当院は成人を診療する臨床遺伝専門医の立場から、こうした判断材料を整理するお手伝いができます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「1例の成功」と「確立した治療」を分けて話すこと】

まれな病気では、たった1例の良い報告が、大きな希望として受け取られます。その気持ちはとてもよく分かります。ただ私は、遺伝カウンセリングの場で「1例で効いた」と「多くの患者さんで効くと確かめられた」は別のことだと、必ずお伝えするようにしています。

この違いを曖昧にすると、期待が大きく膨らんだあとで「まだ確定ではない」と知り、二度つらい思いをすることになりかねません。希望を持つことと、確かめられた範囲を正確に知ることは、両立できます。今わかっていることの輪郭を正直にお渡しすることが、長い目で見ていちばん誠実だと考えています。

9. 遺伝と再発の考え方 ─ 「次の子にも起こるのか」に答える

ご家族が最も知りたいのは、しばしば「次の子にも起こるのか」という点です。CSS7は常染色体顕性(優性)遺伝で、報告例の多くは新生突然変異です。この場合、次のお子さんへの再発率は一般に低いと考えられます。

CSS7は、DPF2の片方のコピーに変化があれば発症しうる常染色体顕性(優性)の病気です。そして、これまで報告された変化の大半は、ご両親にはなくお子さんに新しく生じた変化(de novo)でした[1]。他のCSSの原因遺伝子でも、変化の多くがde novoである点は共通しています。新生突然変異が原因の場合、同じご両親から次に生まれるお子さんに再び起こる確率は、一般に低いと説明されます。これは、多くのご家族にとって大きな安心材料になります。

💡 用語解説:新生突然変異(de novo)と生殖細胞モザイク

新生突然変異(de novo変異)とは、ご両親の通常の血液検査では認められず、卵子や精子ができるとき、または受精のごく初期に、お子さんに新たに生じた変化のことです。この場合、次のお子さんの再発リスクは一般に低いと考えられます。

ただし、ごくまれに、ご両親のどちらかの卵巣や精巣の一部の細胞にだけ変化がある生殖細胞モザイクや低レベルのモザイクが存在することがあり、その場合、再発リスクはゼロではありません。また、CSS7では、病的と考えられるDPF2変異が家系内で受け継がれた例も報告されています[6]。ですから、正確な再発リスクは「変化がde novoか、受け継がれたものか」を確かめたうえで判断します。

つまり、次の妊娠に向けた再発の見通しを正しく立てるには、お子さんの変化がde novoかどうかを、ご両親の検査も含めて確かめることが出発点になります。当院では、こうした点を遺伝カウンセリングのなかで臨床遺伝専門医が整理します。検査で何が分かり何が分からないのか、結果がご家族にとってどんな意味を持つのか、そして次の妊娠にどのような選択肢があるのかを、中立の立場でお伝えします。検査を受けるかどうかを含め、決めるのはご本人・ご家族であり、私たちはそのための判断材料を整える役割を担います。同じ病気とともに歩むご家族どうしがつながる場として、互助会のような取り組みも、必要に応じてご案内できます。

10. よくある誤解

誤解①「CSS7は親から遺伝した病気だ」

報告例の多くは、ご両親にはない新生突然変異(de novo)です。ご両親のどちらかが原因を持っていて遺伝した、というケースはむしろ少数です。次の子への再発率は一般に低く、正確な見通しは、変化がde novoか受け継がれたものかを確かめて判断します。

誤解②「DPF2が足りないことが原因だ」

少なくとも初期に報告された一部のDPF2病的バリアントでは、単純に「DPF2が半分になる」のではなく、変異したDPF2が正常なDPF2やBAF複合体の機能を妨げる優性阻害の機序が提唱されています[1]。病的バリアントの多くはPHDフィンガー周辺に集中しています。

誤解③「成長ホルモンで必ず背が伸びる」

CSS7と臨床診断された患者さんで身長改善が報告された単一症例はありますが、その患者さんではDPF2変異がVUSで、別のASH1L病的バリアントも併存していました[4]DPF2関連CSS7に対するrhGHの有効性を示した証拠とはまだ言えず、確立した標準治療ではありません。適応は原因遺伝子や全身状態を踏まえ個別に判断します。

誤解④「症状はどの子も同じように重い」

CSS7のあらわれ方には大きな個人差があります。重い成長障害を示した例から、骨格異常をともなわない比較的軽い例まで報告されています[5]。頻度表や一部の症例だけで、お子さんの将来を決めつける必要はありません。

📌 このページを読んだあなたへ

この記事にたどり着かれたのは、たとえばお子さんがCSS7やDPF2変異と診断された方、これから遺伝子検査を考えている方、あるいは発達の遅れの原因を調べている途中の方かもしれません。どの立場でも、次に確認しておくとよい観点があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. コフィン・シリス症候群7型(CSS7)とは、どんな病気ですか?

CSS7は、DPF2という遺伝子の変化によって起こる、発達の遅れや特徴的な顔つき・小指の低形成などをともなう稀な神経発達の病気です。DPF2は、細胞のなかで遺伝子の読み書きを調節するBAF複合体という装置の部品で、この部品の設計図が変わると、脳や体の発達に必要な多くの遺伝子のはたらきが乱れます。コフィン・シリス症候群には原因遺伝子ごとに型番号があり、CSS7はDPF2を原因とするタイプです。報告例が限られる、きわめてまれな病気です。

Q2. CSS7は親から遺伝しますか?次の子にも起こりますか?

CSS7は常染色体顕性(優性)遺伝の病気ですが、これまで報告された変化の多くは、ご両親にはなくお子さんに新しく生じた新生突然変異(de novo)です。通常の血液検査でご両親に同じ変化が認められない場合、次のお子さんの再発リスクは一般に低いと考えられます。ただし、親の生殖細胞モザイクや低レベルのモザイクを完全には除外できないため、ゼロとは言えません。まれに、病的と考えられる変化が家系内で受け継がれた例も報告されています。正確な再発リスクは、お子さんの変化がde novoかどうかをご両親の検査も含めて確かめたうえで判断しますので、詳しくは遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q3. CSS7はどのように診断されますか?

見た目の特徴からCSSを疑うことはできますが、CSS7と確定するには、次世代シーケンシング(コフィン・シリス症候群NGSパネル検査や全エクソームシーケンス)でDPF2の変化を見つける必要があります。血液からDNAを取り出して調べるため、採血1回から始められます。判断に迷う変化(VUS)が見つかった場合は、CSSに対するDNAメチル化エピシグネチャー解析が分子診断を補助することがあります。ただし、DPF2に特異的なエピシグネチャーが確立しているわけではなく、結果は臨床所見・遺伝形式・バリアント評価などと合わせて解釈します。

Q4. CSS7に治療法はありますか?成長ホルモンは使えますか?

現時点で根本的な治療はなく、多職種の連携による対症療法と発達支援が中心です。哺乳障害への栄養サポート、ことばの遅れへの言語療法や代替コミュニケーション、てんかんへの抗てんかん薬、側弯症への整形外科的評価などを組み合わせます。重い低身長に対する成長ホルモン療法は、CSS7と臨床診断された患者さんで身長改善が報告された単一症例がありますが、その患者さんではDPF2変異がVUSで別のASH1L病的バリアントも併存しており、DPF2関連CSS7への有効性を示した証拠とはまだ言えません。適応は、一般的な成長ホルモン治療としての評価に加え、原因遺伝子・基礎疾患・既往歴などを踏まえて個別に判断します。

Q5. CSS7とニコライデス・バライツァー症候群(NCBRS)はどう違いますか?

どちらもBAF複合体の異常による、症状のよく似た病気ですが、原因遺伝子と手指の特徴が異なります。CSS7はDPF2の変化が原因で、第5指(小指)の爪や末節骨の低形成(骨や爪が小さい)を特徴とします。一方NCBRSはSMARCA2の変化が原因で、皮下脂肪の減少により指の関節が目立って突出するのが特徴です。手指所見は鑑別の重要な手がかりになりますが、表現型は重なり合うため、確定には臨床像全体と分子遺伝学的検査を合わせて判断します。判定が難しい場合は、CSSに対するエピシグネチャー解析が補助になることもあります。

Q6. CSS7にがんのリスクはありますか?

現時点で、DPF2変異によるCSS7が特別にがんのリスクを上げるという確立した証拠はありません。コフィン・シリス症候群全体としても、ARID1A(CSS2)で肝芽腫のスクリーニングが検討される以外は、一律の定期的ながん監視は推奨されていません。成長ホルモン療法についても、DPF2関連CSS7で腫瘍リスクが上がることを示すデータはありません。ただしCSSでは原因遺伝子によって腫瘍リスクが異なるため、治療の適応は原因遺伝子や全身状態を踏まえて個別に判断します。ご心配な点は担当の医師にご相談ください。

🏥 CSS7・DPF2変異・発達の遺伝子診断のご相談

コフィン・シリス症候群やDPF2変異に関する
遺伝子検査と遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにご相談ください。

参考文献

  • [1] Mutations in the BAF-Complex Subunit DPF2 Are Associated with Coffin-Siris Syndrome. Am J Hum Genet. 2018. [PubMed 29429572]
  • [2] Mechanism and regulation of acetylated histone binding by the tandem PHD finger of DPF3b. Nature. 2010. [PubMed 20613843]
  • [3] Coffin-Siris Syndrome. GeneReviews® [Internet]. University of Washington, Seattle (Updated 2025). [NBK131811]
  • [4] More than three years’ treatment response of recombinant human growth hormone in a patient with Coffin-Siris syndrome 7. Endokrynol Pol. 2024. [Endokrynol Pol 2024;75(4):450-451]
  • [5] A new missense mutation in DPF2 gene related to Coffin Siris syndrome 7: Description of a mild phenotype expanding DPF2-related clinical spectrum and differential diagnosis among similar syndromes epigenetically determined. Brain Dev. 2020. [PubMed 31706665]
  • [6] DPF2-related Coffin-Siris syndrome type 7 in two generations. Eur J Med Genet. 2024. [PubMed 38697389]
  • [7] BAFopathies’ DNA methylation epi-signatures demonstrate diagnostic utility and functional continuum of Coffin-Siris and Nicolaides-Baraitser syndromes. Nat Commun. 2018. [PMC6244416]
  • [8] DNA methylation analysis in patients with neurodevelopmental disorders improves variant interpretation and reveals complexity. Genet Med. 2024. [PubMed 38243407]
  • [9] SMARCA2-Related Nicolaides-Baraitser Syndrome. GeneReviews® [Internet]. University of Washington, Seattle. [NBK321516]
  • [10] Cancer in ARID1A-Coffin-Siris syndrome: Review and report of a child with hepatoblastoma. Eur J Med Genet. 2022. [PubMed 36049608]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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