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遺伝子検査とは?種類や目的について詳しく解説


遺伝子検査の基本概念

遺伝子検査とは、人の体を構成する細胞から抽出した遺伝情報(DNA)を調べることで、さまざまな疾患のリスクや体質、薬剤への反応性などを解析する医療技術です。私たちのの設計図とも言える遺伝子の変異特徴特定することで、疾患の診断予防治療方法の選択に役立てることができます。

近年、医療技術の発展により遺伝子検査の精度が向上し、多くの医療機関サービスで幅広く提供されるようになりました。がん治療遺伝性疾患診断における重要性が高まっており、個人の健康管理においても注目を集めています。

遺伝子検査の種類と目的

遺伝子検査は大きく分けて以下のような種類があり、それぞれ異なる目的で実施されます。

1. 医療目的の遺伝学的検査

診断的検査

既に症状が現れている患者に対して行われる検査です。特定疾患原因となる遺伝子変異を調べることで、正確な診断を行います。例えば、原因不明の発達遅延や特定症状を示す患者に対して原因遺伝子特定するために行われます。

予測的検査

まだ症状が出ていないの将来の発症リスクを評価する検査です。遺伝性疾患家族歴がある場合などに行われ、特定遺伝子変異の有無を調べることで発症リスクを評価します。代表的な例としては、遺伝性がん・卵巣がん症候群(HBOC)の原因となるBRCA1/BRCA2遺伝子検査があります。

薬理遺伝学検査

剤に対する反応性や副作用のリスクを評価する検査です。個人遺伝特徴に基づいて、最適な剤や投与量を選択するために活用されます。この分野は「個別化医療」と呼ばれ、治療効果の向上と副作用の軽減が期待されています。

個別化医療とは、個人遺伝情報体質に合わせた最適な医療を提供することを目指す考え方です。遺伝子検査はその実現に重要な役割を果たしています。

2. がんゲノム検査

がん遺伝子パネル検査

がん細胞に生じた遺伝子変異を包括的に調べる検査です。多数のがん遺伝子を一度に解析することで、効果的な治療の選択や治療方針の決定に役立てます。2019年に保険適用となったがんゲノムプロファイリング検査は、標準治療が効かなくなった患者さんの新たな治療選択肢を見つける手段として注目されています。

リキッドバイオプシー

血液中に存在するがん細胞由来のDNAを解析する検査です。従来の組織生検に比べてへの負担が少なく、繰り返し検査が可能であるため、治療効果のモニタリングなどに活用されています。

3. 非医療目的の遺伝子検査(DTC遺伝子検査)

体質・特性検査

肥満リスクやアルコール代謝能力、筋肉タイプなど、個人体質特性に関わる遺伝特徴を調べる検査です。これらの情報を基に、より効果的な生活習慣の改善や運動方法の選択に役立てることができます。

祖先解析

自分のルーツや祖先がどの地域・民族に由来するかを調べる検査です。日本ではあまり一般的ではありませんが、海外では人気のあるサービス1つです。

遺伝子検査の方法と流れ

一般的な遺伝子検査の流れは以下の通りです:

  1. 検体採取血液唾液、頬の内側の細胞がん組織などから検体を採取します。
  2. DNA抽出:採取した検体からDNAを抽出します。
  3. 遺伝子解析:様々な技術を用いて、対象となる遺伝子塩基配列変異解析します。
  4. データ解析:得られたデータを解析し、結果を導き出します。
  5. 結果の解釈と報告:専門家による結果の解釈と、検査を受けたへの報告を行います。

医療機関で行われる遺伝学的検査では、検査前後に遺伝カウンセリングが行われるのが一般的です。検査の意義やリスク、限界などについて十分な説明を受け、納得した上で検査を受けることが重要です。

主な遺伝子検査の検体と特徴
検体の種類 主な特徴 適した検査タイプ
血液 高品質なDNAが得られる 医療目的の遺伝学的検査がんリキッドバイオプシー
唾液 非侵襲的で簡便 DTC遺伝子検査
がん組織 がん細胞特有の変異を検出できる がん遺伝子パネル検査
頬粘膜細胞 非侵襲的で採取が容易 DTC遺伝子検査

遺伝子検査の課題と注意点

精度と限界

遺伝子検査には技術的な限界があり、100%の精度ではありません。特に非医療目的の検査(DTC遺伝子検査)は、医療目的の検査に比べて解析範囲や精度が限られている場合があります。

心理的影響

特に重篤な疾患リスクに関する情報は、検査を受けたに大きな心理的影響を与える可能性があります。そのため、医療機関では適切な心理的サポートと共に検査が提供されるべきです。

遺伝情報の取り扱い

遺伝情報は極めてセンシティブな個人情報です。検査会社の情報管理体制や、情報の二次利用についての方針を確認することが重要です。また、遺伝情報に基づく差別(遺伝子差別)を防ぐための法的・社会的対応も課題となっています。

費用と保険適用

医療目的の遺伝学的検査の一部は保険適用となっていますが、多くの検査は自費診療となり、高額な費用がかかる場合があります。がんゲノム医療の分野では保険適用される検査が増えていますが、適用条件が厳しく設定されています。

注意点遺伝子検査の結果だけで疾患発症体質が確定するわけではありません。多くの疾患遺伝要因だけでなく、環境要因生活習慣など様々な要因が複雑に絡み合って発症します。

遺伝子検査の将来展望

遺伝子検査技術は急速に発展しており、検査の精度向上や費用低下が進んでいます。さらに、AI(人工知能)を活用した解析技術の発展により、より複雑な遺伝要因の解明が期待されています。

特にがん医療の分野では、がん細胞遺伝子変異に基づいた「がんゲノム医療」が進展しており、個々の患者に最適な治療法を選択する「精密医療」の実現に向けた取り組みが進んでいます。

また、出生前診断や新生児スクリーニングへの応用など、遺伝子検査の適用範囲はさらに広がっていくことが予想されます。これに伴い、遺伝情報の適切な取り扱いや、遺伝カウンセリングの充実など、社会的・倫理的な対応も重要となっています。

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まとめ

遺伝子検査は、個人遺伝情報解析することで、疾患リスク評価や診断、最適な治療法の選択などに役立てる重要な医療技術です。医療目的の遺伝学的検査からDTC遺伝子検査まで様々な種類があり、それぞれ異なる目的特徴を持っています。

遺伝子検査を受ける際は、検査目的や意義、限界について十分理解した上で、信頼できる医療機関検査会社を選ぶことが重要です。また、検査結果の解釈には専門的な知識が必要な場合が多いため、必要に応じて遺伝専門医や遺伝カウンセラーに相談することをお勧めします。

遺伝子検査技術は今後もさらに発展していくことが予想され、個別化医療の実現に大きく貢献することが期待されています。同時に、遺伝情報の適切な取り扱いや社会的・倫理的な課題への対応も重要となっていくでしょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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