DNA二重ラセンの一方の鎖への損傷には,様々なDNA修復の機構が存在します.
その中で,ミスマッチ修復( Miss Match Repair MMR 不正対合修復)は,
DNA複製の際に生じた誤りのなかから,単一〜5塩基対程度の対合しない部位の修復方法です.
MMRは相同組換えに際して生じるミスマッチのほかにも,
DNA複製の際の塩基の取り込みの過剰や不足により生じるループ部分(Insertion/Deletions Loops : IDLs)
の修復にも関わっています.
MLH1-PMS2よりなるMutLと,MSH2-MSH6よりなるMutSαまたは,
MSH2-MSH3よりなるMutSβが協調してMMRが行われます.
MutSαは単塩基のミスマッチの認識に優れ,MutSβはIDLsの認識に優れるとされています.
修復に際しては新生鎖が認識され,そこに含まれる塩基が誤ったものとして取り除かれます.
MMRに関わる因子の発現や活性がどのように制御されているのかはまだあまり良くわかっていません.
DNA複製と協調して機能するメカニズムは明らかになってきています.
ミスマッチに結合したMutS(MSH2-MSH6/3)はMutL(MLH1-PMS2)をリクルートし,
ATP依存的にミスマッチ部位からずれてゆき,
その後PMS2のエンドヌクレアーゼ(塩基を切断する酵素のことを言います)活性が
MutSα,PCNA,RFC,ATP依存的に活性化され,
ミスマッチの両側に切れ込みが入ります.
その後MutSにより活性化されたEXO1によって切れ込みに挟まれた新生DNA鎖が分解されます.
除かれたDNA部分はPOLDとLIG1により修復されるのです.
これらの異常は,マイクロサテライト(microsatellite)不安定性を惹起します.
縦列型反復配列(short tandem repeat; STR),
単純反復配列(simple sequence repeat; SSR)とも言われるものです.
繰り返し回数が多くなると遺伝子もしくはその産物であるタンパクが不安定になりやすく,
疾患の原因となるものも存在します.
集団遺伝学やDNA鑑定のための遺伝マーカーとして利用されています.
前に,親子鑑定で出てきましたね!
当院では,がんに関係している遺伝子変異を一度の検査で網羅して調べられるように
汎がん遺伝子パネルを用意しています.
今までは,BRCA1/2だけで大体25万円くらいで行っていましたが,
BRCA1/2が関係する遺伝性乳がん卵巣がんだと疑って検査しても,病的変異が見つかる確率は半数くらいです.それでは,残りの方々が,
①遺伝子に塩基配列以外の異常があるのか
②他の遺伝子に異常があるのかがまったく判らなかったのです.
海外では,パネルといって,複数の遺伝子を一度に検査するというのがスタンダードとなっています.
一度に検査するメリットは,現段階で考えられるものを網羅している,ということと
一度に検査することにより遺伝子1個あたりの単価を非常にお安く出来るということが特徴です.
現在,日本では行えませんので,アメリカに提出しています.
アメリカでは1980年代に,CLIAという法律が出来て,臨床検査について標準化しなければならないと定められています.
臨床の検体を出すのに,基準が決められているということが,アメリカにお出しする大きな理由です.
(それ以外にもメニューとして他の国の検査会社も用意しています.)
当院の遺伝子検査パネルであれば,BRCA1/2も含んでいて,また,次世代シークエンサーでは検出できない巨大欠失なども検出すべくMLPA法も必要な遺伝子には同時に行って,1遺伝子あたりの単価は5000円を切っています.
当院でも,BRCA1/2だけを検査すると,一番お安く検査を出しても12万円+消費税,となります.
また,パネルの種類も,がんだけではなく,多数ご用意いたしております.
- 癌:汎がん,遺伝性乳がん卵巣がん,リンチ症候群,膵臓がん,甲状腺がん,褐色細胞腫瘍,
- 循環器:汎心臓病,ブルガダ症候群,拡張型心筋症,肥大型心筋症,突然死症候群,不整脈,QT延長症候群,
- 神経・筋疾患:筋萎縮性側索硬化症,Charcot Marie Tooth病,先天性筋無力症症候群,遺伝性末梢神経障害,遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー,筋ジストロフィー,筋強直症候群・横紋筋融解症,遺伝性神経障害,痙性四肢麻痺,汎神経筋疾患
- 精神・神経疾患:自閉症,癲癇,知的障害,白質脳症,パーキンソン病・アルツハイマー病・認知症,X染色体関連知的障害
- 呼吸器:線毛不全症,肺疾患
- 骨・結合織:結合織病,骨格形成異常,マルファン症候群・胸部大動脈瘤,
- 内分泌・代謝:糖尿病肥満,ライソゾーム病
- 眼:眼疾患,緑内障,加齢黄斑変性,色覚障害,網膜色素変性症,
- 耳:難聴,
- 腎臓病,ステロイド抵抗性ネフローゼ, アルポート症候群,
- 皮膚:先天性白斑症
- 消化器:慢性膵炎
- 血液:血液凝固異常など.
どの遺伝子検査パネルを選んでも,料金は一律となっています.
また,汎とつくものは,関連する複数の遺伝子パネルを全部含んでいます.
たとえば,汎がんパネルは,遺伝性乳がん卵巣がん,リンチ症候群,膵臓がん,
甲状腺がん,褐色細胞腫瘍などをすべて含んでおり,慢性膵炎に関係する遺伝子も含んでおり,
対象遺伝子は100を超えるものとなっています.
汎とつくパネルがあるものは,それをお選びいただくと,漏れがないかと思います.
ここには一部しか記載できておりません.
たくさんありすぎますので.
詳しくは,info@minerva-clinic.or.jp ,電話 03-5272-3768 までお問い合わせくださいませ.
当院では,お仕事が終わってから遺伝カウンセリングを受けられるように,予約制で夜間診療も実施しております.
遠方の方で来院できない,と言う場合でも,対応できるように考えますので,まずはお問い合わせくださいませ.
また,DTC遺伝子検査との違いが判らないというご質問をよく受けますので,記載いたします.
- DTC(Direct to Customer)遺伝子検査とのちがい
DTCは口腔粘膜などを自分で採取して検査会社に送るというスタイルの遺伝子検査です.
ゲノムのなかのSNPを利用して検査結果を出しています. - ある生物種集団のゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ,
その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時,
これを一塩基多型SNP : Single Nucleotide Polymorphism)と呼ぶのです.
300塩基に1個のSNPがあり,ヒトゲノム全体で約1000万ヶ所,
遺伝子領域では100万ヶ所のSNPが あると考えられています.
遺伝子領域にあるSNPは,作られるタンパクの時期や量,機能に違いを生み出すことがあります.
疾病罹患群と健常群の間で,あるSNPの塩基出現頻度を調べた結果,有意差があるということは,
このSNPマーカーの近傍に疾病発症に関わる変異が存在する確度が高いことを示しています.
しかし,仮に罹患率が高いSNPタイプ(=おみくじにたとえると「凶のくじ」に相当)を持っていたとしても,
本人がその変異(=「現実の災い」に相当)を保有しているかどうかはわかりません.
このように,SNPタイピングに基づくDTC遺伝学的検査は,疾病罹患性を予測することができないのです.
- これに比べて,遺伝子検査の場合,該当する遺伝子の塩基配列をすべて決定して,
異常がないかを直接調べますので,直接にその疾患罹患性が判ると言う決定的な違いがあります. - 遺伝子ドックとのちがい
遺伝子ドックは,血液のなかに含まれる「がん細胞に特徴的な遺伝子の発現」を検査することで,がんに今罹患しているのかどうかを知るための検査です.=今がんにかかっているか?
これに対して,遺伝子検査は,体中の細胞が生まれつき持っている
「疾患にかかりやすい遺伝子変異」の有無を直接調べるという違いがあります.=将来がんにかかりやすいか? - NGS(次世代シークエンサー)の場合,一つの遺伝子を検査するのも,複数の遺伝子を一気に検査するのも,
手間としてはそんなに変わりませんので,パネルになると,1遺伝子あたりの費用が大幅に下がります.
当院では,アメリカの会社に検査を提出しています.
アメリカは1980年代から臨床検査は法律で標準化・適正化されていますので,
当院が検査を提出するラボも,こうしたアメリカの厳しい基準を満たすものです.
また,次世代シークエンサーNGSによるシークエンシングは,
大きな欠失や一部が重複しているといった異常は検出できません.
そこで,そういう異常により引き起こされる表現型があるとわかっている遺伝子については,
MLPA法と呼ばれる方法で,検査します.
世界トップレベルのハイクオリティーな検査をお約束します.
- 検査結果は英語で返却されます.責任を持って日本語に翻訳いたします.
- 当院では,内科専門医,がん専門医,遺伝専門医が,この検査に対応しています.
この分野の専門医は大変少なく,日本でもこの3つの専門医を持っているのは,1人のみです. - 遺伝カウンセリングは,ご自宅などに出向いて行うことも可能です.
周囲を気にせず,落ち着いた環境で遺伝カウンセリングを受けることが可能です.
アメリカのNCI国立がん研究所のがんのスクリーニング方法のなかには,身体検査,血液検査,画像検査についで,遺伝子検査が挙げられています.
*アメリカではDTC遺伝子検査は現在禁止されています.