InstagramInstagram

NIPT | 微小重複症候群(微細重複症候群)

NIPT | 微小重複症候群(微細重複症候群)

染色体構造異常微小欠失微小重複

微細重複(微小重複)とは

マイクロデュプリケーションは、微細重複(微小重複)のことで、従来の細胞遺伝学的手法を用いて光学顕微鏡で検出するには小さすぎる染色体の重複のことをいいます。これらの重複を同定するためには専門的な検査が必要となるのですが、マイクロデュプリケーションは通常1~3メガバイト(Mb)の長さで、複数の連続した遺伝子が関与しています。微細重複(微小重複)症候群の原因となるマイクロデュプリケーションの正確な大きさや位置は様々であるが、特定の「重要な領域」が一貫して関与している可能性があります。これらの微小(微細)重複がどのような表現型(病気や症状)につながっているのかという影響のほとんどは、いくつかの重要な用量感受性遺伝子の量の変化によるものであり、場合によっては、重複によってその完全性が損なわれた場合には、たった一つの遺伝子の変化により起こるものなのです。つまり、百~3百万塩基対という大きさが増えたのだとしても、症状に関係するのはその中のたった1万塩基の遺伝子の部分が関与していて、たとえその部分が重複していたとしても、その1万塩基の部分が増えてさえなければ症状が発現しない、ということがあります。1万とか遺伝子の塩基数はわかりやすく説明するための数字の一例です。

微細重複症候群(微小重複症候群)の症状と浸透率

マイクロ重複症候群の表現型(現れる症状のことを表現型と言います)は、対応する微小欠失(微細欠失)症候群の表現型に比べて、しばしば明確でなく、定義が不十分となっています。さらに、微細重複症候群(微小重複症候群)の中には、一見正常な両親から遺伝するものもあり、次世代シークエンサーが発達して新たに医学論文たちに記載されたこれらの臨床症状が「親御さんが明らかに持っているのにご本人は発症しなくてお子さんが発症する不完全な浸透性と確認バイアス(そういう目で見ると発見が増える)に関する重要な問題を臨床遺伝医学の世界に提起しています。

浸透率とは

ちょっとわかりにくい表現かと思いますので補足すると、浸透率というのはその異常があれば症状が出て病気になる確率で、100%であれば必ず病気になりますが、20%なら20%の人が病気になることを数字化したものです。

確認バイアスとは

確認バイアスとは、診断などが正しいかどうかを検証するときに、正しいことを示す事象ばかりにめがいき、誤っていることを示す事象を無視してしまう傾向があることをいいます。「異常ではないか」と思ったら「異常である」ということを補強するデータばかり広い集めて思い込んでしまう、と言うことですね。

遺伝性疾患とは

遺伝性疾患、つまりゲノム障害とは、染色体またはDNAの欠失または余分な獲得に起因する疾患をいいます。最も一般的で、より明確に定義されているゲノム障害は、コピー数の喪失(欠失症候群)に起因するものと、コピー数の増加(重複症候群)に起因するものの2つに大別されます。

コピー数変動(CNV)

コピー数変動(CNV)とは、1つ以上のDNAの部分の繰り返し配列の数の違いのことで、CNVのなかには病原性があるものがあります。あきらかな病原性がなくてもCNVは疾患になりやすい、なりにくい、ということと関連があり、同じCNVがいくつかの多様な疾患と関連している可能性があることがわかってきました。また、CNVのなかには正常な遺伝的変異の一部をなし、疾患との関連性が認められていないものもあります。隣接遺伝子症候群は、CNVが複数の隣接遺伝子に影響を与える場合に発生することがあります。

ゲノム障害は通常、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって検出されます。ほとんどの検査室では、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)などの独立した方法を用いて、アレイ上で検出されたゲイン(獲得)またはロス(喪失)を確認しています。

つまり、次世代シークエンサーは、塩基配列を決定するだけの機械ですので、繰り返し配列の数や比較的大きなサイズの欠失・重複を検出するのが苦手ですので、こうした方法と組み合わせて最終的に診断することになります。

まとめ

上記のような理由で、NIPTで7Mbで全部の染色体をスキャンする検査方法ができたこと自体は技術革新と言えるのですが、微細重複症候群(微小重複症候群)の定義も上に述べた通り1~3Mbの大きさを言う、ということですので7Mb以上しかわからない測定系で検出できるものではないでしょう。
そもそも微小欠失症候群とちがって、微小重複症候群は比較的新しい概念であり、臨床遺伝専門医でも説明するのに戸惑うでしょう

微細重複症候群(微小重複症候群、マイクロデュプリケーション)を検査提供して戸惑わないのだとしたら、何も理解していないので怖くない(子どもが何も怖がらないのとおなじ)のか、最初から説明する気がないのかのどちらかだと思ったほうがいいでしょう。

医師というのは少なくとも自分の行う検査の結果を説明できる能力がないといけない、というのが常識かと思っていましたが、最近ではそれが変化したのでしょうか?

個別具体的な微細重複症候群(微小重複症候群)については、別のページで説明いたします。

現在までに明らかになっている微小重複症候群

1q21.1微小重複症候群
2q31 微小重複症候群
2q23.1微小重複症候群
3q29 微小重複症候群
5q35 微小重複症候群
7q11.23 微小重複症候群
15q11-13 微小重複症候群
11p15微小重複症候群
15q11-13 微小重複症候群
15q24 微小微小重複症候群
16p13.3 微小重複症候群
16p13.11微小重複症候群
16p11.2 微小重複症候群
17p13.3 微小重複症候群
17p11.2 微小重複症候群
17q12微小重複症候群
17q21.31微小重複症候群
22q11.2 微小重複症候群
22q13 微小重複症候群

より専門的なことを知りたい

NIPTに関してもっと専門的なことを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください

NIPTをもっとよく知るために

NIPT関連コラム

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら