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ホメオティック遺伝子とは?HOX遺伝子との違い・ホメオティック突然変異の例とヒトの病気を臨床遺伝専門医が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

⏱ 30秒でわかる要約

Q. ホメオティック遺伝子とは?

A. 頭から尾までの体の各部分(体節)が「何になるか」を決める遺伝子のことです。この遺伝子が変化すると、ショウジョウバエで触角が脚になるように、体の一部がまるごと別の部分の形に置き換わります(ホメオティック突然変異)。動物ではHOX遺伝子が代表です。

Q. ホメオティック遺伝子とHOX遺伝子の違いは?

A. ホメオティック遺伝子は「変化すると部位が置き換わる」という働きで付けた呼び名、HOX遺伝子は染色体上にまとまって並ぶホメオボックス遺伝子の群の名前です。動物ではほぼ重なりますが、植物の花のホメオティック遺伝子はMADSボックス遺伝子で、HOX遺伝子ではありません。

Q. ホメオティック突然変異は人間にも起こる?

A. ヒトにもHOX遺伝子は39個あり、その変化による病気が報告されています。HOXD13の合多指趾症、HOXA13の手足性器症候群のように、手足や泌尿生殖器など特定の部位の形の違いとして現れるのが特徴です。

Q. 分節遺伝子との違いは?

A. 分節遺伝子は体を節に区切る(数と向きを決める)遺伝子、ホメオティック遺伝子は区切られたそれぞれの節に「胸」「腹」といった個性を与える遺伝子です。

ホメオティック遺伝子(homeotic gene)とは、体の前後に並ぶ各部分が「何になるか」を決める遺伝子のことです。ショウジョウバエでは、この遺伝子の変化によって触角が脚に置き換わるといった、体の部位がまるごと入れ替わる変化(ホメオティック突然変異)が起こります。動物のホメオティック遺伝子の多くはHOX遺伝子と呼ばれる遺伝子群で、ヒトにも同じ仲間の遺伝子があり、その変化が手足や生殖器の生まれつきの病気の原因になることがわかっています。「HOX遺伝子との違い」「分節遺伝子との違い」「人間にも起こるのか」は、高校生物でも混同しやすい点です。この記事では、教科書の定義から一歩進めて、ヒトの遺伝の病気とのつながりまでを解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 ホメオティック遺伝子・HOX遺伝子・ホメオボックス
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤定義 → 体節ごとの「何になるか」を決める遺伝子。読み方はホメオティック
  • ➤突然変異の例 → アンテナペディア(触角が脚に)、バイソラックス(平均棍が翅の一部に)
  • ➤HOX遺伝子との違い → 働きでの呼び名と、配列・遺伝子群での呼び名の違い
  • ➤分節遺伝子との違い → 節に区切る遺伝子と、節に個性を与える遺伝子
  • ➤ヒトとのつながり → HOX遺伝子は39個・4つの群。HOXD13・HOXA13などの病気

ホメオティック遺伝子の解説のアイキャッチ画像

1. ホメオティック遺伝子とは

ホメオティック遺伝子とは、動物の体の前後軸に沿って並ぶ各部分(体節や領域)に「あなたは胸になる」「あなたは腹になる」という個性(アイデンティティ)を与える遺伝子です。体のどの位置にどの構造をつくるかを指定する、いわば「位置ごとの設計図の見出し」にあたります。

この遺伝子の存在は、遺伝子の働きが失われたり、本来働かない場所で働いたりしたときに起こる、ふしぎな変化から見つかりました。ショウジョウバエでは、触角があるはずの場所に脚ができたり、本来は小さな平衡器官(平均棍)であるはずの部分が翅の一部に変わったりします[1]。体の一部が、別の場所にあるべき構造に「まるごと」置き換わるのが特徴です。

ホメオティック遺伝子の多くは、DNAに結合してほかの遺伝子のスイッチを入れたり切ったりするタンパク質、つまり転写因子をつくります。1つのホメオティック遺伝子が、その体節で働くべき多数の遺伝子をまとめて調節するため、1つの遺伝子の変化が体の一部全体の作り替えにつながります。

ホメオティック遺伝子の意味と読み方

読み方は「ホメオティックいでんし」、英語では homeotic gene と書きます。教科書によっては「ホメオティック遺伝子群」と複数形で書かれますが、これはホメオティック遺伝子が1つではなく、体の前から後ろまでを分担する複数の遺伝子の組として働くためです。

日本語に置き換えた訳語は定着しておらず、学術書でもカタカナの「ホメオティック」が使われます。英語の homeotic を直訳すると「ホメオシス(homeosis)の」という形容詞になります。

「ホメオティック」の語源とホメオーシス

「ホメオティック」は、ギリシャ語に由来する学術用語 homeosis(ホメオーシス)から生まれた言葉です。体のある構造がまるごと別の構造に変わる現象をホメオーシスと呼び、その変化をホメオティック変換(homeotic transformation)と呼んできました[1]。1995年のノーベル生理学・医学賞の発表資料でも、この種の形態の変化を表すのにギリシャ語の homeosis が使われたと説明されています[2]。

つまり「ホメオティック遺伝子」とは、もともと「その遺伝子が変化するとホメオーシス(部位の置き換わり)が起こる遺伝子」という、働きから付けられた名前です。この「働きでの呼び名」という点が、後で説明するHOX遺伝子やホメオボックスとの違いを理解するかぎになります。

💡 用語解説:体節(たいせつ)

体節とは、体が前後方向にくり返し並ぶ「節」に分かれた単位のことです。昆虫では頭・胸・腹がさらに複数の節に分かれ、それぞれに触角・脚・翅などがつきます。ヒトの体にも、発生の途中では背骨や筋肉のもとになる体節がくり返し並ぶ時期があります。ホメオティック遺伝子は、こうした節や領域の一つひとつに「何になるか」を割り当てる役目を持っています。

2. ショウジョウバエで見つかったホメオティック遺伝子

ショウジョウバエのホメオティック遺伝子は8つあり、アンテナペディア複合体(5つ)とバイソラックス複合体(3つ)という2つのまとまりをつくっています。体の前のほうはアンテナペディア複合体、後ろのほうはバイソラックス複合体の遺伝子が受け持ちます[1]。

アンテナペディア複合体とバイソラックス複合体

アンテナペディア複合体には labial(ラビアル)、proboscipedia(プロボシペディア)、Deformed(デフォームド)、Sex combs reduced(セックスコームリデュースド)、Antennapedia(アンテナペディア)の5つ、バイソラックス複合体には Ultrabithorax(ウルトラバイソラックス)、abdominal-A(アブドミナルA)、Abdominal-B(アブドミナルB)の3つが含まれます[1]。名前の多くは、その遺伝子が変化したときに見られた姿から付けられています。たとえば Antennapedia は「触角(antenna)」と「脚(ped-)」を組み合わせた名前で、触角が脚になる変化を表しています。

🪰 ショウジョウバエのホメオティック遺伝子(8つ)

まとまり(複合体) 含まれる遺伝子(略号) 主に受け持つ領域
アンテナペディア複合体 labial(lab)、proboscipedia(pb)、Deformed(Dfd)、Sex combs reduced(Scr)、Antennapedia(Antp) 頭部から胸部の前側
バイソラックス複合体 Ultrabithorax(Ubx)、abdominal-A(abd-A)、Abdominal-B(Abd-B) 胸部の後ろ側から腹部

※遺伝子名はLappinら[1]による。2つの複合体をあわせてHOM-C(ホメオティック複合体)と呼ぶことがあります。

発見の歴史:ルイスの研究からノーベル賞まで

ホメオティック遺伝子の研究を大きく進めたのは、米国の遺伝学者エドワード・B・ルイス(Edward B. Lewis)です。ルイスは1978年の論文で、バイソラックス遺伝子複合体には胸部と腹部の発生を制御するとみられる遺伝子が少なくとも8つあると考え、それらの抑制を担うPolycomb(ポリコーム)という別の遺伝子座の存在も示しました[3]。この「少なくとも8つ」は当時の遺伝学的な解析による数え方で、その後の分子レベルの解析では、バイソラックス複合体のホメオボックス遺伝子は3つと整理されています[1]。

1984年には、マクギニス(McGinnis)、ゲーリング(Gehring)らが、アンテナペディア複合体とバイソラックス複合体の遺伝子に共通して含まれるDNA配列を報告しました[4]。この共通配列はのちに「ホメオボックス」と呼ばれるようになり、ホメオティック遺伝子を分子のレベルで探し出す手がかりになりました。

1995年、ルイスは、体を節に区切る遺伝子を大規模に探し出したクリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルト、エリック・ウィーシャウスとともに、「初期胚発生の遺伝的制御に関する発見」でノーベル生理学・医学賞を受けました[2]。発表資料は、哺乳類のHOX遺伝子もショウジョウバエと同じ順序で並び、ルイスが最初に見いだしたコリニアリティ(後述)の原理に一致すると述べ、これらの発見がヒトの先天異常の理解につながると位置づけています[2]。

3. ホメオティック突然変異とは?代表的な例

ホメオティック突然変異とは、ホメオティック遺伝子の変化によって、体のある部分が別の部分の構造に置き換わる突然変異のことです。このような変化を起こした個体を、ホメオティック突然変異体(変異体)と呼びます。

置き換わり方には大きく2つの型があります。1つは、遺伝子が本来働くべき場所で働かなくなり、その体節が「1つ前の体節」のような姿になる型です。もう1つは、遺伝子が本来働かない場所で働いてしまい、その場所が「後ろの体節」の姿に引っぱられる型です。前者は機能喪失型変異、後者は機能獲得型変異の考え方で整理できます。

アンテナペディア:触角が脚になる

もっとも有名な例が、アンテナペディア(Antennapedia)の突然変異で、ショウジョウバエの触角が脚に変わります[1]。Antennapedia 遺伝子は、胸部の第2節(中胸)の個性を指定する遺伝子と考えられています。この遺伝子が頭部の触角になるはずの場所で働いてしまうと、触角の代わりに脚ができます。

1987年には、ゲーリングらが、熱を加えるとスイッチが入る仕組みを使って、正常な Antennapedia タンパク質を幼虫の時期に人為的につくらせる実験を行いました。その結果、触角が胸部第2節の脚に変わり、頭部の背側の一部も胸部第2節の構造に変わりました[5]。遺伝子を「本来と違う場所で働かせるだけ」で体の一部を作り替えられることを示した実験で、Antennapedia が胸部第2節の個性を指定しているという考えを支持するものでした。

バイソラックス:平均棍が翅の一部になる

ショウジョウバエには翅が1対しかなく、胸部の第3節には翅の代わりに平均棍(へいきんこん)という小さな平衡器官があります。バイソラックス(bithorax)の突然変異では、この平均棍が翅の一部に変わります[1]。胸部第3節が、翅を持つ胸部第2節に近い姿になる変化で、アンテナペディアと並んでホメオティック突然変異を説明する代表的な例になっています。

🔄 ホメオティック突然変異の代表例

突然変異 起こる変化 しくみ
アンテナペディア 触角が脚に変わる 胸部第2節で働く遺伝子が、頭部でも働く
バイソラックス 平均棍が翅の一部に変わる 胸部第3節の個性を決める遺伝子が働かず、第2節のようになる
マウスのHox10群の欠損 腰椎ができず、肋骨を持つ椎骨に置き換わる 腰の個性を決める遺伝子群がそろって働かない

※ショウジョウバエの例はLappinら[1]、マウスの例はWellik・Capecchi[6]による。

ホメオティック突然変異は人間にも起こる?

ヒトを含む哺乳類にもホメオティック遺伝子(HOX遺伝子)はあり、その変化は体の形に影響します。ただし、哺乳類では同じ働きを持つ遺伝子が複数あって互いに補い合うため、1つの遺伝子の変化だけでは、ハエのような目立つ置き換わりは起こりにくいことがわかっています。

そのことをよく示しているのが、マウスの実験です。Wellik と Capecchi は2003年、Hox10群またはHox11群の遺伝子をすべて働かなくしたマウスを調べました。Hox10群をすべて欠くと腰椎ができず、後ろの椎骨すべてから肋骨が伸びました。Hox11群をすべて欠くと、仙椎が腰椎の性質を持つようになりました[6]。一方、同じ群の6つのアレル(遺伝子のコピー)のうち5つを欠いたマウスでは、こうした全体的な役割は仲間の遺伝子に補われて目立たなかったと報告されています[6]。

ヒトでこれまでに報告されているHOX遺伝子の病気は、手足の指、泌尿生殖器、脳幹など、特定の部位の形の違いとして現れるものが中心です[1]。具体的な病気は第7章で紹介します。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「触角が脚に」は、遺伝子の“住所”の話】

アンテナペディアの写真は強い印象を残しますが、大事なのは「脚をつくる能力そのもの」が壊れたわけではない、という点です。脚をつくる仕組みは正常で、それを「どの住所で使うか」という指定だけが変わっています。ホメオティック遺伝子は、構造そのものではなく、構造をどこに置くかを決める遺伝子だと考えると理解しやすくなります。

この見方は、ヒトの先天異常を考えるときにも役立ちます。手足の指の形の違いのように一部の部位だけに変化が出るとき、「部品をつくる遺伝子」なのか「部品の配置を決める遺伝子」なのかを分けて考えることが、原因を見きわめる第一歩だと考えています。

4. ホメオティック遺伝子とHOX遺伝子・ホメオボックスの違い

ホメオティック遺伝子は「働き」で付けた呼び名、ホメオボックスは「DNA配列」の名前、HOX遺伝子は「ホメオボックスを持ち、染色体上にまとまって並ぶ遺伝子群」の名前です。3つは見ている角度が違うため、指す範囲が完全には一致しません。

🔍 似た言葉の違い

用語 何に注目した名前か 意味
ホメオティック遺伝子 働き(変化したときの現象) 変化すると体の部位が別の部位に置き換わる遺伝子
ホメオボックス DNA配列 ホメオティック遺伝子に共通して見つかった配列。DNAに結合する部分(ホメオドメイン)をコードする
HOX遺伝子 遺伝子の群(クラスター) ホメオボックスを持ち、染色体上にまとまって並ぶ遺伝子群。動物のホメオティック遺伝子の中心
MADSボックス遺伝子 DNA配列(植物で重要) 花のホメオティック遺伝子の多く。ホメオボックスとは別の配列の転写因子

※ホメオドメインの説明はLappinら[1]、植物の説明はSchneitz[7]による。

ホメオボックスとホメオドメイン

ホメオボックスがコードするタンパク質の部分をホメオドメインと呼び、60個のアミノ酸からなる、生物の間でよく保存された構造です[1]。ホメオドメインは3本のらせん(ヘリックス)からなり、細菌の遺伝子調節タンパク質に見られる「ヘリックス・ターン・ヘリックス」というDNA結合の形に似ています。3本目のらせんがDNAの大きな溝(主溝)に入り込み、1本目と2本目はDNAの上に位置します[1]。

ホメオドメインを持つタンパク質は、DNAの特定の場所に結合して、エンハンサーなどの調節領域を通じてほかの遺伝子の働きを調節します。ホメオボックスを持つ遺伝子はHOX遺伝子以外にも数多くあり、たとえば身長に関わるSHOX遺伝子(short stature homeobox)や、心臓の発生に関わるNKX2-5遺伝子(NK2 homeobox 5)も、名前のとおりホメオボックスを持つ遺伝子です。つまり「ホメオボックスを持つ遺伝子=ホメオティック遺伝子」ではありません。

HOX遺伝子との違い:動物ではほぼ重なる

動物では、ホメオティック遺伝子の中心がHOX遺伝子なので、教科書では両者がほぼ同じ意味で使われることがあります。HOX遺伝子は「ホックス遺伝子」とも書かれます。違いを一言でいえば、「ホメオティック遺伝子」は働きを、「HOX遺伝子」は配列と並び方を基準にした名前だということです。

HOX遺伝子の群の並び方や、脊椎動物での詳しい構成については、HOX遺伝子の解説で扱っています。このページでは、ホメオティック遺伝子という「考え方」と、その発見の歴史、ヒトの病気とのつながりを中心に説明します。

植物のホメオティック遺伝子はHOX遺伝子ではない

植物にもホメオティック遺伝子がありますが、その多くはHOX遺伝子ではなく、MADSボックスという別の配列を持つ転写因子です[7]。花の器官(がく・花びら・おしべ・めしべ)がどれになるかは、A・B・Cの3種類の遺伝子の働きの組み合わせで決まるという「ABCモデル」が、1991年にCoen と Meyerowitz の総説で示されました[7]。

ABCモデルでは、いちばん外側はAだけでがく、次はAとBで花びら、その内側はBとCでおしべ、中心はCだけでめしべになります。C機能を担う agamous(アガマス)の変異体では、おしべが花びらに置き換わり、めしべの位置にはがくなどができます[7]。花の一部がまるごと別の器官に置き換わるので、これもホメオティック突然変異です。「ホメオティック=HOX」ではないことを示す、わかりやすい例です。

5. 分節遺伝子とホメオティック遺伝子の違い

分節遺伝子は体を節に区切る遺伝子、ホメオティック遺伝子は区切られた節のそれぞれに個性を与える遺伝子です。ショウジョウバエの胚では、まず体が節に区切られ、そのうえで各節が何になるかが決まるという順番で体がつくられていきます。

ニュスライン=フォルハルトとウィーシャウスは1980年、体節の数と向き(極性)に影響する突然変異を大規模に探し出しました[8]。ノーベル賞の発表資料によると、2人は変化すると体節に異常が出る15の遺伝子を見つけ、その働きから3つのグループに分けました。体の前後軸に沿った大まかな区画を決めるギャップ遺伝子、1つおきの体節に影響するペアルール遺伝子、それぞれの体節の前後の向きを決めるセグメントポラリティ遺伝子です[2]。これらをまとめて分節遺伝子と呼びます。

ギャップ遺伝子大まかな区画に分ける
▶
ペアルール遺伝子1つおきの節を決める
▶
セグメントポラリティ遺伝子各節の前後の向き
▶
ホメオティック遺伝子各節の個性を決める

分節遺伝子に変異があると、体節の数が減ったり、向きが乱れたりします。一方、典型的なホメオティック突然変異では、体節の数そのものよりも各節の個性が変わり、ある節が別の節の姿になります。「数や区切りが変わる」のが分節遺伝子の変異、「中身が入れ替わる」のがホメオティック突然変異と考えると区別しやすくなります。

体を区切る仕組みや、物質の濃度の差で位置を伝える仕組みについては、モルフォゲンや、脊椎動物の体節をリズムよくつくる体節時計の解説も参考になります。

6. ヒトのHOX遺伝子:39個・4つの群とコリニアリティ

ヒトのHOX遺伝子は39個あり、HOXA・HOXB・HOXC・HOXDの4つの群(クラスター)として、それぞれ別の染色体に並んでいます[1]。各群には13の「パラログ群」(同じ祖先から分かれた、互いに似た遺伝子の組)があり、1つの群に含まれるのは9〜11個です[1]。

🧬 ヒトのHOX遺伝子の4つの群

群 染色体上の位置 関係する主な病気(本記事で紹介)
HOXA 7p15 手足性器症候群(HOXA13)、HOXA1・HOXA11の病気
HOXB 17q21.2 前立腺がんのかかりやすさ(HOXB13)
HOXC 12q13 —
HOXD 2q31 合多指趾症(HOXD13)

※群と染色体の位置はLappinら[1]による。HOXCの欄の「—」は、本記事で取り上げる病気がないという意味です。

なぜ4つの群があるのか

ショウジョウバエのホメオティック遺伝子は1つながりの群(2つの複合体)ですが、ヒトを含む哺乳類や鳥類では4つの群があります。これは、脊椎動物の進化の早い時期に2回の重複が起こった結果だと考えられています[1]。ゼブラフィッシュなど一部の魚では、さらにもう一度の重複によって7つの群があります[1]。

群が4つに増えたことで、同じパラログ群の遺伝子どうしが働きを分け合ったり、補い合ったりするようになりました。第3章で紹介したマウスの実験で、1つの遺伝子を欠いただけでは目立つ変化が出にくかったのは、この「補い合い」のためです。ヒトの病気を考えるうえでも、この性質は重要です。

コリニアリティ(並び順と働く場所の一致)

HOX遺伝子には、染色体上の並び順と、体の中で働く場所の順番が一致するという、ほかの遺伝子にはあまり見られない性質があります。これをコリニアリティ(共線性)と呼びます。群の一方の端(3′側)にある遺伝子ほど体の前のほうで、反対側(5′側)にある遺伝子ほど後ろのほうで働きます[1]。

さらに、3′側の遺伝子ほど発生の早い時期に働き始めることも知られており、これを時間的コリニアリティと呼びます[1]。ノーベル賞の発表資料が述べているように、この原理はルイスがショウジョウバエで最初に見いだし、哺乳類のHOX遺伝子でも同じ並び方が保たれていました[2]。

HOX遺伝子は動物の体の形に大きな影響を与え、近年は、HOXタンパク質が直接調節する標的遺伝子が次々に明らかになっています。HOX遺伝子の群の中にマイクロRNAの遺伝子が含まれることも見つかり、発生の調節がさらに重層的であることがわかってきました[9]。また、HOX遺伝子は胎児期だけでなく、大人になってからもほぼすべての組織や臓器で働き続けていることが報告されています[1]。

💡 用語解説:パラログ

パラログとは、1つの生物の中で、遺伝子の重複によって生じた互いに似た遺伝子どうしのことです。ヒトのHOXA13・HOXB13・HOXC13・HOXD13のように、4つの群で同じ番号を持つ遺伝子は同じパラログ群に属し、よく似た配列と働きを持っています。似た遺伝子が複数あるため、1つが働かなくなっても、ほかが一部を補うことがあります。

7. 遺伝・医療とのつながり:HOX遺伝子の変化で起こる病気

ヒトのHOX遺伝子の病的な変化は、手足の指・泌尿生殖器・脳幹など、その遺伝子が受け持つ部位の形の違いとして現れます。この章では、ホメオティック遺伝子の考え方が、実際の遺伝性疾患の理解にどうつながるかを紹介します。ここで扱う病気はどれもまれなもので、詳しい症状や遺伝のしかたは、それぞれの疾患ページで解説しています。

HOXD13と合多指趾症(ポリアラニンの伸長)

合多指趾症(ごうたしししょう、synpolydactyly)は、手足の指がくっつく「合指」と、指の数が多い「多指」が組み合わさって現れる生まれつきの病気で、HOXD13遺伝子の変化で起こります。1996年のMuragakiらの報告では、HOXD13タンパク質のアミノ末端側にあるアラニンが連続した部分(ポリアラニン)が長く伸びることが原因でした[10]。

この報告では、変化を両方のアレルに持つ人(ホモ接合)では、手のひらや足の甲の骨(中手骨・中足骨)が、手首や足首の骨のような短い骨に置き換わっていました[10]。これは、ヒトにおけるホメオティックな変化の一例と見ることができます。また、伸びたポリアラニンはDNAに結合するホメオドメインの外にあるため、この部分がタンパク質が正しく働くために欠かせないことも示されました[10]。ポリアラニンの伸長というしくみについてはポリアラニントラクトの解説を、病気については合多指趾症とHOXD13遺伝子のページをご覧ください。

HOXA13と手足性器症候群

手足性器症候群(てあしせいきしょうこうぐん、hand-foot-genital syndrome)は、親指と足の親指の短さと、泌尿生殖器の形の違いを特徴とする病気で、HOXA13遺伝子の変化で起こります。1997年のMortlock と Innis の報告によると、親指の中手骨や末節骨が短く小さい、足の親指が短い、手首の骨の癒合や発育の遅れといった手足の特徴に加え、女性では子宮が部分的または完全に2つに分かれる、尿道や尿管の開口部の位置が異なる、男性ではさまざまな程度の尿道下裂が見られます[11]。

この報告では、常染色体顕性(優性)遺伝で、変化を持つ人は全員が症状を示す(完全浸透)家系で、ホメオドメインの中のアミノ酸を終止コドンに変える変化(ナンセンス変異)が見つかりました[11]。その後、HOXA13でもポリアラニンの伸長による例が報告されています[1]。「手足」と「泌尿生殖器」という離れた部位の特徴が1つの遺伝子の変化で同時に現れることは、1つのHOX遺伝子が体の複数の場所の形づくりに関わることを示しています。詳しくは手足性器症候群とHOXA13遺伝子のページで解説しています。子宮の形の違いについては子宮奇形の解説もあります。

HOXA1・HOXA11など、ほかのHOX遺伝子の病気

HOX遺伝子の病気は手足だけではありません。2005年のTischfieldらの報告では、遺伝的に隔絶された3つの集団で、HOXA1遺伝子の両方のアレルに、タンパク質を途中で途切れさせる変化(ホモ接合の短縮型変異)が見つかりました[12]。その人たちには、目を横に動かしにくい、難聴、顔の筋肉の弱さ、呼吸が浅くなる、内頸動脈や心臓の出口付近の血管の異常、知的障害、自閉スペクトラム症などがさまざまな組み合わせで見られました[12]。著者らは、HOX遺伝子のホモ接合の短縮型変異を持って生まれたヒトの初めての報告であり、中枢神経の発生に欠かせないHOX遺伝子による初めてのメンデル遺伝病だとしています[12]。

また、2000年には、生まれつき血小板をつくる細胞が少ない病気(無巨核球性血小板減少症)と、前腕の2本の骨がくっつく橈尺骨癒合症(とうしゃっこつゆごうしょう)が、HOXA11遺伝子の変化と関連して起こることが報告されました[13]。HOX遺伝子が、骨の形だけでなく血液をつくる仕組みにも関わることを示す例です。

HOXB13と前立腺がんのかかりやすさ

HOX遺伝子の変化は、生まれつきの形の違いだけでなく、大人になってからのがんのかかりやすさにも関わることがあります。2012年のEwingらの研究では、HOXB13遺伝子のG84Eという変化が、若くして発症し家族にも前立腺がんがいる男性の3.1%に見られ、高齢で発症し家族歴のない男性(0.6%)より多いことが示されました[14]。前立腺がんの男性全体では5,083人中72人(1.4%)、がんのない男性では1,401人中1人(0.1%)で、保有する割合はおよそ20倍でした[14]。

ただし著者ら自身が、この変化で説明できるのは前立腺がん全体のごく一部だと結論しています[14]。この数字はこの研究の対象集団で得られたもので、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。遺伝によるかかりやすさについては、前立腺がん感受性のページで解説しています。

🏥 本記事で紹介したHOX遺伝子とヒトの病気

遺伝子 病気・状態 報告された主な特徴・変化の種類
HOXD13 合多指趾症 合指と多指。ポリアラニンの伸長[10]
HOXA13 手足性器症候群 親指・足の親指が短い、泌尿生殖器の形の違い。常染色体顕性[11]
HOXA1 脳幹・内耳・心血管などの発生の異常 ホモ接合の短縮型変異[12]
HOXA11 無巨核球性血小板減少症と橈尺骨癒合症 HOXA11の変化と関連[13]
HOXB13 前立腺がんのかかりやすさ G84E。前立腺がん全体のごく一部[14]

※いずれもまれな病気・変化です。症状の現れ方や遺伝のしかたは、病気や家系によって異なります。

臨床遺伝専門医から見たHOX遺伝子の病気

HOX遺伝子の病気を見ていくと、「どの遺伝子の」「どんな種類の変化か」を分けて考える必要があることがわかります。HOXD13ではDNAに結合する部分の外にあるポリアラニンが伸びる変化[10]、HOXA13ではDNAに結合するホメオドメインを途中で途切れさせる変化[11]が報告されており、タンパク質に起こっていることが異なります。遺伝子の量が半分になることで病気が起こるハプロ不全のような考え方も含め、変化の種類ごとに意味を考えることが、結果を読み解く出発点になります。

遺伝の面では、手足性器症候群のように常染色体顕性(優性)遺伝で伝わる病気では、変化を持つ親から子に伝わる確率は1回の妊娠ごとに2分の1です。一方、HOXA1の病気のように両方のアレルに変化があって初めて発症する病気では、一般に、両親はそれぞれ片方のアレルに変化を持つ保因者と考えられ、考え方がまったく異なります。生まれつきの手足や生殖器の形の違いがあり、ご家族にも同じ特徴がある場合には、どのHOX遺伝子の、どの種類の変化なのかを遺伝学的検査で確かめ、その結果を遺伝形式とあわせて読み解くことが大切です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【発生の遺伝子は、大人になっても働いている】

ホメオティック遺伝子は「胎児の体づくりの遺伝子」として習うことが多いのですが、HOX遺伝子は大人になってからもほぼすべての組織で働き続けており、HOXB13のように大人のがんのかかりやすさに関わる例もあります。発生の遺伝子と、大人の病気の遺伝子は、別々の世界の話ではありません。

総合内科専門医・がん薬物療法専門医の資格も持つ臨床遺伝専門医として、私は、生まれつきの形の違いも、大人になってからの病気のかかりやすさも、同じ「遺伝子の働きの変化」という一本の線の上で考えるべきだと考えています。教科書のハエの話が、ヒトの家族の健康につながっている。それが、この遺伝子を学ぶいちばんの面白さだと思います。

よくある質問(FAQ)

Q1. ホメオティック遺伝子とは簡単にいうと何ですか?

体の前後に並ぶ各部分が「何になるか」を決める遺伝子です。この遺伝子が変化すると、ショウジョウバエで触角が脚になるように、体の一部が別の部分の形にまるごと置き換わります。

Q2. ホメオティック遺伝子とHOX(ホックス)遺伝子の違いは何ですか?

ホメオティック遺伝子は「変化すると部位が置き換わる」という働きで付けた呼び名で、HOX遺伝子はホメオボックスという配列を持ち、染色体上にまとまって並ぶ遺伝子群の名前です。動物ではほぼ重なりますが、植物の花のホメオティック遺伝子の多くはMADSボックス遺伝子で、HOX遺伝子ではありません。

Q3. ホメオティック遺伝子を発見したのは誰ですか?

ショウジョウバエのバイソラックス遺伝子複合体を詳しく調べたエドワード・B・ルイスの研究が中心で、1984年にはマクギニス、ゲーリングらがホメオティック遺伝子に共通する配列(のちのホメオボックス)を報告しました。ルイスは1995年に、ニュスライン=フォルハルト、ウィーシャウスとともにノーベル生理学・医学賞を受けています。

Q4. ヒトのHOX遺伝子はいくつありますか?

39個です。HOXA(7番染色体)、HOXB(17番染色体)、HOXC(12番染色体)、HOXD(2番染色体)の4つの群に分かれて並んでいます。

Q5. ホメオティック突然変異は人間にも起こりますか?

ヒトでもHOX遺伝子の変化による病気が報告されています。HOXD13の合多指趾症、HOXA13の手足性器症候群のように、手足の指や泌尿生殖器など特定の部位の形の違いとして現れるのが特徴です。HOXD13の変化を両方のアレルに持つ人では、中手骨や中足骨が手首・足首の骨のような短い骨に置き換わっていたことが報告されています。

Q6. 植物にもホメオティック遺伝子はありますか?

あります。花のがく・花びら・おしべ・めしべのどれになるかを決める遺伝子がそれにあたり、ABCモデルで説明されます。その多くはMADSボックス遺伝子で、動物のHOX遺伝子とは別の仲間です。

まとめ

ホメオティック遺伝子は、体の前後に並ぶ各部分に「何になるか」という個性を与える遺伝子です。ショウジョウバエでは、アンテナペディア複合体とバイソラックス複合体の8つの遺伝子がその役目を担い、変化すると触角が脚に、平均棍が翅の一部に置き換わります[1]。体を節に区切る分節遺伝子とは役割が異なり、ホメオティック遺伝子は区切られた節の中身を決めます[2]。

「ホメオティック遺伝子」は働きでの呼び名、「HOX遺伝子」はホメオボックスを持つ遺伝子群の名前で、動物ではほぼ重なりますが、植物の花のホメオティック遺伝子はMADSボックス遺伝子です[7]。ヒトにもHOX遺伝子は39個あり[1]、HOXD13の合多指趾症、HOXA13の手足性器症候群など、手足や泌尿生殖器の形の違いの原因になるほか、HOXB13のように大人のがんのかかりやすさに関わる例もあります[14]。教科書で学ぶショウジョウバエの話は、ヒトの遺伝の病気を理解する土台になっています。

📘 この記事について

この記事は、ホメオティック遺伝子という用語の意味と、ヒトの遺伝の病気とのつながりを解説する用語ページで、個別の診断を行うものではありません。HOXD13・HOXA13などに関わる病気の症状・遺伝のしかた・検査については、各疾患・遺伝子のページで解説しています。生まれつきの手足や生殖器の形の違いがご家族に共通してみられ、遺伝学的な評価が必要と判断された場合には、検査の意味や結果の受け止め方を専門医と整理する場として遺伝カウンセリングがあります。

参考文献

  • [1] Lappin TRJ, Grier DG, Thompson A, Halliday HL. HOX genes: seductive science, mysterious mechanisms. Ulster Med J. 2006;75(1):23-31. [PMC1891803]
  • [2] The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1995. NobelPrize.org. 1995. [NobelPrize.org]
  • [3] Lewis EB. A gene complex controlling segmentation in Drosophila. Nature. 1978;276(5688):565-570. [PubMed 103000]
  • [4] McGinnis W, Levine MS, Hafen E, Kuroiwa A, Gehring WJ. A conserved DNA sequence in homoeotic genes of the Drosophila Antennapedia and bithorax complexes. Nature. 1984;308(5958):428-433. [DOI 10.1038/308428a0]
  • [5] Schneuwly S, Klemenz R, Gehring WJ. Redesigning the body plan of Drosophila by ectopic expression of the homoeotic gene Antennapedia. Nature. 1987;325(6107):816-818. [DOI 10.1038/325816a0]
  • [6] Wellik DM, Capecchi MR. Hox10 and Hox11 genes are required to globally pattern the mammalian skeleton. Science. 2003;301(5631):363-367. [DOI 10.1126/science.1085672]
  • [7] Schneitz K. The 1991 review by Coen and Meyerowitz on the war of the whorls and the ABC model of floral organ identity. Quant Plant Biol. 2023;4:e13. [PMC10600569]
  • [8] Nüsslein-Volhard C, Wieschaus E. Mutations affecting segment number and polarity in Drosophila. Nature. 1980;287(5785):795-801. [DOI 10.1038/287795a0]
  • [9] Pearson JC, Lemons D, McGinnis W. Modulating Hox gene functions during animal body patterning. Nat Rev Genet. 2005;6(12):893-904. [PubMed 16341070]
  • [10] Muragaki Y, Mundlos S, Upton J, Olsen BR. Altered growth and branching patterns in synpolydactyly caused by mutations in HOXD13. Science. 1996;272(5261):548-551. [DOI 10.1126/science.272.5261.548]
  • [11] Mortlock DP, Innis JW. Mutation of HOXA13 in hand-foot-genital syndrome. Nat Genet. 1997;15(2):179-180. [DOI 10.1038/ng0297-179]
  • [12] Tischfield MA, Bosley TM, Salih MAM, et al. Homozygous HOXA1 mutations disrupt human brainstem, inner ear, cardiovascular and cognitive development. Nat Genet. 2005;37(10):1035-1037. [DOI 10.1038/ng1636]
  • [13] Thompson AA, Nguyen LT. Amegakaryocytic thrombocytopenia and radio-ulnar synostosis are associated with HOXA11 mutation. Nat Genet. 2000;26(4):397-398. [DOI 10.1038/82511]
  • [14] Ewing CM, Ray AM, Lange EM, et al. Germline mutations in HOXB13 and prostate-cancer risk. N Engl J Med. 2012;366(2):141-149. [PMC3779870]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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