目次
- 1 1. A-DNA・B-DNA・Z-DNAとは?──DNAは1つのかたちに固定されていない
- 2 2. A-DNA・B-DNA・Z-DNAの違いを比較する
- 3 3. なぜDNAはかたちを変えられるのか──糖と塩基のミクロな仕掛け
- 4 4. DNAの「ねじれ」──超らせんとZ-DNAへの切り替え
- 5 5. A-DNAの意外な役割──細菌の胞子を紫外線からまもる盾
- 6 6. Z-DNA・Z-RNAと転写──「フリッポン」という新しい見方
- 7 7. Z-DNA・Z-RNAと免疫・病気──ADAR1とがん治療研究
- 8 8. 遺伝医療とのつながり──非B型構造と反復配列の病気
- 9 9. よくある誤解
- 10 よくある質問(FAQ)
- 11 参考文献
- 12 関連記事
📍 クイックナビゲーション
教科書に載っているDNAの姿は、右巻きの二重らせん(B-DNA)です。しかし実際の細胞の中では、DNAは周囲の水分・塩濃度・ねじれの力に応じて、右巻きのA-DNA、標準型のB-DNA、そして左巻きのZ-DNAという複数の立体構造の間を行き来しています。この「かたちの多様さ(構造多型)」は、遺伝子のスイッチのオン・オフ、DNA修復、ウイルスやがんに対する免疫にまで関わる、生命の基本設計です。本記事では、A-DNA・B-DNA・Z-DNAの違いと、それが遺伝医療にどうつながるのかを、遺伝専門医の視点でやさしく解説します。
Q. A-DNA・B-DNA・Z-DNAとは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. DNAの「同じ塩基配列でも取り得る、異なる立体構造(かたち)」の代表的な3種類です。B-DNAが最も一般的な右巻き二重らせん、A-DNAは水分が少ない環境でできる幅広で右巻きの形、Z-DNAはプリン・ピリミジンが交互に並ぶ配列で生じる左巻きのジグザグ構造です。これらは転写・DNA修復・免疫に関わり、Z-DNAを見分けるしくみの異常はアイカルディ・グティエール症候群などの病気にもつながります。
- ➤3つの正体 → A-DNA(幅広・右巻き)、B-DNA(標準・右巻き)、Z-DNA(細長い・左巻き)
- ➤かたちが変わる理由 → 糖の形(糖パッカー)・塩基の向き・ねじれの力(超らせん)で決まる
- ➤A-DNAの役割 → 細菌の胞子でDNAを紫外線からまもる「盾」になる
- ➤Z-DNA/Z-RNAの役割 → 転写の調節や、ウイルス・がんに対する免疫の「危険信号」
- ➤遺伝医療との接点 → 非B型構造は反復配列の病気に関わり、Z-RNA認識の異常は難病の原因にもなる
1. A-DNA・B-DNA・Z-DNAとは?──DNAは1つのかたちに固定されていない
1953年にワトソンとクリックが提唱したDNAの二重らせんは、生命科学の象徴的な発見です。しかし、そこで描かれた右巻きらせん(B-DNA)は、DNAが取り得る数あるかたちの「一つ」にすぎません。DNAは硬い針金ではなく、周囲の環境しだいでしなやかに立体構造を変える動的な分子です。この性質を構造多型(こうぞうたけい)と呼びます。DNAそのものの基本のつくり(塩基対や二重らせんのしくみ)については、DNA(デオキシリボ核酸)の基本構造と機能もあわせてご覧ください。
歴史をたどると、A型とB型は、1953年にロザリンド・フランクリンがX線写真を用いて、水分の多い条件と少ない条件で異なる結晶が生じることから区別しました。そして1979年、アレクサンダー・リッチとアンドリュー・ワンらが、プリンとピリミジンが交互に並ぶ短いDNA(d(CGCGCG))の結晶構造を解いたところ、それが予想外の左巻きらせんであることが判明しました[2]。骨格がジグザグに折れることから「Z-DNA」と名づけられ、DNAが複数のかたちを取り得ることが決定的になりました[1]。
💡 用語解説:構造多型(DNAコンフォメーション)
同じ塩基の並び(配列)でも、DNAが取り得る立体的なかたち(コンフォメーション)が複数あることを指します。折り紙で例えるなら、同じ一枚の紙でも折り方によって鶴にも箱にもなるのと似ています。DNAでは、水分の量・塩の濃度・ねじれの強さ・塩基の並び方によって、A-DNA・B-DNA・Z-DNAなどのかたちが切り替わります。かたちが違えば、そこに結合できるタンパク質も変わるため、遺伝子の働き方にも影響します。
なぜ生き物はDNAを何通りものかたちに変えられる必要があるのでしょうか。理由の一つは、膨大な長さのDNAを小さな細胞核に収めるためです。ヒトの1細胞に含まれるDNAは伸ばせば約2メートルにもなり、これを直径わずか数マイクロメートルの核に収めるには、1000倍を超える圧縮が必要です。DNAはヒストンというタンパク質に巻き付き、ヌクレオソームという基本単位をつくって折り畳まれます(詳しくはヒトゲノムの折り畳みとクロマチン)。もう一つの理由は、かたちの違いを情報の合図(シグナル)として使うためです。この点は記事の後半でくわしく見ていきます。
2. A-DNA・B-DNA・Z-DNAの違いを比較する
3つの構造は、らせんの巻く向き・太さ・1回転あたりの塩基対の数・糖のかたちなどで、はっきり区別できます。まずは全体像を比較表で整理します。数値はおおよその代表値で、結晶や溶液の条件によって幅があります。
私たちの体の細胞の中で圧倒的に多いのはB-DNAです。A-DNAは水分が少ない特殊な状況(後述する細菌の胞子や、DNAとRNAが対になった二本鎖など)で現れ、Z-DNAはグアニンとシトシンが交互に続く配列が、強くねじられたときなどに局所的に生じます。3つのなかで唯一の左巻きであるZ-DNAは、その珍しい形そのものが後述する特別な役割を担います。
3. なぜDNAはかたちを変えられるのか──糖と塩基のミクロな仕掛け
かたちの違いを生み出す最初の鍵は、DNAの骨格をつくる糖(デオキシリボース)の微妙な折れ曲がり方です。この糖は五角形の環をしており、環のどの炭素が上に飛び出すかで「糖パッカー」と呼ばれる形が決まります。糖パッカーが変わると、隣り合うリン酸どうしの距離が変わり、らせん全体が縮んだり伸びたりします。
💡 用語解説:糖パッカーとグリコシド結合(anti/syn)
糖パッカーは、DNA骨格の糖環のわずかな「たわみ」のことです。A-DNAではC3′-endoという形をとってリン酸どうしが近づき、らせんは短く太くなります。B-DNAではC2′-endoとなってリン酸間が広がり、なめらかな標準らせんが保たれます。
グリコシド結合の向きは、塩基が糖に対してどちらを向くかで、anti(反対向き)とsyn(糖の真上)があります。A-DNAとB-DNAはすべての塩基がantiですが、Z-DNAではプリン(アデニン・グアニン)がsyn、ピリミジン(チミン・シトシン)がantiを交互にとります。この交互の切り替えこそが、Z-DNAの骨格をジグザグに折り曲げる正体です。
もう一つの鍵は、塩基どうしの積み重なり(スタッキング)の強さです。二重らせんの安定性を最も強く支えているのは、実は向かい合う塩基対の水素結合よりも、らせんの軸方向に重なる塩基どうしの引き合いです。この積み重なりの強さは塩基の並びによって大きく変わり、たとえばT(チミン)とA(アデニン)が続くステップは特にゆるく、熱による揺らぎに対して柔らかい(変形しやすい)ことが知られています。配列によってDNAが「硬い場所」と「柔らかい場所」を持つことが、タンパク質の結合しやすさや構造転換のしやすさにつながります。
なお、B-DNAからA-DNAへ移り変わる途中には、E-DNAと呼ばれる中間的なかたちの候補も報告されています。E-DNAは塩基対がB-DNAのように水平を保ちながら、糖パッカーだけがA型に近づいた「ハイブリッド」な状態とされ、シトシンのメチル化などで誘導されます。A/B/Zほど確立した分類ではありませんが、構造転換が一気にではなく段階的に進むことを示す興味深い例です。
4. DNAの「ねじれ」──超らせんとZ-DNAへの切り替え
🔍 関連記事:スーパーコイル(DNA超らせん)/トポイソメラーゼ/ヌクレオソーム
細胞の中のDNAは、両端が固定された輪ゴムのように、常にねじれの力(トポロジカルストレス)にさらされています。輪ゴムを余分にねじると全体がよじれて立体的なうねりを作るのと同じで、DNAも巻きすぎ・巻き足りずの状態になると、らせん全体がよじれて超らせん(スーパーコイル)を形成します。
💡 用語解説:超らせん(スーパーコイル)と負のねじれ
DNAのねじれの総量は「巻き数(ツイスト)」と「立体的なうねり(ライズ)」の和で決まり、両端が固定されている限り一定に保たれます。細胞から取り出したDNAの多くは、本来より少しほどけた負の超らせんの状態にあります。これは右巻きB-DNAを「ほどく向き」の力なので、DNAの中にエネルギーがたまった状態です。このたまったエネルギーが、局所的にDNAのかたちを変える強力な原動力になります。
たまった負の超らせんエネルギーは、いくつかの方法で解放されます。DNAの一部がほどけて一本ずつに分かれたり(複製・転写の準備)、回文配列が十字型(クルシフォーム)に飛び出したり、そして右巻きB-DNAが局所的に左巻きのZ-DNAに反転したりします。Z-DNAへの反転はねじれを効率よく吸収できるため、負の超らせんはZ-DNAを安定化させる主要な力として知られています[1]。細胞はこのねじれの量を、トポイソメラーゼという酵素で調節しています。トポイソメラーゼは抗がん薬(イリノテカンやエトポシドなど)の標的でもあり、ねじれの制御が生命にとっていかに重要かを物語ります。
5. A-DNAの意外な役割──細菌の胞子を紫外線からまもる盾
A-DNAは水分の少ない環境で現れます。この性質を巧みに利用しているのが、枯草菌(Bacillus)やクロストリジウム属などがつくる休眠状態の胞子(芽胞)です。胞子は熱・乾燥・紫外線・化学物質に極めて強い抵抗性を持ち、その中心部ではDNAが特殊なタンパク質でびっしり覆われています。
このタンパク質はα/β型小酸可溶性胞子タンパク質(SASP)と呼ばれ、胞子タンパク質の最大2割ほどを占めます。SASPはDNAに結合すると、右巻きB-DNAをA-DNA型のかたちへ変えます[6]。DNAがA型になると、紫外線が当たったときの化学反応の道すじが変わります。通常のB-DNAでは、隣り合うチミンどうしが結合した有害なシクロブタン型ピリミジン二量体ができて突然変異の原因になりますが、A型に変わった胞子DNAでは、代わりに胞子光産物(Spore Photoproduct, SP)という別の産物が選択的にできます[7]。
💡 用語解説:胞子光産物と「無傷で戻す」修復
胞子光産物(SP)は、A-DNA型のかたちのおかげで生じる比較的おだやかなDNA損傷です。重要なのは、胞子が発芽するときに胞子光産物リアーゼ(SP lyase)という酵素がこれをすばやく元の正常なチミンへ戻せる点です。この酵素はラジカルSAM(radical S-アデノシルメチオニン)酵素という種類で、いわば「傷を予測して、あとで確実に修復できる形に変えておく」しくみです。乾燥と光化学反応の幾何学を巧みに組み合わせた、生命の見事な防御・リセット装置といえます。
6. Z-DNA・Z-RNAと転写──「フリッポン」という新しい見方
右巻きB-DNAと左巻きZ-DNAの間を、状況に応じて行き来する配列を、研究者はフリッポン(flipon)と呼びます[8]。フリッポンは、配列そのものを書き換えずに「かたち」を切り替えることで、遺伝子の読み取りを調節するスイッチのように働くと考えられています。
💡 用語解説:フリッポン(flipon)
配列は変えずに立体構造を「ひっくり返す(flip)」ことで細胞の働きを調節する、と考えられている配列要素です。遺伝暗号(コドン)が配列を変えて意味を変えるのに対し、フリッポンはかたちで情報を伝える点が特徴です。DNAのメチル化などの化学修飾はZ-DNAのできやすさに影響するため、DNAメチル化やCpGアイランドともつながっています。
遺伝子が読み取られる(転写される)とき、RNAポリメラーゼという酵素がDNA上を進みます。すると、進む方向の前方には巻きすぎ、通り過ぎた後方には巻き足りず(負の超らせん)が一時的に生じます。この後方の負の超らせんが、プロモーター付近のフリッポンをZ-DNAへと切り替えると考えられています。転写が休むとねじれの供給が止まり、Z-DNAは安定なB-DNAへ戻ります。この戻る動きを利用して、プロモーターを次の転写に向けて整える「機械的リセット」という機構も提唱されています(現時点ではモデル・仮説の段階です)。
近年は、実験で同定されたZ-DNA領域を大量に学習させたAI(トランスフォーマー型の深層学習:Z-DNABERT)を使って、ゲノム全体でZ-DNAができやすい場所が高精度に予測されました(F1スコア0.83、AUC 0.99)[9]。その結果、フリッポンはプロモーターやエンハンサーだけでなく、染色体の末端(テロメア)にも多く集まっていること、さらに一部はDNAだけでなく転写後のZ-RNAとしても働き、SCARF2・SMAD1・CACNA1などの遺伝子でスプライシングやRNA編集を調節していることが示されました[9]。
7. Z-DNA・Z-RNAと免疫・病気──ADAR1とがん治療研究
B-DNAは体の免疫系にほとんど感知されませんが、左巻きのZ-DNA・Z-RNAは、細胞にとって「異常が起きているという危険信号」として認識されることがあります。これを見分けるのがZαドメインという、Z-DNA/Z-RNAのジグザグ骨格にぴったりはまる特別なタンパク質のパーツです。Zαドメインを持つヒトのタンパク質は、RNA編集酵素ADAR1と、細胞死を司るZBP1のごく少数に限られます。ウイルスの中には、宿主の免疫をかわすために独自のZαドメインを進化させたもの(ワクシニアウイルスなどポックスウイルス科のE3Lタンパク質)もあります。
💡 用語解説:ADAR1とRNA編集(A-to-I編集)
ADAR1は、二本鎖RNAのアデノシン(A)をイノシン(I)に書き換えるRNA編集酵素です。自分自身の反復配列などから生じるRNAを編集して「これは自分のものだ」と目印をつけ、免疫センサーが自分のRNAを敵と誤認して暴走するのを防いでいます。ADAR1にはZαドメインを持つp150という型があり、Z-RNAを見分ける役割を担います。詳しくはアデノシンデアミナーゼ(RNA編集)遺伝子群をご覧ください。
このしくみが破綻すると、実際の遺伝性の病気が起こります。ADAR1のZαドメインの機能が低下する変異は、アイカルディ・グティエール症候群(AGS)という、生まれつき自然免疫が過剰に働いてしまうⅠ型インターフェロン症(インターフェロン症)の原因になります[10]。動物実験でも、ADAR1がZ-RNAを結合できなくなる変異を入れると、脳の白質異常などAGSに似た重い症状が現れ、免疫センサーMDA5を同時に働かなくすると症状が改善することが示されています[11]。左巻きのかたちを「見分ける」ことが、私たちの健康に直結しているのです。
この免疫のしくみは、がん治療の研究にも応用されつつあります。細胞質でZ-RNAなどの異常な二本鎖RNAが検知されると、ADAR1がブレーキ役として編集で沈静化する一方、ブレーキが外れると免疫センサーが作動して炎症性の細胞死(ネクロプトーシスやパイロトーシス、アポトーシスの特徴を併せ持つ細胞死)が誘導されます。DNAやRNAを免疫が感知するしくみ全般についてはcGAS-STING経路・自然免疫とDNAも参考になります。
一部の固形がんは、強い免疫刺激(インターフェロン)環境にさらされており、自らの免疫原性RNAによる自滅を避けるためにADAR1の働きに強く依存していると考えられています。そこで、ADAR1のZαドメインに結合してその働きを妨げる小分子(前臨床段階の研究化合物「AVA-ADR-001」)が報告されています[12]。この化合物はサブマイクロモル〜マイクロモルの親和性でZαドメインに結合し、報告された作用機序は免疫センサーMDA5を介したインターフェロン応答とPKRの活性化を引き起こすものとされています[13]。マウスのメラノーマモデルでは単剤で約45%の腫瘍増殖抑制、抗PD-1抗体との併用でさらに上乗せ効果が示されたと報告されています[12]。関連する創薬技術にはPROTAC(標的タンパク質分解)や抗体薬物複合体(ADC)、免疫チェックポイント阻害薬があります。
📌 補足:AVA-ADR-001はあくまで研究段階(前臨床)の化合物であり、承認された治療薬ではありません。ここで紹介した数値や機序は研究報告に基づく学術的な解説であり、特定の治療を推奨するものではありません。
8. 遺伝医療とのつながり──非B型構造と反復配列の病気
🔍 関連記事:リピート伸長(トリプレットリピート病)/グアニン四重鎖(G4)/i-モチーフ
ここまで見てきたA-DNA・B-DNA・Z-DNAは、DNAが取り得る「標準以外のかたち(非B型構造)」の代表例です。非B型構造にはほかにも、グアニン四重鎖(G4)や、そのパートナーとなるi-モチーフ、三重鎖(H-DNA)、十字型(クルシフォーム)などがあります。これらは、がん遺伝子のプロモーターやテロメアなど、生命にとって重要な場所に集中して現れます[3]。
💡 用語解説:非B型(non-B)DNA構造
標準的な右巻きB-DNA以外の立体構造の総称です。Z-DNA・G-クアドルプレックス・三重鎖(H-DNA)・十字型・スリップ構造などが含まれます。これらは特定の配列(GC交互配列、グアニンが連なる配列、回文配列、反復配列など)でできやすく、遺伝子の調節に役立つ一方で、DNAの複製をつまずかせて不安定にするという「もろ刃の剣」の性質を持ちます。
非B型構造がとくに遺伝医療で重要になるのは、反復配列(同じ並びが繰り返す配列)が不安定になり、伸びていく病気との関わりです。非B型構造は複製のときにDNAをつまずかせ、欠失・伸長・転座などの変化を引き起こすことが知られています[4]。実際、リピート伸長(トリプレットリピート病)には、ハンチントン病(CAGの繰り返し)、筋強直性ジストロフィー1型(CTG)、脆弱X症候群(CGG)、フリードライヒ運動失調症(GAA)など多くの遺伝性疾患が含まれ、これらの繰り返し配列は非B型構造を作りやすいことが指摘されています[5]。伸びた反復配列はRNA毒性を介して細胞を傷つけることもあります。こうした反復配列の伸びはマイクロサテライト(STR)の解析で調べられ、当院でも運動失調のリピート伸長遺伝子パネルなどで対応しています。
9. よくある誤解
誤解①「DNAはいつも同じ二重らせんの形」
教科書のB-DNAが基本ですが、DNAは環境やねじれに応じてA-DNAやZ-DNAなど複数の形を取ります。かたちの切り替えは、遺伝子の調節や免疫にも使われる大切なしくみです。
誤解②「Z-DNAは実験室だけの人工物」
かつてはそう考えられていましたが、現在ではZ-DNA/Z-RNAが転写や免疫に関わり、その認識異常が実際の病気を起こすことが分かっています。生体内で意味のある構造です。
誤解③「かたちが変わる=DNAが壊れている」
構造多型は損傷ではありません。むしろ細菌の胞子のように、あらかじめ形を変えて損傷を防ぐなど、積極的に利用されている場面もあります。
誤解④「基礎科学の話で診療には関係ない」
非B型構造は反復配列の病気やインターフェロン症の理解に直結します。DNAのかたちの知識は、遺伝カウンセリングの土台にもなります。
よくある質問(FAQ)
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参考文献
- [1] Rich A, Zhang S. Z-DNA: the long road to biological function. Nature Reviews Genetics. 2003. [Nature Reviews Genetics]
- [2] Wang AHJ, et al. Molecular structure of a left-handed double helical DNA fragment at atomic resolution. Nature. 1979;282:680-686. [PubMed 514347]
- [3] Wang G, Vasquez KM. Dynamic alternative DNA structures in biology and disease. Nature Reviews Genetics. 2023. [Nature Reviews Genetics]
- [4] Zhao J, Bacolla A, Wang G, Vasquez KM. Non-B DNA structure-induced genetic instability and evolution. Cellular and Molecular Life Sciences. 2010. [PubMed 19727556]
- [5] Detection of alternative DNA structures and its implications for human disease. Molecular Cell. 2023. [Molecular Cell]
- [6] Mohr SC, et al. Binding of small acid-soluble spore proteins from Bacillus subtilis changes the conformation of DNA from B to A. PNAS. 1991;88:77-81. [PNAS]
- [7] Nicholson WL, Setlow B, Setlow P. Binding of DNA to α/β-type small, acid-soluble spore proteins makes spore photoproduct but not thymine dimers after UV irradiation. PNAS / J Bacteriol (Setlow group). 1991. [PubMed 1569018]
- [8] Herbert A. A genetic instruction code based on DNA conformation. Trends in Genetics. 2019;35:887-890. [Trends in Genetics]
- [9] Z-flipon variants reveal the many roles of Z-DNA and Z-RNA in health and disease (Z-DNABERT). Life Science Alliance. 2023;6:e202301962. [Life Science Alliance]
- [10] Herbert A. Mendelian disease caused by variants affecting recognition of Z-DNA and Z-RNA by the Zα domain of the double-stranded RNA editing enzyme ADAR. European Journal of Human Genetics. 2020;28:114-117. [PMC6906422]
- [11] Nakahama T, et al. Mutations in the adenosine deaminase ADAR1 that prevent endogenous Z-RNA binding induce Aicardi-Goutières-syndrome-like encephalopathy. Immunity. 2021. [Immunity]
- [12] Development of a novel ADAR1 inhibitor (AVA-ADR-001) as a potent immunomodulator for the treatment of solid tumors. AACR Annual Meeting 2023, Abstract 3095 (Cancer Research). [AACR / Cancer Research]
- [13] AVA-ADR-001 suppresses tumor growth and induces anti-tumor immunity by selectively inhibiting ADAR1 p150. Research Square (preprint). 2023. [Research Square rs-2676355]



