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卵子形成|高齢出産になるとダウン症(トリソミー)のリスクが上がる原因

染色体が3本になることをトリソミーと言い、ダウン症候群21トリソミー)は21番染色体が3本になることで起こる21トリソミーです。高齢出産になるとトリソミーが増えますが、その原因を卵子が形成される過程とともに説明します。

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卵子形成(oogenesis)とは?

卵子形成(oogenesis)とは卵祖細胞が成熟卵子になる過程のことをいいます。

卵母細胞の成熟は出生前に開始

原始生殖細胞は、遺伝学的な女性の生殖巣に到達すると、卵祖細胞(oogonium)に分化します。

これらの細胞は有糸分裂を繰り返し、第3か月末までに扁平な1層の上皮細胞に囲まれた集団として存在するようになります。

発生の種々の段階での卵巣
発生の種々の段階での卵巣。
A 胎生4か月:卵祖細胞が卵巣皮質部で集団をなし、一部の卵祖細胞は有糸分裂。その他はすでに一次卵母細胞に分化し、第一減数分裂の前期に入っています。
B 胎生7か月:ほとんどすべての卵祖細胞は第一減数分裂の前期に一次卵母細胞となります。
C 新生児:卵祖細胞はみられません。各一次卵母細胞は単層の卵胞細胞に固まれて原始卵胞を形成しています。卵子は複糸期(休止期)に入り、排卵の直前までこの状態で数十年ずっととどまります。その後、排卵直前に初めて第一減数分裂の中期に入ります。
原始卵胞
A 原始卵胞は単層扁平上皮細胞で固まれた一次卵母細胞からなります。
B 原始卵胞の供給源から選抜された初期一次(腔前期)卵胞。卵胞の成長につれて卵胞細胞は立方体状となり、卵胞細胞は透明帯を分泌し始めます。透明帯は卵子の表面に不規則な斑点として認められるようになります。
C 成熟一次(腔前期)卵胞。卵胞細胞は卵子の周囲に重層の顆粒層細胞を形成し、透明帯が明瞭になります。

卵胞細胞とよばれる扁平な上皮細胞は卵巣表層の上皮から生じます。
大多数の卵祖細胞は有糸分裂を続けるのですが、一部は第一減数分裂の前期で停止し、 一次卵母細胞(primary oocyte)を形成します。そして次の数か月間に卵組細胞は急激に数を憎し、発生第5か月までに卵巣中の生猶細胞の総数は最も多くなり、約700万個になると推定されています。
この時期に細胞死(アポトーシス)が始まり、多くの卵祖細胞と一次卵母細胞が閉鎖卵胞となります。
胎生第7か月までに、卵巣表層近くにある少数のものを除いて、大多数の卵祖細胞が退化します。生き残った一次卵母細胞はすべて第一減数分裂前期に入り、これらの卵母細胞の多くは個別に1層の扇平上皮細胞層で固まれるようになります。
扁平上皮細胞とこれらに凶まれた一次卵母細胞をまとめて原始卵胞といいます。

卵母細胞の成熟は思春期まで継続

卵母細胞

出生前後にすべての卵母細胞は第一減数分裂の前期に入っていますが、第一次減数分裂中期には進まず、複糸期に入ります。これは前期中の休止期で、クロマチンがレースのような網目をなすのが特徴です。一次卵母細胞が前期にとどまり、思春期まで第一減数分裂を完了することがないのは、卵胞細胞から卵子成熟抑制物質(oocyte maturation inhibitor :OMI)が分泌されるためです。
出生時の一次卵母細胞の総数は60万~80万の問と推定されています。
幼年期においてに卵子の大多数が閉鎖卵胞となるので、 思春期の初めには4万個程度に減ってしまい、一個人の生殖可能な期間中に排卵される卵子の数は500個以下となります。

高齢になってから成熟に達する卵子は、40年あるいはそれ以上も第一減数分裂の復糸別にとどまっていることとなります。卵巣に作用する環境の影響から卵子を保護するのに複糸期が最も適切かはわかりません。
染色体異常をもつ児の発生頗度が母体の年齢とともに増加することは、 一次卵母細胞が経年で傷つきやすくなることを示しています。

思春期になると、成長する卵胞の集団が確立され、原始卵胞が供給され、継続的に維持されるようになります。
毎月15~20個の原始卵胞がこの集団から選ばれて成熟し始め、あるものは死滅し、他のものでは卵胞腔(antrum)という間隙に液体を溜め始め、腔期(antralstage)あるいは胞状期(vesicular stage)に入ります。

腔期卵胞
A 腔期卵胞:透明帯で図まれた卵子が中心をはずれた位置に存在し、卵胞腔は細胞間隙に液体が溜まることで発生します。内・外卵胞膜の配列に注意。
B 成熟した卵胞=グラーフ卵胞:かなり大きくなった卵胞腔は液で満たされて、重層の頼粒層細胞で囲まれます。卵子は顆粒層細胞のつくる丘卵(卵丘)のなかに埋没します。

液体はどんどんたまっていき、排卵直前には卵胞は著しく肥大化し、成熟卵胞(mature follicle)あるいはクラーフ卵胞(Graafian follicle)といわれます。
腔期が最も長く、成熟卵胞排卵前のたった37時間です。

一次卵胞

原始卵胞が成長を始めると、これを囲む卵胞細胞は扁平細胞から立方細胞へと段々変化し、増殖して顆粒層細胞という重層上皮を形成するようになります。これを一次卵胞といいます。
顆粒層細胞は基底膜上に位置し、基底膜により卵胞膜を形成する周囲の基質細胞から隔てられます。顆粒層細胞と卵子も、卵子の表面に糖タンパクを分泌してお互いを隔てます。こうしてできるのが透明帯なのです。

卵胞が発育すると、卵胞膜の細胞は内層の分泌細胞である内卵胞膜と外側にある線維性被膜(外卵胞膜)に分化します。

卵胞細胞からは小さな指状の突起がのびて、透明帯を貰いて、卵子の形質膜の微絨毛とかみ合っている。これらの突起は卵胞細胞から卵子へ物質を輸送するのに重要な意義をもっています。

マウスの卵細胞表面に精子が付着

これは、卵細胞表面に精子頭部が付着している像です。
図2と図3は図1を拡大したものです。
図2では精子頭部前域に粘性のある長伸びた線維状のものが認められ、矢印に該当しますが、微絨毛の変化したものと考えられます。
図3の右側の1本矢印では精子頭部後域においては明らかに微絨毛が伸びて精子頭部を巻き込んでいることがわかります。また、図3の2本矢印部分では、完全に微絨毛が精子頭部を糸巻き様に巻き込んでいるのがとらえられています。
図4は、変化した卵細胞微絨毛が精子頭部を捕獲したあとに、卵細胞質突起が盛 り上が り始めている像です。卵子微絨毛が変化して精子頭部赤道域中央付近を規則正しく巻き込んでいるのがわかると思います。そして細胞質突起が精子頭部背側に沿って小丘を形成しています。この精子の上方に第2次極体放出部位と思われる微絨毛のない領域が認 められます。

胞状卵胞

発達が進むにしたがい、卵胞細胞胞の間に液に満ちた腔ができ、これらの腔が合体すると卵胞腔が形成され、卵胞は胞状卵胞となります。卵胞腔は初めは三日月形ですが、時間が経つに伴って大きさを増します。卵子を取り巻く顆粒層細胞はそのまま残って卵丘を形成します。成熟すると、胞状卵胞はその直径が25mm以上となります。

減数分裂

卵胞は、ステロイドを分泌する特徴のある細胞でできていて、血管に宮む内卵胞膜と明瞭な境界なしに卵巣基質に移行する外卵胞膜に囲まれています。

各卵巣周期ごとに、多数の卵胞が発育し始めますが、十分成熟を遂げるのは通常1個だけです。その他は退化して閉鎖卵胞となります。二次卵胞が成熟すると黄体化ホルモンluteinizing horrnone: LH)の増加により排卵前成長期が誘導されます。
第一減数分裂は完了し、いずれも23本の二重構造染色体をもつ大きさの異なる2個の娘細胞を形成します。

卵子の成熟
A:一次卵母細胞の第一減数分裂時の紡錘体形成
B:二次卵母細胞と一次極体(極細胞)。核膜が失われている。
C:二次卵母細胞。第二減数分裂の紡錘体。一次極体も同じように分裂している。

第一減数分裂でできた二次卵母細胞は、細胞質のほとんどすべてを受け継ぎます。細胞質のないもうlつは一次極体と呼ばれます。一次極体は卵黄周囲腔内で透明帯と二次卵母細胞の細胞膜との間に位置します。その後、第二減数分裂に入るのですが排卵約3時間前にに中期で休止します。第二減数分裂が完了するのは卵子が受精した場合のみで、受精しないと細胞は排卵後ほぼ24時間で退化します。
一次極体も第二減数分裂を行います。

高齢になるとダウン症(21トリソミー)のリスクがあがる理由

卵子の元となる原始卵胞は生まれたときから卵巣の中に存在しており、数十年かけて排卵しています。原子卵胞は母体と共に加齢していることになり、それに伴い細胞内の小器官で機能不全が生じ、減数分裂の際にエラーが生じやすくなります。

ダウン症などのトリソミー(染色体数異常)は、減数分裂の際に卵子の染色体分配が正しく行われず、染色体数が多くなってしまうことで生じます。

つまり減数分裂でエラーが生じることで、その卵子から発生した胎児はトリソミーを有することになります。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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