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多発性骨端異形成症5型(MED5)とは|MATN3遺伝子・症状・ペルテス病との鑑別・最新治療を遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

お子さんが「運動のあとに股関節や膝が痛い」「歩き方が少し左右に揺れる」と訴えると、多くの場合は成長痛と受け止められます。ところが、その中にごくまれに、多発性骨端異形成症5型(MED5/EDM5)という遺伝性の骨の病気が隠れていることがあります。背は正常か少し低いくらいで一見わかりにくいのですが、放っておくと若いうちから関節が傷みやすいという特徴があります。しかも、日本を含む東アジアではこのタイプがMEDの中で最も多いことがわかっています。この記事では、MED5とは何か、原因となるMATN3遺伝子の働き、よく似た「両側性のペルテス病」との見分け方、そして細胞の中で起こる異常を標的にした最新の研究までを、遺伝専門医の視点でやさしく解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🦴 MED5・MATN3・骨端異形成・早期変形性関節症
臨床遺伝専門医監修

Q. 多発性骨端異形成症5型(MED5)とはどんな病気ですか?まず結論だけ知りたいです

A. MED5は、MATN3遺伝子の変化によって、関節に近い骨の端(骨端)が正しく育たなくなる、常染色体顕性(優性)遺伝の骨系統疾患です。幼児期からの股関節や膝の痛み・こわばりから始まり、若いうちから変形性関節症が進みやすいのが特徴です。一方で、背の高さは正常か軽い低身長にとどまることが多く、知能に影響はありません。東アジアではMEDの中で最も多い原因遺伝子がMATN3で、両側性のペルテス病と間違われやすい点に注意が必要です。今のところ根本的な治療薬はありませんが、細胞内のタンパク質のたまりを減らす薬の研究が進んでいます。

  • 正体 → MATN3遺伝子の変化で骨端の成長が妨げられる、常染色体顕性遺伝の骨系統疾患(OMIM #607078)
  • 症状 → 幼児期からの股関節・膝の痛み、動揺性歩行、若年での変形性関節症。背は正常〜軽い低身長
  • 細胞の中では → 変化したマトリリン-3が小胞体にたまり、慢性的な小胞体ストレスを引き起こす
  • 東アジアで最多 → 日本・韓国ではMATN3がMEDの最大の原因。両側性ペルテス病との鑑別が重要
  • 最新研究 → クルクミンなど、たまった異常タンパク質の分解を促す物質が細胞実験で注目されている

🦴 多発性骨端異形成症5型(MED5)の基本情報

項目 内容
病名・別名 多発性骨端異形成症5型(MED5/EDM5)。かつては「フェアバンク病」「リビング病」と呼ばれた病気群の一型
原因遺伝子 MATN3遺伝子(染色体2p24.1)。マトリリン-3というタンパク質の設計図
遺伝形式 常染色体顕性(優性)遺伝。子に伝わる確率は理論上50%
OMIM番号 #607078(MED5/EDM5)
主な症状 股関節・膝の痛みとこわばり、動揺性歩行、若年発症の変形性関節症。背は正常〜軽度の低身長
頻度の特徴 MED全体の有病率は約1万人に1人。東アジアではMATN3がMEDの最多原因[1]

※本記事は一般の方と遺伝診療に関わる方の両方に向けた解説です。特定の検査を勧めるものではありません。

1. 多発性骨端異形成症5型(MED5)とは

多発性骨端異形成症(Multiple Epiphyseal Dysplasia:MED)は、手足の長い骨の両端にある骨端(こったん)という部分が正しく育たなくなる、生まれつきの骨の病気の総称です。骨は両端の成長板(せいちょうばん)という軟骨で細胞が増え、それが硬い骨に置き換わっていくことで長く伸びます。MEDでは、この成長板と骨端の軟骨がうまく骨に変わっていかないため、関節の形が不ぞろいになり、若いうちから関節が傷みやすくなります。

MEDは昔、症状の重さから2つのタイプに分けられていました。背が大きく低くなり手足が変形する重いタイプ(フェアバンク型)と、背はほぼ正常で股関節など大きな関節だけに異常が出る軽いタイプ(リビング型)です。しかし、遺伝子の研究が進むにつれ、この2つは別々の病気ではなく、1つの連続した重症度の幅(スペクトラム)の両端にすぎないことがわかってきました。今では、症状の見た目ではなくどの遺伝子に変化があるかで分類するのが標準になっています[1]

現在、MEDの原因遺伝子は複数知られています。子に伝わりやすい常染色体顕性(優性)遺伝のタイプとして、COMP(MED1)、COL9A2(MED2)、COL9A3(MED3)、MATN3(MED5)、COL9A1(MED6)があり、両親から1つずつ変化を受け継いで発症する常染色体潜性(劣性)遺伝のタイプとして、SLC26A2(MED4)、CANT1(MED7)があります[1]。このうち本記事で扱うMED5は、MATN3遺伝子の変化が原因で起こるタイプで、正式にはOMIM #607078に登録されています。MED全体の中では比較的軽度から中等度の経過をたどることが多いタイプです。

💡 用語解説:骨端・成長板・骨系統疾患

骨端は、長い骨の関節に近い端の部分です。成長板は骨端の近くにある軟骨の層で、ここで軟骨細胞が増えて骨に置き換わることで骨が伸びます。骨系統疾患とは、骨や軟骨の育ち方そのものに生まれつきの障害がある病気の総称で、子どもの4,000〜5,000人に1人にみられるとされます。多発性骨端異形成症はその一つです。

2. 原因遺伝子MATN3とマトリリン-3の働き

MED5の原因となるMATN3遺伝子は、染色体の2p24.1という場所にあり、マトリリン-3(Matrilin-3)というタンパク質の設計図です[12]。マトリリン-3は、軟骨の細胞外マトリックス(細胞と細胞のあいだを埋める土台のような構造)にある、主要な非コラーゲン性のタンパク質です。マトリリンには1から4までの仲間がいて、いずれも軟骨などの結合組織で、コラーゲンの線維とプロテオグリカンという成分をつなぎ合わせる「接着役」として働きます。

マトリリン-3は仲間の中で最も小さく、486個のアミノ酸からできています。ほかのマトリリンが「vWFA(フォン・ヴィレブランド因子A)様ドメイン」という部品を2つ持つのに対し、マトリリン-3はこの部品を1つだけ持つのが構造上の特徴です。この単一のvWFAドメインのうしろに、4つのEGF様ドメインとコイルドコイルという部品が続きます。マトリリン-3はこのコイルドコイル部分を使って、自分どうし4つ集まったり、軟骨に多いマトリリン-1と組み合わさったりして、複数の結合点を持つ大きな網目構造をつくります。この網目が、軟骨の中でII型コラーゲンの線維やCOMP、アグリカンといった成分をつなぎとめ、関節や成長板が力に耐えられるよう支えています。

💡 用語解説:vWFAドメインとは

タンパク質は、いくつかの機能的なかたまり(ドメイン)が組み合わさってできています。vWFAドメインは、他のタンパク質と結合するための代表的な部品の一つで、真ん中にある「βシート」という板状の構造を、まわりの「αヘリックス」というらせん構造が取り囲む形をしています。マトリリン-3ではこの部品が結合の要になっており、あとで述べるように、MED5の原因となる変化のほとんどがこの部分に集中しています。

マトリリン-3の役割は、ただの「つなぎ役」にとどまりません。軟骨細胞のふるまいを調整する信号の担い手でもあります。正常なマトリリン-3は、炎症を抑える方向に働いたり、軟骨をこわす酵素の働きを抑えて、軟骨の主成分であるII型コラーゲンやアグリカンをつくる方向へ促したりして、軟骨を「つくる働き」と「こわす働き」のバランスを保っています。つまり、関節軟骨を守る保護因子としての側面を持っているのです。

この保護的な役割は、動物モデルの研究からも裏づけられています。マトリリン-3をまったく持たないようにしたノックアウトマウスは、成長板で軟骨細胞が早く成熟しすぎる異常を示すものの、生まれた時点では手足が短くなるような重い骨格異常は起こしません。ところが、年をとるにつれて骨の密度が異常に高くなったり、軟骨がすり減って重い変形性関節症を自然に発症したりすることが確かめられています[6]。この結果は、マトリリン-3が「単に足りない」だけではMED5のような重い骨端の異常は起こらないこと、そして大人になってからの関節軟骨を守るうえで欠かせない存在であることを示しています。ここが、次の章で説明するMED5の本当のしくみを理解するうえで、とても大切なポイントになります。

3. 細胞の中で何が起きているのか

「マトリリン-3が足りないだけでは重い病気にならない」——それなら、MED5ではいったい何が起きているのでしょうか。答えは、変化したマトリリン-3が軟骨細胞の中にたまって、細胞そのものに害を与えるという点にあります。足りないことが問題なのではなく、できそこないのタンパク質が居座ることが問題なのです。

実際、MED5の患者さんに見られる特定の変化(p.Val194Aspなど)をマウスの遺伝子に入れたノックインマウスは、マトリリン-3を持たないノックアウトマウスとは大きく違い、手足が短くなる、成長板の構造が乱れる、軟骨細胞が増えにくくなる、細胞の自然死(アポトーシス)が乱れるといった、ヒトのMED5にそっくりの症状を示しました[5]。この違いこそが、MED5が「タンパク質が足りない病気」ではなく「できそこないのタンパク質が悪さをする病気」であることの証拠です。

3-1. 折りたたみの失敗と小胞体へのたまり

MED5を起こす変化のほとんど(p.Arg121Trp、p.Thr120Met、p.Val194Aspなど)は、マトリリン-3の1つしかないvWFAドメインの中に集中しています[4]。多くは、このドメインの中心にある板状のβシート構造を組み立てるアミノ酸を別のものに置き換えてしまうミスセンス変異で、その結果ドメイン全体の立体的な折りたたみ(フォールディング)が大きく妨げられます。

💡 用語解説:ミスセンス変異とタンパク質の折りたたみ

ミスセンス変異とは、DNAの1文字が変わることで、タンパク質の部品であるアミノ酸が別の種類に入れ替わってしまう変化です。タンパク質は、アミノ酸の鎖が決まった立体構造に「折りたたまれて」はじめて正しく働きます。折りたたみに失敗したタンパク質は、うまく働けないだけでなく、細胞の中で異常なかたまりをつくって害になることがあります。MED5はまさに、この折りたたみの失敗が引き金になる病気です。

正常なマトリリン-3は、つくられたあとすぐに細胞の外へ運び出されます。ところがvWFAドメインに変化を持つマトリリン-3は正しく折りたためず、本来なら内側に隠れているはずの「不対のシステイン残基」という部分が表面に飛び出してしまいます。すると、粗面小胞体(そめんしょうほうたい)という、タンパク質を組み立てて送り出す細胞内の工場の中で、変化したマトリリン-3どうしが本来ありえない結合(非天然型のジスルフィド結合)でつながり合い、大きな異常なかたまりをつくってしまいます[4]。その結果、変化したマトリリン-3は工場の外へ出られず、小胞体の中に大量にたまって、小胞体そのものを膨らませてしまうのです。

3-2. 小胞体ストレスと、遺伝子ごとに違う応答

できそこないのタンパク質が小胞体にたまると、細胞は何とか元の状態に戻ろうとして、小胞体ストレス応答(UPR)と呼ばれる一連の反応を起こします。これは、新しいタンパク質づくりをいったん止めたり、折りたたみを助けるシャペロンという分子を増やしたりして、小胞体の処理能力を高めようとする、いわば非常時の対応です。実際、変化したマトリリン-3を発現させたマウスでも、この小胞体ストレス応答が最初の細胞反応として起こることが確かめられています[5]

💡 用語解説:小胞体ストレスとUPR

小胞体ストレスとは、細胞内の小胞体に、折りたたみに失敗したタンパク質がたまって処理が追いつかなくなった状態のことです。これに対して細胞は、UPR(小胞体ストレス応答)という緊急対応を発動します。UPRは本来、細胞を守るための適応反応ですが、ストレスが強すぎたり長く続いたりすると対処しきれなくなり、細胞にダメージが残ります。

興味深いことに、MED5の細胞やマウスで見られる小胞体ストレス応答は、ただの一般的な反応ではなく、「どの遺伝子の変化か」によって顔ぶれが違うという特徴を持っています。MATN3変異の軟骨細胞では、Armet(別名MANF)とCreld2という2つのタンパク質が特に強く増えることが見つかりました[7]。Armetは折りたたみを助ける特殊なシャペロンとして、Creld2は異常な結合を修復しようとする酵素のような分子として、たまったマトリリン-3の害をやわらげようと働きます。

重要なのは、このArmetとCreld2の増加が、同じMEDでもCOMP変異(MED1)では起こらないという点です。マトリリン-3(MED5)やX型コラーゲン(後述するシュミット型)のように、特定のできそこないタンパク質がたまる病気でだけ、この応答が特異的に起こります[7]。つまり、たまるタンパク質の種類によって、細胞が呼び集める助っ人や対処のしかたが根本から違うのです。これは、あとで説明する「MED5とMED1で効く薬が違う」という話に、まっすぐつながっていきます。

3-3. コレステロールの増加と軟骨細胞の早すぎる成熟

解決しない小胞体ストレスが続くと、軟骨細胞のふるまいそのものが変わってしまいます。細胞はすぐに死ぬのではなく、ストレスの中で生き延びるために「プログラムのつくり直し」を選び、増える力を大きく落とすと同時に、本来のスケジュールを外れて早すぎるタイミングで成熟した軟骨細胞(肥大軟骨細胞)へと変わってしまいます。これが、成長板の働きが落ちる一因になります。

近年、MED患者さん由来の細胞からつくったiPS細胞や、ゲノム編集でMATN3変異を導入した細胞を軟骨に育てる研究から、新しいしくみが見えてきました。変化した細胞でつくった軟骨のかたまりでは、膨らんだ小胞体のまわりに脂肪滴が異常にたまり、遺伝子の働きを調べるとコレステロールをつくる経路が目立って活発になり、細胞内のコレステロール量が増えていることが見つかったのです[10]。コレステロール代謝の変化は、小胞体の膜の性質を変えてストレスに耐えようとする、細胞なりの代償反応かもしれません。この脂質の異常も、MED5で軟骨がうまくつくられなくなる一因になっていると考えられています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「足りない」と「じゃまをする」は分けて考える】

遺伝子の変化が病気を起こすしくみには、大きく分けて「タンパク質が足りなくなって困る」タイプと、「できそこないのタンパク質がその場に居座って、まわりのじゃまをする」タイプがあります。MED5は、後者の代表例です。マトリリン-3が単に少ないだけのマウスは重い骨の病気にならないのに、できそこないのマトリリン-3を持つマウスは、ヒトそっくりの症状を示します。

この違いは、治療を考えるうえでとても大切です。もし「足りない」ことが問題なら、足してあげる治療が理にかないます。けれど「じゃまをする」ことが問題なら、たまったものをどう片づけるかが鍵になります。MED5の最新の薬の研究が、細胞内のたまりを減らす方向を目指しているのは、このためです。遺伝子の変化を読むときには、その変化が「量を減らすのか」「質を変えて悪さをするのか」を見分ける視点が欠かせません。

4. 症状と経過 ─ どんなふうに現れるか

MED5の症状の重さは、同じ家系の中でも人によって幅があります。それでもMED全体の中では、比較的軽度から中等度の経過をたどることが多いタイプです。ここでは、現れやすい順に見ていきます。

4-1. 発症の時期と最初の症状

MED5の症状は、たいてい歩き始める幼児期から小児期のはじめにかけて現れます。最も多い最初のサインは、長く歩いたあとや運動のあとに出る股関節や膝の痛み(関節痛)とこわばりです。これはしばしば成長痛と受け止められますが、MED5のお子さんは同年代の子より疲れやすく、筋力の低下や体の柔らかさ(筋緊張の低下)を伴うことがあり、運動をいやがる傾向がみられることがあります。

関節の形やアライメント(骨の並び)の乱れが進むと、歩くときに骨盤が左右に揺れる動揺性歩行(どうようせいほこう)が現れることがあります。ただしMED5では、重いタイプであるCOMP変異のMED1と比べると、はっきりした歩行の異常が出る割合はやや低いことが、東アジアの臨床研究から示されています[3]

4-2. 身長と手足の特徴

骨系統疾患の多くは、体幹と手足のバランスが崩れた目立つ低身長を特徴とします。ところがMED5では、これがあまり当てはまりません。小児期の伸びがわずかに落ちることはあっても、大人になったときの最終身長は正常か、正常範囲の下限にとどまることが多いのです[1]。手足は体幹に比べてわずかに短くなる傾向はあっても、一目でわかるほどの短さにはなりません。この「見た目でわかりにくい」ことこそ、MED5の診断を難しくしている大きな理由の一つです。

関節の動きについては、ひじが伸びきらない一方で、手指や膝では靭帯がゆるくて動きすぎる(過可動性)が混じることがあります。手の見た目も人によってさまざまで、指が短くずんぐりして見える方もいれば、まったく正常に見える方もいます。この個人差の大きさも、MED5の特徴です。

💡 用語解説:常染色体顕性(優性)遺伝と再発率

MED5は常染色体顕性(優性)遺伝のタイプです。これは、2つで1組の遺伝子のうち片方に変化があれば症状が出るしくみで、親が変化を持つ場合、子に伝わる確率は理論上50%です。一方で、両親に変化がなくても、お子さんで初めて生じる新生突然変異(de novo変異)で発症する場合もあります。家系内での見通しや次のお子さんへの影響については、遺伝カウンセリングで整理していくことが大切です。

4-3. 若年発症の変形性関節症

MED5の最も深刻な長期の合併症は、体重がかかる関節に若いうちから起こる変形性関節症(早期発症型の変形性関節症)です。子どものころからの軟骨の劣化と、その下の骨が硬く変化していくリモデリングが少しずつ進み、多くの患者さんで30代から40代という若い成人期に、関節の強い痛みと動きの制限が生じます[1]。進行すると、最終的に人工関節に置き換える手術が必要になることもあります。

なお、MATN3のある種の変化は、全身の骨系統疾患を伴わずに、手の関節だけの変形性関節症のかかりやすさと関連することも知られています。たとえばp.Thr303Met(T303M)という変化を持つ人では、手首の一部の関節(舟状骨・大菱形骨・小菱形骨のあいだの関節)や親指の付け根の関節で、変形性関節症との関連が報告されています[11]。これは、マトリリン-3が関節軟骨の耐久性に果たす役割の特異性を反映しているといえます。

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5. 画像(レントゲン)でわかる特徴

MED5の診断を確かめ、よく似た他の病気と見分けるうえで、X線(レントゲン)による評価は欠かせません。画像の異常は、痛みが出る前の幼児期、骨端の核ができてくる時期に最もはっきり現れます。ここを見逃さないことが、早期発見の鍵になります。

5-1. 大きな関節(股関節・膝)の所見

MED5の画像の中心となる所見は、手足の長い骨の骨端核で、骨になるのが遅れる(骨化の遅延)ことと、きれいな球形にならず輪郭が不ぞろいになることです。とくに股関節では、大腿骨頭(太ももの骨の先の丸い部分)の骨端核が小さく、平らにつぶれた形になり、一部では斑点状の石灰化を伴います。さらに、大腿骨の頸部が短く横に広がったり、骨盤側の受け皿(寛骨臼)の形が浅く不十分になったりして、股関節のかみ合わせが悪くなることが多くみられます。膝でも、大腿骨や脛骨の骨端が同じように平らで不ぞろいになり、重い場合はO脚・X脚の変形のもとになります。

5-2. 手首・足首と背骨の評価

MED5では、長い骨の骨端だけでなく、手首の手根骨や足首の足根骨でも、骨になるのが遅れたり輪郭が不ぞろいになったりすることがよくあります。手の中手骨が短くなることもありますが、前に述べたように手の異常の程度は人によってかなり違います。

背骨(脊椎)の評価は、MED5を他の骨系統疾患と見分けるうえでとても重要です。定義のうえでは、MEDでは背骨の全体的な並びや椎体(背骨一つ一つ)の高さは正常とされます[1]。ただしMED5の患者さんの中には、椎体の終わりの板(終板)が軽く不ぞろいになったり、椎間板の一部が椎体にめり込んでできるシュモール結節がみられたりする方もいると報告されています。これは、MATN3の変化が椎間板の状態にもわずかに影響することを示しています。

⚠️ 見分けが必要なケース

もしX線で椎体が著しく平らにつぶれていたり、背骨の重い変形がみられたりする場合は、通常のMED5の枠を超えています。このようなときは、マトリリン-3の両方の遺伝子コピーに変化がある(ホモ接合体、例えばp.Thr120Met)ことで起こる、常染色体潜性遺伝の希少疾患「脊椎骨端骨幹端異形成症(SEMD MATN3型・OMIM #608728)」の可能性を強く疑う必要があります[4]。同じMATN3の変化でも、片方だけか両方かで病気の重さが大きく変わるのです。

6. 東アジアでMED5が最も多い理由

MEDの有病率は全体で約1万人に1人と推定されますが、その原因となる遺伝子の割合は、人種や民族的な背景によって大きく異なるという、とても興味深い特徴があります。これは、どの地域でどの遺伝子から優先して調べるべきか、という診断の道すじに直結する知見です。

欧州や北米の集団を対象にした大規模な研究(欧州骨系統疾患ネットワーク・ESDN)では、MEDの最も多い原因はCOMP遺伝子の変化(MED1)で、分子診断が確定した症例の約66%を占めていました。これに対しMATN3変化(MED5)は約24%で、第2位でした[1]。ところが東アジアでは、この関係が完全に逆転します。韓国の多施設研究では、原因が判明したMED患者さんのうちMATN3が55%、COMPが約42%で、MATN3が最多でした[2]。日本の研究でも同じ傾向で、MATN3が47%、COMPが37%、次いでCOL9A2が11%という分布でした[1]

MED原因遺伝子の割合(地域別のイメージ)

東アジア
(日本・韓国)MATN3が最多
(47〜55%)
◀▶
欧米
(ESDN)COMPが最多
(約66%)

※割合はコホート研究に基づくおおよその数値で、研究により幅があります[1][2]

東アジアでMED5(MATN3)が多い背景には、集団遺伝学でいう創始者効果(そうししゃこうか)があると考えられています。特定の変化(たとえばp.Arg121Trp)を持つ少数の祖先から、この地域の中で世代を超えて変化した遺伝子が広く伝わった結果、今の高い頻度がつくられたと推測されています[1]。つまりMED5は、日本で骨端の異常や若年の関節症状を診るときに、まず候補として考えるべき代表的なタイプだといえます。

🔬 MATN3(MED5)とCOMP(MED1)の臨床的な違い

特徴 MATN3(MED5) COMP(MED1)
成人の身長 正常〜軽度の低身長 より低くなりやすい
股関節の形成不全 中等度 重度になりやすい
歩行の異常 比較的少なめ より多い傾向
東アジアでの頻度 最多 2番目

東アジアではMATN3(MED5)がMEDの最も多い原因で、身長への影響や股関節の形成不全はCOMP(MED1)より比較的軽い傾向があります。ただし個人差が大きく、最終的な区別は遺伝子検査によります[3]

7. ペルテス病との見分け ─ 最大の落とし穴

MED5の診断で最も難しいのは、最初の症状が関節の痛みと軽い歩行の異常だけで、身長も正常範囲に収まることが多い点です。そのため、遺伝性でない小児の整形外科の病気や、ほかの骨系統疾患との正確な見分けが欠かせません。中でも最大の落とし穴が、MED5を「両側性のペルテス病」と間違えてしまうことです。

ペルテス病は、主に3歳から15歳の男の子に多い、原因不明の大腿骨頭の血流障害(無血管性壊死)で、股関節の痛みや跛行を起こします。ふつうは片側だけの病気ですが、最大で約2割のケースでは両側に起こることがあります。この「両側性のペルテス様の変化」を示すX線所見(大腿骨頭の平坦化・硬化・分節化など)は、MED5の初期にみられる股関節の骨端異形成にとてもよく似ているため、多くのMED5の患者さんが最初にペルテス病として扱われてしまう実態があります[13]

🔍 MED5とペルテス病を見分けるポイント

見分けの視点 多発性骨端異形成症(MED5) ペルテス病(LCPD)
病変の左右対称性 左右がほぼ同時期に進み、対称的なことが多い 両側でも左右で時期がずれ、非対称なことが多い
他の関節への広がり 股関節だけでなく、膝・手首・足首の骨端にも異常がみられる 病変は股関節(大腿骨頭)に限られる
家族歴 顕性遺伝のため、親族に若年の人工関節手術や重い変形性関節症の家族歴があることが多い 通常は孤発性で、明らかな家族歴はない
診断の進め方 疑わしければ必要に応じて骨格X線検査で他の関節の異常を確認する 股関節のX線・MRIを中心に評価する

関節痛を訴えるお子さんでは、局所のX線だけで判断せず、必要に応じて骨格X線検査で他の関節にも骨端の異常がないかを評価することが、見誤りを防ぐうえで重要です[13]

MEDスペクトラムの中での、遺伝子型による見分けも、将来の見通しや合併症の管理に役立ちます。MED1(COMP変異)はMEDの中で最も重くなりやすく、身長がMED5より低くなる傾向があり、股関節や受け皿の重い形成不全が目立ちます。同じCOMP変異でより重い偽性軟骨無形成症(PSACH)とは、症状の幅が連続してつながっています。MED2MED3MED6(IX型コラーゲンの変異)は股関節への影響が比較的軽い一方、膝の異常が目立つのが特徴です。両親から1つずつ受け継ぐSLC26A2関連MED(劣性型)では、二層になった膝蓋骨や内反尖足などの特徴的な形態異常を伴います。さらに、非典型・遅発型のムコ多糖症も初期にはMEDに似た骨端の変化を示すことがあり、網羅的な遺伝学的な確認が役立ちます。

8. 診断と検査

MED5は、症状や身長だけでは診断が難しいため、画像所見と遺伝子検査を組み合わせて確かめていきます。まず画像所見を評価し、必要に応じて骨格X線検査で股関節・膝・手首・足首など複数の関節に骨端の異常が広がっていないかを確認します。そのうえで、背骨がおおむね正常であることを確かめ、脊椎の異常が目立つ他の骨系統疾患と区別します。

臨床的な特徴がそろっても、MEDは原因遺伝子によって将来の経過や合併症が異なるため、どの遺伝子に変化があるかを調べる遺伝子検査が確定診断の鍵になります。とくにMED5は見た目が軽くわかりにくいので、遺伝子検査で原因を突き止める意義が大きいタイプです。近年は、関連する複数の遺伝子をまとめて調べるNGS(次世代シークエンサー)を用いた遺伝子パネル検査が広く使われるようになっています。

当院では、MEDの原因遺伝子を含む複数の検査メニューをご用意しています。MED5の原因であるMATN3を含む多発性骨端異形成症NGS遺伝子検査パネルのほか、より幅広く骨・軟骨の遺伝子を調べる骨系統疾患NGS遺伝子パネル検査、低身長の原因を網羅的に評価しMATN3も含む低身長遺伝子パネル検査があります。パネルで原因がはっきりしない場合には、クリニカルエクソーム検査全エクソーム検査(WES)で、さらに広く調べる選択肢もあります。どの検査が適しているかは、症状や家族歴によって変わります。

💡 出生前の診断について

MED5は、通常は生まれてから歩き始める時期に症状が現れる病気で、出生前に見つかるものではありません。ただし、家系内ですでにMATN3の変化が特定されている場合に限り、絨毛検査や羊水検査による出生前の遺伝子診断が選択肢になりえます。出生前に調べることが常にご家族の利益になるとは限らないため、受けるかどうかは中立的な情報のもとでご家族が決めることが大切です。こうした判断は、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングの中で整理していきます。

9. 治療と最新の研究

9-1. 今の治療 ─ 症状をやわらげ関節を守る

現在、MED5を含む多発性骨端異形成症に対して、根本的に治す治療法はまだありません。今の治療の中心は、症状をやわらげ、関節の働きを保ち、変形性関節症の進行を遅らせることを目指した対症療法です。小児期から青年期には、ジャンプや長距離走のように関節に強い負担がかかる激しいスポーツを避けつつ、理学療法で周りの筋力を保ち関節の動く範囲を維持する保存的な治療が中心になります。

股関節や膝の変形が進み、骨の並びの乱れで関節に偏った負担がかかる場合には、骨切り術という手術で力学的な軸を整え、軟骨のすり減りを遅らせる方法が選ばれることがあります。関節軟骨の傷みが広く進んだ若年成人期(しばしば30〜40代)には、最終的に人工股関節全置換術(THA)や人工膝関節全置換術(TKA)が必要になることがあります。MED患者さんに対する人工股関節手術の長期成績の研究では、受け皿側の形の異常により一部で再手術のリスクがやや高いものの、大腿骨側の成績は良好で、手術によって生活の質が大きく向上することが報告されています[1]

9-2. 細胞のたまりを標的にした薬の研究

MED5の根本にある「変化したマトリリン-3が細胞内にたまり、小胞体ストレスが続く」という問題そのものを標的にした薬の研究が、世界的に進んでいます。ここで大切なのが、同じ小胞体ストレスが原因の病気でも、たまるタンパク質が違えば効く薬が違うという発見です。

その先駆けとなったのが、X型コラーゲン(COL10A1)の変化で起こるシュミット型骨幹端軟骨異形成症(MCDS)に対する研究です。MCDSのモデルでは、抗てんかん薬のカルバマゼピン(CBZ)を使うと、細胞内の分解のしくみが強く働いて、たまった変化X型コラーゲンが片づけられ、小胞体ストレスが減り、骨の成長が回復することが示されました[9](ヒトへの応用も検討されてきました)。ところが、同じ小胞体ストレスが原因のMED5(MATN3変異)の前臨床モデルでは、カルバマゼピンは有効な小胞体ストレス低減効果を示しませんでした[8]。これは、たまるタンパク質(X型コラーゲンとマトリリン-3)の違いによって、細胞が使う対処のしくみが根本から異なるためです。この事実は、骨系統疾患をひとくくりにせず、それぞれの遺伝子型や分子のしくみに応じた治療(精密医療)を組み立てる必要があることを、はっきりと示しています。

9-3. クルクミンなど、たまりを減らす物質の可能性

カルバマゼピンに代わるMED5の候補として、近年注目されているのが、植物由来の天然成分であるクルクミン(ウコンの主成分)やビテキシン(フラボノイドの一種)です。試験管内(細胞を使った実験)の研究で、これらの物質は次のような働きを示しました[8]

まず、クルクミンを加えると、できそこないのタンパク質を見つけて分解へ導く小胞体関連分解(ERAD)という経路に関わる遺伝子(EDEM1・EDEM2)の働きが高まり、たまった変化マトリリン-3が細胞内から片づけられるのが促されました。その結果、細胞に害を与える小胞体ストレスが下がり、軟骨細胞の状態が整いました。しかも、この効果は変化したマトリリン-3を持つ細胞にだけ選択的に働き、正常なマトリリン-3や健康な細胞には悪い影響を与えなかったと報告されています[8]

💡 用語解説:ERAD(小胞体関連分解)

ERADは、小胞体の中でできそこないになったタンパク質を見つけ出し、小胞体の外へ引き出して、細胞のごみ処理装置(プロテアソーム)で分解するしくみです。いわば細胞内のリサイクル・廃棄システムで、MED5では、たまった変化マトリリン-3をこの経路でうまく片づけられるかどうかが、治療の一つの鍵になると考えられています。

このほか、タンパク質の折りたたみを助ける化学シャペロンとして働くフェニル酪酸ナトリウム(4-PBA)なども、細胞内のたまりと小胞体ストレスを減らす効果が報告されています。ただし、これらはいずれも細胞や動物、iPS細胞などを使った試験管内・前臨床の段階であり、ヒトでの有効性や安全性が確立された治療ではありません。過度な期待は禁物ですが、細胞内のタンパク質のバランスを飲み薬で整えるという発想は、MED5の軟骨の傷みを食い止める新しい方向性として、大きな可能性を秘めています。今後の研究の進展が期待される分野です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「効きそう」と「効くと確かめられた」の間には距離がある】

クルクミンやビテキシンの研究はとても魅力的で、記事だけを読むと「もう治療に使えるのでは」と感じるかもしれません。けれど、細胞の実験で良い結果が出ることと、実際の患者さんで安全に効くことのあいだには、まだ大きな距離があります。カルバマゼピンがMCDSには効いてもMED5には効かなかったように、期待された物質が思わぬところで働かないことも珍しくありません。

だからこそ私は、こうした最新の知見を「希望の芽」としてお伝えしつつ、今できることをおろそかにしないよう心がけています。関節への負担を減らす工夫、定期的な画像でのフォロー、そして必要なときの適切な手術。地道な管理の積み重ねが、若い患者さんの関節を長く守ることにつながります。研究の進歩を見守りながら、今の一歩を大切にする——それが遺伝性の骨の病気と向き合う基本だと考えています。

まとめ ─ 「わかりにくい」からこそ早く気づく

多発性骨端異形成症5型(MED5)は、MATN3遺伝子の変化によって、細胞外マトリックスの構造が乱れるだけでなく、変化したマトリリン-3が小胞体にたまり、特有の小胞体ストレス(ArmetやCreld2の増加、脂肪滴の蓄積、コレステロール合成の亢進)を引き起こすという、複雑な細胞内のしくみを持つ骨系統疾患です[7][10]

症状としては、股関節や膝の痛み、動揺性歩行、若年発症の変形性関節症を特徴とする一方で、身長は正常か軽い低身長にとどまることが多く、この「わかりにくさ」がペルテス病などとの見分けを難しくしています。とくに東アジアではMATN3がMEDの最大の原因であり、両側性のペルテス様の変化を示すお子さんでは、必要に応じた骨格X線検査と家族歴の確認を通じて、早めに遺伝子診断につなげることが大切です[1][2]

今のところ治療の中心は対症療法ですが、分子を標的にした研究は急速に進んでいます。MED5の前臨床モデルではカルバマゼピンが有効な小胞体ストレス低減効果を示さなかった一方、クルクミンは変異マトリリン-3の分解を促進して小胞体ストレスを軽減し、ビテキシンも小胞体ストレスを低下させることが細胞実験で示されました。ただし、ビテキシンは変異マトリリン-3の細胞内蓄積自体を減少させていません[8]。こうした知見が将来の治療につながることが期待されますが、現時点では前臨床の段階です。早く気づいて関節を守る工夫を始めること、そして遺伝カウンセリングを通じてご家族全体で見通しを共有すること。それが、MED5と長く付き合っていくうえで、今できる最も確かな備えになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 多発性骨端異形成症5型(MED5)とはどんな病気ですか?

MED5は、MATN3遺伝子の変化によって、関節に近い骨の端(骨端)が正しく育たなくなる、常染色体顕性(優性)遺伝の骨系統疾患です。幼児期からの股関節や膝の痛み・こわばりから始まり、若いうちから変形性関節症が進みやすいのが特徴です。一方で、背の高さは正常か軽い低身長にとどまることが多く、知能に影響はありません。正式にはOMIM #607078に登録されています。

Q2. MED5は遺伝しますか?子どもに伝わる確率は?

MED5は常染色体顕性(優性)遺伝のタイプで、親が変化を持つ場合、子に伝わる確率は理論上50%です。一方で、両親に変化がなくても、お子さんで初めて生じる新生突然変異(de novo変異)で発症することもあります。実際の見通しや次のお子さんへの影響は、変化の種類や家族歴によって異なるため、遺伝カウンセリングで詳しく整理することをおすすめします。

Q3. なぜペルテス病と間違われやすいのですか?

MED5の初期には、股関節の大腿骨頭が平らにつぶれたり硬化したりする所見が出ますが、これが両側性のペルテス病(大腿骨頭の血流障害)のX線所見にとてもよく似ているためです。見分けるには、左右対称かどうか、股関節以外の膝・手首・足首にも異常があるか、家族歴があるかを確認します。関節痛のあるお子さんでは、必要に応じて骨格X線検査で他の関節も評価することが、見誤りを防ぐ鍵になります。

Q4. 日本ではMED5(MATN3関連MED)が多いというのは本当ですか?

MEDの原因遺伝子の割合は地域によって大きく異なります。欧米ではCOMP遺伝子(MED1)が最も多く約66%を占めますが、日本や韓国などの東アジアではMATN3(MED5)が最多で、日本の研究では約47%、韓国では約55%と報告されています。これは、特定の変化を持つ祖先から世代を超えて伝わった創始者効果によると考えられています。日本で骨端の異常を診るときには、まず候補として考えるべきタイプです。

Q5. 治る薬はありますか?最新の治療は?

現時点で、MED5を根本的に治す薬はまだありません。治療の中心は、関節への負担を減らし、症状をやわらげ、必要に応じて手術(骨切り術や人工関節)を行う対症療法です。研究段階では、クルクミンが細胞内にたまった変異マトリリン-3の分解を促進して小胞体ストレスを軽減することが細胞実験で示されています。ビテキシンも小胞体ストレスを低下させましたが、変異マトリリン-3の細胞内蓄積自体は減少させませんでした。ただしこれらは前臨床の段階で、ヒトでの有効性や安全性は確立されていません。治療の判断は必ず主治医とご相談ください。

Q6. どんな検査で診断できますか?

まず画像所見を評価し、必要に応じて骨格X線検査で複数の関節に骨端の異常が広がっていないか、背骨に目立つ異常がないかを確認します。そのうえで、原因遺伝子を特定する遺伝子検査が確定診断の鍵になります。MED5は見た目が軽くわかりにくいため、MATN3を含むNGS遺伝子パネル検査(多発性骨端異形成症パネル・骨系統疾患パネル・低身長パネルなど)が有用です。パネルで判明しない場合は、エクソーム検査でさらに広く調べる選択肢もあります。

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参考文献

  • [1] Multiple Epiphyseal Dysplasia, Autosomal Dominant. GeneReviews® [Internet]. [NCBI Bookshelf NBK1123]
  • [2] Revisit of multiple epiphyseal dysplasia: ethnic difference in genotypes and comparison of radiographic features linked to the COMP and MATN3 genes. Am J Med Genet A. 2011;155A(11):2669-2680. [PubMed 21965141]
  • [3] Comparison of orthopaedic manifestations of multiple epiphyseal dysplasia caused by MATN3 versus COMP mutations: a case control study. BMC Musculoskelet Disord. 2014. [PMC3984757]
  • [4] Multiple epiphyseal dysplasia mutations in MATN3 cause misfolding of the A-domain and prevent secretion of mutant matrilin-3. Hum Mutat. 2005. [PMC2726956]
  • [5] Decreased chondrocyte proliferation and dysregulated apoptosis in the cartilage growth plate are key features of a murine model of epiphyseal dysplasia caused by a matn3 mutation. Hum Mol Genet. 2007. [PubMed 17517694]
  • [6] Functional knockout of the matrilin-3 gene causes premature chondrocyte maturation to hypertrophy and increases bone mineral density and osteoarthritis. Am J Pathol. 2006. [PubMed 16877353]
  • [7] Armet/Manf and Creld2 are components of a specialized ER stress response provoked by inappropriate formation of disulphide bonds: implications for genetic skeletal diseases. Hum Mol Genet. 2013. [PMC3842181]
  • [8] Curcumin Reduces Pathological Endoplasmic Reticulum Stress through Increasing Proteolysis of Mutant Matrilin-3. Int J Mol Sci. 2023. [PMC9867355]
  • [9] Carbamazepine reduces disease severity in a mouse model of metaphyseal chondrodysplasia type Schmid caused by a premature stop codon (Y632X) in the Col10a1 gene. Hum Mol Genet. 2018. [PubMed 30010889]
  • [10] Human pluripotent stem cell model of multiple epiphyseal dysplasia with MATN3 mutation identifies altered matrix organisation and upregulation of the cholesterol biosynthesis pathway. Osteoarthritis Cartilage. 2026. [ScienceDirect]
  • [11] Hand radiology characteristics of patients carrying the T(303)M mutation in the gene for matrilin-3. Scand J Rheumatol. 2006;35(2):138-142. [PubMed 16641049]
  • [12] MATRILIN 3; MATN3. OMIM. [OMIM 602109]
  • [13] Similarities and Differences of Multiple Epiphyseal Dysplasias: Genetic Features and Natural Course in 22 Patients. Genes (Basel). 2026. [MDPI Genes 17(4):463]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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