目次
「周りの子供に比べてうちの子は少し変わっている?」
「もし自分の子どもが自閉症だったらどうしよう?」
育児をしている親であれば誰しもが一度はこのような疑問を持つのではないでしょうか?
そこでこの記事では、子供のダウン症について、以下の内容をお伝えします。
- ・子どもの自閉症の特徴や原因・治療法
- ・「自閉症かも?」と感じた親がすべき行動
- ・子どもの自閉症に関するよくある質問
子供の自閉症に関してご両親の不安を解消できる内容の記事になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
子どもの自閉症とは?自閉症スペクトラムとの違い
自閉症に関する正しい知識がなければ、自分の子供が自閉症かどうかを判断することはできません。
そこでこの章では、子供の自閉症に関する基礎知識について解説しますので、ぜひご活用ください。
「自閉症の定義」と「自閉症スペクトラムとの違い」
文部科学省は自閉症を以下のように定義しています。
①他者との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする発達の障害
3歳ぐらいから症状が出はじめて、特に社会人になると症状が表面化する傾向にあります。社会生活を送る上で人とは少し違ったり、症状が悪目立ちしたりした結果、自閉症をはじめとする発達障害が疑われるようになるからです。
また、2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)では、自閉症という定義を廃止して、以下の3つを統合して「自閉症スペクトラム/自閉症スペクトラム障害(ASD)」と呼ぶこととしています。
- ・自閉症
- ・広汎性発達障害
- ・アスペルガー症候群
そのため、この記事でもDSM-5に従い「自閉症」ではなく、「自閉症スペクトラム」との表記で進めていきます。
※引用資料:文部科学省/自閉症・情緒障害とは
自閉症スペクトラムの原因
自閉症は医学的に解明されていない部分が多く、現在のところ脳機能の成長に偏りや不完全さが原因であると考えられています。また、胎児が育つ体内の環境や周産期のトラブルが原因で発症するとも考えられていますが、明確な根拠はありません。
例えば、高齢出産や妊娠前からの喫煙習慣、低出生体重児などが自閉症の発症に関係している可能性もあります。
一方で、出生後の両親の育児や生活環境との因果関係はなく、あくまで生まれつきの脳機能障害との位置付けがされています。
そのため、「我が子が自閉症ではないか?」と疑っており、自分の育児が原因と感じている方は、自分を責める必要はありませんので、ご安心ください。
自閉症スペクトラムの発生頻度
自閉症スペクトラムは「約1000人に1人」、そして自閉症だけに絞ると「約100人に1人」が発症すると考えられています。
女性に比べて男性の発症率は「約4倍(5人中4人が男性)」です。一方で女性は知的障害を伴って発症するケースが多いことも分かっています。また、世界中で自閉症スペクトラムの方がいることから、地域や文化による偏りはなさそうです。
男女とも知的障害を伴わず発症した場合は、本人は社会での生きにくさを感じているものの、障害に対する過小評価されてしまいがちです。
※参考資料
厚生労働省/ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)について
厚生労働省/自閉症 Q&A
【症状】自閉症スペクトラムの特徴
自閉スペクトラムの特徴と一口に言っても多岐に渡る上に、人によって程度は全く異なります。
代表的な自閉症スペクトラムの特徴(一次的な症状)は、以下の通りです。
- ・言語の発達が遅い
- ・特定のことに強いこだわりがある
- ・食べ物の好き嫌いの偏りがある
- ・1人遊びが多い(小学校などの集団行動で顕在化)
- ・いつも同じもので同じ遊びをする
- ・外的刺激(音・におい・光など)に過敏 or 鈍感
- ・相手の気持ちを考えた行動が難しい
- ・会話が成立しない(相手に共感しない)
- ・急なスケジュール変更が苦手
- ・一度に複数のことができない・理解できない…etc
幼少〜学童期にかけては、多少周りとの関係性や学習などに遅れがあっても、その子の個性やキャラクターとして成立します。そのため、自閉症スペクトラムであることに気づかず生活しているケースも少なくありません。
一方で、社会人になると自閉症スペクトラムが表面化します。
というのも、会社の一員として協調性や協力し合うことが難しいなどの弊害が出てくるからです。他の社員との関係性が築けなかったり、同期よりも成長が遅かったりすると、自閉症スペクトラムの可能性が考えられます。
※参考資料:厚生労働省/ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)について
自閉症スペクトラムの合併症
自閉症スペクトラムの合併症は、以下の通りです。
- ・知的能力障害(知的障害)
- ・ADHD(注意欠如・多動症)
- ・発達性協調運動症(DCD)
- ・不安症
- ・抑うつ障害
- ・学習障害(限局性学習症、LD)
- ・統合失調症スペクトラム
- ・てんかん
- ・睡眠障害
様々な障害を合併することが分かったのではないでしょうか。中でも1つ以上の精神疾患を合併する方は「約70%」、2つ以上の方は「約40%」と言われています。自閉症スペクトラム自体ではなく、二次的な合併症による苦痛やストレスに悩まされることも十分あるのです。
そのため、自閉症スペクトラムのコントロールに加えて、合併症の発症や悪化についても十分観察していく必要があります。
※参考資料
厚生労働省/ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)について
厚生労働省/自閉症 Q&A
自閉症スペクトラムの検査・診断
この章では、実際に病院で行われる自閉症スペクトラムの検査や診断について詳しく解説します。
「どんな検査をされるか心配で受診できていない」という方に向けて書いたので、ぜひご覧ください。
自閉症スペクトラムの検査・診断
自閉症スペクトラムの診断には、以下の検査が行われます。
- ・問診
- ・認知・知能検査
- ・心理検査
- ・血液検査
- ・MRIや脳波検査
ただし、心臓や消化器のように血液検査などの客観的なデータを得ることが難しいため、これらの検査結果に加えて、診断する医師の経験が頼りです。
診断基準には、アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)が用いられます。問診では日常生活での困り事や行動パターンから自閉症スペクトラムの有無を探ります。
認知・知能検査ではテスト形式で実際の知能を測り、脳の発達が年齢に伴っているかを探ることが可能です。また、脳機能などの合併症(併存症)を探るため、MRIや脳波検査などが進められることもあるでしょう。
これらの検査結果を総合して自閉症スペクトラムの診断が行われます。
自閉症スペクトラムを診断する意義
子どもの自閉症を疑っても、実際に診断されるとなると怖いですよね。診断された瞬間から我が子が障害者になり、「世間とは少し違うのでは?」と考えて劣等感を感じる親もいます。
しかし、自閉症スペクトラムと診断されるのは、悪いことばかりではありません。
自閉症スペクトラムを診断するには、以下の3つの意義があります。
- ・診断されることでこれまでの悩みや不安の原因が明らかになる
- ・育児の方向性を明確にできる
- ・社会的なサポート制度を受けられる
はじめに、診断されることで我が子に感じていた違和感の原因が分かり、これまでの悩みや不安が解消されるでしょう。また、子どもへの正しい接し方を考えられ、親子の関係性や育児の方向性を改善することも可能です。
自閉症スペクトラムの診断書を持って障害者手帳の申請を行えば、社会的なサポートを受けたり、あなたの子どもに最適な教育環境(特別支援学校など)を整えられたりもできるでしょう。
診断を受けるのは子どもの障害を受け入れることでもあります。辛いと感じる反面、これから育児をしていくためのサポートを受けられるメリットもあるのです。
自閉症スペクトラムの3つの治療法
自閉症スペクトラムと診断されたら、以下の3つの治療が始まります。
- ・治療法①:環境調整
- ・治療法②:カウンセリング・認知行動療法
- ・治療法③:薬物療法
これらの治療を通して、症状をコントロールしながら障害と上手に付き合っていきましょう。
治療法①:環境調整
お子さんの特性や症状の程度に合わせた環境調整をすることで、症状のコントロールを行います。そのために、まずはお子さんやご両親が日常生活で抱えている課題や困りごとを明らかにする必要があります。
環境調整をするポイントは、以下の3つです。
- ・具体的なイメージが持てる
- ・視覚的な情報を取り入れる
- ・困り事を解消・回避する
自閉症スペクトラムの子どもは、頭でイメージできないことに強い不安やストレスを感じます。例えば、急なスケジュール変更が加わると不安やパニックになります。
また、一度に大量の情報を伝えると思考停止となり、結果として何も伝わらないこともあるでしょう。そのため、視覚的な情報(イラストや動画など)を用いて、自閉症スペクトラムの子どもがイメージしやすくする関わりが必要になります。
このようにちょっとした工夫をするだけでも、自閉症スペクトラムの子どもが過ごしやすい環境調整をしていけます。
治療法②:カウンセリング・認知行動療法
現在、自閉症スペクトラムの子ども自身が悩みや困りごとを抱えているなら、カウンセリングや認知行動療法が有効です。
カウンセリングは聞き馴染みがある方も多いのではないでしょうか。第三者に悩みや困りごとを聞いてもらい、その中で今できる改善策を一緒に考えてもらえます。
ただし、カウンセリングはある程度自分の思いを言えないと成立できないので、幼児期のお子さんには適していません。
認知行動療法とは、自分の特性や癖、行動パターンを知り、物事の見方や捉え方を変えて、行動に結びつける治療法です。
例えば、残り10問の宿題を「まだ10問もある…」と捉えるか、「あと10問で終わる!」で、その後の宿題に取り組む意欲は大きく変わりますよね。
このように自閉症スペクトラムの子どもの心理を理解して、行動へ促すことのできるカウンセリングや認知行動療法も有効な治療法と言えるでしょう。
治療法③:薬物療法
環境調整やカウンセリングでコントロールできない症状に対しては、薬物療法が行われます。
ただし、薬物療法も他の治療法と同じように、あくまで症状のコントロールが目的になります。例えば、症状によるストレスや睡眠障害、転換発作や抑うつ状態などは薬物療法が適応となる代表的な症状でしょう。
強い薬を用いる場合もあるため、副作用の程度を見ながら最低量の薬で症状のコントロールができるようにします。
ただし、症状が改善されたからといって自己判断で内服を止めると悪化の原因になります。そのため、薬の調整や終了については、必ず医師に相談するようにしましょう。
【状況別】自閉症を疑った両親がすべき行動
自分の子供の自閉症を疑っても、その後どのような行動をすべきなのか分からないという両親も多いのではないでしょうか?
そこでこの章では、状況別に合わせた以下の2つの行動について解説します。
- ・日常生活に支障が出ていない場合は「様子観察でOK」
- ・日常生活に支障が出ている場合は「病院を受診」
では、1つずつ解説します。
日常生活に支障が出ていない場合は「様子観察でOK」
日常生活に支障が出ていない場合は、様子観察でも良いでしょう。ただし、育児をするご両親がストレスや限界を感じているなら、すぐに医療機関に相談しましょう。
自閉症スペクトラムのすべての方が病院を受診して、症状をコントロールするレベルではありません。中には知的障害やその他目に見えた症状がない方も多くいるからです。
お子さんやご家族の日常生活に支障が出ていない程度であれば、無理に病院を受診する必要はありません。その上で「幼稚園・小学校に進学」「社会人になった」などの急激な環境の変化があった際は、症状の出現に注意してあげましょう。
自閉症スペクトラムの程度は人によって全く異なるのです。
日常生活に支障が出ている場合は「病院を受診」
日常生活に支障が出るほど症状が強いなら、専門病院を受診しましょう。
症状が強い以上、ご家族だけで改善するのは非常に難しいからです。
小児科・小児精神科・発達外来などがある専門病院を受診するメリットは、以下の通りです。
- ・薬物療法により症状をコントロールできる
- ・本人だけでなく、ご両親もカウンセリングを受けられる
- ・日常生活の悩みや困り事を専門家に相談できる
自閉症スペクトラムの育児に明確な答えや正解はありません。だからこそ、日々育児をするご両親は悩み、強い不安を抱えます。これらの不安を抱えたまま生活し続けるのは、お子様・ご両親の両方にとってストレスになるでしょう。
一度専門病院認定診察してもらうことをおすすめします。
自閉症の育児に関する3つの相談先
お子様の年齢が低いなら以下の施設を相談先にすると良いでしょう。
- ・発達障害者支援センター
- ・子育て支援センター
- ・児童発達支援事業所
厚生労働省により各都道府県に設置された「発達障害者支援センター」なら相談支援や各専門機関と連携をして適切な対処をしてもらえます。
また、お子さんが幼児期など小さいなら「子育て支援センター」に相談すると効果的です。育児に悩む親の相互交流を目的として、具体的な悩み相談や思いの共感・共有ができます。
この他にも自助会へ参加する方法もあります。詳しくは「発達障害の種類|子どもの成長具合が心配な親が今すべき全ての行動を解説」の記事に書いていますので、ぜひご覧ください。
※参考資料
厚生労働省/発達障害の理解 P23
国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター/ 発達障害者支援センター・一覧
厚生労働省/自閉症 Q&A
子どもの自閉症スペクトラムに関するよくある5つの質問
子どもの自閉症スペクトラムについて悩みが尽きることはありません。
そこで自閉症スペクトラムに関するよくある以下の5つの質問をまとめました。
- 質問①:子どもが自閉症かどうかを確かめるチェックリストはありますか?
- 質問②:子どもの自閉症は完治しますか?
- 質問③:自閉症になる子どもの特徴はありますか?
- 質問④:自閉症の子どもが通える学校はありますか?
- 質問⑤:自閉症で受けられる社会的なサービスはありますか?
では、1つずつ解説します。
質問①:子どもが自閉症かどうかを確かめるチェックリストはありますか?
厚生労働省や医学会の明示したチェックリストはありません。
というのも、自閉症スペクトラムは心臓や消化器の病気のようにデータだけで診断をするのが難しい障害だからです。また、診断する医師の経験にも左右されるため、チェックリストだけで自閉症スペクトラムの評価をするのは難しいのです。
そこでお子さんが自閉症スペクトラムか気になるなら、専門病院を受診しましょう。通常は以下の検査を行います。
- ・問診
- ・認知・知能検査
- ・心理検査
- ・血液検査
- ・MRIや脳波検査
これらの検査結果をもとに、アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)を診断基準として、自閉症スペクトラムの有無が判断されます。
この記事の第二章「【症状】自閉症スペクトラムの特徴」で解説した症状にお子さんが当てはまるなら、専門病院を受診して、しっかりと検査をしてもらうことをおすすめします。
質問②:子どもの自閉症は完治しますか?
自閉症(自閉症スペクトラム)は完治することはなく、治療のメインは対症療法になります。
ただし、完治しないからといって落ち込むことはありません。治療により症状を上手くコントロールできれば、社会生活を営むのに支障がない程度を維持できるからです。
具体的な治療方法については、この記事の第五章「自閉症スペクトラムの治療」で紹介しているので、ご覧ください。
質問③:自閉症になる子どもの特徴はありますか?
自閉症スペクトラムの子どもの特徴は、この記事の第二章「【症状】自閉症スペクトラムの特徴」で解説した通りです。
一方の「自閉症(自閉症スペクトラム)になる子どもの特徴」についてですが、これは分かりません。というのも、自閉症スペクトラムとは、生まれつきの脳機能の成熟に偏りがあったり、不完全だったりすることで発症する障害だからです。
つまり、生まれてきた時点ですでに自閉症スペクトラムを抱えているのです。そして、成長して徐々に集団生活を営むようになり、症状が表面化して障害が疑われ始めます。
質問④:自閉症の子どもが通える学校はありますか?
特別支援学校(学級)という発達障害を抱えた子どもが通学する教育制度があります。
個々の学習ペースに合わせて学校教育をしてもらえるだけでなく、視覚や体験を通して集団社会での人間関係のスムーズな構築ができるような学習もできます。個々の学習ペースに合わせた教育であるため、ご両親も安心できるのではないでしょうか?
また、幼児期は周りと同じように幼稚園や保育所に通園します。保育士は育児のスペシャリストであるため、子育てに悩んだ際にすぐ相談できる相手がいるのがメリットです。
自閉症スペクトラムの症状が表面化しておらず、日常生活に支障がないなら、通常の小・中・高校・大学へ進学するケースもあります。
お子さんの状況に合わせて、教育体制を柔軟に変えられるので、ご安心ください。
質問⑤:自閉症で受けられる社会的なサービスはありますか?
社会的なサービスはあります。ただし、障害者手帳の申請が必要になります。
「障害者手帳の申請方法」や「実際に受けられる社会的なサービス」については、「発達障害の種類|子どもの成長具合が心配な親が今すべき全ての行動を解説」の記事でまとめているため、ぜひご覧ください。
まとめ: 自閉症について知ることから始めるのが重要
以上、子どもの自閉症スペクトラムの特徴について紹介しました。
自閉症スペクトラムの子どもには、以下の特徴がありましたね。
- ・対人関係が苦手
- ・特定のことに強いこだわりを持つ
- ・外的な刺激に敏感
これらの特徴から集団行動をしたり、友人との関係性を作ったりするのが苦手な子どもが多いです。しかしながら、学童期では個性やキャラクターとして成立して、障害に気づかず過ごしていることも少なくありません。
ただし、本人は1人で症状に悩んでいる可能性があるため、周りの大人が障害に気づき、サポートしてあげることが重要になります。
日常生活に支障が出るほどの症状であれば、一度病院で相談してみると良いでしょう。また、病院以外にも以下の相談先がありましたね。
- ・発達障害者支援センター
- ・子育て支援センター
- ・児童発達支援事業所
1人で悩んでも解決しないので、これらの相談先を活用することも有効な方法になります。
この記事が自閉症スペクトラムに関する基礎知識を学ぶきっかけになれば幸いです。