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遺伝という言葉は普段から何気なく使われていますが、遺伝に関わる染色体やDNAについて皆さんはどこまでの知識を持っていますか?
親と顔が似ていたり、アスリートが親の子どもに高い身体能力がみられたり、遺伝による人体の神秘はとても奥が深いものとなっています。
染色体やDNAは遺伝子を語る上で絶対に無視できない存在であり、子どもを生んで育てる親として最低限知っておかなければいけないこともあります。
そこでこの記事では、染色体とDNAの違いをそれぞれの特徴を挙げながらご説明した上で、遺伝の仕組みと重要ポイントを解説していきます。
染色体とDNAの違いとは?
日常生活の中で染色体やDNAという言葉が使われることはなかなかありませんが、人体と生命においてとても重要なワードになっています。
まずは、染色体とDNAそれぞれの特徴とその違いについてご説明していきます。
染色体の特徴
私たちの肉体は、筋肉・骨・心臓・神経などのさまざまな働きをする器官からできており、その器官をつくる細胞はなんと、60兆個にも及ぶといわれています。
細胞ひとつひとつの中に膜で包まれた核が存在しており、細胞核の中にある棒状のものが「染色体」と呼ばれています。
染色体は、ヒストンと呼ばれるタンパク質にDNAが螺旋状につらなってできている構造のことを指し、遺伝子の発現や伝達といった人の体をつくる重要な役割を担っています。
常染色体と性染色体
人間の体細胞にそれぞれ染色体が存在し、一つの細胞の中に合計46本の染色体があります。
46本の染色体のうち44本を「常染色体」と呼びます。常染色体は2本で1セットの対になっており、それぞれ1番〜22番の番号が割り振られています。
基本的に染色体のサイズが大きいほど番号が早く、小さいほどサイズ番号が遅くなります。
残りの2本は「性染色体」と呼ばれ、X染色体とY染色体の2種類があります。性別が男性の場合は母親に由来するX染色体と父親に由来するY染色体を持ち、女性の場合は父親と母親に由来するそれぞれのX染色体を1本ずつ持っています。
22種類の常染色体、そして2種類のXY性染色体を含めた24種類の染色体1組分はヒトゲノムと呼ばれています。
DNAの特徴
染色体にある「DNA」はデオキシリボ核酸を略したものであり、以下の4つの化合物(塩基)からなる繊維状の高分子となっています。
- (A)アデニン
- (T)チミン
- (G)グアニン
- (C)シトシン
DNAは、AとT・GとCがそれぞれ結合した32億にも及ぶ塩基対を持っており、塩基配列には、親が子どもに対して自分と同じものを複製するための遺伝情報がコード化されています。
その姿は鎖状の2本の紐をねじったような2重螺旋構造になっており、染色体の中に細かく折りたたまれた形で存在しています。
タンパク質を合成する
タンパク質は筋肉や皮膚などの構造を構成する役割があり、人間の体にとって最重要といっても過言ではないほどの物質です。また、酵素をつくるためにもタンパク質が必要となります。
その重要なタンパク質をつくるコードがDNAに含まれており、さまざまな器官の設計図として役立っているのです。
遺伝の仕組みと重要ポイント
人間の体をつくる細胞の中にある染色体、そしてその染色体にあるDNAについてご説明しましたが、ここからは染色体とDNAが深く関わる遺伝の仕組みについて触れていきます。
遺伝子はDNAの中に存在する
親から子に対して生物の特徴が受け継がれることを遺伝といいますが、その情報を伝達するものが「遺伝子」です。
遺伝子は染色体にあるDNAの中に存在していますが、DNA全てに遺伝子が存在しているわけではありません。
一部のDNAが持つ遺伝情報を伝達できる領域(タンパク質をつくるコードを持つ場所)が遺伝子とされ、その数は約2万2千個にも及ぶといわれています。
遺伝子で個性が生まれる要因
人間の細胞全てが1個の受精卵に由来しているため、人による遺伝子の違いは0.1%しかないといわれています。この僅かな違いこそ、親からの遺伝によって人それぞれの体の特徴や性格を持つという「個性」の誕生に繋がっているのです。
目の色を決める遺伝子、鼻の形を決める遺伝子、というように個性を生み出す遺伝子は「遺伝子型」と呼ばれており、DNAにある塩基に置き換わりが発生する現象である「SNP(スニップ)」が要因で遺伝子型が誕生します。
人の個性を生み出すSNPですが、遺伝子の変化に伴い外見的な特徴が現れたり、特定の薬を投与しても効果がでなかったりすることがあります。これらの個人差は「表現型」と呼ばれ、食事や病気などに影響されるといわれていますが、解明されていない部分も多くあります。
ミトコンドリアDNA
DNAは基本的に細胞核に存在する染色体の中にありますが、例外もあります。
細胞内に存在するものの、細胞核から唯一外れたDNAが「ミトコンドリアDNA」と呼ばれるものです。環状になって数百個〜数千個くらい存在しており、その一部が人間のエネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)をつくるという重要な働きをしています。
遺伝子は父親、母親の両方から性質を受け継ぐのが本来の役割ですが、ミトコンドリアDNAの場合は母親側の性質のみ遺伝するという特徴があり、母性遺伝とも呼ばれます。
遺伝子変異による疾患
男性の場合はXY、女性の場合はXXという組み合わせで2本の性染色体を持っていますが、染色体1本につき30億個のDNAが存在し、そのDNAの一部に3万個の遺伝子があります。
DNAは4つの塩基からなるものですが、本来の塩基配列が乱れて「遺伝子情報から本来つくられるはずのタンパク質がつくられない」、または「異常なものがつくられる」といった遺伝子変異が起こり、遺伝性疾患の発症に繋がります。
遺伝性疾患は親から子に受け継がれるため、親が何らかの遺伝子疾患を持っていた場合は、遺伝子疾患を持つ子どもが生まれるリスクがあることを医師からきちんと説明を受けなければなりません。
全ての妊娠に対して遺伝性疾患のリスクは伴い、以下のような疾患を持った子どもが生まれる可能性があります。
- 口唇裂・口蓋裂
- 神経管閉鎖不全
- 染色体異常
- 単一遺伝子疾患
これらの疾患は、家族歴や妊婦さんの生活環境などでリスクが高まるケースもあります。
例えば、二分脊椎や無脳症といった症状がある神経管閉鎖不全は、家族が神経管閉鎖不全を持っている場合に発症のリスクが高まります。また、葉酸の摂取量でも発症の確率が変わるため、妊娠可能な年齢になったら葉酸のサプリメントを摂取するなどの対策も可能です。
染色体検査(遺伝子検査)
妊娠中に、お腹にいる赤ちゃんが遺伝性疾患や染色体異常を持っているかどうかを検査することができます。
妊娠10週目からは、染色体異常が原因で発症する症候群を持っているかを調べられる「NIPT」を受けられるようになります。
NIPTは、母親から採血を行ない染色体の数を調べる検査で、母体と赤ちゃんを傷つけることがないとても安全で高い精度の検査として注目されている新出生前診断です。
検査で本来のあるべき染色体の数と差異が見つかった場合、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーという症候群を持っている可能性が示唆されます。
ダウン症候群の場合、その検査精度は99%と限りなく100%に近いため、従来の出生前診断よりもNIPTを受ける妊婦さんが増えているのが現状です。
ただし、大学病院のように日本産婦人科医会から認定された認可施設は、年齢35歳以上で妊娠10週目以降の妊娠という検査条件が前提となり、さらに母体血清マーカー検査で陽性反応が出た、染色体異常性を持っている可能性が示唆される家族歴である、などの追加条件が必要となるため、簡単にNIPTを受けられない問題があります。
認可施設でNIPTを受けられない場合は、妊娠10週目以降に年齢制限なしでNIPTを受けられる無認可施設が選択肢となります。
無認可施設は認可施設のように臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーがいるとは限らないため、事前に医療環境を調べておくことをおすすめします。
まとめ
染色体とDNAの違い、そして遺伝の仕組みと知っておきたい重要ポイントをご紹介しました。
人間の60兆個にも及ぶ細胞は、そのひとつひとつに染色体が存在します。染色体は細胞の核の中にあるもので、遺伝情報がコード化された鎖状のDNAが染色体の中に折り込まれており、そのDNAの一部の遺伝情報を持つ領域が遺伝子と呼ばれています。
それぞれ明確な違いがありますが、人間のエネルギーの源であるタンパク質をつくり、体の特徴・性格・個性などを生み出すという大きな役割に共通点があります。
遺伝子の突然変異や親からの遺伝で発症する染色体異常症はどの妊婦さんにもリスクが伴うため、高精度かつ安全に検査できるNIPTを受けることをおすすめします。
東京の「ミネルバクリニック」は、どこよりも早い妊娠9週目からNIPTを受けられる無認可施設です。
無認可施設ながら大学病院レベルの臨床遺伝専門医が在籍しているため、豊富な知識と経験が活かされた国内屈指のNIPTを受けることができます。
年齢制限によって染色体検査を受けられずにお困りの方は、この機会に「ミネルバクリニック」までお気軽にお問い合わせください。