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XY染色体とは?XXとXYで男女が決まる仕組みと性分化・5つの症候群

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

XY染色体とは、ヒトの性染色体であるX染色体とY染色体のことで、一般的にXXの組み合わせは女性、XYの組み合わせは男性になります。赤ちゃんがXXになるかXYになるかは、受精した精子がX染色体とY染色体のどちらを持っていたかで決まります。ただし、実際に体が男性型・女性型へ進むかどうかは、Y染色体にあるSRY遺伝子が働くかどうかと、その後に分泌されるホルモンによって段階的に決まります。染色体の組み合わせだけで、体の性や性自認がすべて決まるわけではありません。この記事では、染色体で男女が決まる仕組み、XXとXYの違い、XYなのに女性になる性分化疾患(DSD)、性染色体の数の変化で起こる5つの症候群、NIPTで分かることを、臨床遺伝専門医の立場から解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 XY染色体・SRY・性分化・性染色体異常
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. XXとXY、どちらが女性ですか?

A. 一般的に、XXが女性、XYが男性です。男女とも染色体は46本で、そのうち1対(2本)の性染色体の組み合わせだけが違います。赤ちゃんの組み合わせは、受精した精子がX染色体とY染色体のどちらを持っていたかで決まります。Y染色体にあるSRY遺伝子が適切に働くと精巣分化が始まります。SRYを持たない通常の46,XXでは卵巣分化が進みますが、46,XYでSRY経路が機能しない場合には索状性腺となることがあります。SRYがX染色体に移っている、ホルモンの受容体が働かないなどの理由で、XXでも男性の体、XYでも女性の体になる「性分化疾患(DSD)」もあります。

  • ➤XXとXY → XXは女性、XYは男性が一般的。男女とも染色体は46本
  • ➤性別の決まり方 → 卵子は必ずX。X精子かY精子かで決まる
  • ➤性分化の流れ → 性染色体 → 性腺(精巣・卵巣)→ 内性器 → 外性器の順に進む
  • ➤XYなのに女性 → Swyer症候群やアンドロゲン不応症などの性分化疾患(DSD)
  • ➤5つの症候群 → ターナー・トリプルX・クラインフェルター・XYY・XXYY

1. XY染色体とは?XXは女性・XYは男性になる仕組み

XY染色体とは、男女で組み合わせが異なる性染色体、X染色体とY染色体のことです。一般的に、XXの組み合わせを持つ人は女性、XYの組み合わせを持つ人は男性になります。「染色体で男女が決まる」と言われるのは、この組み合わせの違いを指しています。

ただし、染色体は性の出発点にあたる情報で、体の性はその後の胎児期に、遺伝子とホルモンの働きによって段階を追ってつくられていきます。この章では、まず性染色体とは何か、XとYはどう違うのか、赤ちゃんの性染色体がどのように決まるのかを順に整理します。

性染色体とは:46本のうち1対だけ男女で違う

ヒトの染色体は、男性も女性も同じ46本(23対)です。男女で違うのは本数ではなく、23対のうち1対(2本)の性染色体の組み合わせです。

染色体とは、細胞の核の中で、遺伝情報を担うDNAがタンパク質に巻き付いて折りたたまれた構造のことです。DNA・遺伝子・染色体・ゲノムがどう違うのかは染色体・DNA・遺伝子・ゲノムの違いで、染色体がどのような形でDNAを収めているかは染色体の構造と機能で解説しています。

46本のうち44本(22対)は男女に共通の常染色体で、大きいものから順に1番〜22番の番号が付けられています。「21トリソミー」のように染色体の数の変化を番号で呼ぶのは、この番号を使っているためです。残る1対の2本が性染色体で、X染色体とY染色体の2種類があります。常染色体は父親由来と母親由来の同じ番号の2本が対になっていますが、性染色体だけは、男性ではXとYという形も中身も違う2本が対になっている点が特徴です。

女性の染色体(46,XX)と男性の染色体(46,XY)

女性の染色体は一般に「46,XX」、男性の染色体は「46,XY」と書き表されます。この書き方を核型(かくがた)といい、最初の数字が染色体の総数、カンマの後ろが性染色体の組み合わせを表しています。染色体検査や出生前検査の結果は、この形式で記載されます。

💡 用語解説:核型(かくがた)

核型とは、1つの細胞が持つ染色体の数と形を、決まった規則で整理して書き表したものです。「46,XX」は染色体が46本で性染色体がXX、「47,XXY」は47本で性染色体がXXYであることを意味します。本数が多い・少ないといった変化は、この表記から読み取れます。

女性のXXは、父親と母親から1本ずつX染色体を受け継いだものです。男性のXYでは、X染色体は母親から、Y染色体は父親から受け継ぎます。Y染色体は父親から息子へだけ受け継がれる染色体で、母親から息子へ、父親から娘へは伝わりません。反対に、男の子が持つ1本のX染色体は必ず母親から受け継いだものです。父親からしか受け継がれないもの、母親からしか受け継がれないものがある、という話の多くは、この性染色体の伝わり方で説明できます。

X染色体とY染色体の違い

X染色体とY染色体は、大きさも、のっている遺伝子の数もまったく違います。米国国立医学図書館の解説によると、X染色体は約1億5,500万塩基対からなり、細胞内のDNA全体の約5%を占め、タンパク質をつくる遺伝子を900〜1,400個ほど含むと推定されています[1]。一方、Y染色体は5,900万塩基対あまりで、DNA全体の2%弱を占め、タンパク質をつくる遺伝子は70〜200個ほどと推定されています[2]。

X染色体には、脳や血液、筋肉など、性別に関係なく生きていくのに必要な遺伝子が数多くのっています。これに対しY染色体の遺伝子は、精巣をつくる引き金になるSRY遺伝子や、精子をつくるのに必要な遺伝子群など、男性の性決定と生殖に関わるものが中心です[2]。

XとYは形も中身も違いますが、両端には同じ遺伝子を共有する「偽常染色体領域」という部分があります。この領域の遺伝子は男女とも2コピーずつ持つことになり、正常な発達に欠かせません[2]。性染色体の構造、偽常染色体領域、X染色体不活化などの詳しい仕組みは、用語解説の性染色体とはでまとめています。

赤ちゃんの性別は精子で決まる

赤ちゃんの性染色体がXXになるかXYになるかは、受精した精子がX染色体とY染色体のどちらを持っていたかで決まります。精子と卵子ができるときの減数分裂という特別な細胞分裂で、染色体の数は半分の23本になります。このとき、卵子に入る性染色体は必ずX染色体ですが、精子にはX染色体を持つもの(X精子)とY染色体を持つもの(Y精子)が、ほぼ半数ずつつくられます。

🧬 精子と卵子の組み合わせで決まる性染色体

精子 卵子 受精卵の性染色体 一般的な性
X精子(常染色体22本+X) X卵子(常染色体22本+X) 46,XX 女性
Y精子(常染色体22本+Y) X卵子(常染色体22本+X) 46,XY 男性

※卵子の性染色体は常にXのため、赤ちゃんの性染色体の組み合わせを決めるのは精子の側です。

つまり、性別を左右する染色体は父親の精子から来ます。ただし、どちらの精子が受精するかは偶然によるもので、父親の体質や意思で選べるものではありません。「性別は父親で決まる」という言い方は、染色体の運び手が精子であるという意味では正しいのですが、「父親の側に原因がある」という意味ではない点に注意が必要です。

男の子と女の子はどちらが生まれやすい?

生まれてくる赤ちゃんは、男の子がわずかに多く、日本の出生性比はおおむね女児100に対して男児105です。参議院の調査資料でも、日本の出生時の男女比は「おおむね105:100(女性=100)」で、1970年代前半以降は男性の比率がやや低下傾向にあると整理されています[3]。

X精子とY精子はほぼ同じ数だけつくられるのに男児が少し多く生まれる理由は、受精から出生までのさまざまな段階が関わると考えられており、一つの原因で説明できるものではありません。また、この105:100は集団全体の比率で、一人ひとりの妊娠で男の子が生まれる確率を高めたり下げたりする方法を示すものではありません。性交のタイミングや食事などで産み分けを試みる方法が紹介されることがありますが、染色体の仕組みから見て、性別を確実に選べる方法ではありません。

YY染色体の人がいないのはなぜ?

性染色体がYYだけの人はいません。卵子は必ずX染色体を持っているため、受精卵には少なくとも1本のX染色体が入るからです。

さらに、X染色体には生きていくのに欠かせない遺伝子が数多くのっているため、X染色体を1本も持たない受精卵は育つことができません。ターナー症候群(45,X)のようにX染色体が1本だけの状態はありますが、Y染色体だけでX染色体を持たない状態(45,Y)は、生まれてくることはないと考えられています。「YY」という言葉が使われるのは、XYY症候群(47,XYY)のように、XYに加えてY染色体がもう1本多い場合です。非モザイク型の47,XYYは、Y染色体を2本持つ精子が受精して起こります。46,XY/47,XYYモザイクでは、受精後の初期胚の細胞分裂で変化が生じます。第5章で解説します。

男性はX染色体を1本しか持たない

X染色体にある遺伝子の病的な変化による病気が主に男性に現れるのは、男性がX染色体を1本しか持たないためです。X染色体にある遺伝子をX連鎖遺伝子といい、その伝わり方をX連鎖遺伝と呼びます。

女性は2本のX染色体を持ちますが、発生のごく初期に、卵子以外の細胞では2本のうち1本がランダムに、かつ恒久的に不活化されます[1]。このX染色体不活化によって、X連鎖遺伝子の働く量が男性とそろえられています。どちらのX染色体が不活化されるかは細胞ごとに異なるため、女性の体は、父親由来のXが働く細胞と母親由来のXが働く細胞が混ざったモザイク状態になっています[1]。

女性は一方のX染色体に病的な変化があっても、もう一方の正常なX染色体を使う細胞があるため、症状が出ないか軽いことが多くなります。一方、男性はX染色体が1本しかないため、そこに病的な変化があると補うことができません。これが、血友病やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどのX連鎖潜性(劣性)遺伝の病気が主に男性に現れる理由です。母親が保因者の場合、息子が病的なX染色体を受け継ぐ確率は、妊娠ごとに2分の1になります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【男の子か女の子かは、誰の「せい」でもない】

赤ちゃんの性染色体を運ぶのが精子だという事実は、ときに「男の子が生まれないのは母親のせいではなかった」という話として受け取られます。けれども、同じ理屈で父親の「せい」になるわけでもありません。X精子とY精子のどちらが受精するかは偶然で、どちらの親にも選ぶことはできないからです。

家系の中で女の子ばかり、男の子ばかりが続くことがあっても、それは偶然の偏りとして十分に起こりうることです。性別の決まり方を正しく知ることは、家族の誰かを責める理由をなくすことにつながると考えています。

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2. 男性・女性の体がつくられる性分化の流れ

受精の時点で決まるのは性染色体の組み合わせまでで、体の性は胎児期に段階を追ってつくられていきます。この過程を性分化といい、性染色体 → 性腺(精巣・卵巣)→ 内性器 → 外性器の順に進みます。それぞれの段階で働く遺伝子やホルモンが異なるため、どこか一つの段階の仕組みが変わると、染色体の組み合わせと体の性が一致しないことが起こります。この点は第3章の性分化疾患につながります。

性染色体受精時にXX/XY
▶
性腺SRYで精巣/卵巣
▶
内性器AMH・テストステロン
▶
外性器DHTで男性型

💡 用語解説:受精後週数と妊娠週数

胎児の発生を説明するときは、受精した日から数える「受精後週数(胎齢)」を使うことが多く、産婦人科で使う「妊娠週数」(最終月経の初日から数える)より約2週間少なくなります。この章で示す時期は、いずれも目安の受精後週数です。

性腺の分化:SRY遺伝子が精巣への引き金を引く

胎児の性腺が精巣になるか卵巣になるかは、Y染色体にあるSRY遺伝子が働くかどうかで分かれます。米国国立医学図書館も、性を決めるのはSRY遺伝子で、胎児が男性へ発達する役割を担っていると説明しています[2]。

胎児の初期には、精巣にも卵巣にもなれる未分化性腺がつくられます。SRY遺伝子が受精後6〜7週ごろに働くと、SOX9という遺伝子のスイッチが入り、未分化性腺は精巣になります。SRYそのものが働くのは短い期間で、その後はSOX9が自分自身の働きを保つ仕組みによって、精巣の性質が維持されます。通常の46,XXでSRYがない場合は、RSPO1やWNT4などの卵巣分化を促す仕組みが働き、性腺は卵巣へ分化します。一方、46,XYでSRYまたはその下流経路が機能しない場合には、正常な卵巣ではなく索状性腺となることがあります。

かつては「Y染色体がなければ、自動的に卵巣になる」と説明されていました。現在は、卵巣づくりは精巣化を積極的に抑え続ける能動的な過程だと分かっています。詳しくはWNT4・RSPO1と卵巣分化で解説しています。

内性器の分化:AMHとテストステロン

内性器は、精巣から出る2つのホルモン、抗ミュラー管ホルモン(AMH)とテストステロンによって男性型か女性型かが決まります。胎児には、女性の内性器(卵管・子宮・膣の上部)のもとになるミュラー管と、男性の内性器(精巣上体・精管・精嚢)のもとになるウォルフ管の両方があります。

精巣ができると、AMHがミュラー管を退縮させ、男性ホルモンのテストステロンがウォルフ管を発達させます。精巣がない場合はAMHもテストステロンも出ないため、ミュラー管が残って子宮や卵管になり、ウォルフ管は退縮します。このため、性腺が精巣にならなかったXYの人(後で述べるSwyer症候群)には子宮があり、反対に精巣がありAMHが出ている完全型アンドロゲン不応症の人には子宮がありません。

外性器の分化:ジヒドロテストステロン(DHT)

外性器はもともと男女に共通の形から始まり、ジヒドロテストステロン(DHT)が働くと男性型になります。分化はおよそ受精後9〜14週にかけて進みます。テストステロンが5α還元酵素によってより強いDHTに変わり、これが働くと陰茎や陰嚢がつくられます。DHTが十分に働かない場合は、陰核や陰唇など女性型の外性器になります。

男女の外性器は同じ原基から分かれてできるため、陰茎と陰核、陰嚢と大陰唇は、それぞれ発生学的に対応する器官です。ホルモンの量や働きが中間的な場合は、外性器の形も中間的になることがあります。

脳の性差とホルモン

胎児期の男性ホルモンは、脳の一部の性差にも関わると考えられています。ただし、胎児期のホルモンの量だけで、生まれた後の性自認や行動が決まるわけではありません。性自認は、遺伝的な要因、胎児期のホルモン環境、生まれた後の環境などが複雑に関わって形づくられると考えられており、その仕組みはまだ十分に解明されていません。

3. XYなのに女性・XXなのに男性:性分化疾患(DSD)

XY染色体を持つ女性や、XX染色体を持つ男性は実際にいます。性分化の流れのどこかで仕組みが変わると、染色体の組み合わせと体の性が一致しないことがあるためです。性染色体・性腺・内外性器のいずれかの発達が一般的な経過と異なる先天的な状態を、まとめて性分化疾患(DSD:Differences of Sex Development)と呼びます。2006年の国際的な合意声明で、それまでの「半陰陽」「性転換」といった呼び名に代えて、この中立的な用語を使うことが提案されました[4]。

染色体の組み合わせと体の性が一致しない代表例

性分化疾患にはさまざまな種類がありますが、「XXなのに男性」「XYなのに女性」としてよく取り上げられる代表的な状態を表にまとめます。

🔬 染色体の組み合わせと体の性が一致しない代表例

状態 性染色体 何が起きているか 頻度の目安
46,XX精巣性DSD(XX男性) 46,XX 約80%はSRYがX染色体に移っている。SRYがない場合もSOX9などの働きで精巣ができることがある 男性の外見を持つ人の約2万人に1人[5]
Swyer症候群(46,XY完全型性腺形成不全) 46,XY 精巣ができず性腺が索状になる。子宮・卵管があり外性器は女性型 約8万人に1人[6]
完全型アンドロゲン不応症 46,XY 精巣があり男性ホルモンも出ているが、受容体が反応しない。外見は女性型で子宮はない 女児10万人あたり2〜5人[7]

※頻度はMedlinePlus Genetics[5][6][7]による。アンドロゲン不応症には、完全型のほかに部分型があり、部分型も少なくとも完全型と同じくらいの頻度と考えられています[7]。

46,XX精巣性DSDでは、約80%の人で、父親の精子ができるときの染色体の交換の誤りによってSRY遺伝子がX染色体に移っています[5]。残りの約20%はSRYを持たず、その多くは原因が分かっていませんが、一部の人ではSOX9、NR5A1、WT1など、ほかの性分化に関わる遺伝子の変化が見つかっています[5]。

Swyer症候群は、XY染色体を持ちながら精巣がつくられない状態です。SRY遺伝子の変化が原因となるのは約15%で、ほかの遺伝子が関わる場合もあります[6]。性腺は組織の乏しい索状性腺となり、がんができやすいため、手術で取り除くことが勧められます[6]。卵巣としての働きがないため思春期は自然には始まらず、ホルモン療法で思春期を誘導します。子宮があるため、提供卵子や提供胚によって妊娠できる場合があります[6]。

アンドロゲン不応症は、男性ホルモンを受け取るアンドロゲン受容体の遺伝子(X染色体上のAR遺伝子)の変化によって起こり、X連鎖潜性遺伝の形式をとります[7]。完全型では、精巣があり男性ホルモンも出ているのに体がそれに反応しないため、外見は女性型になります。精巣はAMHを出しているので子宮はなく、精巣は骨盤内や腹部にとどまっています[7]。思春期に月経が来ないことをきっかけに診断されることがあります。

XY染色体を持つ女性はどのくらいいる?

XY染色体を持つ女性の割合を、全体として一つの数字で示した信頼できるデータはありません。原因となる状態ごとの頻度が報告されています。代表的なものでは、完全型アンドロゲン不応症が女児10万人あたり2〜5人[7]、Swyer症候群が約8万人に1人です[6]。

これらは診断された人をもとにした推定で、軽い部分型の人や、診断されないまま過ごしている人は含まれていない可能性があります。XY染色体を持つ女性の特徴として「背が高い」「月経が来ない」などが挙げられることがありますが、原因によって特徴は大きく異なり、外見からXYかどうかを見分けることはできません。月経が来ないことをきっかけに染色体検査を受け、初めて分かることもあります。

このように、XXでも精巣ができる場合や、XYでも体が女性型になる場合があります。性染色体の組み合わせは、性分化の出発点のひとつにすぎません。性分化疾患の全体像は性分化疾患(DSD)とはで、原因遺伝子をまとめて調べる検査は性分化疾患(DSD)遺伝子検査パネルで解説しています。

出生時に性別がすぐに判断できない場合

外性器の形だけでは男女をすぐに判断できない赤ちゃんもいます。その場合は、染色体検査やホルモン検査、画像検査などを組み合わせて、小児内分泌や泌尿器、遺伝など複数の専門家がいる医療機関で評価を進めます。性別を決めるまでには時間がかかることがあるため、日本では、評価を待つ間、出生届の性別欄の記載を保留し、決まった後で届け出る扱いが認められています。

性別の判断では、染色体の組み合わせだけでなく、性腺や内性器の状態、ホルモンの働き、将来の生殖機能などを総合して検討されます。染色体の結果だけで性別が決まるわけではないことは、この場面でもはっきり表れます。

4. 性別不合(性別違和)と性染色体は別の話

性染色体の組み合わせと性自認(自分の性別をどう感じているか)は、直接には結びつきません。性分化疾患は体の発達に関する状態であり、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しない状態とは別のものです。両者は混同されやすいため、言葉の整理をしておきます。

出生時に割り当てられた性別と、本人が感じている性別が一致しない状態は、かつて「性同一性障害」と呼ばれていました。現在、WHOの国際疾病分類ICD-11では「性別不合(gender incongruence)」、米国精神医学会の診断基準DSM-5では「性別違和(gender dysphoria)」という用語が使われています。ICD-11では、性別不合は「精神および行動の障害」の章から外され、新設された「性の健康に関連する状態」の章に移されました。WHOは、トランスジェンダーや多様な性自認は精神的な不調ではないという現在の知見を反映したもので、精神疾患として分類することが大きな偏見につながりうるためだと説明しています[8]。

💡 用語の補足

日本の法律名「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」のように、法令や制度の名称では「性同一性障害」という言葉がいまも使われています。医学的な診断名としては、性別不合(性別違和)が現在の用語です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【染色体は性の「すべて」を決めない】

性染色体の組み合わせ、性腺、内性器、外性器、ホルモン、そして性自認は、それぞれ別の層にあります。多くの人ではこれらが一致していますが、性分化疾患などでは一致しない場合があります。

「XXだから女性」「XYだから男性」という単純な図式で考えると、性分化疾患の方も、性別不合の方も、実像から遠ざかってしまいます。染色体はあくまで体の成り立ちを理解するための一つの情報であり、その人の性を一言で決めるものではないと考えています。

5. 性染色体の数の変化で起こる5つの症候群

性染色体の本数が1本少ない、または多い状態を、性染色体の数的異常(性染色体異数性)といいます。多くは、精子や卵子ができるときの減数分裂で染色体がうまく分かれない染色体不分離によって偶然に起こり、親から遺伝するものではありません[9][10]。染色体の数が健康にどう関わるかの全体像は染色体の数と遺伝的な健康で解説しています。

常染色体の数の変化(21トリソミーなど)と比べると、性染色体の数の変化は症状が軽いことが多く、生涯診断されないまま過ごす人も少なくありません。これは、余分なX染色体の大部分が不活化されることや、Y染色体にのっている遺伝子が少ないことが関係していると考えられています。

📊 性染色体の数の変化で起こる5つの症候群

症候群 核型 頻度 主な特徴
ターナー症候群 45,X など 女児 約2,000人に1人 低身長、卵巣機能の低下、心臓の異常
トリプルX症候群 47,XXX 女児 約1,000人に1人 高身長。症状がないことも多い
クラインフェルター症候群 47,XXY 男児 約650人に1人 小さな精巣、テストステロン低下、不妊
XYY症候群 47,XYY 男児 約1,000人に1人 高身長。学習や言葉の遅れが出ることがある
XXYY症候群 48,XXYY 男児 約1万8千〜4万人に1人 発達の遅れ、テストステロン低下、不妊

※頻度はMedlinePlus Genetics[9][10][11][12][13]による。症状の現れ方には大きな個人差があります。

ターナー症候群(45,X/モノソミーX)

ターナー症候群は、女性の2本のX染色体のうち1本がない、または一部が欠けている状態で、女児の約2,000人に1人にみられます[9]。最も多い特徴は低身長で、5歳ごろまでに目立つようになります。卵巣の働きが早く失われることが多く、多くの人は自然には思春期が来ず、自然妊娠も難しいとされています[9]。

約30%に首の皮膚のたるみ(翼状頸)がみられ、手足のむくみ(リンパ浮腫)を伴うこともあります。3分の1〜2分の1は大動脈縮窄症などの心臓の異常を持って生まれます。多くの人の知能は正常です[9]。約半数はすべての細胞が45,Xで、残りはX染色体の一部の欠失や、正常な細胞が混ざるモザイクなどです[9]。詳しくはターナー症候群とはをご覧ください。

トリプルX症候群(47,XXX)

トリプルX症候群は、女性がX染色体を3本持つ状態で、女児の約1,000人に1人にみられます[10]。症状が軽いことが多く、診断されているのは全体の約10%にとどまると推定されています[10]。

最も多い特徴は高身長です。学習障害、言葉や運動の発達の遅れ、筋緊張の低下、不安症や気分障害、自閉スペクトラム症、ADHDなどのリスクが高まることがありますが、何の特徴もみられない人もいます[10]。多くの女性は自然に妊娠できますが、40歳までに月経が止まる早発卵巣不全が起こることがあります[10]。詳しくはトリプルX症候群をご覧ください。

クラインフェルター症候群(47,XXY)

クラインフェルター症候群は、男性がX染色体を1本多く持つ状態で、男児の約650人に1人にみられます[11]。症状が軽く、思春期や成人期まで気づかれないことも多く、最大65%は生涯診断されないと考えられています[11]。

精巣が小さく、テストステロンの分泌が少ないことが典型的です。治療をしないと、思春期の遅れなどが起こることがあります。子どもをもうけにくくなりますが、生殖補助医療によって最大半数が子どもをもうけられる可能性があります[11]。平均より背が高い傾向があり、読み書きの学習障害のリスクはありますが、知的障害はごくまれです[11]。詳しくはクラインフェルター症候群とはをご覧ください。

XYY症候群(47,XYY)

XYY症候群は、男性がY染色体を1本多く持つ状態で、約1,000人に1人の割合で生まれます[12]。Y染色体を2本持つ精子ができる不分離が原因で、遺伝するものではありません[12]。平均より背が高い人が多いものの、特徴の現れ方は人によって大きく異なり、多くは診断されないまま、あるいは成人してから診断されます[12]。

多くの人はテストステロンの分泌や男性としての性発達が正常で、通常は子どもをもうけることができます[12]。学習障害や言葉の発達の遅れ、筋緊張の低下、手のふるえ、けいれん、ぜんそくのほか、ADHD、うつ、不安、自閉スペクトラム症のリスクが高まることがあります[12]。詳しくはXYY症候群(ヤコブ症候群)をご覧ください。

XXYY症候群(48,XXYY)

XXYY症候群は、男性がX染色体とY染色体をそれぞれ1本ずつ多く持つ状態で、男児の約1万8千〜4万人に1人と推定されています[13]。余分な性染色体はほとんどの場合、精子ができるときの不分離によって生じ、親から遺伝するものではありません[13]。

乳幼児期の発達の遅れがみられ、思春期にはテストステロンの低下が起こります。背が高く、手のふるえ、歯の問題などがみられることがあります。精巣が働かないため子どもをもうけることは難しく、ADHDや自閉スペクトラム症、不安やうつなどの神経発達・行動面の特性を伴うことも多い状態です[13]。詳しくはXXYY症候群をご覧ください。

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6. 性染色体はNIPTで調べられる?

NIPT(新型出生前診断)では、赤ちゃんの性別(Y染色体の有無)と、ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群などの性染色体の数の変化を調べることができます。NIPTは、妊娠中のお母さんの血液に含まれる、胎盤に由来する赤ちゃんのDNAの断片を分析する検査です。

ミネルバクリニックでは、単胎妊娠の場合、各プランで性別判定と性染色体異数性の検査を無料オプションとして選べます。双胎妊娠では、2人分の胎児DNAが混ざるため、Y染色体の有無(男児を含むかどうか)の判定のみとなります。性別判定の時期や精度についてはNIPTの性別判定で詳しく解説しています。

ただし、NIPTはスクリーニング検査です。陽性の場合は、絨毛検査・羊水検査による確定検査が必要です。性染色体の数の変化は、胎盤だけに変化がある場合(胎盤のモザイク)や、お母さん自身の性染色体に変化がある場合などに結果の解釈が難しくなることがあり、常染色体のトリソミーより慎重な確認が求められます。

⚠️ NIPTで分からないこと

NIPTが調べるのは主に染色体の「本数」です。46,XX精巣性DSDやアンドロゲン不応症のように、染色体の本数は正常で、遺伝子の働きによって性分化が変わる状態は、通常のNIPTでは分かりません。NIPTで分かること・分からないことは、検査前の遺伝カウンセリングで確認しておく必要があります。

ミネルバクリニックでは、年齢制限なく妊娠9週からNIPTを受けられます(妊娠6〜8週は臨床研究として実施)。常駐する臨床遺伝専門医が、検査前の説明から結果の説明まで担当します。性染色体の検査について詳しくはNIPTで分かる性染色体異常をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. XXとXY、どちらが女性でどちらが男性ですか?

一般的に、XXは女性、XYは男性の組み合わせです。Y染色体にあるSRY遺伝子が働くと性腺が精巣になり、男性の体がつくられます。ただし、性分化疾患(DSD)のように、染色体の組み合わせと体の性が一致しない場合もあります。

Q2. 赤ちゃんの性別は父親と母親のどちらで決まりますか?

赤ちゃんの性染色体の組み合わせは、受精した精子で決まります。卵子の性染色体は常にXですが、精子にはX染色体を持つものとY染色体を持つものがあり、X精子が受精するとXX、Y精子が受精するとXYになります。どちらの精子が受精するかは偶然で、親が選べるものではありません。

Q3. 男性と女性で染色体の数は違いますか?

違いません。男性も女性も染色体は46本(23対)です。違うのは23対のうち1対の性染色体の組み合わせで、女性はXX、男性はXYです。

Q4. XXなのに男性、XYなのに女性ということはありますか?

あります。SRY遺伝子がX染色体に移っている46,XX精巣性DSD(XX男性)では、XXでも精巣ができます。反対に、精巣ができないSwyer症候群や、男性ホルモンの受容体が働かない完全型アンドロゲン不応症では、XYでも体が女性型になります。これらは性分化疾患(DSD)と呼ばれます。

Q5. 性染色体がYYの人はいますか?

いません。卵子は必ずX染色体を持っているため、受精卵には少なくとも1本のX染色体が入ります。また、X染色体には生きていくのに欠かせない遺伝子が多いため、X染色体を持たない受精卵は育ちません。XYにY染色体がもう1本加わったXYY症候群(47,XYY)はあります。

Q6. 性染色体の組み合わせで性自認は決まりますか?

いいえ。性染色体の組み合わせと性自認は直接には結びつきません。出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しない状態は、かつて「性同一性障害」と呼ばれていましたが、現在はWHOのICD-11で「性別不合」、米国のDSM-5で「性別違和」という用語が使われています。

Q7. 性染色体の数の変化は親から遺伝しますか?

ターナー症候群、トリプルX症候群、クラインフェルター症候群、XYY症候群、XXYY症候群の多くは、精子や卵子ができるときに染色体がうまく分かれない「不分離」によって偶然に起こり、親から遺伝するものではありません。

Q8. NIPTで性染色体の異常は分かりますか?

NIPTでは、赤ちゃんの性別と、ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群などの性染色体の数の変化を調べることができます。ただしスクリーニング検査のため、陽性の場合は絨毛検査や羊水検査で確定する必要があります。また、染色体の本数が正常な性分化疾患は、通常のNIPTでは分かりません。

まとめ

XY染色体とは、ヒトの性染色体であるX染色体とY染色体のことで、一般的にXXなら女性、XYなら男性です。男女とも染色体は46本で、違うのは1対の性染色体の組み合わせだけです。どちらになるかは受精した精子で決まり、その後、SRY遺伝子の働きとホルモンによって、性腺 → 内性器 → 外性器の順に体の性がつくられていきます。

ただし、染色体の組み合わせだけで体の性や性自認がすべて決まるわけではありません。XXでも精巣ができる、XYでも体が女性型になるといった性分化疾患(DSD)があり、性自認は性染色体とは直接には結びつきません。性染色体の数の変化によるターナー症候群・トリプルX症候群・クラインフェルター症候群・XYY症候群・XXYY症候群は、多くが偶然に起こり、症状には大きな個人差があります。

🏥 NIPT・出生前検査で性染色体を調べたい方へ

赤ちゃんの性別や性染色体の数の変化は、NIPTで調べることができます。ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が、検査で分かること・分からないことを医学的な根拠にもとづいてご説明し、陽性の場合の確定検査まで院内で対応しています。

参考文献

  • [1] X chromosome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [2] Y chromosome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [3] 前田泰伸. 都道府県別、時系列及び国際比較で見た出生時の男女比. 経済のプリズム 第222号. 参議院事務局調査情報担当室, 2023. [参議院]
  • [4] Hughes IA, et al. Consensus statement on management of intersex disorders. Arch Dis Child. 2006;91(7):554-563. [PubMed 16624884]
  • [5] 46,XX testicular difference of sex development. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [6] Swyer syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
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  • [9] Turner syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
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  • [11] Klinefelter syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [12] 47,XYY syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [13] 48,XXYY syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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