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染色体の構造と機能とは?重要な5つのポイントを分かりやすく解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

妊娠初期以降は「NIPT」などの出生前検査を受けられるようになりますが、そこで目にするのが「染色体」という言葉です。染色体とは、細胞の核の中で、長いDNAがヒストンというタンパク質に巻き付き、規則正しく折りたたまれてできた構造体です。人の細胞には、ふつう46本(23対)の染色体があります。この記事では、染色体の構造と機能を妊婦さんにも分かりやすく簡単にご説明した後、重要な5つのポイントについて詳しくご紹介していきます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約7分
🧬 DNA・セントロメア・テロメア
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 染色体はどんな構造をしているのですか?

A. 染色体は、DNAがヒストンに巻き付いた「ヌクレオソーム」が何重にも折りたたまれてできた構造です。細胞分裂の前にDNAが複製されると、同じDNAを持つ2本の「姉妹染色分体」が「セントロメア」でくっついた、X字のような形になります。両端には染色体の末端を守る「テロメア」があります。X字の形は「2本の染色体」ではなく、複製された「1本の染色体」です。

  • ➤本数 → 46本(常染色体22対44本+性染色体2本)
  • ➤DNA → タンパク質の設計図。実際に合成するのはリボソーム
  • ➤セントロメア → 姉妹染色分体をつなぎ、分裂時に均等に分ける
  • ➤テロメア → 染色体の両端を守る。分裂のたびに少しずつ短くなる

「ダウン症候群」などの染色体疾患は広く認知されていますが、「染色体」そのものの構造や機能を皆さんはご存知でしたか?

「染色体」には、人間の体をつくり、はたらかせるための遺伝情報がおさめられています。そのため「染色体」の数や構造に変化が起きると、健康や発達に影響することがあります。

染色体の構造と機能を簡単に説明

研究者

私たち人間が生きるために必要なさまざまな器官や細胞は、「染色体」の働きと大きく関わっています。

まずは、染色体の構造と機能を分かりやすく簡単にご説明していきます。

染色体の構造

「染色体」はどこにあってどのような形をしているか、皆さんは想像できますか?

人間の体は、約37兆個の細胞からできていると推計されています[5]。これらの細胞が集まって、内臓から筋肉まであらゆる器官がつくられています。

「染色体」は、細胞の中にある「核」と呼ばれる部分におさめられています[2]。

1つの細胞に含まれるDNAを全部つなげると約2メートルにもなります[1]。この長い「DNA」がヒストンタンパク質に巻き付き、規則正しく折りたたまれて収納された構造が「染色体」と呼ばれています。

「染色体」は棒状になっており、一つの細胞に46本が2本1組のペアになって存在しています。1番染色体〜22番染色体から成る「常染色体」のペアと、「性染色体」のペアで構成されています。性染色体は、女性ではX染色体が2本(XX)、男性ではX染色体とY染色体が1本ずつ(XY)です[2]。ペアのうち1本は母親から、もう1本は父親から受け継いだものです。

染色体の主な機能

「染色体」は、親から子へ遺伝情報を受け渡し、細胞が分裂するときにはその遺伝情報を新しい細胞へ正確に引き継ぐという、大きな役割を担っています[1]。「常染色体」と「性染色体」では、担っている働きに違いがあります。

常染色体の働き

44本22対から成る「常染色体」には、タンパク質や酵素をつくるための遺伝情報の大部分がおさめられています。

染色体の中にあるDNAは、「どのような器官で」「どのような遺伝子を」「どのようなタイミングで発現させるか」という情報を持っており、その組み合わせによって、人それぞれの特徴や個性が生み出されます。

性染色体の働き

XとYの組み合わせからなる「性染色体」は、男女の性別を決める役割があります。

遺伝的な性別が男性の場合はX染色体+Y染色体の「XY」という組み合わせになり、女性の場合はX染色体+X染色体の「XX」という組み合わせになります。

Y染色体には、精巣をつくるきっかけとなる遺伝子があります。そのため、Y染色体を持っているかどうかによって、遺伝的な性別が決まる仕組みになっています。

染色体異常について

人間の染色体は46本23対で構成されていますが、染色体の数が本来よりも少なかったり多かったり、構造が変化していたりすることで、さまざまな染色体疾患が起こることがあります。

🧬 主な染色体異常の種類

染色体異常 特徴
トリソミー 特定の染色体が本来よりも1本多い(3本ある)
モノソミー 特定の染色体が本来よりも1本少ない(1本しかない)
転座 染色体の一部が切れて、別の染色体につながっている
欠失 染色体の一部がなくなっている

※分類はNHGRIのファクトシート[2]による。

「染色体」が1本多くなるトリソミーによる疾患は「ダウン症候群(21トリソミー)」が代表に挙げられます。知的発達の遅れや特徴的な顔立ち、乳児期の筋緊張の低下などがみられ[2]、心臓の病気などを合併することもあります。症状の程度には個人差があります。

「性染色体異常」では、X染色体が1本しかない「ターナー症候群」や、X染色体が3本ある「トリプルX症候群」などの疾患があります。

染色体の数の異常の多くは、卵子や精子ができるときの細胞分裂で、染色体がうまく分かれないことによって偶然起こります[2]。母親の年齢が高くなるほど起こりやすくなりますが[2]、年齢にかかわらず、どの妊娠でも起こりうるものです。赤ちゃんの染色体の数の変化を調べる方法として、NIPTなどの出生前検査があります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【染色体の変化は、誰にでも起こりうるもの】

染色体の数の変化の多くは、卵子や精子ができる過程で偶然起こるものです。妊娠中の過ごし方が原因になるものではなく、ご自身を責める必要はないと考えています。

出生前検査を受けるかどうかも、検査でわかること・わからないことを理解したうえで、ご家族で納得して決めていただくことが大切だと考えています。

\ 赤ちゃんの染色体が気になる方は専門医にご相談ください /

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染色体の構造に関する重要な5つのポイント

お医者さん

ここからは、染色体の構造をさらに理解できる重要な5つのポイントを分かりやすく簡単にご説明していきます。

タンパク質の設計図となる「DNA」

「染色体」と深い関係にあるのが「DNA」です。

人間は生命の維持と活動においてタンパク質が必要不可欠となっていますが、そのタンパク質をつくるための設計図という、とても重要な役割が「DNA」にはあります。実際にタンパク質を合成するのは、細胞の中にある「リボソーム」です。

「DNA」は、4種類の「塩基」(A・T・G・C)の並び順、つまり「塩基配列」によって遺伝情報を記録しています。遺伝子の塩基配列はまずRNAに写し取られ、その情報をもとにリボソームでタンパク質が合成されます。こうしてつくられたタンパク質が、細胞や器官の形やはたらきを支え、私たちの体がつくりあげられていきます。

「遺伝子」は、DNAのうちタンパク質などをつくる情報を持った領域を指すものであり、DNA=遺伝子ではないことを理解しておきましょう。

「DNA」はタンパク質のつくり方を記録していることから、タンパク質の設計図やレシピとも呼ばれています。

生殖機能の発達に関わる「減数分裂」

人間の体は「DNA」の複製と体細胞分裂を繰り返してつくられていますが、「減数分裂」は、卵子や精子などの生殖細胞を生み出す際に行なわれる細胞分裂を指します。

「減数分裂」では、「DNA」が複製された後に2回続けて分裂が起こり、染色体数が46本から23本へと半分になります[2]。1回目の分裂では、父親由来と母親由来の対になった染色体どうしが分かれるという、体細胞分裂にはない特殊な分配が起こります。

このとき、対になった染色体どうしの間で一部が入れ替わる「組換え」が起こります。これによって、父親と母親に由来する遺伝情報がまぜ合わされた精子と卵子がつくられ、受精によって遺伝子レベルでの多様性が生み出されているのです。

DNAを管理する「ヌクレオソーム」

「ヌクレオソーム」は、「DNA」がヒストンタンパク質の芯に巻き付いた構造のことを指します。1つのヌクレオソームには、約150塩基対のDNAが巻き付いています[3]。

ヌクレオソームが数珠のようにつながったものが「クロマチン繊維」で、これが何重にも折りたたまれて、核の中に収納されています[3]。核の中のDNAとタンパク質の複合体全体を「クロマチン」と呼び、細胞分裂の時期にはクロマチンが最も強く凝縮して、顕微鏡で見える「染色体」の形になります。

DNAから染色体までの折りたたみの流れは、このようになります。

DNA約2メートル
▶
ヌクレオソームDNA+ヒストン
▶
クロマチン繊維数珠状につながる
▶
染色体分裂期に最も凝縮

「ヌクレオソーム」は、真核生物に共通する「クロマチン」の基本単位です。DNAをコンパクトにしまい込みつつ、必要なときにほどいて読み出せるように管理している構造体と覚えておきましょう[3]。

DNAの分離をコントロールする「セントロメア」

「染色体」は2本の棒状が交差したような見た目になっており、複製された2本の姉妹染色分体がくっついている部分を「セントロメア」と呼びます。

細胞分裂の前にDNAが複製されると、同じDNAを持つ2本の「姉妹染色分体」ができます。セントロメアは、この2本をつなぎとめる場所です[1]。よく見かけるX字形の染色体は「2本の染色体」ではなく、複製された「1本の染色体」です。

セントロメアは、細胞分裂のときに染色体が正しく並び、分かれた2つの細胞にDNAが均等に振り分けられるようにする働きがあります[1]。これは体細胞分裂でも、卵子や精子をつくる減数分裂でも同じです。

「セントロメア」は、精子や卵子などの生殖細胞をつくる際にも、とても重要な役割を果たしているのです。

染色体の末端部分を保護する「テロメア」

「テロメア」はギリシャ語の「テロ(末端)」と「メア(部分)」を組み合わせた言葉で、染色体の両端にある部分を指します。短い塩基配列が何百回もくり返された構造をしています[4]。

また、セントロメアを境にして短いほうの腕を「短腕(p)」、長いほうの腕を「長腕(q)」と呼びます[2]。染色体の端にあるテロメアは細胞分裂のたびに少しずつ短くなり[4]、高齢になるほど短くなる傾向があることが分かっています。

「テロメア」は、靴ひもの先についている留め具のように、染色体の末端がほつれたり、ほかの染色体の端とくっついたりしないように守る役割があります[4]。

テロメアが短くなりすぎると、細胞はそれ以上うまく分裂できなくなります[4]。また、末端を守る働きが失われた染色体は、切れたDNAの端と見なされて、細胞死や発がんにつながることもあります。

💡 用語解説:サブテロメア

テロメアのすぐ内側にある領域を「サブテロメア」といいます。遺伝子が多く含まれる領域で、この部分の小さな欠失などが発達の遅れの原因になることがあります。詳しくはサブテロメアとはで解説しています。

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まとめ

染色体の構造と機能、そして重要な5つのポイントをご紹介しました。

「染色体」は、私たちの内臓や筋肉などさまざまな器官をつくる細胞の、核の中に存在しています。

「染色体」は、ヒストンタンパク質に「DNA」が巻き付いた「ヌクレオソーム」が何重にも折りたたまれてできた構造で、親から子に受け継がれる大事な遺伝情報をおさめ、細胞分裂のたびにそれを正確に引き継ぐという、とても重要な役割を担っています。

棒状の形をしている「染色体」ですが、さらに細かく構造を見ると、姉妹染色分体をつなぎ、DNAの分離をコントロールする「セントロメア」や、染色体の末端部分を保護する「テロメア」などで構成されています。

卵子や精子ができるときに染色体がうまく分かれないと、特定の染色体が1本多くなる「トリソミー」などの染色体異常が起こり、「ダウン症候群」などの疾患につながることがあります。

トリソミーは、「NIPT」などの出生前検査で妊娠初期から調べることができます。

東京の「ミネルバクリニック」では、妊娠6週から、臨床研究としてダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーなどを調べる「NIPT」を受けられるようになっています。

臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング体制が整っているため、検査の流れや染色体疾患について、検査前にしっかり理解したうえで受けるかどうかを決めることができます。

🧬 NIPT・出生前検査のご相談

染色体の検査を受けるかどうか迷っている方、検査でわかること・わからないことを知りたい方は、臨床遺伝専門医にご相談ください。

参考文献

  • [1] Chromosomes Fact Sheet. National Human Genome Research Institute (NHGRI). [NHGRI]
  • [2] Chromosome Abnormalities Fact Sheet. National Human Genome Research Institute (NHGRI). [NHGRI]
  • [3] Nucleosome. Talking Glossary of Genomic and Genetic Terms. NHGRI. [NHGRI]
  • [4] Telomere. Talking Glossary of Genomic and Genetic Terms. NHGRI. [NHGRI]
  • [5] Bianconi E, et al. An estimation of the number of cells in the human body. Ann Hum Biol. 2013;40(6):463-471. [PubMed 23829164]

プロフィール

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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