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人工妊娠中絶手術を考えるときにどうしても必要なのが中絶同意書です。妊娠した女性が一人で誰にもばれずに中絶をしたいと思っても、同意書には相手のサインが必要になるため署名してもらうことにためらいを覚えるのも珍しくありません。
また、妊娠がわかったら相手が逃げてしまいサインをしてくれないこともあります。手術の費用、体への負担、将来への不安だけではなくパートナーとの問題も人工妊娠中絶の大きなお悩みの一つです。そこで今回は人工妊娠中絶で必ず医師から提示をされる中絶の同意書についてお話をします。同意書が必要な理由や同意書なしでも手術は受けられるか?などの疑問にお答えしますのでぜひご覧ください。
中絶手術の同意書とはなにか?
中絶手術をする前に産婦人科の医師から手渡されるのが同意書です。妊娠した女性と相手が中絶に同意をしますという証明のためにサインをするものです。もし望まない妊娠だったとしても出産するかしないかをパートナーと話し合うのは最初に考える問題となります。
しかしながら、妊娠したすべての女性がパートナーと話し合いを持てるわけではないため相手のサインをもらうことが大きな障害となって立ちはだかる場合があります。「パートナーが遠くへ行ってしまった」「相手が父親だと認めてくれない」「まだ学生で育てる自信がない」「望まぬ相手の子どもを妊娠してしまった」など理由はさまざまです。
同意書にサインをもらうこと自体、高いハードルとなってしまい産婦人科で診察を受けることをためらう女性がいるのが現状です。
中絶手術に同意書が必要な理由
そもそも、どうして中絶するために相手との同意が必要になるのか?という疑問が湧いている人もいるかもしれません。なぜなら「母体保護法」という法律に明記されているからです。この法律は「母性の生命健康を保護することを目的とする」という趣旨で定められており、14条に妊娠した女性と配偶者(パートナー)との同意があれば人工妊娠中絶ができると記載しています。そのため同意書に両方のサインがあるのを確認した後ではないと中絶の処置ができないようになっているのです。
つまり同意書にサインをしないで中絶手術をすることは法律違反となってしまうため必ず同意書が手渡されるのです。
中絶手術を受けたら職場や親にバレてしまうのか
「中絶したことを周りにバレたくない」というお悩みを抱えている女性も珍しくありません。職場や親、学校などに中絶をしたと知られると大騒ぎになるのは明白です。もし同意書にサインをお願いなどしたら知られてしまうからパートナーのサインをもらいたくないとお考えになるでしょう。
まず同意書にサインをもらう前にお伝えしておきたいことがあります。
インターネット上に「カルテに残るからいつかバレる」という意見がありますが間違いです。医療従事者には守秘義務というのがあって、医業おいて知り得た患者に関する秘密を他に漏洩してはならないという義務があります。刑法134条に「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、・・・の職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」と記載されているため妊娠や中絶に関して医療従事者側から漏れることはありませんので安心してお話ししてください。
では、お相手に同意書へサインをお願いしたら周りにバレるかというと個人個人で変わってきます。「パートナーが誰なのか?」「どこで働いているのか」だけでも大違いです。相手にサインを頼んだら周りに知られてしまうという方は初診の際に医師や看護師に相談してみてください。
「同意書なし」「同意書の偽造」でも中絶手術はできるのか?
中絶手術は同意書にパートナーのサインがなくても可能なケースがあります。「母体保護法」14条第2項で定められており、お相手が妊娠中絶に同意できる環境下にない場合や意思を示せないとき、亡くなった場合は女性だけの同意でいいと表記しています。これは「パートナーが亡くなった」「遠方に住んでいてサインができない」といったケースであれば妊娠した女性のみでいいですよという意味です。
相手が先述した条件に当てはまるのならば医師にお話しした上で中絶手術が受けられます。
中絶同意書に代筆や偽名を使った場合、中絶手術を受けられるかと言われると、現状はできてしまいます。なぜなら中絶手術は自由診療のため保険証の提示もいりませんし、産婦人科では調べようがないからです。しかしながら、同意書にウソの名前や書体の名前を変えてサインをしてしまうと有印私文書偽造罪となり、犯罪となってしまいます。もしバレてしまったら1年以下の懲役、または10万円以下の罰金となります。
相手がわからないときも中絶手術をするための同意書は必要か?
「パートナーがわからない」「性的暴行によって妊娠してしまった」「相手が複数いて誰かわからない」などのケースで同意書のサインが取れないケースがあります。そうした場合、「母体保護法」の14条第1項第2号に記載されている「暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」であれば、女性の同意だけで中絶処置は可能です。これは性的暴行によって妊娠してしまった女性を守るために記された条文です。話すのはお辛いとは思いますが医師や看護師に申し出てみてください。
同意書に相手のサインがなくても中絶手術はできます
ここまでパートナー同意がなくても人工妊娠中絶ができるケースについて法的な根拠を交えてお話しをしてきました。上述した条件に当てはまないけど同意書には自分のサインだけで手術をしたいという方もいるでしょう。そうした場合ですが、原則として中絶手術は受けることはできません。
但し、最終的な決定権を持つのはお相手ではなく「あなた」です。
さまざまな理由で中絶を受けることを決断されたと思います。しかし、同意書にパートナーから署名がもらえないからサインを偽造したり、自分で相手の名前を書いてしまったりするのを考えたこともあるかもしれません。でも、そんなことをしないでください。医院によっては相手の同意がなくても処置をしてくれることもあります。中絶手術は、「母体保護法」にも「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」であれば受けられるものです。一人で抱え込まないで思い切って相談をしてみましょう。
もし未成年の方がご覧になっていたら先ずはご両親にお話ししてみてください。未成年だと、相手の署名よりも保護者のサインが必要になることがほとんどです。先ずはご両親にお話ししてみましょう。きっと力になってくれると思います。