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中絶手術を希望される女性はさまざまなお悩みを抱えて産婦人科へとやってきます。その中の一つとして挙げられるのが人工妊娠中絶手術の方法です。中絶手術の方法だけでもいくつか選択肢があります。また、初期中絶手術と中期中絶手術では体への負担も変わってくるので気になるのは当然です。他にも術後に妊娠できなくなるかも?と不安な日々を過ごす女性もいます。
そこで今回のコラムでは中絶手術の方法について詳しく説明をしていきます。どんな方法があって、体への負担はどれくらいか、術後の影響なども紹介しますので最後までお付き合いいただけると有難いです。
中絶手術の方法はどんな種類があるのか?
中絶の方法は、妊娠週数によって処置のやり方が大幅に変わります。妊娠12週までの初期の中絶であれば、掻爬法(ソウハ法)、電動吸引法(EVA)、手動吸引法(MVA)の三種類が日本国内で可能な中絶方法です。先ずは初期の妊娠中絶手術について詳しく紹介をしていきます。
掻爬法(ソウハ法)とはなにか?
特殊なハサミ状の器具(胎盤鋏子)を使って手によって子宮内容物をかき出す方法です。日本国内の産婦人科医院では90%以上がこの方法を用いています。使用する機器がシンプルなので感染しにくいのがメリットです。処置の際には麻酔をかけてから行うので痛みを感じることはほとんどありません。但し、医師の手技によっては子宮内膜を傷つけたり、子宮の壁に穴があいたりする子宮せん孔などのリスクが生じます。
WHO(世界保健機関)から、「時代遅れの処置」だとして他の方法に切り替えるよう勧告されていますが、日本産婦人科学会も日本医師会も無視をしているのが現状です。
電動吸引法(EVA)とはなにか?
細いチューブを子宮内に挿入して子宮内容物を吸い出す方法です。掻爬法(ソウハ法)で使っている器具を一緒に使用する場合もあります。ポンプで吸引するため子宮への負担がないのがメリットです。こちらの方法ももちろん麻酔をかけてから処置を開始しますので目が覚めた頃には処置が終了しています。日本産婦人科手術学会でも推奨されている方法です。
デメリットとしては、洗浄滅菌に時間がかかるため受け付けする件数が増やせない点と正確な洗浄滅菌をしないと感染症を引き起こす可能性あることです。
手動吸引法(MVA)とはなにか?
上述した電動吸引法と方法は同じです。但し、注射器のような器具を使い医師の手で吸引をします。素材は金属よりも柔らかいプラスチックのため子宮内に挿入するときの痛みが少なくて済むのがメリットです。
また、手動で陰圧をかけて吸引するため、子宮内膜などの組織を傷つけるリスクが少なくなります。大がかりな器具が不要なため海外では100か国以上で用いられている方法です。しかも電動吸引法(EVA)よりも施術時間と待ち時間が短くなるのでプライバシーの保護と時間の節約が可能となります。
中期中絶手術の方法
ここまで初期中絶の手術方法について紹介してきましたが、この項では中絶手術の方法についてです。
中期中絶手術は初期とは比べものにならないほど体への負担が大きくなります。事前の処置も必要になるため入院は必須です。また術後の経過観察も欠かせない処置となっています。因みに妊娠中期というのは12週目以降22週目までのことです。それ以降は中絶処置ができませんので注意してください。
どんな処置をするのかについては下記のコラムで詳しく紹介しています。
薬を使った中絶方法
上記した方法以外に挙げられるのが薬を内服する方法です。世界では認可されていて一般的ですが、日本国内では未認可のため処置できません。二種類の薬を服用して人工的に流産させるやり方が主流となっています。
どうして日本で中絶薬の処方ができないのか?どういった薬なのか?などはこちらのコラムで紹介しています。
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中絶手術の方法によっては妊娠できなくなる?
中絶手術を受ける方から「中絶をすると妊娠できなくなるのですか?」とよく質問されますが、赤ちゃんが育つ子宮に傷が付くかもしれないのだから心配になるのは当然です。昔ならばそういった可能性がありましたが、現在は医療技術や機器が進化したおかげで確率はぐんと下がっています。0%とは断言できませんが、正しい処置方法で実施すれば不妊症になる可能性は低いと言えます。
吸引法であれば子宮に医療機器が入り込むこともありませんので掻爬法(ソウハ法)よりも安全に処置することが可能です。
但し、中期で中絶の処置を受けると初期よりも不妊症になる可能性が高くなるので妊娠したかも?と思ったら早めに診察を受けることをおすすめします。
アッシャーマン症候群にかかってしまう?
アッシャーマン症候群とは子宮内膜組織同士がくっついてしまう症状です。不妊の要因になると言われており、子宮内で何らかの人為的な操作が行われたときに起こると言われています。しかし、現在では起きる確率は低いです。なぜかと言いますと、昔は超音波診療がなく、抗生物質も不足しており、子宮内に人為的な扱いをする機会が多くあったからです。
もし症状が起きた場合でも治療法がある存在しているので心配は不要です。
望まない妊娠を防ぐために
いくら不妊症になる確率が低いとはいえ、短期間に中絶手術を頻発して受けたら妊娠しにくくなる可能性があります。その意味からも術後にきちんとした避妊が必要です。避妊方法はいくつかの選択肢がありますが、一番有名なのがコンドームです。
しかし、コンドームをしていても妊娠してしまう人が14%もいます。7人に1人が妊娠してしまうほどなので確実とは言えません。確実な避妊効果が期待できるのが経口避妊薬(けいこうひにんやく)「低用量ピル」や「子宮内避妊器具」(IUD)です。AIDS対策も含めてコンドームと併用して使用するといいでしょう。
「低用量ピル」や「子宮内避妊器具」は、アフターケアとして処方してくれる産婦人科もありますので診察のときに相談してみてください。