Chapter5-6-5 母体側の要因
母体側の要因
いままでにお伝えしてきた内容から
cffDNAを用いたNIPT(非侵襲的出生前検査で異常という結果がでたとき,
なぜこの検査結果が,絨毛膜絨毛または羊水細胞を確認しなければならないかを
示しています。
羊膜細胞の分析のほうが,絨毛膜絨毛の分析よりも優れていると考えられています.
なぜなら,偽陽性の結果の一部は,栄養膜(胎盤になる部分)と胎児の間の不一致に起因するからです。
羊水細胞は胎児の皮膚の細胞が浮遊していて,それを採取してくるため
少なくとも胎児の外胚葉を直接検査できます.
羊水細胞におけるモザイク現象は絨毛膜絨毛よりも,はるかにまれであるとされています.
羊水穿刺(AC)の欠点は,妊娠15週からのみ安全であると考えられ,
それ以前には安全ではないこと, つまり妊娠中期以降にしかできないことです.[1].
10週目以降はcffDNAを用いた出生前検査が実施されることから,
羊水穿刺でcffDNAの異常が確認されれば,最終な結果が得られるのに
15-16週で羊水検査をして,FISHなら1週間以内,染色体検査なら3週間くらいかかるため
大変遅れることになります.
ほとんどの女性は,この待機期間をストレスが非常に多いと感じています.
最悪の場合,cffDNAに基づくNIPTの結果を確認することなく,
妊娠中絶につながる可能性があるのです.
この最悪のシナリオは,妊娠11週から14週の間に行うことのできる
絨毛検査CVSを選択することで回避できます.
しかし,CVSの欠点は,胎盤【だけ】に限局した3型モザイク症(CPM3型)が
検出される可能性があるため,偽陽性結果となり,
逆に,真の胎児モザイク症5型(TFM5型)の場合には,胎児だけにモザイクがあり
胎盤は正常なので
栄養膜細胞だけを分析すると偽陰性結果となることです[1].
細胞栄養膜と間葉の間のモザイク現象が検出され(CPM1型と2型,TFM4型と5型)ると,
胎児の核型を確認するために必要であるため
2回目の侵襲的手技である羊水穿刺を行うこととなります.
トリソミー21,18トリソミー,13トリソミー,およびモノソミーXは,
それぞれの絨毛検査CVSで異常と検出された症例の
2%,4%,22%,および59%に認められました.
ところが,羊水穿刺でこれらが確認されたのは
それぞれ44%,14%,4%,26%のみとなっています.
そうすると,異常と出たcffDNA NIPTの結果を確認するためにCVSを選択した場合,
2回目の侵襲的検査として羊水穿刺が必要となるリスクがあります.
CVS後にモザイク結果が得られるリスクが高く,
特に羊水穿刺では13トリソミーがほとんど確認されないことがわかっているため
13トリソミーまたはXモノソミーを示すNIPTの結果は羊水検査で確認すべきである
ということは,これらの数値から明言できます.
モノソミーXの胎児の場合,流産率は大変高く,99%となっています.