この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

ロビノウ症候群は、低身長、前腕や下腿(すね)の短さ、顔立ちの特徴、性器の形の違い、歯の並びの特徴などがみられる、生まれつきの病気です。原因となる遺伝子によって、親から子へ2分の1の確率で伝わる「顕性(優性)型」と、ご両親がともに保因者のときにお子さん4分の1の確率で起こる「潜性(劣性)型」に分かれます。どちらの型かがわかると、次のお子さんで同じことが起こる確率と、次の妊娠への備え方が大きく変わります。このページでは、症状と特徴、知能や寿命の見通し、遺伝のしかたと、5つの遺伝子をまとめて調べる遺伝子検査でわかることを、臨床遺伝専門医が解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. ロビノウ症候群とは?この検査で何がわかりますか?
低身長・前腕や下腿の短さ・顔立ちや性器の特徴がみられる生まれつきの病気です。この検査ではDVL1・DVL3・ROR2・TWIST1・WNT5Aの5遺伝子をまとめて調べ、原因と、顕性型か潜性型かを確かめます。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
ロビノウ症候群が疑われるお子さん・ご本人、すでに診断がついていて次のお子さんの確率を知りたいご両親、ご家族にロビノウ症候群の方がいて妊娠を考えている方です。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。検体は血液・頬の内側の粘膜・唾液で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療で受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、ご家族の検査や、次の妊娠での出生前診断(羊水検査・絨毛検査は院内)を計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. ロビノウ症候群とは
ロビノウ症候群(Robinow syndrome)は、骨格の発達を中心に、顔立ち・性器・歯などに特徴が出る生まれつきの病気です。原因の遺伝子によって、常染色体顕性(優性)型と常染色体潜性(劣性)型に分かれます[1][2]。2つの型は共通する症状が多い一方で、潜性型のほうが骨格の症状が重くなりやすいなど、違いもあります。
どちらの型も、細胞どうしが「体のどちら側に、どの向きに育つか」を伝え合うWnt(ウィント)シグナルという仕組みにかかわる遺伝子の変化で起こります。WNT5Aというたんぱく質が、その受け手であるROR2に結合し、細胞の中のDVL1・DVL3へと信号が伝わります。この流れのどこかがうまく働かないと、胎児期の手足や顔の骨の伸び方に影響が出ると考えられています[4][6][7]。
名前の由来と「胎児のような顔立ち」
この病気は、1969年に小児科医のメインハルト・ロビノウ(Meinhard Robinow)が、低身長を伴う新しい症候群として報告したことから、その名がつきました[3]。遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、幼いころの顔立ちが「妊娠8週ごろの胎児の顔に似ている」と表現され、年齢とともに目立たなくなるとされています[1]。
どれくらいまれな病気か(何人に1人か)
ロビノウ症候群は非常にまれな病気で、何人に1人という正確な頻度はわかっていません。GeneReviewsでは、潜性型(ROR2関連)は医学文献に100例あまりが報告され、近親婚の多い家系での報告が多いとされています。顕性型は、報告された家族が80家族未満とされています[1][2]。日本人での頻度を示した信頼できる統計は、確認できませんでした。
「ロビノー・ソローフ症候群」とは別の病気です
名前が似ていますが、ロビノー・ソローフ症候群(Robinow-Sorauf症候群)は、このページのロビノウ症候群とは別の病気です。ロビノー・ソローフ症候群はTWIST1遺伝子の変化で起こり、頭の骨のつなぎ目が早く閉じるゼーツレ・コッツェン症候群の、症状の軽い側にあたる病気と考えられています[9]。この検査がTWIST1も調べるのは、名前の似たこの病気との区別も含めて確かめるためです。インターネット上では2つが混同されていることがあるので、ご注意ください。
2. 症状と特徴
ロビノウ症候群の主な症状は、低身長、前腕など手足の中ほどの骨の短さ(中間肢節短縮)、顔立ちの特徴、性器の形の違い、歯の並びの特徴です[1][2]。どの症状がどれくらい出るかは、型によっても、一人ひとりでも違います。見た目の特徴だけでこの病気と決めることはできず、遺伝子検査で確かめます。
体格:低身長と、手足の中ほどの骨の短さ
上腕や太ももより、前腕やすねの骨が短くなる「中間肢節短縮」が特徴で、とくに腕で目立ちます。指が短い(短指症)こともあります[1][2]。
身長は、潜性型ではほぼ必ず子どものうちから低く、大人になっても低身長が残りますが、最終的な程度は軽いこともあります[1]。顕性型は、潜性型より骨格の症状が軽く、身長も平均に近いことが多いとされています[1]。顕性型のうちDVL1遺伝子が原因のタイプでは、骨の密度が高くなる「骨硬化」を伴い、最終的な身長は正常か、正常の下のほうになると報告されています[2][7]。
顔立ちの特徴
目と目の間が広く目立つ、おでこが出ている、鼻の穴が上を向いている、顔の中央部が奥まっている、といった特徴が知られています。生まれる前から頭が大きめで、生まれたあともその傾向が続きます[2]。こうした顔立ちの特徴は、幼いころにいちばんはっきりし、成長とともに目立たなくなるとされています[1]。
性器の特徴(男の子・女の子)
男の子では、陰茎が小さい(小陰茎)、陰嚢が小さい、精巣がおなかの中にとどまる停留精巣などがみられます。女の子では、陰核や大陰唇が小さめになることがあります[1][2]。男の子では生まれてすぐに気づかれることが多く、診断のきっかけになることがあります。
歯と口
かみ合わせの乱れ、歯が重なって生える、生えない歯がある、永久歯が生えるのが遅い、といった歯の特徴がみられます。舌の先が2つに分かれている(二分舌)こともあります。歯の特徴は、顕性型でより目立つとされています[1][2]。
そのほかの合併症(心臓・腎臓・背骨など)
顕性型では、腎臓の形の違い、肘の骨(橈骨頭)の脱臼、背骨の形の違いや側弯、爪の形の違い、心臓の病気、口唇裂・口蓋裂が、それぞれ4人に1人未満の頻度でみられます。DVL1が原因のタイプでは、両耳の難聴(混合性難聴)やへそのヘルニアの報告もあります[2]。
潜性型では、背骨の一部が半分しかできない半椎や、胸の背骨・肋骨がくっつくといった変化が多く、背骨の曲がり(後側弯)が強くなることがあります[1]。半椎による背骨の曲がりについては先天性側弯症で詳しく解説しています。潜性型では約15%に生まれつきの心臓の病気があり、早い時期に亡くなる主な原因とされています[1]。心臓の検査は、診断がついたら早めに受けておくことが大切です。
知能と発達
ロビノウ症候群の知能は、ふつうは正常の範囲とされています。ただし、発達の遅れがみられる方も一部にいます[1][2]。潜性型のほうが、知的な発達への影響を含めて症状が広く出やすいとされています[2]。顕性型では、乳児期は3か月ごと、その後は半年〜1年ごとの発達の確認が勧められています[2]。
3. 寿命・予後と、治療・定期的なチェック
ロビノウ症候群の寿命について、まとまったデータはありません。命の見通しにいちばん影響するのは、心臓の病気があるかどうかです[1][2]。病気の原因そのものを治す治療はまだなく、一つひとつの症状に合わせた治療と、定期的なチェックで生活を支えます。
寿命・予後の見通し
GeneReviewsでは、心臓の病気がある場合、それが体調を大きく左右し、命にかかわる主な原因になるとされています[1][2]。一方で、知能はふつう正常の範囲で、顕性型の女性の妊娠は多くの場合とくに問題なく経過するとされています(赤ちゃんの向きや骨盤との大きさの関係で、帝王切開が必要になることはあります)[2]。どの型か、どの合併症があるかで見通しが変わるので、原因の遺伝子を確かめておくことに意味があります。
治療と、定期的に確かめたいこと
🩺 GeneReviewsで勧められている治療と定期的なチェック
※GeneReviewsのROR2関連型[1]と顕性型[2]の記載をまとめたもの。実際の治療方針は主治医とご相談ください。
GeneReviewsは、リスクのあるきょうだいを早く調べて、治療や経過観察を早めに始めることも勧めています[2]。ご家族で原因がわかっていれば、ほかのお子さんが同じ変化をもっているかを確かめられます。
4. 遺伝のしかたと、次のお子さんの確率
ロビノウ症候群の遺伝のしかたは、原因の遺伝子で決まります。DVL1・DVL3・WNT5Aが原因なら常染色体顕性(優性)遺伝、ROR2が原因なら常染色体潜性(劣性)遺伝です[1][2]。型によって、次のお子さんで同じことが起こる確率がまったく違います。
👪 型による遺伝のしかたの違い
※GeneReviews[1][2]による。
顕性(優性)型:お子さんへは2分の1
常染色体顕性(優性)遺伝では、2本で1組の遺伝子の片方に変化があれば症状が出ます。顕性型のロビノウ症候群の方のお子さんは、1人ごとに2分の1の確率で同じ変化を受け継ぎます。ただし、受け継いだお子さんの症状がどれくらいの重さになるかは、遺伝子検査では予測できないとされています[2]。
GeneReviewsの表では、顕性型の原因として報告されていた家系の数は、DVL1が18、WNT5Aが8、DVL3が7でした[2]。DVL1では最後から2番目のエクソン付近、DVL3では最終エクソンに生じる特定のフレームシフト変異が、顕性型ロビノウ症候群の原因として報告されています[2][7][8]。
潜性(劣性)型:ご両親が保因者なら、きょうだいは4分の1
常染色体潜性(劣性)遺伝では、2本の遺伝子の両方に変化があるときに症状が出ます。ご両親は片方だけに変化をもつ「保因者」で、ふつうは症状がありません。この場合、お子さん1人ごとに、発症する確率が4分の1、保因者になる確率が2分の1、どちらでもない確率が4分の1です[1]。保因者のしくみは潜性遺伝と保因者のしくみでも解説しています。
同じROR2遺伝子でも、片方だけに特定の種類の変化があると、指の先が短くなる「短指症B1型」という別の病気(顕性遺伝)になります。1つの遺伝子で2つの病気が起こる例として知られています[4][10]。
⚠️ 「自分が軽いから、子どもも軽い」とは言えません
顕性型では、同じ遺伝子の変化をもっていても、症状の重さは人によって違い、お子さんの重さを遺伝子検査で予測することはできないとされています[2]。親御さんの症状が軽く、病気と気づいていないこともあります。ご家族の誰かがロビノウ症候群とわかったときは、症状の重さだけで判断せず、知ったうえで計画することに意味があります。
家族歴がない場合:新しく起きた変化と性腺モザイク
顕性型では、ご両親のどちらからも受け継いでおらず、お子さんの代で新しく起きた変化(新生突然変異、de novo)のこともあります。その割合はわかっていません[2]。
ご両親の血液で変化が見つからなくても、卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性は残ります。GeneReviewsは、この場合のきょうだいの確率を「一般より少し高いが、1%未満」としていますが、これは多くの家族をまとめた目安で、一人ひとりの親御さんの上限ではありません[2]。性腺モザイクでは、病的な変化をもつ卵子・精子の割合は個人によって異なり、通常の血液検査からその割合を正確に推定することはできません。そのため、次のお子さんへの確率は「最大で2分の1」と考え、次の妊娠での出生前診断も選択肢に入れて計画します。
お子さんで新しく起きた変化とわかれば、ご両親のどちらかのせいではないことがはっきりします。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
5. どんな人がこの検査を受けるとよいか
ロビノウ症候群が疑われる方、すでにお子さんが診断されていて原因と次のお子さんの確率を知りたいご両親、ご家族にロビノウ症候群の方がいて妊娠を考えている方に向く検査です。見た目の特徴や家族歴だけでは型を決められないので、迷ったら、まず遺伝カウンセリングで状況をお聞かせください。
ロビノウ症候群が疑われる方
- ●低身長があり、前腕やすねが短い(中間肢節短縮)
- ●目と目の間が広い、おでこが出ている、鼻の穴が上を向いているなどの顔立ちの特徴がある
- ●小陰茎・停留精巣など性器の特徴、歯の並びの特徴、二分舌がある
- ●妊娠中の超音波検査で、手足の長い骨の短さや頭の大きさを指摘されたことがある(出生後の確認として)
原因がわからないまま、いくつもの病院や検査を回ることは、ご本人にもご家族にも大きな負担です。症状からロビノウ症候群が考えられるときに原因の遺伝子を一度で確かめられれば、その回り道を短くできる可能性があります。
お子さんが診断され、原因と次のお子さんの確率を知りたいご両親
臨床的にロビノウ症候群と言われていても、どの遺伝子が原因かで、次のお子さんの確率は「4分の1」から「最大で2分の1」、あるいはそれより低い場合まで大きく変わります(第4章)。原因がわかっていれば、次の妊娠で赤ちゃんを調べる出生前診断を計画できます。原因がわからないままでは、出生前に調べる的を決められません。
ご家族にロビノウ症候群の方がいて、結婚や妊娠を考えている方
ご家族で原因の変化がわかっていれば、血縁の方が同じ変化をもっているかどうかを確かめる手がかりになります。顕性型なら、ご自身が受け継いでいるか、潜性型なら、保因者かどうかを知ることで、妊娠の前から計画を立てられます。あなたの1回の検査結果が、ご両親・きょうだい・お子さんが自分のことを考える手がかりになります。
この検査より別の検査が向いている場合
症状がロビノウ症候群らしいときは、5つの遺伝子にしぼったこの検査が向いています。症状がほかの骨の病気とも重なり、病気をしぼりきれないときは、次の検査のほうが向くことがあります。
🔍 症状に合わせた検査の選び方
※どの検査が合うかは、症状・診察所見・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングでご相談ください。
6. 調べる遺伝子と、それぞれの遺伝子でわかる病気
この検査では、DVL1・DVL3・ROR2・TWIST1・WNT5Aの5つの遺伝子をまとめて調べます。ロビノウ症候群の顕性型・潜性型の原因遺伝子に加えて、名前の似たロビノー・ソローフ症候群の原因遺伝子も含まれています。
🧬 ロビノウ症候群NGS遺伝子検査で調べる5遺伝子
※対象遺伝子は当院の検査内容による。病気と遺伝のしかたは文献[1][2][4]〜[9]による。
💡 用語解説:Wntシグナル
Wntシグナルは、胎児の体ができていくときに、細胞どうしが「どこで、どの向きに育つか」を伝え合う仕組みのひとつです。ロビノウ症候群の原因遺伝子のうち、WNT5Aは信号を出すたんぱく質、ROR2はその受け手、DVL1・DVL3は細胞の中で信号を伝える役をもっています[4][6][7]。同じ仕組みの別の場所が働かなくなっても、似た症状が出るのはこのためです。
7. この検査でわかること・わからないこと
この検査では、5つの遺伝子の塩基配列の変化(文字の置き換わりや小さな挿入・欠失)を調べます。また、検体の種類や解析条件に応じて、遺伝子全体または複数エクソンに及ぶ欠失・重複も調べられます。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
- ●調べていない遺伝子:ロビノウ症候群に似た症状は、NXN遺伝子(潜性型)でも報告されています。RAC3・GPC4遺伝子も、それぞれ1人ずつで報告があります[1][2]。これらはこの検査の対象に含まれていません。
- ●大きな欠失・重複:遺伝子1つ分まるごとの欠失・重複は、頬の粘膜と血液の検体で調べられます。2つ以上続くエクソンの欠失・重複は、血液の検体の場合に調べられます。エクソン1つだけの欠失・重複は、ふだんは検出できません。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。
- ●検出できない種類の変化:染色体の一部の入れ替わり(転座・逆位)、同じ配列の繰り返しが伸びる変化、遺伝子の働きを調節する領域や、エクソンから20塩基以上離れた場所の変化は調べられません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(モザイク)を見つけることは目的にしていません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の医学ではまだ判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、ロビノウ症候群を完全に否定することはできません。上のような調べていない原因が残る可能性があり、症状とあわせて判断します。
専門家向け:検査の技術的な情報
次世代シーケンサー(NGS)で、遺伝子のたんぱく質をつくる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。対象領域の99%以上を、同じ場所を20回以上読む深さで読み取ります(≥99% at 20x)。何度も読むほど、読み間違いの影響が小さくなります。読み取りの質が十分でない部分は、サンガー法で確かめます。よく似た配列(偽遺伝子など)が別の場所にある部分では、検出が難しくなることがあります。
GeneReviewsでは、顕性型の3遺伝子では病気の原因となる変化の99%以上が、ROR2では95%以上が、配列を読む方法で見つかるとされています[1][2]。
8. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。
陽性だったとき:診断の確定と、合併症への備え
DVL1・DVL3・WNT5Aに病気の原因となる変化が見つかった場合は顕性型、ROR2の2本のコピーそれぞれに病的な変化が確認された場合は潜性型の診断につながります。TWIST1に病的な変化が見つかった場合は、ロビノー・ソローフ症候群やゼーツレ・コッツェン症候群などを考え、症状とあわせて判断します。型がわかれば、心臓・腎臓・背骨・歯・聴力など、何を定期的に確かめるとよいかが具体的になります(第3章)。DVL1が原因なら聴力、潜性型なら背骨と心臓、というように、気をつける点が変わります。
ご家族への影響と、ご家族が検査を受けるとき
顕性型なら、ご両親のどちらかが同じ変化をもっていないか、ご本人のお子さんに伝わる可能性があるかを考えます。潜性型なら、ご両親は保因者で、きょうだいが保因者かどうかも、将来の結婚・妊娠を考えるときの手がかりになります。ご家族で原因がわかっていると、ほかのご家族は同じ場所を調べることで、受け継いでいるかを確かめられます。
保因者かどうかを広く調べる拡大版保因者スクリーニングもありますが、ROR2は女性版787遺伝子の一覧には含まれていません(2026年10月時点で確認)。ROR2の保因者かどうかを知りたい場合は、ご家族の変化をもとにした検査を、遺伝カウンセリングでご相談ください。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もありますが、こちらも対象遺伝子に含まれるかは一覧でご確認ください。
陰性だったとき
5つの遺伝子に原因が見つからなかった場合でも、ロビノウ症候群を完全に否定することはできません(第7章)。症状に合わせて、骨系統疾患NGS遺伝子パネル検査や全エクソーム検査(WES)など、より広く調べる検査を考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。結果の伝え方については、当院の二次的所見の開示方針もあわせてご覧ください。
妊娠を考えている方:出生前診断の相談
GeneReviewsでは、ご家族の原因の変化がわかっていれば、顕性型・潜性型のどちらでも出生前検査が可能とされています[1][2]。顕性型では、妊娠20週ごろの超音波検査で、手足の長い骨の短さや頭の大きさ、顔立ちの特徴が見えることがあるとされています[2]。ただし、超音波だけで確定することはできません。
当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。あらかじめご家族の原因を確かめておくことが、出生前診断を計画するための出発点になります。妊娠を考えている段階から、どのように進められるかをご相談いただけます。原因がわからないまま妊娠した場合に、赤ちゃんの遺伝子を広く調べる出生前全エクソーム(WES)検査もあります。
9. 日本の制度について(2026年10月時点)
ロビノウ症候群という病名で指定難病・小児慢性特定疾病の対象になっているかどうかは、それぞれの公式の一覧(難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センター)で最新の情報をご確認ください。心臓の病気など、合併症の病名で小児慢性特定疾病の別の疾患群の対象になることもあります。認定の基準や申請の方法は、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
当院の遺伝子検査は自費診療で、保険は適用されません。
10. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は税込330,000円、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の内側の粘膜の検体なら、オンライン診療で全国から受けていただけます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング来院またはオンライン
▶
検体の採取・送付お支払い後にキット
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。
オンライン診療では、ビデオ通話で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。検体採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えを防ぎ、検査に十分な質の検体を確保するため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
11. 院長コラム
🩺 院長コラム【「同じ病名」でも、次のお子さんの確率は同じではない】
ロビノウ症候群は、同じ病名でも、原因の遺伝子によって遺伝のしかたがまったく違う病気です。顕性型なら次の世代へ2分の1、潜性型ならご両親がともに保因者で、きょうだいは4分の1。新しく起きた変化なら確率は下がりますが、性腺モザイクの可能性がある以上、ゼロとは言えません。だからこそ、臨床的な診断だけで止まらず、どの遺伝子が原因かを確かめておくことが大切だと考えています。
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、次の妊娠でどう備えるかを具体的に考えられます。当院では、検査から遺伝カウンセリング、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、続けて支えられる体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ロビノウ症候群の症状と特徴は?
低身長、前腕やすねの骨の短さ(中間肢節短縮)、指の短さ、目と目の間が広い・おでこが出ている・鼻の穴が上を向いているといった顔立ちの特徴、小陰茎や停留精巣など性器の特徴、歯の並びの特徴などがみられます。どの症状がどれくらい出るかは、型や一人ひとりで違い、見た目だけで診断することはできません。
Q2. ロビノウ症候群は何人に1人ですか?
正確な頻度はわかっていません。遺伝性疾患の解説書(GeneReviews)では、潜性型は医学文献に100例あまり、顕性型は80家族未満が報告されている、非常にまれな病気とされています。
Q3. ロビノウ症候群の知能は?
知能は、ふつうは正常の範囲とされています。ただし、発達の遅れがみられる方も一部にいて、潜性型のほうが症状が広く出やすいとされています。乳幼児期は発達を定期的に確かめることが勧められています。
Q4. 身長はどれくらいになりますか?
潜性型では、ほぼ必ず子どものうちから低身長があり、大人になっても続きますが、最終的な程度は軽いこともあります。顕性型は潜性型より身長が平均に近いことが多く、DVL1遺伝子が原因のタイプでは、最終的な身長は正常か正常の下のほうと報告されています。
Q5. 寿命や予後はどうですか?
寿命についてのまとまったデータはありません。命の見通しにいちばん影響するのは心臓の病気で、潜性型では約15%に生まれつきの心臓の病気があるとされています。診断がついたら心臓の検査を受け、歯・背骨・聴力などを定期的に確かめていきます。
Q6. 遺伝しますか?次の子どもの確率は?
原因の遺伝子で決まります。DVL1・DVL3・WNT5Aが原因の顕性型では、ご本人のお子さんへ1人ごとに2分の1の確率で伝わります。ROR2が原因の潜性型では、ご両親がともに保因者で、きょうだいが発症する確率は1人ごとに4分の1です。お子さんで新しく起きた変化でも、性腺モザイクの可能性があるため、次のお子さんへの確率は最大で2分の1と考えます。
Q7. ロビノー・ソローフ症候群と同じ病気ですか?
別の病気です。ロビノー・ソローフ症候群はTWIST1遺伝子の変化で起こり、頭の骨のつなぎ目が早く閉じるゼーツレ・コッツェン症候群の、症状の軽い側にあたる病気と考えられています。この検査はTWIST1も調べるので、2つの病気の区別にも役立ちます。
Q8. 出生前診断はできますか?
ご家族の原因の変化がわかっていれば、顕性型・潜性型のどちらでも出生前検査が可能とされています。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。出生前診断を計画するには、まずご家族の原因を確かめておくことが出発点になります。
🧬 一度の検査で、ご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。ロビノウ症候群の原因の遺伝子がわかれば、合併症への備えだけでなく、ご家族の検査や、次の妊娠の計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
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