目次
複雑性皮質形成異常6型(ふくざつせいひしつけいせいいじょう6がた:CDCBM6)は、6番染色体にあるTUBB遺伝子の変化によって、赤ちゃんの脳が形づくられる過程がうまく進まなくなる、とてもまれな生まれつきの脳の病気です[1]。重い発達の遅れ・小さな頭(小頭症)・てんかんなどを特徴とし、脳のMRIには専門家がひと目で気づく手がかりが現れます。TUBB遺伝子は、細胞の骨組みである微小管(びしょうかん)の材料をつくる遺伝子で、この材料に不具合が出ると、神経細胞がうまく生まれ・移動できなくなります[1]。この記事では、病気のしくみから症状、よく似た病気との見分け方、遺伝のしかたと再発の考え方、そして診断と今後の見通しまでを、遺伝医学の知見に基づいて解説します。
🧠Q. 複雑性皮質形成異常6型(CDCBM6)とは?
6番染色体のTUBB遺伝子の変化で、細胞の骨組み「微小管」がうまく働かず、脳のかたちづくりが乱れる常染色体優性の神経発達障害です。重い発達の遅れ、小頭症、てんかん、脳の構造異常(大脳皮質の形成異常・脳梁の異常・大脳基底核の癒合など)が手がかりになります。
🩺Q. どうやって診断するのですか?
脳のMRIで特徴的な所見(とくに尾状核と被殻がつながって見える「大脳基底核の癒合」)を確認し、最終的には遺伝子検査でTUBB遺伝子の変化を確認して確定します。次世代シーケンサーを使った遺伝子パネル検査や全エクソーム解析が用いられます。
🌸Q. 遺伝する病気ですか?
これまで報告された患者さんは、ご両親にはない変化がお子さんに新しく生じた新生突然変異(de novo変異)によるものでした。そのため多くはご家族内でくり返す病気ではありませんが、まれに例外(生殖細胞モザイク)もあり、遺伝カウンセリングで個別に整理することが大切です。
1. 複雑性皮質形成異常6型とは:まず全体像をつかむ
複雑性皮質形成異常6型(CDCBM6)は、脳の中で神経細胞が生まれ、決められた場所へ移動していく過程に生まれつきの乱れが生じることで起こる、常染色体優性遺伝の神経発達障害です[1]。国際的な遺伝病データベースであるOMIMには「615771」という番号で登録され、原因は6番染色体の短い腕(6p21)にあるTUBB遺伝子の、片方だけに起こる変化(ヘテロ接合性変異)だとされています[3]。
「皮質形成異常」とは、脳の表面をおおう大脳皮質(だいのうひしつ)――ものを考えたり、体を動かしたりする司令塔――が、正しい形やしま模様(層構造)をつくれないことを指します。CDCBM6では、この大脳皮質だけでなく、脳の中心にある大脳基底核、左右の脳をつなぐ脳梁(のうりょう)、小脳や脳幹など、複数の場所に同時に構造の異常が現れるのが特徴です[3]。「複雑性(complex)」という言葉は、この「あちこちに異常が及ぶ」という意味合いを表しています。
最初にこの病気を分子レベルで明らかにしたのは、2012年のBreussらの研究です。彼らは、重い精神運動発達の遅れと小頭症をもつ血縁関係のない3人の子どもに、TUBB遺伝子の新しく生じた変化(de novo変異)を見つけました[1]。3人とも大脳基底核の形の異常があり、脳梁や小脳にも異常が見られ、そのうち1人には多小脳回や帯状の異所性灰白質、さらに網膜の異形成や小眼球症も認められました[3]。その後も症例報告は追加されていますが、報告例の少ない、きわめてまれな病気のひとつです。
💡 用語解説:チューブリン異常症(チューブリノパチー)とは
脳の細胞の骨組みである微小管の材料(チューブリン)をつくる遺伝子――TUBB・TUBA1A・TUBB2B・TUBB3など――の変化によって起こる、脳の形づくりの病気をまとめた呼び名です[1]。CDCBM6はこのチューブリン異常症の代表的なひとつで、原因がTUBBという一つの遺伝子にしぼられている点が、診断や研究を進めやすくしています。詳しくはチューブリン異常症の解説ページもご覧ください。
2. 原因遺伝子TUBBと「脳をつくる線路」のしくみ
🔍 関連記事:微小管とは/チューブリンとは/新生突然変異(de novo変異)とは
TUBB遺伝子は、β(ベータ)チューブリンという、444個のアミノ酸からできたタンパク質の設計図です[1]。このβチューブリンは、もう一方のαチューブリンと手をつないで一組(ヘテロ二量体)になり、それがいくつも積み重なって、細長い管である微小管をつくります。微小管は、細胞の形を支える骨組みであると同時に、細胞の中で物を運ぶ「線路」でもあり、細胞が分裂するときには染色体を正しく分ける装置にもなる、生命の根幹をになう構造です。
TUBB遺伝子は、赤ちゃんがおなかの中にいる時期の脳、とくに大脳皮質がさかんに作られている時期に、非常に強く働きます[1]。この時期の脳では、(1)神経のもとになる細胞(神経前駆細胞)が分裂して数を増やし、(2)生まれた神経細胞が脳の深いところから表面へと長い距離を移動し、(3)たがいに手をのばして複雑な回路をつなぐ――という3つの作業が、ものすごい速さで進みます。その3つの作業すべてに、微小管が重要な役割を果たしています[1]。だからこそ、材料であるβチューブリンに不具合が出ると、脳づくり全体が乱れてしまいます。
正常な脳では、神経細胞は微小管という線路に沿って脳の表面へ移動し、数も十分に増えます。CDCBM6では微小管機能の異常により、神経前駆細胞の分裂や神経細胞の移動が障害され、正常な脳形成が妨げられます。
Breussらが見つけた3つの変異は、それぞれ異なる形でチューブリンの折りたたみ・ヘテロ二量体形成や神経発生に影響していました[1]。たとえばE401Kでは、シャペロン依存性のα/βチューブリン・ヘテロ二量体形成が著しく障害され、変異タンパク質は微小管へ組み込まれませんでした[1][4]。一方、V353Iはヘテロ二量体形成や微小管への組み込み自体は保たれていましたが、発生中のマウス脳で変異タンパク質を発現させると、分裂期にある神経前駆細胞が増加し、皮質板に到達する神経細胞が減少しました[1][5]。
💡 ここが核心:変異ごとに作用機序が異なる
CDCBM6のTUBB変異は、すべてが同じ仕組みで働くわけではありません。Breussらの機能解析では、E401KやM299Vではヘテロ二量体形成の低下から機能喪失が示唆される一方、変異タンパク質の発現実験からはドミナントネガティブ作用の可能性も示され、V353Iでは微小管動態や微小管関連タンパク質との相互作用の変化が想定されています[1]。したがって、常染色体優性で発症する分子機序は変異ごとに異なる可能性があります。
3. 脳の中で起きていること:3つのつまずき
MRIで見える大きな脳のかたちの異常は、細胞レベルで起きる3つのつまずきが積み重なった結果です。以下に、順に整理します。
つまずき①:細胞が「増えられない」——小頭症のはじまり
脳づくりは、まず神経のもとになる細胞(神経前駆細胞)が分裂して数を増やすところから始まります。細胞が分裂して染色体を2つに分けるときには、微小管でできた紡錘体(ぼうすいたい)という装置が働きます。TUBBに変異があると、この装置がうまく動かず、細胞が分裂の途中で立ち往生します。実際、変異タンパク質を発生中のマウスの脳で働かせると、分裂期で止まる細胞が増え、脳の表面に届くべき神経細胞の数が減ることが確認されました[5]。神経細胞の数そのものが足りなくなること――これが、CDCBM6で見られる重い小頭症(標準より頭が小さい)の根本的な原因のひとつです[3]。
つまずき②:細胞が「たどり着けない」——皮質のしま模様が崩れる
分裂を終えた神経細胞は、脳の深いところから表面へと長い距離を移動します。このとき、放射状グリア細胞という細胞ののばした突起を「ガイドレール」にして、自分の核を前へ前へと動かしていきます(この核の動きを「核移動」と呼びます)。この移動には、微小管とそれに関連するモータータンパク質が重要な役割を果たします。TUBBの変異で微小管の性質が変わると、神経細胞は移動の途中で止まってしまい、本来6層になるはずの大脳皮質のしま模様が崩れます[9]。行き場を失った細胞が白質の中に取り残されると、「異所性灰白質」と呼ばれる塊ができ、これが後述するてんかんの火種になります。
つまずき③:細胞が「手をつなげない」——脳梁ができない
微小管は細胞内の「線路」でもあり、成長中の神経が正しい相手へ手(軸索)をのばすための材料や信号を運びます。ある種のTUBB変異では、この細胞内の物流(小胞輸送)が滞ることが、患者さんの細胞を使った実験で示されています[6]。物流が止まると、神経は遠くの相手まで手をのばせません。CDCBM6で、左右の脳をつなぐ最大の連絡橋である脳梁(のうりょう)が欠けたり細くなったりするのは、この「長い手をのばす作業」の失敗が背景にあります[3]。
💡 新しい知見:TUBB変異と一次繊毛形成
近年、特定のTUBB変異が細胞のアンテナである一次繊毛(いちじせんもう)の形成を妨げることが示されました。2025年、MollicaらはTUBBのG308Sというde novoヘテロ接合性ミスセンス変異をもつ患者を報告し、この変異が繊毛形成の初期段階を障害し、マウスでも小脳や腎臓で繊毛の減少がみられることを示しました[7]。この患者の脳には、繊毛病でみられるモラートゥース・サインも認められました[7]。この報告は、一部のTUBB関連神経発達障害で微小管異常と一次繊毛形成障害が重なりうることを示す新しい知見です。
4. CDCBM6の主な症状
脳の構造の異常は、生まれてまもなくからのさまざまな症状として現れます。その重さは、大脳皮質・小脳・脳幹の異常の程度と深く関係しており、お子さんによって幅があります[3]。
神経・発達の症状
- ➤重い精神運動発達の遅れ:首すわり・寝返り・歩行といった運動の節目の獲得が遅れ、知的な発達にも重い影響が及ぶことが多く、ことばが出にくい・出ないお子さんも少なくありません[3]。
- ➤てんかん:チューブリン異常症ではてんかんを合併することがありますが、その頻度や重症度は脳形成異常の型によって幅があります。重い皮質形成異常では薬剤抵抗性てんかんを伴うこともあります[9]。CDCBM6単独では報告例が少ないため、頻度を正確に示すことは困難です。
- ➤筋緊張の異常と運動失調:はじめは体の芯の力が抜けたような筋緊張低下がみられ、成長とともに手足がつっぱる痙性へ移り変わることがあります。小脳の低形成を反映して、動きがぎこちない・ふらつくといった小脳性運動失調も現れます[2]。
目の症状
目に関する異常の合併も知られています。斜視や眼のふるえ(眼振)に加えて、小眼球症・網膜の異形成などが報告されています[3]。ここで診断上とても大切なのは、CDCBM6では先天性外眼筋線維症(CFEOM)は典型的な所見として確立していないという点です。一方、TUBB3の特定の病的変異では先天性外眼筋線維症(CFEOM)が生じるため、眼球運動異常の有無はTUBB3関連疾患との鑑別の手がかりになります[8][9]。
🩺 院長コラム【症状の幅をどう考えるか】
CDCBM6のように報告例が限られる病気では、教科書に並ぶ症状のすべてが、目の前のお子さんに当てはまるわけではありません。同じTUBBの変化でも、どの場所にどんな種類の変化が起きたかで、現れ方は大きく変わります。遺伝医学では、同じ遺伝子でも病的変異の位置や性質によって表現型が異なることがあります。CDCBM6は報告例が少ないため、個々の症例の将来像を限られた症例報告だけから断定することはできません。正確な分子診断と画像所見に基づき、必要な経過観察項目や合併症への対応を個別に整理することが重要です。
5. 画像診断(MRI)のカギ:基底核の「癒合」
頭部MRIによる脳のかたちの評価は、CDCBM6の診断でもっとも力を発揮します。チューブリン異常症には、ほかの原因による脳の異常とは一線を画すいくつかの目印があります。以下に、部位ごとの特徴を整理します。
🧠 大脳皮質
- 多小脳回(脳のしわが小さく多い)
- 脳回パターンの単純化
- 症例により限局性多小脳回や脳回パターンの単純化など、皮質形成異常の程度が異なる
🧩 大脳白質
- 皮質下帯状異所性灰白質(二重の皮質のように見える)
- 白質内に取り残された細胞の塊
⭐ 大脳基底核(最重要の目印)
- 尾状核と被殻の形の異常と癒合
- 内包前脚の欠損
🌉 脳梁・交連線維
- 脳梁が薄い・欠ける(全欠損/部分欠損)
- 前交連の低形成
🫧 小脳・脳幹
- 脳幹の低形成
- 小脳虫部の低形成・異形成
- モラートゥース・サイン(症例により)
※尾状核(びじょうかく)・被殻(ひかく)=大脳の奥にある運動や学習に関わる神経の集まり。内包前脚(ないほうぜんきゃく)=それらの間を通る神経線維の束。モラートゥース・サイン=小脳や脳幹の形が「臼歯(奥歯)」のように見えるMRI所見。
なぜ「基底核の癒合」が決め手になるのか
ふつう、大脳の奥にある尾状核と被殻のあいだには、神経線維の束である内包前脚が通っていて、両者はきちんと分かれて見えます。ところがCDCBM6を含むチューブリン異常症では、この内包前脚がうまく作られず、尾状核と被殻がひとつの大きな塊のようにつながって見えます[1]。この「基底核の癒合」は、ほかの原因(LIS1やDCXなどの遺伝子)による皮質形成異常では見られにくいため、チューブリン異常症を強く疑う、信頼性の高い目印とされています[9]。MRIでこの所見に気づけるかどうかが、正しい遺伝子検査へ最短でたどり着けるかを左右します。
🔍 関連記事
大脳皮質形成異常NGSパネル遺伝子検査/多小脳回症NGSパネル検査——MRIの所見をふまえ、関わる遺伝子をまとめて調べられます。
6. よく似た病気との違い(鑑別)
チューブリン異常症は、原因となる遺伝子が変わると、MRIの見え方や合併症の傾向も少しずつ変わります。CDCBM6(TUBB)と、代表的な仲間の病気との見分けどころを整理します[9]。
| 原因遺伝子 | 主な病名 | 見分けどころ |
|---|---|---|
| TUBB | 複雑性皮質形成異常6型(CDCBM6) | 限局性多小脳回・帯状異所性灰白質・基底核の形成異常・脳梁形成不全。CFEOMは典型的所見として確立していない。 |
| TUBA1A | 滑脳症3型 | 古典的な滑脳症(脳表が平滑)が中心で、重症度が高い傾向。 |
| TUBB2B | 複雑性皮質形成異常7型 | 左右で差のある(非対称の)多小脳回様の皮質異常が特徴的。 |
| TUBB3 | 複雑性皮質形成異常1型 | 脳形成異常を示す型があり、特定のTUBB3病的変異では先天性外眼筋線維症(CFEOM)を伴う。 |
MRIで平滑な脳表が目立てばTUBA1Aによる滑脳症3型を、先天性外眼筋線維症があればTUBB3関連疾患を、というように、画像所見と合併症の組み合わせから原因遺伝子を推理し、遺伝子検査で確かめるのが実際の流れです。また、CDCBM6の一部でみられるモラートゥース・サインは、繊毛病であるジュベール症候群3型(AHI1関連)とも重なる所見で、TUBB関連疾患の一部に繊毛病様の表現型が重なることを示しています[7]。
同じTUBBが、まったく違う病気を起こすことも
TUBB遺伝子では、変化する場所や性質によって、脳の病気であるCDCBM6とは異なる表現型を起こすことがあります。その代表が先天性対称性四肢環状皮膚溝1型(クンツェ型/CSC-KT)です。これは、手足に「ミシュランタイヤ」のような深い輪状のしわが生まれつきあり、知的障害や口蓋裂を伴う病気で、CDCBM6と同じTUBBの変化で起こることがわかっています[10]。ただし、CSC-KTでは脳の大きな構造異常は目立たず、皮膚と発達の症状が前面に出ます[10]。同じ遺伝子でも変化の位置や性質によって表現型が異なるため、「どこに・どんなタイプの変化があるか」を正確に読み解く分子診断が重要になります。
7. 遺伝のしかたと再発リスク
CDCBM6は常染色体優性遺伝の病気に分類されます[3]。ただし、初期報告を含む多くのCDCBM6症例では、変異はご両親にはなく、お子さんに新しく生じた変化(de novo変異)でした[1]。実際、チューブリン異常症全体でも、患者さんの95%以上が新生突然変異によるものと報告されています[11]。
これは、ご家族にとって大切な意味をもちます。多くの場合、この病気はご両親から受け継がれたものではなく、次のお子さんで同じことがくり返される可能性も、一般に低いと考えられます。ただし「ゼロ」と言い切れないのが、生殖細胞モザイクという現象です。ご両親の血液では変異が見つからなくても、卵子や精子をつくる細胞の一部にだけ変異が潜んでいる可能性がまれにあり、その場合はきょうだいでの再発リスクがわずかに残ります。こうした一人ひとり異なる事情を、正確に、かつ具体的な数字の意味とともに整理するのが遺伝カウンセリングの役割です。
💡 用語解説:新生突然変異(de novo変異)とは
ご両親の遺伝子には変化がないのに、お子さんにだけ新しく生じた遺伝子の変化のことです。誰のせいでもなく、卵子や精子ができるとき、あるいは受精のごく初期に偶然起こります。新生突然変異の詳しい解説もあわせてご覧ください。一般に、de novo変異は親の育て方や通常の妊娠中の行動によって生じるものではありません。
8. 検査・診断の進め方
診断は、MRIによる脳の形の評価と、遺伝子検査によるTUBB変異の確認の、二段構えで進みます。MRIで基底核の癒合や脳梁の異常などチューブリン異常症を思わせる所見をとらえたら、次に原因遺伝子を確かめます[9]。
CDCBM6は、TUBBという一つの遺伝子の変化で起こる単一遺伝子疾患です。そのため、次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル検査(脳の形成に関わる複数の遺伝子をまとめて調べる方法)や、全エクソーム解析(遺伝子の翻訳される部分をまるごと調べる方法)によって、早く正確に確定できるようになっています[12]。当院では、神経細胞の移動や大脳皮質の形成に関わる遺伝子を対象とした神経細胞遊走障害NGSパネル検査や大脳皮質形成異常NGSパネル検査をご案内できます。てんかんが前面に立つ場合はてんかん包括的遺伝子検査、目の症状には小眼球症・無眼球症・コロボーマ遺伝子パネルなど、症状に応じた検査も選べます。
🩺 院長コラム【分子診断の臨床的な意味】
原因遺伝子を特定することは、診断名を確定するだけでなく、関連する脳形成異常や眼症状、てんかんなどの評価方針を整理するうえで重要です。TUBBの病的変異が確認された場合には、既知の表現型と本人の画像・症状を照合し、必要な診療科や経過観察項目を検討できます。また、両親の検査結果を含めて遺伝形式を評価することで、きょうだいや将来の妊娠に関する再発リスクの説明にもつながります。
遺伝カウンセリングの役割
遺伝カウンセリングは、確率の数字を一方的に告げる場ではありません。ご家族の状況にあわせて、再発の考え方、今後の見通し、利用できる支援を整理し、納得して次を選べるようにする場です。ご家族内でTUBBの病的な変化がすでに特定されている場合には、出生前診断や着床前遺伝学的検査(PGT)といった選択肢についてもご説明できます。遺伝カウンセリングとはや、臨床遺伝専門医の役割についても、あわせてご覧ください。
9. 治療とこれから
現在のところ、TUBB変異による微小管の不具合そのものを根本から治す治療法は確立されていません。そのため、治療は症状をやわらげ、生活の質を保つための多職種による支援(対症療法)が中心になります[3]。
てんかんを合併する場合は、小児神経科で発作型や脳波所見に応じて治療を行います。重い皮質形成異常を伴うチューブリン異常症では薬剤抵抗性てんかんが問題になることもあります[9]。発達の遅れや運動の困難に対しては、診断後できるだけ早くから、理学療法・作業療法・言語聴覚療法といったリハビリテーションを始めることがすすめられます。斜視や白内障などの目の異常には眼科的な対応を、必要に応じて呼吸や栄養のサポートを、というように、その子に必要なケアを組み合わせていくのが基本です。CDCBM6の実際の治療やリハビリは、小児神経・整形外科・眼科など専門施設で行われるため、当院では診断と遺伝カウンセリングを担い、必要に応じて連携先へのご紹介となります。
研究の面では、TUBB病的変異ごとの微小管動態、チューブリン折りたたみ、細胞内輸送、一次繊毛形成への影響について理解が進んでいます。一方、現時点でCDCBM6に対する疾患修飾療法は確立されておらず、微小管を標的とした治療は研究段階です。分子診断は、病態理解や適切な経過観察、将来の研究対象を明確にする基盤になります。
🏥 正確な診断から、今後の方針へ
複雑性皮質形成異常をはじめとする脳の形成異常・遺伝性疾患の
遺伝子検査・遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医が運営するミネルバクリニックへ。
カウンセリング、検査結果の説明、必要に応じた診療連携まで対応します。
🏥 ミネルバクリニックの特徴
臨床遺伝専門医が診療を担当する医療機関です
✓ カウンセリング・判定・陽性後のケア・確定検査まで一貫対応
✓ 2025年6月から確定検査(絨毛検査・羊水検査)を自院で実施
✓ 生涯にかかわる検査だからこそ、スピードより「正確性」を最優先
よくある質問(FAQ)
関連記事
参考文献
- [1] Mutations in the β-Tubulin Gene TUBB5 Cause Microcephaly with Structural Brain Abnormalities. Cell Rep. 2012;2(6):1554-1562. [PubMed 23246003] [DOI] [PMC3595605]
- [2] Complex cortical dysplasia with other brain malformations 6 (CDCBM6). MedGen, NCBI. [NCBI MedGen 862720]
- [3] Cortical Dysplasia, Complex, with Other Brain Malformations 6; CDCBM6. OMIM #615771. [OMIM 615771]
- [4] NM_178014.4(TUBB):c.1201G>A (p.Glu401Lys) AND Complex cortical dysplasia with other brain malformations 6. ClinVar, NCBI. [ClinVar RCV000115020]
- [5] NM_178014.4(TUBB):c.1057G>A (p.Val353Ile) AND Complex cortical dysplasia with other brain malformations 6. ClinVar, NCBI. [ClinVar RCV000115019]
- [6] TUBB Variants Underlying Different Phenotypes Result in Altered Vesicle Trafficking and Microtubule Dynamics. Int J Mol Sci. 2020;21(4):1385. [PMC7073044]
- [7] Mutations in the β-tubulin TUBB impair ciliogenesis and are associated with ciliopathy-like phenotypes. Nat Commun. 2025;16:10637. [PubMed 41309602] [DOI] [PMC12660950]
- [8] Cortical Dysplasia, Complex, with Other Brain Malformations 1; CDCBM1 (TUBB3・鑑別に関する記載を含む). OMIM #614039. [OMIM 614039]
- [9] Tubulinopathies Overview. GeneReviews®, NCBI Bookshelf. [NCBI Bookshelf NBK350554]
- [10] Mutations in Either TUBB or MAPRE2 Cause Circumferential Skin Creases Kunze Type. Am J Hum Genet. 2015;97(6):790-800. [PubMed 26637975] [DOI] [PMC4678434]
- [11] Bahi-Buisson N, Maillard C. Tubulinopathies Overview. GeneReviews®. 2016 Mar 24 [updated 2021 Sep 16]. [NCBI Bookshelf NBK350554] [PubMed 27010057]
- [12] Identification of two novel de novo TUBB variants in cases with brain malformations: case reports and literature review. J Hum Genet. 2021;66(12):1193-1197. [PubMed 34211110] [DOI]
※本記事は一般の方および遺伝診療に関わる方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や検査・治療については、必ず主治医・専門医にご相談ください。



