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妊娠初期以降は「NIPT」などの出生前診断を受けられるようになりますが、そこで目にするのが「染色体」という言葉です。
「ダウン症候群」などの染色体疾患は広く認知されていますが、「染色体」そのものの構造や機能を皆さんはご存知でしたか?
「染色体」は人間の体をつくる重要な役割があるため、「染色体」に異常が起きてしまうと生命を脅かすことにもなりかねません。
そこでこの記事では、染色体の構造と機能を妊婦さんにも分かりやすく簡単にご説明した後、重要な5つのポイントについて詳しくご紹介していきます。
染色体の構造と機能を簡単に説明
私たち人間が生きるために必要なさまざまな器官や細胞は「染色体」の働きが大きく関わっています。
まずは、染色体の構造と機能を分かりやすく簡単にご説明していきます。
染色体の構造
「染色体」はどこにあってどのような形をしているか皆さんは想像できますか?
人間の細胞は約60兆個あるといわれており、細胞には内臓から筋肉まであらゆる器官をつくる役割があります。
「染色体」は細胞にある「核」と呼ばれる部分の中にある「生体物質」を指します。
全長約2メートルというとても長い「DNA」がヒストンタンパク質に巻き付き、規則正しく折りたたまれて収納された構造が「染色体」と呼ばれています。
「染色体」は棒状になっており、一つの細胞に対して46本が2本1組のペアになって存在しています。1番染色体〜22番染色体から成る「常染色体」のペアと、「X染色体」または「Y染色体」の2本のペアからなる「性染色体」で構成されています。
染色体の主な機能
ひとつひとつの細胞に存在する「染色体」は「常染色体」と「性染色体」で異なる働きをしており、親から子に受け継がれる遺伝情報を細胞に届けるという大きな役割を担っています。
常染色体の働き
44本22対から成る「常染色体」は、タンパク質や酵素をつくる大事な遺伝情報を持っています。
染色体の中にあるDNAはさまざまな組み合わせの遺伝情報を持っており、「どのような器官に」「どのような遺伝子を」「どのようなタイミングで発現させるか」という命令をするコードによって、人それぞれの特徴や個性が生み出されます。
性染色体の働き
XとYの組み合わせからなる「性染色体」は、男女の性別を決める役割があります。
遺伝的な性別が男性の場合はX染色体+Y染色体の「XY」という組み合わせになり、女性の場合はX染色体+X染色体の「XX」という組み合わせになります。
「性染色体」にY染色体があるかどうかを判定することで、男女の遺伝的な性別が決まる仕組みになっています。
染色体異常について
人間の染色体は46本23対で構成されていますが、染色体数が本来よりも少なかったり多かったりすることで、さまざまな染色体疾患を発症する可能性があります。
染色体異常 | 特徴 |
---|---|
トリソミー | 特定の染色体が本来よりも1本多い |
モノソミー | 特定の染色体が本来よりも1本少ない |
転座 | 他の染色体に不適切な結合をしてしまっている |
「染色体」が1本多くなるトリソミーによる疾患は「ダウン症候群(21トリソミー)」が代表に挙げられ、赤ちゃんに知的障害や身体的な特徴など重い症状が現れます。
「性染色体異常」では、X染色体1本しかない「ターナー症候群」やX染色体が3本ある「トリプルX症候群」などの疾患があります。
「染色体異常」は突然変異や先天的なものが原因で発症します。全ての妊娠でリスクが生じるため、NIPTなどの出生前診断を早めに受検することが推奨されます。
染色体の構造に関する重要な5つのポイント
ここからは、染色体の構造をさらに理解できる重要な5つのポイントを分かりやすく簡単にご説明していきます。
タンパク質を合成する「DNA」
「染色体」と深い関係にあるのが「DNA」です。
人間は生命の維持と活動においてタンパク質が必要不可欠となっていますが、タンパク質を体内で合成するとても重要な役割が「DNA」にはあります。
「DNA」は、塩基配列という4種類の物質の並び順によって遺伝子の情報を記憶しています。塩基配列ごとに遺伝情報に基づいたタンパク質が合成され、そのタンパク質がさまざまな器官をつくる細胞に届けられ、私たちの体がつくりあげられていきます。
「遺伝子」は遺伝情報を持った「DNA」の領域を示すものであり、DNA=遺伝子ではないことを理解しておきましょう。
「DNA」はタンパク質を合成する役割を担っていることから、タンパク質の設計図やレシピとも呼ばれるようになりました。
生殖機能の発達に関わる「減数分裂」
人間の体は「DNA」の合成と体細胞分裂を繰り返してつくられていますが、「減数分裂」は、生殖細胞を生み出す際に行なわれる細胞分裂を指します。
「減数分裂」は、「DNA」が合成された後の2回連続の核分裂によって染色体数を半分に減らし、1回目の分裂で特殊な染色体分配が起こります。
体細胞分裂と比較した場合、とても高い頻度で遺伝子の組み換えが発生し、父親と母親由来の遺伝情報を持った精子と卵子の受精によって遺伝子レベルでの多様性を生み出しているのです。
DNAを管理する「ヌクレオソーム」
「ヌクレオソーム」は、染色体に存在する「DNA」がヒストンタンパク質に巻き付いた構造のことを指します。
「ヌクレオソーム」が集まったものを「クロマチン」と呼び、「クロマチン」が染色体内に収納されるために規則正しく折りたたまれた形が「クロマチン繊維」とされています。
染色体に関わる「ヌクレオソーム」の図式はこのようになります。
【染色体】>【クロマチン繊維】>【クロマチン】>【ヌクレオソーム(DNA+ヒストンタンパク質)】
「ヌクレオソーム」は、全真核生物に共通する「クロマチン」の単位であり、DNAを管理する働きを持つ構造体と覚えておきましょう。
DNAの分離をコントロールする「セントロメア」
「染色体」は2本の棒状が交差したような見た目になっており、2本の染色体が交わっている部分を「セントロメア」と呼びます。
生物は生殖機能を発達させるために「減数分裂」という細胞分裂が起こって染色体の数を減らしていきますが、「セントロメア」は細胞分裂によって分かれた2つ以上の細胞にDNAを均等に振り分け、規則正しく分離が行なわれるようコントロールする働きがあります。
「セントロメア」は精子や卵子などの生殖細胞をつくる際に、とても重要な役割を果たしているのです。
染色体の末端部分を保護する「テロメア」
「テロメア」はギリシャ語の「テロ(末端)」と「メア(部分)」を組み合わせた言葉で、セントロメアから伸びた染色体の末端部分を指します。
セントロメアからテロメアまでの長さが短い棒の方を「短腕(p)」、長い棒の方を「長腕(q)」と呼び、高齢になるほど「テロメア」の「DNA」が短くなる傾向にあることが分かっています。
「テロメア」は特殊な構造になっており、「DNA」の分解や修復などから「染色体」の末端部分の領域を守り、末端部分の領域に存在する遺伝情報を保護するという役割があります。
万が一「染色体」が「テロメア」を欠いてしまった場合、異常な「DNA末端」とされて細胞死や発がんの原因となることもあります。
まとめ
染色体の構造と機能、そして重要な5つのポイントをご紹介しました。
「染色体」は、私たちの内臓や筋肉などさまざまな器官をつくる細胞核内に存在しています。
「染色体」はヒストンタンパク質に「DNA」が巻き付いた「ヌクレオソーム構造」になっており、親から子に受け継がれる大事な遺伝情報を各細胞に運ぶというとても重要な役割を担っています。
棒状の形をしている「染色体」ですが、さらに細かく構造を見た場合、「DNA」の分離をコントロールする「セントロメア」や、染色体の末端部分を保護する「テロメア」などで構成されています。
「染色体」はとても繊細な「生体物質」であり、特定の染色体数が余分な複製によって多くなってしまった場合、「ダウン症候群」などの重い疾患を発症する可能性があります。
余分な染色体の複製ができる「トリソミー」と呼ばれる染色体異常は、「NIPT」などの出生前診断で妊娠初期から検査することができます。
東京の「ミネルバクリニック」では、妊娠9週目からダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーを検査できる「NIPT」を受検できるようになっています。
臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング体制が整っているため、検査の流れや染色体疾患のリスクなどを検査前にしっかり把握することができます。
実績と経験ともに優れた「NIPT実施施設」をお探しの場合は、是非、ミネルバクリニックまでお気軽にご相談ください。