InstagramInstagram

化学流産とは?原因や診断されたときの対応を解説

妊娠から出産までトラブルなく過ごせることが理想ですが、流産は一定の確率で起こってしまうものです。流産にはいくつか種類がありますが、「化学流産」とはどのようなものなのでしょうか。

本記事では、化学流産について詳しく解説するとともに、原因や前兆、診断されたときの対応を紹介します。気付かないうちに経験していることも多いと言われる化学流産について、理解を深めましょう。

化学流産とは妊娠反応が出ても胎嚢が確認できない状態

化学流産とは?原因や診断されたときの対応を解説

流産とは、赤ちゃんがお腹の中で育たず、亡くなってしまうことを言います。流産の種類はさまざまですが、「化学流産」と呼ばれるものを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

妊娠は、hCGというホルモンが分泌しているかどうかを、尿検査や血液検査で確認することで判断します。hCGは、受精卵が子宮内膜着床したときに分泌されるものなので、妊娠していないときは検出されないものです。

そのため、hCGが検出されて陽性反応が出たら妊娠を疑います。しかし、化学流産になった場合は、陽性反応が出ていても超音波検査で胎嚢が確認できません。

化学流産は、「化学的流産」や「生化学的妊娠」と呼ばれることもありますが、いずれも同じ意味です。

自覚症状はほとんどないケースが多い

化学流産が起こる時期は、妊娠4~6週目頃です。化学流産後は、生理と同じような出血が見られるケースが多いため、通常の生理だと思ってしまう方も少なくありません。

「生理が遅れたのかな?」と考える方がほとんどなので、妊娠検査薬を使っていなければ、化学流産したことには気が付かないことが多いでしょう。

妊娠を意識している方は、生理の遅れで妊娠検査薬を使うことがあるため、症状がなくても化学流産に気が付きやすいかもしれません。近年では、早期妊娠検査薬も販売されているため、早い段階で陽性反応を確認できるケースが増えています。

化学流産は流産の回数に含まれない

化学流産は、胎嚢が確認できる前に起こる超早期流産ですが、医学的に流産の定義にはあてはまりません。

現在、妊娠検査薬は手軽に薬局などで購入可能ですが、日本で初めて一般医薬品として発売されたのは1992年のことです。

それ以前は、生理が遅れていることで妊娠を疑い、産婦人科を受診して妊娠を確認する流れが一般的でした。

妊娠検査薬が普及したことで「陽性が出たけど病院では胎嚢が確認できなかった」というケースが増え、化学流産という言葉が知られるようになったのです。

他の流産との違い

化学流産だけでなく、「稽留流産」と「切迫流産」も妊娠初期に起こる流産です。

稽留流産は、胎児の成長が止まり心拍が確認できない状態のことを言い、多くは妊娠12週未満に起こります。化学流産と同様、前兆がないため、妊婦健診の際に分かることがほとんどです。

稽留流産診断後は、自然排出を待つ場合もありますが除去手術が必要になる場合もあります。

一方、切迫流産とは流産が迫った状態であるため、流産しない可能性があるものです。切迫流産は、妊娠22週未満で起こることが多く、腹痛や出血などの症状が出ることがあります。切迫流産と診断された場合、安静にすることが基本的な対処法です。

化学流産の原因は染色体異常であることが多い

妊娠初期の流産の多くが受精卵の染色体異常によるものと言われており、化学流産も同様であると考えられています。ただし、はっきりとした原因は特定できないことが多いでしょう。

染色体異常は偶発的に起こる以外にも、母体の年齢が上がるにつれて発生確率が上昇するため、加齢に伴い増加する傾向があります。

よって、妊娠に気が付かず「飲酒してしまった」「重いものを持ってしまった」ということがあったとしても、これらが化学流産の原因になることはほとんどありません。

なお、化学流産は着床時期に起こる流産であるため、着床の妨げになる何かしらの原因が子宮にある場合は注意が必要です。

例えば、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮内癒着や子宮内膜の炎症などがある場合、着床完了までに問題が生じることがあるため、化学流産の原因になる可能性があります。

化学流産の前兆はほとんどない

化学流産の場合、多くは無自覚無症状です。通常の生理と区別が付きづらいという特徴もあるため、前兆に気が付かないだけでなく、化学流産が起きたことも分からないケースがあります。

しかし、なかには化学流産の前兆が分かることもありますので、確認しておきましょう。

基礎体温が低温期になる

女性の身体は、排卵後に黄体ホルモンが分泌されることによって体温が上昇し、高温期に入ります。高温期は一般的に14日程度続きますが、その後生理が始まると黄体ホルモンの分泌量が減少するため低温期へ移行していくものです。

妊娠していた場合は黄体ホルモンの分泌が続くので、体温は下がりません。妊婦さんが平常時の体温に戻るのは妊娠中期に入る14週頃からです。

そのため、妊娠反応で陽性が出たとしても、その後化学流産をしてしまった場合、基礎体温は下がっていきます。

ただし、基礎体温は測る時間や測り方などでも大きく変化するため、1日で判断せず続けて計測するようにしましょう。

つわり症状がなくなる

つわりは早い人で妊娠4週頃から起こることがあります。そのため、妊娠5~6週目あたりで化学流産した場合は、つわり症状が急になくなることが考えられるでしょう。

つわりは、妊娠したことによるホルモンバランスの変化によって起こる症状なので、つわりがないことで心配になってしまう方もいるかもしれません。

しかし、つわりは個人差が大きいため、全くない人もいれば重い人や軽い人それぞれです。そのため、症状の有無で化学流産を判断することは難しいでしょう。

腹痛や出血について

化学流産は前兆があまりないため、一般的な流産のような腹痛は感じないことが多いと言われています。化学流産後、生理のような出血がある際に腹痛を感じる方もいますが、生理痛に似ているため気が付かない方も多いでしょう。

出血は生理時より多い場合もありますが、1週間以内にはおさまることがほとんどです。万が一、酷い腹痛や出血が長期間止まらないなどの症状がある場合は、病院で診てもらいましょう。

化学流産と診断されたときの対応

妊娠検査薬では陽性だったけれども、病院で診察を受けたら化学流産と診断された場合、どのように対応したら良いのでしょうか。

ここでは、化学流産が分かったときにできる対応や注意点について解説します。

検査や治療の必要はない

化学流産は先ほど述べた通り、気が付かない方も多いものです。稽留流産の場合は、掻爬手術を受けなければならないこともありますが、化学流産は出血とともに受精卵が自然に体外に排出されるため、治療をする必要はありません。

また、2回以上流産や死産を繰り返す場合「不育症」と診断されることがあり、その場合は検査や治療が必要になることがあります。

しかし、化学流産は胎嚢が確認される前の非常に早い段階であり、流産としてもカウントされず、身体への影響がほとんどないものです。妊活をしている場合はすぐに再開して問題ありません。

化学流産は予防が難しい

妊娠反応が出た喜びから一転、胎嚢が確認できず化学流産と診断されることは、とても辛いことです。また同じことが起こらないよう、予防したいと考える方が多いかと思いますが、化学流産は防ぐことができません。

化学流産の主な原因となっている受精卵の染色体異常は、加齢とともに増加する傾向があると説明しましたが、年齢に関係なく誰にでも起こることです。

化学流産を防ぐことはできなくても、妊娠しやすい身体を作るために効果的な方法はあります。

  • ・バランスの良い健康的な食生活を送る
  • ・適度に運動する
  • ・十分な睡眠をとる
  • ・ストレスを溜め込みすぎない

特に、健康的な食事は妊娠をする上で重要です。痩せすぎや肥満は着床や妊娠に影響を及ぼす可能性があるため、適正体重を意識しましょう。

子宮外妊娠に注意

化学流産と診断された場合で注意するべきことが「子宮外妊娠(異所性妊娠)」の可能性です。

通常、受精卵は子宮腔の子宮内膜に着床しますが、子宮外妊娠は卵管や卵巣などで起こります。その場合、超音波検査で胎嚢が確認できないにもかかわらず、hCG値は上昇するため検査薬では陽性のままなのです。

化学流産後も長期間陽性反応が出たり基礎体温が下がらない場合は、子宮外妊娠も考えられます。

子宮外妊娠は症状がないケースもありますが、大きくなった胎嚢が卵管で破裂した場合、母体の命に関わりますので、疑われる症状があった場合はすみやかに受診しましょう。

子宮内膜に問題がある場合は治療を

化学流産が子宮内膜の問題で起こっている場合は、繰り返さないためにも適切な治療を受けることが望ましいでしょう。

原因の可能性として挙げられる、子宮筋腫や子宮内膜ポリープは、自覚症状がないこともあります。そのため、子宮内膜に原因があった場合でも、自分で気付くことは難しいでしょう。

重い生理痛がある方や、生理の出血量が多い場合などは、一度病院で検査を受けてみても良いかもしれません。

【まとめ】化学流産になっても思いつめず次のタイミングを待とう

化学流産とは、妊娠反応が出ても胎嚢が確認できない状態のことを指します。多くの人が知らない間に経験しているので、決して珍しいことではありません。

自覚症状や前兆はほとんどなく、通常の生理の時期と近いタイミングで出血が起こるため、妊娠検査薬を使っていなければ分からないケースも多いでしょう。

稽留流産など他の流産と比べると、身体への負担がほとんどないので、次の排卵後には妊娠が可能です。

原因の多くは受精卵の染色体異常によるものなので、思いつめる必要はありません。化学流産は「着床はしたけれども妊娠継続には至らなかった」状態なので、次のタイミングに向けて前向きな気持ちで過ごすことが大切です。

流産関連記事

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

 

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移