5p-(5pマイナス)症候群・猫なき(ねこなき)症候群とは?|症例・特徴・寿命など

この記事の著者 仲田洋美(総合内科専門医がん薬物療法専門医臨床遺伝専門医

 

1.猫なき症候群とは

猫なき症候群(クリ・ドゥ・シャ症候群)は5番染色体の異常による先天疾患です。患者によってさまざまな症状がみられますが、乳児期に猫のような泣くことがその大きな特徴です。

2.猫なき症候群の原因

5番目の染色体の短腕末端の欠損が原因です。「5番目の染色体の短腕の欠損」という意味で5p-と表記されます。
遺伝性ではなく突然変異による疾患です。親(通常は父親由来)の配偶子卵子精子といった生殖にかかわる細胞のこと)が形成されている途中に染色体が切断されてしまうことで染色体に異常が生じてしまいます。
欠損の大きさには個人差があり、欠損が大きいほど重度の知的障害や発達の遅れが生じる傾向にあります。

3.猫なき症候群の症状

人によってさまざまな症状がみられますが、もっとも特徴的なものは新生児期の泣き声です。猫の鳴き声のような甲高い声で泣きます。
(しかしこの特徴はこの症候群の他のいくつかの神経障害でも報告されています)

新生児期にみられる他の症状としては、低出生体重・小頭症・窒息・筋緊張低下・呼吸障害があげられます。これらは、その後数年間の成長と発達の障害となります。呼吸器感染症や消化器感染症のリスクも高いという報告もなされています。

(a)頭蓋顔面奇形

  • ・小頭症
  • ・丸顔
  • ・離眼症
  • ・耳の位置が低い
  • ・大きな鼻梁
  • ・下がった口角
  • ・短い人中
  • ・白髪
  • ・異常な横屈曲

(b)顔面の異常

  • ・口蓋が高い
  • ・かみ合わせの悪さ
  • ・歯のエナメル質の形成不全>
  • ・慢性歯周炎

(c)行動の傾向

  • ・多動
  • ・自傷行為
  • ・反復運動
  • ・優しい性格
  • ・こだわり

(d)その他(猫なき症候群に関連すると思われる異常)

  • ・音に関する過敏症
  • ・先天性心疾患・心臓病
  • ・皮膚血管腫
  • ・腎臓病

4.猫なき症候群の診断

小頭症・低出生体重・筋緊張低下症・猫のような泣き声などの症状から判断します。しかし原因となる染色体の欠損範囲の大きさによって症状がさまざまであるため、診断が困難な場合があります。

5.猫なき症候群の予後・寿命

7割の患者が生後1か月以内に死亡し、生存した残り3割のうち9割も生後1年以内に死亡します。どれぐらい長く生きられるかは、染色体欠損の大きさや場所が影響しており、特に難治性てんかんや心疾患の合併症がみられるかどうかによって予後が左右されます。
中には18歳、21歳まで生きる方もいます。

6.猫なき症候群の治療

合併症に応じた対症的な治療が中心となります。
例えば新生児期のときには呼吸がしにくいという症状や、ミルクや母乳がの飲めないという哺乳障害に対して治療が行われます。それ以降は、成長が遅れる「成長障害」に対する治療が中心となります。
また、てんかんが発症すれば薬物治療を施したり、心臓に奇形があれば手術を行ったりします。

7.猫なき症候群は遺伝するのか?

ほんどの症例で遺伝はみられません。先にも述べた通り、原因となる欠失は生殖細胞(卵または精子)の形成中、または初期の胎児発生中にランダムに起こることが最も多く、新生突然変異によるものです。

しかし約10%の患者は、罹患していない親から染色体異常を受け継ぎます。このような場合、親は均衡型転座と呼ばれる染色体の再構成があり、遺伝物質が得られたり失われたりすることはないので猫なき症候群の症状は表れません。均衡型転座は通常、健康上の問題を引き起こすことはありませんが、次の世代に受け継がれていくうちに、不均衡になることがあります。不均衡な転座を受け継いだ子供たちは、余分な、あるいは欠落した遺伝物質を持つ染色体再構成を持ち、猫なき症候群の症状が表れます。

 

この記事の筆者

1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。

著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。

一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。

患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。
いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ3匹。

プロフィールはこちら