NIPT最前線|NIPTコンソーシアムでは検査できない単一遺伝子疾患

はじめに

NIPTコンソーシアムでは検査取扱いがないのですが、NIPTも2011年に海外で始まって10年がたち、ダウン症候群等以外に拡大しています。NIPTで遺伝子の塩基配列の異常による単一遺伝子疾患も検査可能です。NIPTの技術が発展してきたことから、現在では母体血漿試料を様々な用途のための出生前検査の材料として用いることができるようになってきました。これに対する1つの明らかな応用は、単一遺伝子疾患-いわゆるメンデル型単一遺伝子障害-の非侵襲性出生前診断(NIPD)です。

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NIPTとはちがい、本当はこれはNIPD Dは診断diagnosisの頭文字ですので、胎児のDNA断片自体で確定診断しようという技術です。
しかしながら、この検査の臨床応用は、異数性について、一般的にNIPTと呼ばれるcfDNAベースの非侵襲性出生前検査のような他の領域と比較して遅れているのが現状です。
この患者群に対して最初に応用されたのは、X染色体連関の疾患に限定され、Y染色体マーカーの検出による胎児性別の確定でした。この検査は、母親の血液には存在しないY染色体由来のマーカーを検出するのが技術的にはるかに単純で簡単であったため、最初に開発され、実施されました。現在、多くの単一遺伝子疾患の検査が可能になり、患者にも利用できるようになってきています。
また、最近では、循環胎児細胞そのものも試験材料の可能性のある供給源として探索されていることは非常に注目に値します。
これらはセルフリー胎児DNAの解析に比べて利点も欠点もあります。
日本ではまったくNIPDという表記方法が通用しないため、ここではあえてNIPD/NIPTと表記します。

単一遺伝子障害に対するNIPD/NIPTの臨床応用

家族歴のある病態

現在までに報告されているNIPD検査の大部分は、疾患の既知の家族歴があり、典型的には各妊娠において高い再発リスクを有する病態についてでした。

単一遺伝子疾患に対するNIPD/NIPTの臨床応用

例えば、非侵襲的出生前検査(NIPT)の場合、両親がともに保因者である常染色体劣性遺伝疾患では、妊娠するたびに罹患した子供がうまれる確率は4分の1となります。英国では、NIPDに対する次世代シークエンシング(NGS)ベースのアプローチがすでにルーチンで使用されており、分子遺伝学的出生前診断全体の約30%を非侵襲的に行うことが可能となっています

常染色体優性疾患に対するNIPD/NIPTの臨床応用

父親から遺伝した、またはde novo(新しい突然変異:新生突然変異)で発生した常染色体優性疾患に対するNIPD/NIPTは、技術的にはそれほど困難ではありません。原因となる突然変異は母体のDNAには存在しないけれども、胎児DNAに存在するので、母体血漿中で低レベルで検出可能であれば診断可能となります。
様々な常染色体優性遺伝疾患の検査方法を開発するために、いくつかのアプローチがとられてきました。
Droplet digital polymerase chain reaction assay(ddPCR)は、新生児糖尿病および軟骨無形成症をそれぞれ引き起こす父親のKCNJJ1遺伝子突然変異およびFGFR3遺伝子突然変異などの存在を検出できます。この手法を用いて、父親の対立遺伝子を1%未満の濃度で検出することができたことが報告されています。通常の染色体異常に対するNIPTが胎児分画4%以上でないと正確に測れないのに比べて、非常に低濃度で検出可能なことが理解できると思います。
これらの遺伝子型タイピングアッセイは、それらが特異的に設計されたバリアント(変異)のみを検出することが可能です。
このアプローチは一般的な突然変異に適している場合もあれば、まれな疾患の病歴を有する家系に対してオーダーメイド検査法を提供する場合もあります。関連する疾患を引き起こす突然変異の範囲を有する一般的な疾患に対してNIPD/NIPTを提供するには、最も費用対効果のよい方法ではない可能性がある。
他にも、軟骨形成不全症と致死性異形成の両方に関連する既知のFGFR3遺伝子の突然変異が原因でおこる疾患をカバーするNGSパネルや、骨格異形成に関連することが知られている16の遺伝子のコード領域をスクリーニングできるターゲット配列決定法など、多くの家族に使用できる単一のアッセイをデザインされています。

トリプレットリピート病のようなリピートの数が変わることによって引き起こされる単一遺伝子疾患は、NIPD/NIPTではまだまだ難しいのが現状です。ハンチントン病のリスクがある妊娠における父系遺伝のCAG反復の長さを測定する断片長解析技術について報告されていて、検査したすべての患者において、原因となる疾患および中間のCAG反復を検出することができたが、母系対立遺伝子と区別することが難しかったため、症例の50%において正常な父系遺伝子の伝達を検出することができるにとどまっています。また、非常に大きな反復配列を検査する場合には、DNAの断片化した性質のために検出できない可能性があるため、注意が必要です。
リピート病の何が難しいかというと、リピートの長さで発症するかしないか、つまり遺伝子に異常があるかないかを判断しなければならないのですが、そもそも、PCR過程、つまり少ない遺伝子を増幅する過程が入るため、リピートの回数が多めに出ても増幅の結果なのか異常なのかが判断がつきにくいということが一つの問題です。あとは、母系対立遺伝子との区別がつきにくいという点に関しては、同じ遺伝子で同じ配列かつ同じリピートを持つものを見ているため、SNP(個人により違う1塩基多型)などを利用して母系父系を判別することも近くにそういうSNPがうまいことないと難しくなります。
これに対して、普段、トリプレットリピート病の患者さんの診断の際には、ご本人の血液とネガティブコントロール、ポジティブコントロールを同じ環境で増幅するので、違いが分かりやすくなります。

常染色体劣性疾患に対するNIPD/NIPT

常染色体劣性遺伝の場合、家族性突然変異は両親(発端者、つまり子はホモ接合体)で同じ場合もあれば、両親とも同じ遺伝子に異なる突然変異をもつ場合もあります(発端者、つまり子は複合ヘテロ接合体)。こうした場合には、NIPD/NIPTに対する異なるアプローチが必要となります。ハプロタイプに基づくアッセイは、連鎖をみるやり方で突然変異を直接検出しないので、どのようなシナリオにも用いることができる。これまでに、GJB2関連難聴のリスクがある妊娠、先天性副腎過形成(CAH) 、脊髄性筋萎縮症(SMA) 、α-およびβthalassemia 、Gaucher病に使用するためのハプロタイプに基づくアッセイが発表されています。しかしながら、発端者由来のDNAが分析するのに必要であるため、これらのアッセイは、既に罹患した子供をもつカップルに限られています。この欠陥はその後、TLA (標的遺伝子座増幅)を用いた両親のターゲットハプロタイピングと、妊娠中に抽出されたセルフリーDNAをターゲットシークエンスで読み取り深度(リード)を深くすることの組み合わせにより克服されました。この方法を用いて、囊胞性線維症(CF)、CAH、またはβサラセミアのリスクがある妊娠18例において、98%を超える精度で遺伝性対立遺伝子を予測することができるようになりました。

父系遺伝性突然変異の検出

それぞれの親が同じ遺伝子の異なる突然変異の保因者である家系では、NIPD/NIPTに対する最も簡単なアプローチは父系突然変異の排除です。つまり、母親はAa’という遺伝子型、父親はAa”という遺伝子型で、赤ちゃんがa’a”という遺伝子型になると発症する場合、a”さえなければ発症しないことになります。二つ揃わないと発症しないのが常染色体劣性遺伝性疾患であるからです。父親の突然変異が除外された場合、胎児は当該疾患のキャリア(保因者)である可能性はあるのですが罹患しないため、それ以上の検査は必要ありません。キャリアかどうかを出生前診断するのは常染色体劣性疾患の場合、倫理的に許される国は知っている限り一つも存在しません。
このアプローチでは、父親の突然変異がNIPD/NIPTによって検出された場合、母親の突然変異の存在を探すためには、従来の侵襲的方法によるさらなる検査が必要となります。
また、PCRの変法であるddPCR、COLD-PCRが応用されて、より少ない濃度でも父系の変異遺伝子を検出可能であることが報告されています。
従来のPCR法では突然変異を検出できなかったが、ddPCRでは1.3%、COLD-PCR法を用いると1%未満のレベルまで低い突然変異を検出することができたと報告されました。これらの技術は多くの異なる条件に適用できることが実証されています。

母性遺伝性突然変異の検出

現在のところ、常染色体劣性または常染色体優性のいずれかの条件下で、母性遺伝性突然変異を直接検出するアッセイは、母体血漿試料中の母体DNAと胎児DNAの鑑別に関与する技術的困難性のため、ルーチンの臨床使用はされていません。しかしながら、いろいろな技術進歩がみられています。
ddPCRを用いて母体血漿中の正確な対立遺伝子定量を行い、相対投与量(相対突然変異投与量、RMD)を算出したという報告がなされましたが、親由来とは無関係に胎児突然変異のNIPD研究に対するddPCR法で、父系対立遺伝子の検出の精度は100%、母系対立遺伝子の検出の精度は96%であった。疾患を引き起こす変異(バリアント)ではなく一塩基多型(SNP)を用いることにより、あらゆる遺伝パターンに対する胎児突然変異のNIPD解析に対するこの手法の有用性を実証することができたと報告されています。

さらに循環単分子増幅およびリシーケンシング技術(cSMART)と呼ばれるアッセイも開発され、異なる母系および父系突然変異対立遺伝子の遺伝が決定されたWilson病のリスクのある妊娠に応用されました。両親が同じ突然変異の両方のキャリアである場合に、このアッセイが妊娠にも使用できることを実証するために、SNP遺伝子型の遺伝を決定するために、さらなる検証研究が実施された。著者らはその後、GJB2、GJB3、SLC26A4遺伝子のいずれかに突然変異を引き起こす常染色体劣性非症候性難聴(ARNSHL)疾患のキャリアとして片方または両方のパートナーが知られていた妊娠における胎児の遺伝子型を決定するためにもこの方法の応用が報告されています。

X連鎖性疾患

胎児の性別を判定するためのNIPD/NIPTは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのような重篤なX連鎖性疾患のリスクのある妊娠における最前線の検査として提供することができるように開発が進んでいます。胎児が男性の場合、問題となっている病態の確定診断のためのさらなる検査を提案することができる。母性遺伝性突然変異を直接検出するNIPD/NIPTは、母性血漿中の母系セルフリーDNAの背景が高いため技術的に困難であることを説明してきましたが、Duchenne型およびBecker型筋ジストロフィーのNIPD/NIPTおよび血友病についてはハプロタイプに基づくアプローチが報告されています。
先天性副腎過形成(CAH)は、妊娠中の治療の指針としてNIPD/NIPTが用いられています。罹患した女性胎児には子宮内男性化のリスクがあるためです。妊娠の非常に早期に投与された出産前デキサメタゾンは男性化を予防または減少させる可能性があるのですが、副作用も多いためリスクのある妊娠への使用を標的とすることが重要です。胎児の性別を決定するためのNIPD/NIPTは、女性妊娠のみを標的とするための第一段階として使用することができ、これは妊娠7週から利用可能です。

NIPTコンソーシアムで取扱いのあるNIPTの遺伝子検査

NIPTコンソーシアムの一員である成育医療研究センターでRhマイナスの母体の胎児のRh血液型を取り扱っているようです。
ミネルバクリニックでも当然検査項目にありますので可能です。Phマイナスの血液型の妊婦さんたちはご安心ください。