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COLD-PCR (co-amplification at lower denaturation temperature-PCR)

COLD-PCRとは?

COLD-PCR (co-amplification at lower denaturation temperature-PCR)
COLD‐PCR (低変性温度‐PCRでの共増幅)は、野生型と変異含有DNAの混合物からの変異型対立遺伝子を濃縮する改良ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロトコルをいいます。
過剰な野生型対立遺伝子の存在下で、少数対立遺伝子を優先的に増幅して同定する能力および低レベルの体細胞DNA突然変異は、突然変異の検出に有用な方法です。
突然変異の検出は、血漿または血清などの組織生検および体液からの早期癌検出、手術または化学療法後の残存病変の評価、予後のための病期分類および分子プロファイリング、または個々の患者に合わせた治療法、ならびに治療成績および癌の寛解または再発のモニタリングの場合に重要となります。
普通のPCRでは、主要(野生型)対立遺伝子とマイナー(突然変異型)対立遺伝子の両方を同じ効率で増幅してしまうため、例えば1万対1とかいう低濃度の突然変異の存在を容易に検出する能力がありません。たとえば1万細胞の中に1個の細胞に突然変異がある、という標本では、従来型のPCRではどちらも同じように増幅してしまうため、1万対1は全然変わらず、結局は塩基のつくる波形を読んでいるので1万分の1のわずかな差異を検出できないのです。1万対1を改善しようとすると、がん生検の場合にしばしばみられるように、正常と異常の非常に不均一なサンプルで組織の中でこの辺ががん細胞だろう、という場所を取り出すわけですが、なかなかうまくいきません。微量なものを取り出す間にコンタミ(汚染)させてしまうとかもあるからです。たった一つの細胞の異常を検出するのにそんな手作業が入ると間違いのもとになり現実的ではありません。
がんの分野では特に変異型/野生型DNAの混合物中の突然変異を検出する能力は非常に重要です。がんが体の中にあると、血液の中に微量ながん細胞が循環していて、それを検出できるようになるとがんの有無や再発のモニタリングが可能となります。したがって、がんの分野ではこの超微量な異常を検出する技術にしのぎが削られてきました。

現在、従来のPCRは、遺伝子型タイピングまたは体細胞突然変異の検出のための多くの異なる下流アッセイと縦列に使用されています。
これらの下流アッセイのために従来のPCRをCOLD-PCRに置き換えることは、腫瘍および体液を含む混合サンプルからの突然変異の検出における信頼性を高めると考えられています。

COLD-PCRの原理

COLD-PCRは、2008年Li,Wang L等がNature Medicine 14(5):579-84に報告した方法です。
塩基配列が一つ変異してしまうことが二本鎖DNAの融解温度(Tm)をわずかに変えます。
※関連記事:アニーリング
配列の内容とミスマッチの位置に応じて、200bp 以上の配列では 0.2-1.5 ℃ (0.36-2.7 °F) の Tm の変化が一般的です。

各二本鎖DNAは、そのTmよりも低い「臨界温度」(Tc)を持っています。PCRの増幅効率はTc以下になると極端に低下します。
TcはDNA配列に依存します。ヌクレオチドのミスマッチが1つか2つしかない2つの鋳型DNA断片は、PCRの変性ステップ(温度を上げて2本鎖を1本鎖に融解させる)をTcに設定すると、WTは増幅効率が非常に悪い温度、逆にMtは増幅効率が良い温度なので、Tcでは二つの塩基配列の増幅効率が異なることになります。

これらの原則を念頭に置いて、以下の一般的なプロトコルが開発されました。

変性段階

DNAは高温-通常94℃(201 °F)で変性されます。

中間アニーリング段階

変異型と野生型の対立遺伝子DNAを互いにハイブリダイゼーションできるような中間アニーリング温度を設定します。変異型対立遺伝子DNAは混合物中のDNAのなかで少数派であるため、野生型DNAと変異型のミスマッチヘテロ二本鎖DNAを形成する可能性が高くなります。

溶解段階

ヘテロ二本鎖は、より低い温度で溶融しやすくなります。そのため、Tcで選択的に変性されて1本鎖になります。

プライマーアニーリング段階

ホモ二重鎖DNAは二本鎖のままなので、プライマーアニーリングに利用できなくなります。

延長段階

DNAポリメラーゼは、鋳型DNAに相補的に伸長する。ヘテロ二本鎖がテンプレートとして使用されるので、より多くの割合のマイナーバリアントDNAが増幅され、PCRのその後のラウンドで利用できるようになります。

COLD-PCRの種類

現在までに開発された COLD-PCR には 2 つの形態があります。Full COLD-PCRとFast COLD-PCRです。

Full COLD-PCR

フルCOLD-PCRは、上記でプロトコルと同一で行います。

Fast COLD-PCR

Fast COLD-PCR は Full COLD-PCR とは異なり、変性と中間アニーリングの段階がスキップされます。場合によっては、変異体 DNA の優先増幅が非常に大きく、変異体/野生型ヘテロ二本鎖 DNA の形成を確実にする必要がないためです。したがって、変性は、Tcで起こり、プライマーアニーリングに進み、次いでポリメラーゼを介在させた伸長に進むことができる。増幅の各ラウンドは、その順序でこれらの3つの段階を含む。より低い変性温度を利用することで、反応はより低い Tm を持つ生成物、すなわちバリアント対立遺伝子を識別します。高速 COLD-PCR は、プロトコルが短縮されているため、はるかに速い結果が得られます。しかし、フル COLD-PCR は、DNA の開始混合物に含まれる可能性のあるすべての突然変異を増幅するために不可欠であることに注意することが重要です。

2 ラウンド COLD-PCR

Fast COLD-PCR の改良版です。Fast COLD-PCR の 2 回目のラウンドでは、入れ子になったプライマーが使用されます。これにより、1 ラウンド Fast COLD-PCR と比較して、突然変異検出の感度が向上します。

COLD-PCRの利用される場面

COLD-PCR は、従来の PCR を使用する多くの異なるアッセイの信頼性を向上させるために使用されてきました。
COLD-PCRで置き換えることができる従来のPCRを使用した下流のアプリケーション。

RFLPとCOLD-PCR

RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism、制限酵素断片長多型)とは、制限酵素によって切断された DNA 断片の長さが、同一種内の個体間で異なる(多型を示す)ことです。一塩基多型遺伝子変異がDNA断片の長さの違いを生み出す場合があり、疾患の診断や遺伝性疾患の原因遺伝子を突き止めるために利用されています。得られた断片長は、以前は電気泳動によって既知の断片長のDNA(サイズマーカー)と比較して求めていました。
ゲノム技術の開発とともにPCRプライマーの設計が容易になったため、現在ではPCRでDNAを増幅したうえで、その反応生成物を制限酵素で切断する手法であるPCR-RFLPが一般的となりました。PCR-RFLP以前はヒトを対象とした場合、制限酵素断片長多型は、野生型の DNA を切断しない選択された制限酵素によって、特定の変異に対する DNA が切断されたりされなかったりという結果をもたらします。野生型と変異を含むDNAの混合物を用いた研究では、通常のPCRまたはCOLD-PCRによって増幅されたDNAを用いて、RFLP分析に先立ってCOLD-PCRを行うと、変異の検出が10~20倍改善されることが示された。

サンガーシークエンシングとCOLD-PCR

サンガーシークエンシングを用いて、変異体が野生型DNAの1/20という混合物からの変異体DNAの濃縮度を評価すると、COLD-PCRを使用した場合、従来法に比べて突然変異対立遺伝子が13倍濃縮されることが示された。 突然変異対立遺伝子の位置におけるクロマトグラム上のピークの大きさで比較しています。

パイロシーケンシングとCOLD-PCR

Pyrosequencingは、プライマー伸長法を基盤にし、ルシフェラーゼ発光反応を検出することにより、定量的な塩基配列の解析を行うことができる技術です。
まず、テンプレートDNA (PCR産物等) にパイロシーケンス用のプライマーをアニールさせ、dNTP添加後にDNA ポリメラーゼを反応させます。1分子のdNTPが付加する毎に、1分子のピロリン酸 (PPi) が遊離します。ATPスルフリラーゼが、ピロリン酸とアデノシン5′-ホスホ硫酸(APS)をATPに変換します。ルシフェラーゼがルシフェリンとATPをオキシルシフェリンに変換します。そして、この時に生じる発光をCCDカメラで検出します。

COLD-PCR は、サンガーシークエンシングでの使用と同様に、パイロシークエンシングでは、使用したサンプルから変異率 0.5~1%の変異を検出できることが示されました 。COLD-PCR はパイロシークエンシングで p53 や KRAS の変異を検出するために使用され、いずれの場合も従来の PCR よりも優れていることが示された。

MALDI-TOFおよびCOLD-PCR

MALDIとは、Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)のです。
生検検体のようなサンプルは病変部がマトリックス(周辺の基質)と混じった状態で存在しています。
マトリックスは、紫外光である窒素レーザ光(波長=337nm)を吸収し、熱エネルギーに変換します。この時、マトリックスのごく一部(検体の最表面~100nmまでの部分)が急速に(数nsec)加熱され、サンプルとともに気化してイオン化します。タンパクペプチドなどの生体高分子をほとんど分解せずにイオン化することが可能です。
TOFは、Time of Flightの略で、主にMass Spectrometry質量分析に使われます。飛行時間型質量分析法といいます。質量分析法とは、物質を原子・分子レベルの微細なイオンにし、その質量数と数を測定することにより、物質の同定や定量を行う方法です。飛行時間型質量分析法(TOFMS)では質量と電荷の比値の違いでイオンの飛行時間が異なることを利用して質量分析を行います。

COLD-PCRはDNA混合物から10~100倍の変異配列を検出するができ、初期有病率が0.1~0.5%の変異が検出可能であることが示されました。従来のPCRでは5~10%位ないと難しかったのですが、ここまで低レベルでも検出可能となりました。

QPCRとCOLD-PCR

定量PCR(Quantitative polymerase chain reaction:Q-PCR)は、そのPCR産物を迅速に定量できるPCRの改良型です。
これは DNA、cDNA または RNA の増幅が行われる前の総量を間接的に測る方法で、目的の遺伝子配列の有無や何コピー存在するのかという量を計測するために使用します。

変異に特異的なTaqManプローブを用いた定量PCR装置でのCOLD-PCRの実行は、変異体サンプルと野生型サンプルの間で測定された差を増加させることが示されました。

COLD-PCRの問題点

まず挙げられるのは最適なTcを測定し、各アンプリコンごとに決定しなければならないことでしょう。
また、PCR中の変性温度を±0.3 °C (0.54 °F)以内に正確に制御する必要があるため手間が増えることも挙げられます。
さらに変異型と野生型のDNA配列を区別するための適切な臨界温度が利用できない場合があり、加えて200bp以下という小さい配列の分析に限定されていることでしょう。
そして、すべての低レベルの突然変異が優先的に増幅されるという保証もありません。

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

 

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