InstagramInstagram

次世代PCR技術の全貌: デジタルドロップレットPCR(ddPCR)とその応用

この記事では、デジタルドロップレットPCRddPCR)技術の原理、装置、アプリケーション、そして研究および臨床での利点を詳細に解説します。初心者から研究者まで、ddPCRの世界への完全ガイドです。

第1章: ddPCRとは何か?

デジタルPCR
デジタルPCR(dPCR)は、核酸量の正確な測定とクローン増幅に特化したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の高度な形態です。従来のPCR技術と比較して、dPCRは核酸の量をより正確に測定する能力を持っていますが、その精度は操作者の経験によって左右される可能性があります。dPCRの「デジタル」な測定方法は、サンプル内の核酸を離散的に、つまり個々に測定することにより、一つ一つの分子レベルでの定量が可能となります。これに対し、従来のPCRの「アナログ」な測定は、全体としてのサンプル反応を基に量を外挿します。

dPCRの大きな特徴の一つは、試料を数多くの小さな分割に分けてそれぞれにPCR反応を行う点にあります。この分割によって、各分割内で独立した反応が行われるため、非常に正確な定量が可能となり、高感度な測定が実現します。この技術は特に、コピー数変異体や点突然変異などの微細な遺伝子配列の変異を検出し、研究するのに有用です。また、次世代シークエンシング(NGS)におけるサンプルの準備段階でクローン増幅するためにも使用されます。

dPCRはその精度と感度の高さから、遺伝子編集の成果の検証、微量なウイルスの検出、がん遺伝子の変異検出など、幅広い分野での応用が期待されています。特に、少ないサンプル量からも信頼性の高いデータを得られるため、希少な試料を扱う研究や診断においてもその価値は大きいと言えるでしょう。
●液滴デジタルPCR(ddPCR)
液滴デジタルPCR(ddPCR)は、PCR技術の中で最も進化した形態の一つとして、高精度および高感度な定量分析を可能にする第3世代PCRと位置づけられます。従来のPCRが定性分析(対象が存在するか否か)に重点を置き、リアルタイムPCRが相対的な定量分析を提供してきたのに対し、ddPCRは個々の分子レベルでの絶対定量が可能です。

ddPCRは水-油エマルジョン技術を用いて核酸サンプルを20,000個以上の微小な液滴に分割し、これらの液滴内で個別にPCR増幅を行います。この技術は、標準的なTaqManプローブベースのアッセイと同様の試薬とワークフローを使用しながら、サンプルの大規模な分割による高い精度と感度を実現します。

液滴の形成は、水-油エマルジョン内にナノリッターサイズの空間を作り出し、これが個々のPCR反応の場となります。この大量のパーティショニングにより、一つのサンプルから数千の独立した反応を実施し、それぞれの液滴内で起こるPCR増幅の結果を分析することで、非常に正確な定量が可能になります。

ddPCRの利点は多岐にわたりますが、特に低濃度の遺伝子変異、コピー数変動、遺伝子発現の定量においてその精度と感度が評価されています。さらに、液滴デジタルPCRはサンプル数が少なくて済むため、コスト削減や貴重なサンプルの節約にも貢献します。

この技術は、がん研究、遺伝子編集のモニタリング、感染症の診断、環境モニタリングなど、多様な分野での応用が期待されています。ddPCRによる絶対定量能力は、研究や臨床診断の精度を向上させ、より信頼性の高いデータを提供することで、分子生物学の分野に新たな可能性をもたらしています。

●ddPCRの測定方法
ddPCR(Droplet Digital PCR)技術は、核酸の絶対定量を可能にする強力な方法ですが、その広範な採用には実用的な技術の欠如が障壁となっていました。Hindson et al. (2011)による研究では、マイクロ流体技術と特定の界面活性剤を組み合わせて、PCRサンプルを油を含んだ水滴に分割する新しい方法が開発されました。これらの微小な液滴は、含まれるテンプレート分子のPCR増幅をサポートし、標準的なTaqManプローブベースのアッセイに使用される同じ試薬とワークフローを利用します。PCR後、各液滴が分析され、元のサンプル中のPCR陽性液滴の割合を基に、ポアソン統計を使用してターゲットDNAテンプレート濃度が計算されます。

この技術により、∼200万のPCR反応を処理できるハイスループットの液滴デジタルPCRシステムが可能になり、従来のリアルタイムPCRに比べて格段に高い精度と感度を実現しています。このシステムは、生殖細胞系列のコピー数変異の正確な測定、稀な対立遺伝子の高感度検出、およびセルフリーDNAからの循環胎児および母体DNAの絶対定量を実演することで、その能力を証明しています。

ddPCRの利点は、他のデジタルPCR技術を凌駕しています。特に、液滴デジタルPCRは、サンプルを数万個の液滴に大規模に分割することで、従来のデジタルPCR技術が直面していたスケーラビリティと実用性の問題を解決します。この大規模な分割により、一つのサンプルから数万の独立したデータポイントを生成し、デジタルPCR固有の統計解析の利点を最大限に活用できるようになります。この技術は、手間のかかるシリアル希釈やピペッティングエラーの可能性を排除し、より信頼性高く効率的な方法で核酸の絶対定量を実現します。

これらの特性により、ddPCRは研究者が複雑な遺伝的状況を探索し、新たな疾患関連を発見し検証するための有力なツールとなり、分子診断における新たな時代を開く可能性があります。

♣従来のdPCRと比較した利点

液滴デジタルPCR(ddPCR)技術は、従来のデジタルPCR方法と比較して顕著な進歩を示しています。この技術は、サンプルを数万の微小な液滴に分割し、それぞれの液滴で独立したPCR増幅を行うことにより、一つのサンプルから多数の独立したデータポイントを生成します。この方法により、ddPCRは、絶対定量、精度、感度、コスト効率といった複数の利点を提供します。

♣ 液滴デジタルPCRの利点

絶対定量: ddPCRは、標準曲線を必要とせず、入力サンプル内のターゲットDNAコピーの絶対数を直接提供します。これにより、ウイルス負荷分析、微生物定量、遺伝子発現分析などのアプリケーションに理想的なツールとなります。

他に類を見ない精度: 大規模なサンプル分割により、ターゲットDNA配列コピー数の微細な変動も信頼性高く測定できます。これにより、特に低濃度のサンプルでも精度の高い結果を得ることが可能です。

高いS/N比(信号対雑音比): ハイコピーテンプレートとバックグラウンドが効果的に希釈され、まれなターゲットの高感度検出を実現します。これは、特に少数のターゲット分子を検出する必要がある場合に有効です。

PCRバイアスの除去: ddPCRは、qPCRにおける増幅効率のばらつきに起因するバイアスを排除します。これにより、より正確なデータが得られ、特に微細な遺伝的変異の検出において有効です。

簡素化された定量化: 絶対定量化のために特別な校正標準や標準曲線が不要です。これにより、実験の準備とプロセスが簡素化され、時間と労力の節約につながります。

消耗品コストの削減: ddPCRは非常に少量の試薬で実施可能であり、各データポイントに必要なサンプル量を大幅に削減します。これにより、全体的な実験コストが低減されます。

これらの利点は、ddPCRが研究室や臨床診断の分野で広く採用される理由を説明しています。特に、複雑なサンプルの分析や低濃度のターゲットの検出が求められる場合に、従来の方法にはない優れた解決策を提供します。

ddPCR技術の原理

● ddPCR技術の原理

ddPCR(Droplet Digital PCR)は、核酸の絶対定量を可能にする高精度なPCR技術です。この技術は、サンプルを数千から数万の微小な水滴(droplet)に分割し、それぞれの水滴で独立したPCR反応を行います。各水滴は、1つまたは複数のターゲット分子を含むか、または全く含まない状態になります。PCR増幅後、水滴内の蛍光シグナルの有無によって、ターゲット分子の存在を検出し、その数を絶対量として算出します。このプロセスは、ポアソン統計を用いて分析され、サンプル中のターゲットDNAまたはRNAの正確なコピー数を提供します[1][2][3][4][7][8][11][12][13][15][16][19]。

● 従来のPCRとの比較

従来のPCR技術には、主にエンドポイントPCRとリアルタイムPCR(qPCR)があります。エンドポイントPCRは、PCR反応が完了した後に産物を検出し、主に定性的な結果を提供します。一方、リアルタイムPCRは、PCR反応の進行中に蛍光シグナルの増加をリアルタイムで測定し、相対定量または絶対定量(標準曲線を用いる)を可能にします。しかし、リアルタイムPCRでは、標準曲線の作成や相対的な比較が必要であり、低濃度のターゲットや微小な量的差異の検出には限界があります[10][12]。

ddPCRは、従来のPCR技術と比較して、以下の利点を持ちます:

– 絶対定量が可能:標準曲線を必要とせず、サンプル中のターゲットのコピー数を直接算出できます。
– 高感度:微小な水滴に分割することで、低濃度のターゲットも高感度に検出可能です。
– 高精度:個々の水滴で独立したPCR反応を行うため、サンプル間の変動が少なく、精度の高い定量が可能です。
– 希少変異の検出:競合するバックグラウンドからターゲットを効果的に分離し、希少な変異体も検出できます[2][3][4][7][8][11][12][13][15][16][19]。

● Droplet技術の基本

Droplet技術は、ddPCRの核となる技術であり、サンプルを微小な水滴に分割し、それぞれの水滴で独立したPCR反応を行うことを可能にします。この技術は、マイクロ流体デバイスや特殊な界面活性剤を使用して、安定した水滴を高速かつ均一に生成します。生成された水滴は、PCR増幅のための反応容器として機能し、その後、水滴内の蛍光シグナルを読み取ることで、ターゲット分子の有無を検出します。このプロセスにより、高いスループットと精度を持つ核酸の絶対定量が実現されます[2][14][17]。

Droplet技術は、バイオテクノロジーや分析機器分野で広く応用されており、シングルセル解析、ハイスループットスクリーニング、微生物培養など、多岐にわたる研究分野で利用されています[14]。

参考文献・出典
[2] on-chip.co.jp/product-onchip_sort/droplet_generator/
[3] www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/lsr/japan/japanese/literature/C10428_Bio-Rad_News1.pdf
[4] www.bio-rad.com/sites/default/files/2021-09/Droplet%20Digital%20PCR%20Application%20guide_JP_0.pdf
[5] www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/lsr/japan/japanese/literature/C10523_Bio-Rad_News3.pdf
[6] yamato-net.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/Files/brochures/6589616085f4f55ab7fbd7.pdf
[7] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E7%AC%AC3%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%81%AEpcr-%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-ddpcr%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%8C%E3%81%99%E3%81%94%E3%81%84-%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95-%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0-%E7%AC%AC44%E5%9B%9E/
[8] www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/lsr/japan/japanese/literature/C10561_QX200_ddPCR.pdf
[9] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-droplet-digital-pcr-%E8%A7%A3%E6%9E%90/
[10] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners/dpcr-vs-qpcr
[11] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr1/
[12] www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/pcr/real-time-pcr/real-time-pcr-learning-center/real-time-pcr-basics/real-time-vs-digital-vs-traditional-pcr.html
[13] bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/16/11/17/00071/
[14] on-chip.co.jp/droplet_application/
[15] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners
[16] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr2/
[17] www.jst.go.jp/chizai/news/doc/bioJapan2018-7.pdf
[18] www.iis.u-tokyo.ac.jp/publication/topics/2015/20150617press1.pdf
[19] www.roche-diagnostics.jp/media/releases/2023-3-1

ddPCRの装置と機器

● Bio-Rad QX100 Droplet Digital PCR System
Bio-RadのQX100 Droplet Digital PCR Systemは、サンプルを20,000個のナノリットルサイズのドロップレットに分割し、PCR陽性およびPCR陰性のドロップレットをカウントすることで、ターゲットDNA分子の絶対量をデジタル形式で定量します。このシステムは、がんやウイルス研究における希少なターゲット配列の検出、ターゲットコピー数変動の微小な差異の測定、標準曲線やΔΔCq法を使用せずに絶対遺伝子発現レベルの決定などに利用されます。また、FAMとVICの検出チャネルを備え、5オーダーの線形動的範囲を持ちます[1]。

● Bio-Rad QX200 Droplet Digital PCR System
Bio-Rad QX200は、QX100の後継機種であり、加水分解プローブと二本鎖DNAにインターカレートするEvaGreen色素のどちらでも測定可能です。このシステムは、PCR増幅効率に左右されず、サンプル中のPCR阻害要因を軽減し、飽和するまでの増幅により感度が高く、検量線を利用せずに定量が可能です。また、希少変異解析やCNV(コピー数多型)の測定に適しています[6]。

● RainDance Technologies RainDrop Digital PCR System
RainDance TechnologiesのRainDrop Digital PCR Systemは、1日に10億以上の反応を生成する能力を持ち、低頻度の腫瘍アレル検出、遺伝子発現、コピー数変動、SNP測定などのアプリケーションにおいて、感度、定量、および多重化の新たなパフォーマンス基準を確立します。このシステムは、最大1,000,000以上の中で1つの変異体を検出する優れた感度を持ち、最大10以上のテストを同じサンプルで行うことができる非常に高い多重化能力を提供します[4]。

● Stilla Technologies Nio™+ Digital PCR System
Stilla TechnologiesのNio™+は、ユニークな7色のターゲット検出機能を備えた多重デジタルPCRを新たなレベルに引き上げます。このシステムは、768サンプル/8時間労働日の容量、連続ローディング、使いやすいソフトウェアをサポートするシンプルなデジタルPCRワークフローを提供します[7]。

● Stilla Technologies naica® system
Stilla Technologiesのnaica® systemは、Crystal Digital PCR™を使用して、単一の実行で複数の遺伝的ターゲットの絶対定量を行うことができます。このシステムは、最大6つの異なる蛍光光チャネルを使用して読み取ることができるフルオロフォアでタグ付けされた反応を増幅する前に、サンプルを数千個の個々のドロップレットクリスタルに分割する最先端のマイクロフルイディクス技術を活用しています[12]。

これらのddPCRシステムは、それぞれ独自の特徴と技術的進歩を持ち、高感度で精密なDNAおよびRNAの定量分析に使用されます。各システムは、がん研究、遺伝子発現分析、希少変異検出、コピー数変動分析など、さまざまな分野での応用が可能です。

第2章: ddPCRの利点と応用

定量解析におけるddPCRの精度と再現性

微滴式数字PCR(ddPCR)は、高精度と高再現性を持つ定量分析技術として、様々な研究分野で利用されています。ddPCRは、サンプル中のDNAまたはRNAの絶対量を直接定量することができるため、従来のqPCR技術に比べて、より正確な定量が可能です。以下に、ddPCRの精度と再現性に関する研究事例を紹介します。

1. 腓骨肌萎縮症の無创的産前診断:
本研究では、ddPCR技術を用いて、1例の常染色体显性遗传CMT家系における無创的産前基因检测が行われました。致病基因MFN2基因変異位点に対して、特定の引き起こしと異なる蛍光マーカーを持つプローブを設計し、孕婦の外周血から抽出した胎児の遊離DNAを検出しました。この方法により、胎児が父親から受け継いだ致病基因変異を正確に検出することができました[20]。

2. 食品安全における肉種の混入検出:
食品安全の分野では、ddPCRを用いて牛肉製品の掺偽を検出する研究が行われました。多重ddPCRにより、牛肉の探針をFAM、他の肉類の探針をHEXとしてマークし、サンプル中に牛肉成分が含まれているかどうかを正確に判定しました。この技術は、食品の安全性を確保するための精密な定量分析に有効であることが示されました[17]。

3. がん研究における稀少変異の検出:
がん研究では、ddPCRが稀少変異の検出に利用されています。例えば、EGFR遺伝子のT790M変異を定量するために、ddPCR技術が開発されました。この技術は、高い精度と再現性を持ち、従来の技術では検出が困難だった低頻度の変異も検出可能です[10]。

4. 感染症の監視におけるSARS-CoV-2の検出:
COVID-19パンデミックにおいて、ddPCRはSARS-CoV-2ウイルスの検出に有効なツールとして使用されました。特に、废水中のウイルス濃度を定量することで、地域社会の感染拡大の監視に役立てられました。ddPCRによる定量は、低濃度のウイルスも高精度で検出できるため、感染症の早期発見や拡散防止策の立案に貢献しました[13][19]。

これらの事例から、ddPCRはその高精度と再現性により、遺伝学的疾患の診断、食品安全の確保、がん研究、感染症の監視など、多岐にわたる研究分野での利用が期待されています。

幅広いアプリケーション

● ddPCRの臨床研究への応用

Droplet Digital PCR (ddPCR) 技術は、臨床研究において重要な役割を果たしています。この技術は、特定の遺伝子変異の検出、低発現遺伝子の発現定量、微小なコピー数定量や変異解析など、超高感度に絶対定量解析が可能な定量PCRとして機能します[3]。例えば、食道がんの再発を早期に検出するための超高感度血液検査において、ddPCRを用いた研究が行われており、低コストで短い検査時間で解析が可能なデジタルPCRを用いた超高感度ctDNA検査の実用性を世界で初めて示しました[5]。

● ddPCRのバイオテクノロジーへの応用

バイオテクノロジー分野では、ddPCRは核酸の絶対的な定量を可能にする、現在利用可能な最も感度の高い品質管理ツールの一つとされています。例えば、AAVベクターゲノム定量において、ddPCRはDNAポリメラーゼ、プライマーを用いてDNA増幅を行い、高い再現性と絶対定量による結果比較の容易さを提供します[4]。

● ddPCRの薬学への応用

薬学分野においても、ddPCRは核酸ベースの薬剤の品質管理において重要な役割を果たしています。例えば、細胞および遺伝子治療力価定量において、ddPCRは正確かつ高感度な細胞および遺伝子治療力価定量を実施する方法として説明されています。ddPCR技術は、標準曲線を必要とせずにターゲット遺伝子の絶対定量を提供し、変動を減少させると同時に、堅牢性、感度、精度を提供します[2]。

● 特定の遺伝子変異の検出への応用

特定の遺伝子変異の検出においては、ddPCRはその超高感度な特性を活かしています。例えば、EGFR遺伝子変異陽性肺において、高感度デジタルPCRを用いたEGFR遺伝子変異の分析が行われています[19]。また、ddPCRは、がん細胞株におけるMET遺伝子のCNV増幅検出や、限局性皮質異形成症(FCD)タイプ IIbにおけるMTOR体細胞モザイク変異率のバリデーションなど、様々な遺伝子変異の検出に利用されています[8]。

これらの応用例は、ddPCRが臨床研究、バイオテクノロジー、薬学の各分野でどのように利用されているかを示しており、特に遺伝子変異の検出においてその精度と感度が高く評価されていることを示しています。

参考文献・出典
[1] www.bio-rad.com/sites/default/files/2021-09/Droplet%20Digital%20PCR%20Application%20guide_JP_0.pdf
[2] www.bio-rad.com/en-us/applications-technologies/role-qpcr-ddpcr-potency-analysis?ID=22fe196d-3e11-4ccd-57db-c5116d2e6fc2
[3] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E7%AC%AC3%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%81%AEpcr-%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-ddpcr%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%8C%E3%81%99%E3%81%94%E3%81%84-%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95-%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0-%E7%AC%AC44%E5%9B%9E/
[4] www.gmp-platform.com/article_detail.html?id=9323
[5] www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/1012/20201012PRiwate.pdf
[6] genomics.umn.edu/service/bio-rad-droplet-digital-pcr
[7] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr1/
[8] pdbu-support.bio-rad.co.jp/pickup/ddPCR.html
[9] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-droplet-digital-pcr-%E8%A7%A3%E6%9E%90/
[10] www.youtube.com/watch?v=KE8nhJSkG_4
[11] www.eurofins.co.jp/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E5%88%86%E6%9E%90%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%E3%81%AE%E7%89%B9%E6%80%A7%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%A7%E6%B3%A8%E7%9B%AE%E3%81%AE%E6%96%B0%E6%8A%80%E8%A1%93ddpcr%E3%81%AE2%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88/
[12] www.bio-rad.com/en-us/life-science/digital-pcr
[13] www.youtube.com/playlist?list=PLrAEgIY86I6yox2hWNtzGmsl3vjSiZsqd
[14] www.youtube.com/watch?v=iKMYvxeoihk
[15] kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09226/
[16] www.youtube.com/playlist?list=PLrAEgIY86I6wtkUhsTWVBxlFKVt27Vfpt
[17] www.pmda.go.jp/files/000213599.pdf
[18] www.youtube.com/watch?v=Qwma-1Ek-Y4
[19] rctportal.niph.go.jp/s/detail/um?trial_id=UMIN000038648
[20] jp.linkedin.com/company/bio-rad?trk=public_profile_topcard-current-company

第3章: ddPCRの機器と消耗品

市場に出回っている主要なddPCR機器

市場にはいくつかのddPCR(ドロップレットデジタルPCR)機器があり、それぞれに特有の特性があります。以下に主要なddPCR機器とその特性、選定のポイントをまとめます。

● QX200 AutoDG Droplet Digital PCR システム(Bio-Rad)

– 特性: QX200 AutoDGは、自動分注機(AutoDG)を内蔵しており、簡単な操作で最大96サンプルまで自動処理が可能です。20,000個のドロップレットを生成し、高精度な定量が行えます[1][8]。
– 選定のポイント: 自動化されたワークフローを求める場合や、大量のサンプルを迅速に処理したい研究室に適しています。また、ユーザーのハンドリング誤差を最小限に抑えることができるため、再現性の高い結果が期待できます[8]。

● QX200 Droplet Digital PCR システム(Bio-Rad)

– 特性: QX200は、EvaGreenまたはプローブを用いたデジタルPCRアプリケーションに対応しており、ターゲットDNAまたはRNAの絶対定量が可能です。操作性が直観的で使いやすく、拡張性もあります[5][8]。
– 選定のポイント: 柔軟性と使いやすさを重視する研究室に適しています。また、将来的にアプリケーションを拡張する可能性がある場合にも適しています[5]。

● RainDrop Digital PCR システム

– 特性: 情報が提供されていないため、特性は不明です。
– 選定のポイント: この機器に関する情報が不足しているため、選定のポイントを特定することはできません。

● AutoDG

– 特性: AutoDGは、QX200システムの自動分注機能を指している可能性がありますが、単独の機器としての情報は提供されていません。
– 選定のポイント: AutoDGの機能が必要な場合は、QX200 AutoDG Droplet Digital PCR システムを選定することを検討してください[1][8]。

● QX100 Droplet Digital PCR システム(Bio-Rad)

– 特性: QX100は、Bio-Radの初期のddPCRシステムで、高精度な定量が可能ですが、現在はQX200に置き換えられている可能性があります[15]。
– 選定のポイント: QX100は市場から退いている可能性があるため、最新のQX200シリーズの選定を検討してください。

● 選定時の一般的なポイント

– サンプル処理能力: 大量のサンプルを扱う場合は、自動化されたシステムを選ぶと効率的です。
– 検出感度: 低濃度のターゲットを検出する必要がある場合は、高感度の機器を選ぶことが重要です。
– ユーザビリティ: 操作が簡単で直観的なインターフェースを持つ機器は、研究の効率を向上させます。
– 拡張性: 将来的に異なるタイプのアプリケーションに対応する可能性がある場合は、拡張性のあるシステムを選ぶと良いでしょう。
– サポートとメンテナンス: メーカーからの技術サポートやメンテナンスサービスが充実している機器を選ぶと、長期的な運用において安心です。

ddPCR機器の選定には、研究の目的や必要とする機能、予算などを総合的に考慮することが重要です。また、最新の情報を得るためにメーカーのウェブサイトを確認するか、直接問い合わせを行うことも有効です。

ddPCRの必要な消耗品とアクセサリ

● チップ
– Sapphire Chip:Bio-RadのQX200やQX600システムで使用されるチップで、1枚につき4サンプル処理が可能です[2]。
– Ruby Chip:同じくBio-Radのシステムで使用され、1枚につき16サンプル処理が可能です[2]。

● アッセイキット
– ddPCR Supermix:Bio-Radから提供される、PCR増幅に最適化されたスーパーミックスで、高感度DNA検出を約束します[3]。
– ddPCR Microsatellite Instability (MSI) Kit:プラズマとFFPE組織の両方を分析でき、正常組織なしで高感度かつ再現性のある結果を提供するキットです[10]。
– Vericheck ddPCR Mycoplasma Detection Kit:高感度で最大112種のマイコプラズマを検出可能なキットです[10]。

● 試薬
– ddPCR Supermix for Probes:Bio-Radから提供される、プローブベースのアッセイに使用される試薬です[5]。
– Droplet Generation Oil for Probes:ドロップレット生成に必要なオイルで、安定したドロップレット作成を支援します[3]。
– ddPCR Droplet Reader Oil:ドロップレットの読み取りに使用されるオイルです[5]。

● その他の消耗品
– DG8 Cartridges:Bio-Radのシステムで使用されるカートリッジで、8ウェルずつのドロップレット作成に使用されます[5]。
– DG8 Gaskets:カートリッジとセットで使用されるガスケットです[5]。
– Pierceable Foil Heat Seal:PCRプレートを密封するためのヒートシールです[5]。
– Pipette Tips:PCR作業に使用されるピペットチップです[5]。

これらの消耗品とアクセサリは、ddPCR実験を行う際に必要となります。各製品は特定のddPCRシステムに合わせて設計されており、正確な定量分析を実現するために重要な役割を果たします。また、これらの消耗品は、特定のアプリケーションや試薬と組み合わせて使用されることが多いです。適切な消耗品とアクセサリを使用することで、ddPCR実験の精度と効率を向上させることができます。

第4章: ddPCRの操作方法とデータ解析

実験の準備から実行までのステップ

● サンプルの準備
ddPCR実験を開始する前に、サンプルの準備が重要です。DNAの量と純度を測定し、アプリケーションに応じて、サンプルはさまざまな希釈率でテストできます。大量のPCR阻害物質を含まない純粋なサンプルを使用することが望ましいです。サンプル調製の詳細については、QIAcuityアプリケーションガイドを参照すると良いでしょう[14]。

● ドロップレットの生成
サンプルと専用オイルをカートリッジに分注することで、1サンプルあたり約20,000個のドロップレットが生成されます。ターゲットDNAとバックグラウンドDNAがランダムに各ドロップレット内に分散する状態となります[12]。QX200 Droplet Generatorは、微細流路を用いてオイルと水溶液(サンプル)を混合し、ddPCR解析に必要なドロップレットを作製します[19]。

● PCR反応
ドロップレットの生成後、それぞれのドロップレットで独立してPCR増幅が行われます。このステップでは、PCR増幅のかかったポジティブドロップレットを直接カウントすることによって、正確な絶対定量が可能となります[12]。

● ドロップレットの蛍光測定
PCR反応後、各ウェル内のドロップレットの蛍光を測定し、ポジティブまたはネガティブなドロップレットの数をカウントします。専用ソフトウェアを使用して各サンプルの濃度(copy/μL)を算出します[12]。

これらのステップを通じて、ddPCRは低発現遺伝子の発現定量、微小なコピー数定量や変異解析など極めてわずかな差異を検出できる超高感度に絶対定量解析が可能な定量PCRとして機能します[12]。また、ddPCRは核酸を正確に定量する方法であり、特に阻害剤または野生型集団の存在下で、少数のコピーの分解や単一分子の計数の精度が大幅に向上することが示されています[15]。

参考文献・出典
[1] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/products/dpcr-multiplexing
[2] www.saitama-med.ac.jp/jsms/vol46/jsms46_191-192.pdf
[3] www.bio-rad.com/en-us/life-science/droplet-digital-pcr
[4] www.bio-rad.com/sites/default/files/2021-09/Droplet%20Digital%20PCR%20Application%20guide_JP_0.pdf
[5] www.bio-rad.com/sites/default/files/2021-12/M12253L_QX_ONE_ddPCR_System_Software_manual.pdf
[6] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners/dpcr-guide/setup-and-troubleshooting
[7] minerva-clinic.or.jp/academic/terminololgyofmedicalgenetics/d/ddpcr/
[8] on-chip.co.jp/product-onchip_sort/droplet_generator/
[9] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-droplet-digital-pcr-%E8%A7%A3%E6%9E%90/
[10] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr1/
[11] www.jove.com/t/62295/two-step-reverse-transcription-droplet-digital-pcr-protocols-for-sars?language=Japanese
[12] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E7%AC%AC3%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%81%AEpcr-%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-ddpcr%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%8C%E3%81%99%E3%81%94%E3%81%84-%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95-%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0-%E7%AC%AC44%E5%9B%9E/
[13] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr
[14] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners/dpcr-guide
[15] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners
[16] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/liquidbiopsy_ngs_dpcr_gsd_ts_1/
[17] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr2/
[18] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E7%99%BA%E7%8F%BE/
[19] www.tmd.ac.jp/cmn/gene/center/Droplet_Generator.pdf
[20] labchem-wako.fujifilm.com/jp/equipment/docs/00001_app_AN_03_Droplet_recovery_J.pdf

データ解析の基本と解釈

ddPCR(Droplet Digital PCR)のデータ解析は、専用の解析ソフトウェアを使用して行われます。このソフトウェアは、PCR反応を個々のドロップレットに分割し、PCR増幅が完了した後にポジティブまたはネガティブとしてカウントし、ポアソン統計学で評価することによりDNA濃度を直接決定します[2]。解析のプロセスでは、蛍光強度とドロップレット数を示すグラフにサンプル由来の各ドロップレットをプロットした1Dプロットとしてデータが示されます[3]。

解析ソフトウェアの利用では、まず、PCR反応が行われたドロップレットの蛍光データを読み取ります。このデータは、ポジティブ(ターゲットを含む)ドロップレットとネガティブ(ターゲットを含まない)ドロップレットに分けられ、それぞれの数がカウントされます。このカウントに基づいて、サンプル中のターゲットDNAコピー数を、検量線を用いずに絶対定量で検出します[1]。

結果の読み取り方については、解析ソフトウェアが提供する情報を理解することが重要です。ソフトウェアは、各サンプルの濃度(copy/μL)を算出し、これを報告します。ポジティブな微小区画の割合からターゲットの濃度を算出し、サンプル中のターゲットDNAの絶対数を提供します[16]。また、解析結果はグラフや表として表示され、ポジティブとネガティブのドロップレットの分布や、サンプル間でのターゲットの量の比較が視覚的に理解できるようになっています。

解析ソフトウェアには、Bio-Rad社のQX ManagerやQuantaSoftなどがあり、これらのソフトウェアはddPCRシステムとの接続により、サンプルのランセットアップ、実行、および解析に必要なすべての機能を提供します[15]。解析結果の解釈には、ポアソン分布の理解が必要であり、サンプル中のターゲット分子の絶対数を正確に推定するためには、適切なサンプル調製と解析ソフトウェアの正確な使用が求められます。

第5章: ddPCR技術の最新動向と将来性

最新の研究事例と技術革新

## 最新の研究事例

● 1. 次世代のデジタルPCRチップの開発
理化学研究所の研究チームは、超短パルスベッセルビームによる微細可溶部形成とその後の選択化学エッチングを用いてガラス製デジタルPCRチップを高速に作製する技術を開発しました。この技術により、次世代の高感度・高精度医療検査法として期待されるデジタルPCR検査を実現するチップを、高速・安価に製造することが可能になります[5]。

● 2. HIVウイルスの計測
Strain博士の研究室では、HIV研究のためのツール開発を続けており、ddPCRを用いてコピー数の少ないHIVウイルスの計測を行っています。特に、ターゲットの濃度が「106細胞中、300コピー」以下の場合、ddPCRはリアルタイムPCRよりも正確であることが報告されています[6]。

● 3. SARS-CoV-2の検出と定量
2段階逆転写液滴デジタルPCRプロトコルを用いたSARS-CoV-2の検出と定量のためのさまざまなアッセイの開発手順が要約されています。この手法は、正の液滴と負の液滴を適切に分離し、データ分析に役立つことが示されています[7]。

## 技術革新

● 1. ロシュのデジタルPCRシステム
ロシュは、dPCR技術を利用した研究用の核酸定量システム「Digital LightCycler® システム」を発売しました。このシステムは、dPCR特有の精度の高さに加え、多様な研究ニーズに応える性能を備えています[8]。

● 2. 遺伝子治療のためのウイルス力価測定
Bio-Radは、ddPCRテクノロジーを遺伝子治療の品質管理に応用する研究を紹介しています。この技術は、遺伝子治療開発の品質管理の多くの側面で利用されています[16]。

● 3. デジタルPCRによる疾患遺伝子研究のための新試薬
キアゲンは、デジタルPCRによる高精度の疾患遺伝子研究に向けた新試薬「dPCR CNV Probe Assays」を市場投入しました。この試薬は、がん研究や疾患に関わる目的領域のコピー数変異の解析を目的に開発されました[13]。

これらの研究事例と技術革新は、ddPCR技術が医療検査、疾患研究、遺伝子治療の品質管理など、幅広い分野での応用可能性を拡大していることを示しています。特に、高精度な定量分析が求められる研究や診断において、ddPCR技術の重要性が高まっています。

参考文献・出典
[1] www.bio-rad.com/sites/default/files/2021-09/Droplet%20Digital%20PCR%20Application%20guide_JP_0.pdf
[2] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners/dpcr-vs-qpcr/dpcr-applications
[3] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-droplet-digital-pcr-%E8%A7%A3%E6%9E%90/
[4] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr
[5] www.riken.jp/press/2024/20240110_1/index.html
[6] sg.idtdna.com/jp/site/mailmag/ddPCR_for_HIV.html
[7] www.jove.com/t/62295/two-step-reverse-transcription-droplet-digital-pcr-protocols-for-sars?language=Japanese
[8] www.roche-diagnostics.jp/media/releases/2023-3-1
[9] www.gmp-platform.com/article_detail.html?id=9323
[10] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr/beginners/dpcr-guide/setup-and-troubleshooting
[11] www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr%E5%B8%82%E5%A0%B4-102014
[12] www.ikedarika.co.jp/catalog/category/product/detail.html?pdid1=102390
[13] prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000094351.html
[14] jp.illumina.com/science/technology/next-generation-sequencing/ngs-vs-qpcr.html
[15] www.med.nagasaki-u.ac.jp/generes/seminar/180704.pdf
[16] www.bio-rad.com/index.php/ja-jp/applications-technologies/viral-titer-determination-for-gene-therapy?ID=6283b90f-d8da-7a74-91dd-880edbdf7126
[17] www.yamato-net.co.jp/topics/detail/805/
[18] yamato-net.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/Files/brochures/13144220115f966c3ed3a89.pdf
[19] gateway.on24.com/wcc/experience/eliteBioRadLaboratoriesInc/3401149/4335948/ddpcr_webinar_series_jp/?partnerref=on24seo
[20] www.iac.saga-u.ac.jp/seminar/20200128-21stCenterSeminar.pdf

次世代PCR技術としての展望

● 第3世代PCR技術としての期待

デジタルPCR(ddPCR)は、従来のPCR技術を進化させた第3世代のPCR技術として注目されています。この技術は、サンプル中のDNAやRNAの絶対量を高感度かつ高精度に定量化することが可能であり、感染症、がん、遺伝性疾患などの研究や診断において重要な役割を果たしています[15]。

ddPCRは、サンプルを数千の微小区画に分割し、それぞれの区画でPCRを行うことにより、個々の分子をカウントして絶対定量を行います。この技術は、リアルタイムPCRに比べて、より正確な定量が可能であり、特に低濃度のターゲットを検出する際に優れた感度を示します[7][11][12]。

また、ddPCRは、次世代シーケンシング(NGS)と併用することで、がんなどの疾患の包括的な遺伝子変異のプロファイリングと、特定の変異の高精度な定量を同時に行うことができるため、リキッドバイオプシーなどの新しい診断手法の開発にも貢献しています[14]。

● 第3世代PCR技術としての挑戦

ddPCR技術の普及にはいくつかの挑戦があります。まず、高度な技術を要するため、専門的な知識や操作技術が必要となります。また、ddPCRに必要な機器や試薬は高価であり、コスト面での課題も存在します[15]。

さらに、ddPCRは特定のプライマーに基づいて機能するため、広範囲の探索的測定には不向きであり、既知のマーカーや変異に対する分析に特化しています。そのため、未知の変異を探索する場合には、他の手法との併用が必要となる場合があります[14]。

技術的な進歩により、ddPCRの精度や感度は向上していますが、サンプルの前処理や解析の複雑さ、データ解釈の難しさなど、実験プロトコルの最適化が求められています[15]。

● まとめ

ddPCRは、その高精度な定量能力により、次世代PCR技術として大きな期待を集めています。がん研究や感染症診断などの分野での応用が進んでおり、今後の医療やバイオテクノロジーの発展に貢献することが期待されています。しかし、技術的な挑戦やコスト面での課題を克服することが、この技術のさらなる普及と発展には不可欠です。

参考文献・出典
[1] www.bio-rad.com/sites/default/files/2021-09/Droplet%20Digital%20PCR%20Application%20guide_JP_0.pdf
[2] pdbu-support.bio-rad.co.jp/pickup/ddPCR.html
[3] www.ncgm.go.jp/100/010/020/report_2015/25s102.pdf
[4] www.jst.go.jp/crds/pdf/2020/FR/CRDS-FY2020-FR-04/CRDS-FY2020-FR-04_10300.pdf
[5] www.genome-sci.jp/guidance
[6] www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/57/7/57_570711/_pdf
[7] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/digitalpcr1/
[8] www.qiagen.com/ja-jp/applications/digital-pcr
[9] www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/53/6/53_290/_pdf
[10] www.asahi.com/articles/ASRC24QJ4RBDTIPE012.html
[11] www.eurofins.co.jp/clinical-testing/%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr-droplet-digital-pcr-%E8%A7%A3%E6%9E%90/
[12] www.thermofisher.com/us/en/home/life-science/pcr/real-time-pcr/real-time-pcr-learning-center/real-time-pcr-basics/real-time-vs-digital-vs-traditional-pcr.html
[13] www.sustainability-hub.jp/column/learn/cases-bio-manufacturing
[14] www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/liquidbiopsy_ngs_dpcr_gsd_ts_1/
[15] www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcr%E5%B8%82%E5%A0%B4-102014
[16] www.bio-rad.com/en-us/life-science/digital-pcr
[17] gateway.on24.com/wcc/experience/eliteBioRadLaboratoriesInc/3401149/4335948/ddpcr_webinar_series_jp/?partnerref=on24seo
[18] www.linkedin.com/pulse/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%ABpcrdpcr%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3qpcr-%E5%B8%82%E5%A0%B4-%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%B0%86%E6%9D%A5%E3%81%AE%E6%88%90%E9%95%B7-2027-insights-leader-gqexf/
[19] straitsresearch.com/jp/report/digital-pcr-market
[20] www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2019/20200310_01.html

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移